「悍ましい」の意味とは?類語や使い方、英語を紹介!
日本語には多彩な感情表現をするためのさまざまな形容詞が存在しています。
情景や物事を実際に目の当たりにしていない人でも、想像しやすくなるような絶妙の表現です。
ここ最近若者言葉として喜怒哀楽ごちゃまぜになっている「やばい」や「エモい」などの抽象的な言葉が流行していますが、表現する人によって解釈が違い、すれ違いが生まれてしまいがちです。
今一度、正しい日本語表現を振り返って表現に取り入れてみましょう。
目次
- 「悍ましい」の意味とは?
- 「悍ましい」の類語
- 「悍ましい」の使い方
- 「悍ましい」の英語
- 「悍ましい」の反対語や似た対義語
「悍ましい」の意味とは?
この言葉は日常の会話ではあまり耳にすることがないでしょう。
ニュース番組や書籍・新聞などの文字や言葉だけで情報を伝えるメディアで使われることが多い表現です。
「悍ましい」とは、光景や物事を目の当たりにしたときに、思わず逃げたしたくなるほどの嫌悪感や恐怖から不愉快な気持ちになるという形容詞です。
古文でも使われていた古い表現で、その昔は「悍し(おずし、おぞし)」と読み、「勝気」や「気性が激しい」という性格を表す意味と、「恐ろしい」という2つの意味を持っていました。
現在では後者の意味で使われている語句です。
「不安を覚える恐ろしさ」や「残酷さに対しての不快感や嫌悪感」と、人間にとっては好ましくない感情を示しています。
- 「悍ましい」の読み方
「悍ましい」の読み方
漢字で読む機会があまりなく、読み方がわかりづらいかと思いますが「おぞましい」と読みます。
パソコンなどの機械で漢字へ変換しようとしても変換できない言葉です。
元々「悍」という字は、音読みで「カン」、訓読みで「悍し(たけし)」と読みます。
漢字そのものには「勇ましい」や「気性が激しい」という意味合いがあります。
「おぞましい」を漢字で表す際は読み方だけでなく送り仮名も間違いやすいので注意しましょう。
「悍ましい」の類語
日本語にはニュアンスが少しずつ違っても、本筋は同じ意味を持つ類語がたくさんあります。
「悍ましい」の類語も多数ありますが、その中から4つご紹介します。
- 「厭わしい」【いとわしい】
- 「凄まじい」【すさまじい】
- 「惨たらしい」【むごたらしい】
- 「凄惨」【せいさん】
「厭わしい」【いとわしい】
不愉快で嫌だと言う気持ちを表す形容詞で、「いとわしい」と読みます。
「悍ましい」と似通っていますが、若干「煩わしさ(わずらわしさ)」が強めに出ている表現です。
「悍ましい」が不愉快で嫌な気持ちの中でも「恐怖」を前面に出す表現ですので、「厭わしい」には多少ニュアンスのズレがありますが類語のひとつです。
「凄まじい」【すさまじい】
程度がはなはだしいという意味合いで使われることの多い形容詞で、「すさまじい」と読みます。
程度の度合いだけでなくその言葉自体に「ただ事ではない様子」という意味も含まれています。
例をあげると、「凄まじい声」という表現があります。
単に声の大きさが非常に大きいという程度を表すだけではなくそこはかとない恐ろしさも感じられ、ただ事ではない様子の声であることがわかります。
「惨たらしい」【むごたらしい】
「惨い(むごい)」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、その言葉を更に強調した形が「惨たらしい(むごたらしい)」となります。
恐怖などの恐れおののく気持ちよりも、グロテスクさに対して抱く不快感の方が強い表現です。
正視できない程に残酷であるという意味合いです。
ただ「惨い」とたとえるよりも、更にその凄まじさが伝わってくる表現です。
「凄惨」【せいさん】
読んで字のごとく、「凄く惨い(すごくむごい)」という意味を持つ熟語です。
「せいさん」と読みます。
先に挙げた「惨たらしい」と似通っていますが、思わず目をそむけたくなる程いたましい様を表します。
起こった出来事や、映画など創作物の描写が、グロテスクまたは人の行いとは思えないほど残酷に感じられる場合など、悪い表現にしか使わない言葉です。
「悍ましい」の使い方
類語と並べる事で更に「悍ましい」への理解が深まったかと思います。
実際に使った例文を2つご紹介します。
例文を参考に、伝える相手の心に響く様な奥深い表現をしてみましょう。
- 「悍ましい」の例文1
- 「悍ましい」の例文2
「悍ましい」の例文1
「あまりに悍ましい内容の事件に胸を痛めた」
耳をふさいで逃げたしたくなるようなニュースや事件が起こった時に、報道でよく使われる表現でもある「悍ましい」という言葉。
普段の生活の中で寒気がするほどに嫌な経験をする事は数少なく、この例文のように残酷な殺人事件や痛ましい事件が起こった時にそれをたとえる言葉として使われることがほとんどです。
自分の身に起きたと考えるとぞっとするほど恐ろしく、現実とは思いたくないという逃避の気持ちを表すにふさわしい表現です。
「悍ましい」の例文2
「ホラー映画は悍ましいシーンが多くて苦手だ」
映画や小説などに出てくる残酷な表現やグロテスクな描写に思わず身震いしたり、吐き気がしてくる人もいます。
そういった、目や耳から入った音や映像のせいで気持ち悪くなったり拒否したくなる嫌悪感を「悍ましい」を使って表すことができます。
自分の身に危険が及ぶ可能性がある物事に対して、人間が自然と反射のように抱く不快さそのものが「悍ましさ」であり、この一言で「残酷」「凄惨」「不気味」「恐怖」など全てを相手へ伝えることができます。
「悍ましい」の英語
日本語の「悍ましい」が恐怖や嫌悪感など多数の意味を含んでいるのと同様、英語表現にも似た様な複数の意味を持つ単語が存在します。
“disgusting”とは、「けがらわしい」や「むかつく」などの不快感そのものを表したり、物事に対して酷いと表現する際に使われる英単語です。
とても「悍ましい」と近しい表現です。
また、“scary”という形容詞も類語として挙げられます。
“scary”とは「怖い」や「ぞっとする」といった恐怖の気持ちや、びくびく怯える様子を表す単語です。
状況に合わせて使い分けると良いでしょう。
「悍ましい」の反対語や似た対義語
「悍ましい」の類語も含め、悪い意味合いを持つ言葉をたくさんご紹介しましたが、一方で前向きな感情や好感のもてる表現というのももちろんたくさん存在します。
そのうち3つをご紹介しましょう。
- 「好ましい」【このましい】
- 「平穏な」【へいおん】
- 「いとおしい」【いとおしい】
「好ましい」【このましい】
恐怖や嫌悪を指す「悍ましい」とは相反する感情を具現するのが、「好ましい(このましい)」という言葉です。
人間が「良いな」と思う、プラスな感情を示しており、人や物問わず何に対しても使用できる便利な表現です。
対象となるものを好きだと思うだけでなく、「素敵だな」と感じたり好感が持てることなどのポジティブな感情全般を指します。
「平穏な」【へいおん】
「悍ましい」とは、目をそむけたくなる程ぞっとし恐怖を感じたりする気持ちでした。
ざわざわと心が騒ぐような状態に対し、「平穏」とは取り立てて変わった事もなく穏やかなさまを表します。
「無事」という熟語とセットにして「平穏無事」という表現をすることも多々あります。
心の波が穏やかで一定に保たれている様子です。
「悍ましい」と比較したときに、言葉の意味というよりも表現する情景や雰囲気が正反対となる言葉です。
「いとおしい」【いとおしい】
漢字で「愛おしい」とも書く様に、物事に対して心が温かくなりつい愛でたくなる(可愛がりたくなる)ような気持ちが沸き起こることを指します。
目を背け逃げ出したくなる様子とは正反対の感情です。
いかがでしたでしょうか。
ニュースではよく聞く言葉であっても、実際に漢字を目にしてみると読み方すら戸惑ってしまった方も多いのではないでしょうか。
「悍ましい」そのものは、日常生活では使う機会が少ない方が良い言葉ではありますが、芸術や文学などの分野で活躍できそうな奥深い表現です。
意味を正しく理解し活用してみて下さい。