「阿吽の呼吸」の意味とは?読み方、類語や使い方、英語を紹介!
普段誰かと交わす会話や執筆する文章の中で、意識していなくても宗教に根付いている言葉を使っていることもあります。
ことわざや故事成語とはまた違った神秘さや奥深さを感じさせます。
由来や真の意味を正しく理解し活用しましょう。
目次
- 「阿吽の呼吸」の意味とは?
- 「阿吽の呼吸」の類語
- 「阿吽の呼吸」の使い方
- 「阿吽の呼吸」の英語
- 「阿吽の呼吸」の反対語や似た対義語
「阿吽の呼吸」の意味とは?
二人以上で同じ1つの事をする時に、調子や微妙な気持ちがぴったりと合うかのように揃うことを意味しています。
また、そのぴったりと合ったタイミングや調子自体も意味します。
「阿吽」というのは仏教の呪文の一つで、口を開いて最初に出す音や息を「阿」、「吽」は口を閉じて最後に出す音や息を表しています。
また、そこから転じて一対となる物を表す用語でもあり、狛犬や力士像などのモチーフともなっています。
- 「阿吽の呼吸」の語源
- 「阿吽の呼吸」の読み
「阿吽の呼吸」の語源
元々「阿吽」という言葉は仏教にある呪文の一つです。
口を開け最初に出す音(息)が「阿」、口を閉じ最後に出す音(息)が「吽」を意味し、宇宙の始まりと終わりを表す言葉とされました。
また、場合によって万物の初めと終わりを象徴する言葉となったり、悟りを求める心(菩提心)とその結果(涅槃)に当てる言葉であったりと幅広く使われている言葉です。
「阿」と「吽」は対となる言葉ですので、それをモチーフに作られた金剛力士像なども、口を開けた阿形と口を閉じた吽形を1対として安置されています。
阿吽は切っても切り離せない始まりと終わりの関係であり、呼吸もまた同じく吸って吐くように切り離せないものです。
そこから転じて、2人以上が対となるかのように呼吸を合わせる様子を「阿吽の呼吸」と表現するようになりました。
相撲でも立ち合いで呼吸を合わせることを「阿吽の呼吸」といいます。
「阿吽の呼吸」の読み
「あうんのこきゅう」と読みます。
普段よく使ったり耳にする事はあっても、漢字で表す機会は少ないため読みを間違えないよう注意しましょう。
また、「阿吽」は人間が驚いたときや相づちとして返す「あ」や「うん」といった言葉とは関係ありませんので、誤用しないようにしましょう。
「阿吽の呼吸」の類語
対となる言葉「阿吽」のように、「阿吽の呼吸」とはぴったりと息が合う様子だということはご理解いただけたでしょうか。
そのポイントを元に類語も押さえていきましょう。
- 「阿吽の仲」【あうんのなか】
- 「以心伝心」【いしんでんしん】
- 「息が合う」【いきがあう】
「阿吽の仲」【あうんのなか】
呼吸を「仲」という語句に置き換えている表現ですが、意味は「阿吽の仲」と同じです。
お互いが呼吸を合わせるかのように共にぴったりと行動している様子を表す言葉です。
仲むつまじい友達や恋人、言葉少なでも意志疎通できる夫婦などを指して使う場合もあります。
「以心伝心」【いしんでんしん】
「心を以って心へ伝える」と書く様に、言葉や口に出さなくてもまるでテレパシーのように相手に伝わる様子を表した四字熟語です。
この言葉も「阿吽の呼吸」と同じく宗教に基づいて生まれた表現です。
元々は禅宗の語で、言葉や文字では表されない仏法の本質を師匠から弟子の心へ伝えることを意味していました。
そこから、言葉を交わさずに心と心を通じ合わせるという意味へと転じました。
「阿吽の呼吸」とは全く同じというわけではありませんが、元々対になっているかのように通じ合っている様子を表現できる類語です。
「息が合う」【いきがあう】
「阿吽の呼吸」同様、物ごとを行う調子や気持ちがちょうど合致している様子を表す言葉で、「阿吽の呼吸」をもっとストレートに表現しています。
吸ったり吐いたりする動作は個人個人でペースが異なり、ただ単にタイミングを合わせること自体難しいものです。
それがちょうどよくぴったりと合うように、うまい具合に動作や気持ちが同じ状態になることを表現しています。
「阿吽の呼吸」の使い方
書籍などでもよく目にする表現ですが、改めて理解を深めるためにも以下の例文を確認してみましょう。
- 「阿吽の呼吸」の例文1
- 「阿吽の呼吸」の例文2
「阿吽の呼吸」の例文1
「上司とは阿吽の呼吸で仕事が進む」
仕事のように、自分以外の誰かと連携して作業を行わなければいけない時もありますね。
多忙な時には言葉を交わしている暇ももったいないくらいに感じます。
そういうスピーディーな作業を求められる時に、共に作業をする相手と1から10まで説明しなくても意志疎通が図れると、まるで自分がもう一人いるかのようなシンクロ感を感じます。
このように波長が合い、息を合わせるようにスムーズに事が運んで行く様子を、「阿吽の呼吸」を使って表現することができます。
「阿吽の呼吸」の例文2
「阿吽の呼吸でパスが繋がる」
対になった物は切り離す事ができずぴったりと合わさるように、「阿吽の呼吸」もタイミング良くぴったりと調子が合うことを表します。
しばしば、団体で行う競技など自分以外の人とチームを組んで行うスポーツで、うまく連携している様子を表現するときに「阿吽の呼吸」がよく使われています。
「阿吽の呼吸」の英語
元々仏教にまつわる言葉であることから、そのままこの言葉を表す英語表現はありません。
似た様な表現をさせるとすると、「息が合っている」「相性がいい」という風に置き換えられます。
息ぴったりという表現なら“in sync”という表現が最も近いでしょう。
“sync”とは“synchronization”の略です。
ぴったりと動きを合わせる水泳競技の「シンクロナイズドスイミング」でも聞き覚えのある単語です。
シンクロする、というカタカナ英語も日本でよく使われる言葉です。
全く同じ動きをすることや、ぴったり重なりあうように同じ気持ちになることをたとえて使う表現です。
また、“chemistry”という単語は主に化学や化学現象を指す英単語ですが、人間関係の相性の良さやそれによって引き出される効果も意味します。
面や状況によって表現を使い分けると良いでしょう。
「阿吽の呼吸」の反対語や似た対義語
ぴったりと合った様子が「阿吽の呼吸」なら、その反対語や対義語は、揃わない様子や調和しない様子を表現する言葉となります。
いくつかご紹介します。
- 「ちぐはぐ」【ちぐはぐ】
- 「頓珍漢」【とんちんかん】
- 「噛み合わない」【かみあわない】
「ちぐはぐ」【ちぐはぐ】
2つ以上のものが食い違って揃わないことや、調和しないことを意味します。
また、対となるべきものがバラバラになって揃わないことも表現できます。
対となるべきの「阿吽」と最もかけ離れた言葉と言えます。
古来、ちぐは金づち、はぐは釘抜きを意味する言葉です。
正反対の道具ですから、金づちで釘を打ち釘抜きで釘を抜いていては作業が一向に進まず、一体何をしているのか解らない様子からこの言葉が生まれたという一説があります。
「頓珍漢」【とんちんかん】
物事の辻褄が合っておらず、的外れであることを意味します。
元々は鍛冶屋で響く槌の音から来ているとされています。
交互に打たれて合う事がない様子から、行き違ったりちぐはぐになることを表す言葉です。
「噛み合わない」【かみあわない】
それぞれ異なるものどうしが調和し、組み合わさるようにぴったりと合う事を「噛みあう」と表現します。
その否定形が「噛みあわない」となります。
うまく事が進まず、論点がずれたりすることに使う言葉です。
宗教に関連している言葉というのは、人間の人生や生きざまに深く関わる言葉が多く存在します。
「阿吽の呼吸」も言葉で全てを説明するのは難しい表現ですが、人との関わりのなかで感じとることのできる言葉です。
学習だけでなく、普段の他人との関わりのなかで理解を深めることができる、奥深い言葉だといえるでしょう。