「棚から牡丹餅」の意味とは?読み方、類語や使い方、英語を紹介!
先人の知恵や教えというものは、今でも数多く後世に語り継がれています。
それが現代ではことわざや四字熟語などへ転じているものもあります。
今回ご紹介する「棚から牡丹餅」もそのひとつ。
誰でも小さい頃から学校や書籍でも等で耳にしたり、普段の生活で使っている人がたくさんいる慣れ親しんだ言葉です。
今一度意味や語源を振り返って、理解を深めていきましょう。
目次
- 「棚から牡丹餅」の意味とは?
- 「棚から牡丹餅」の類語
- 「棚から牡丹餅」の使い方
- 「棚から牡丹餅」の英語
- 「棚から牡丹餅」の反対語
「棚から牡丹餅」の意味とは?
この「棚から牡丹餅」を聞くと「幸運」という言葉を頭に思い浮かべる人が多いでしょう。
言葉としては入っていませんが、このことわざは「思いもよらない幸運が舞い込む」という意味を表します。
ただ単に幸運なことが起こった時ではなく、予想していなかった突然の幸運を指します。
そのため、その幸運を呼び込むために何かしらの努力や尽力はしていません。
偶然起こる幸運に使う言葉であることを理解しておきましょう。
- 「棚から牡丹餅」の語源
- 「棚から牡丹餅」の読み
「棚から牡丹餅」の語源
語源には諸説あります。
どちらも「棚から牡丹餅が落ちる」という出来事は共通していますが、若干由来となったエピソード内容が違います。
だいたいは2つの説に分かれます。
1つめの説は、「棚から牡丹餅が口に入るかどうか待ってみた」という話です。
棚の下に寝転がって口を開けているのを見て不思議に思った人が「どうしてそんなところで口を開けて寝ているの?」と質問したところ、寝転がっている人物が「こうして口を開けて寝ていたら、棚の上にある牡丹餅が落ちてこないだろうか」と答えた、という昔話です。
自分からは何もせず寝転がり、口をあけて牡丹餅が棚の上から何かの拍子でたまたま落ちてくるのを待っている様子から、「努力せずして幸運が舞い込む」ということわざになったという説です。
もう1つの説は、「実際に棚から牡丹餅が落ちて口に入った」という話です。
ある日、たまたま牡丹餅が載っている棚の下で口を開けて寝ていたところ、何かの拍子で都合良く牡丹餅が落ちてきて口に入ったという昔話です。
どちらの説も、「牡丹餅がたまたま口に入る」という点が共通しています。
その昔、砂糖などの甘い物は高級品とされていました。
牡丹餅なんて滅多に食べられない贅沢品です。
それが願っても無いのに偶然口の中に落ちてくるとは、昔の人にとっては宝くじに当たるようなものだったでしょう。
牡丹餅を幸運そのものと例え、「棚から牡丹餅」とは思いもよらない幸運が舞い込むということわざへ転じたとされています。
「棚から牡丹餅」の読み
「たなからぼたもち」と読みます。
「牡丹餅」とは「もち米とうるち米もしくはもち米のみを蒸すか炊き、粒が残る程度に軽くついて丸め餡をまぶした食べ物」です。
砂糖がまだ高価で貴重品だった時代には、塩を使った餡が使われたこともあります。
「棚から牡丹餅」以外にも、牡丹餅という言葉を使ったことわざが数多く残っており、古くから日本人と深い関わりのある食べ物だった事がわかります。
「棚から牡丹餅」の類語
この言葉のポイントは「幸運」「偶然」「労せずして」という3点です。
このポイントをもとに、類語を見ていきましょう。
- 「濡れ手で粟」【ぬれてであわ】
- 「果報は寝て待て」【かほうはねてまて】
- 「渡りに船」【わたりにふね】
「濡れ手で粟」【ぬれてであわ】
努力や苦労をせずに多くの利益を得ることを意味します。
手が濡れていると細かい粒状の物体は少し触れただけでたくさん手にくっつきます。
昔の人はたまたまくっつけたのではなく、あえて手を濡らすことで粟がたくさん手につくことを利用していました。
それが転じて、今では「労せず利益が得られること」となりました。
この言葉を「濡れ手で泡」と書き、苦労が水の泡となると表現する言葉が見られますが、これは誤用です。
漢字や意味を勘違いしないよう正しく理解しましょう。
「果報は寝て待て」【かほうはねてまて】
この言葉には二通りの解釈があるとされています。
「やるべき事をやったとしてもその結果は気長に待つしかない」という意味と、「幸運は人の力ではどうにもならないから気長に待っている方が良い」という意味です。
それぞれ両極端の意味のように感じますが、「運は人の力ではどうにもならない」という点が共通しています。
どちらも「良い報せ」や「幸運」といったポジティブな意味合いが込められている言葉で、「棚から牡丹餅」のように自分の力の及ばぬところから舞い込む幸運を表しています。
「渡りに船」【わたりにふね】
自分が困ったときにちょうど良いタイミングで助けてくれる人や環境に恵まれることを意味します。
とある物が不足したときに偶然補うようにどこかから貰い受けたり、突然人員が不足したときにたまたま希望者が現れる…など、願って何か対策や努力をしたわけではないのに、都合良くラッキーな事が起こる状況を表します。
「棚から牡丹餅」同様、「労せずして」「たまたま」「幸運が舞い込む」と、非常に意味が近い類語として挙げられます。
「棚から牡丹餅」の使い方
それでは、今までのポイントを踏まえて例文を見てみましょう。
- 「棚から牡丹餅」の例文1
- 「棚から牡丹餅」の例文2
「棚から牡丹餅」の例文1
「友達がくれた福引券でまさか温泉旅行が当たるなんて、棚から牡丹餅だな」
まず「友達がくれた」という点。
自分ではその福引券を手に入れるために特別努力したわけではありません。
また、手に入れようと思っていなかった福引券ですから、もらった時点でも何かを当てようと目論んでいたわけではありません。
それが実際やってみると、思ったよりも良い収穫(温泉旅行)が得られたのです。
このように、「自分では予想も期待もしていなかったところから幸運が舞い込んできた」という表現ができます。
「棚から牡丹餅」の例文2
「卵を切らしてスーパーへ買いに行ったら全品特売の日だった。まさに棚から牡丹餅だ」
「卵を買う」ことが本来の目的であって、「特売サービスを受ける」ことを目当てにスーパーに行ったわけではありませんが、そこで偶然割引を得られる機会に遭遇します。
「棚から牡丹餅」という言葉を使うことで、こういった「目的としていない、思いもよらないところで幸運な事が起こる」という状況を深く表現できます。
「棚から牡丹餅」の英語
日本語で言う「棚から牡丹餅」のように「思いがけない幸運」について、海外でも「天からの贈り物」と称して比喩表現で表す言葉があります。
“pennies from heaven”
ペニーとは英国での下位通貨単位です。
アメリカやカナダにおいては、ペニーは1セント銅貨の別称です。
価格としてはとても低く、日本で言うなら1円のようなものです。
それ自体は大した額ではなくても、「天(天国)からのささやかな贈り物」として思いがけない幸運が起きた時にペニーを使って表現します。
「棚から牡丹餅」の反対語
類語は「幸運」「偶然」「労せずして」という3点がポイントだったように、反対語はまさしくその逆となる「必然」「努力して」といったような意味を含んだ言葉が挙がります。
具体的に見てみましょう。
- 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」【こけつにいらずんばこじをえず】
- 「蒔かぬ種は生えぬ」【まかぬたねははえぬ】
- 「春植えざれば秋実らず」【はるうえざればあきみのらず】
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」【こけつにいらずんばこじをえず】
虎の子どもに出会うためには、もちろんその虎の子が潜む穴へ入らなければいけません。
この事が転じて、「危険を冒さなければ成功は得られない」という意味を表すようになった故事成語です。
「棚から牡丹餅」のように何もしないで待っているだけの状態とは異なり、自分で危険を冒さなければ成功や幸せは得られないというたとえです。
「蒔かぬ種は生えぬ」【まかぬたねははえぬ】
ことわざの1つで、種を蒔かないと芽が出ない事から、「原因がなければ結果は出ない」「何かを得るためにに努力が必要」という教えを表したたとえです。
「棚から牡丹餅」とは違い、良いことや結果は何か自分で行動をする必要があるという戒めが込められています。
「春植えざれば秋実らず」【はるうえざればあきみのらず】
「蒔かぬ種は生えぬ」とニュアンスが近いことわざです。
「春に植えていなければ秋に実るわけがない」という事が転じて、行動を起こしたり努力しなければ結果が得られないという意味です。
いかがでしたでしょうか。
人として、時には「棚から牡丹餅」を期待してしまうものですが、思いがけない幸運というのは滅多に訪れてくれるものではありません。
そんな貴重な幸運に恵まれた時に、まわりの人へ伝える表現のひとつとして「棚から牡丹餅」を活用してみて下さい。