「慮って」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
日本人は海外から見ると非常に内向的に映るとよく言われます。
もちろん何も考えていないわけではなく、むしろ内心で言葉にできない様々な思いがあるからそう見えるのかもしれません。
本項では美徳と欠点の背中合わせとも言える行為を表す「慮って」について解説します。
目次
- 「慮って」の意味とは?
- 「慮って」の類語や言い換え・似た言葉
- 「慮って」の言葉の使い方
- 「慮って」を使った例文
- 「慮って」の英語
- 「慮って」を使った言葉
「慮って」の意味とは?
以下の二つの意味を持ちます。
- 何かを決定する際に、対象の心情や都合、周りをとりまく様々な状況をよく考え、それを踏まえたうえで判断すること。
- 計画について思いをめぐらせること。
「慮」は通常ろ、りょなどとも読み、この一文字で「注意をこらして、よくよく考える」という意味になります。
- 「慮って」の読み方
「慮って」の読み方
「おもんぱかって」と読みます。
この言葉は「おもいはかる」→思い量るが本来の形であり、それが言い易く音変化をして「おもんぱかる(おもんぱかって)」となったものです。
このような音韻の変化に半濁音変化を加えたものは日本語の中にも多数あり、他には日本(にほん、にっぽん)差っ引く(さっぴく)などがあります。
また「おもんばかる」と濁音になっている場合がありますが、これも誤りではありません。
半濁音化する前の段階でこのように使われていたことがあったので、単に発音のしやすさによっていくつかの形式があるに過ぎず、またそれも個人によって好みや相性がありますので、好きな方を選ぶことができます。
とはいえ一般的にこの言葉の読みの筆頭にくるのは、半濁音の「ぱ」だということは覚えておいた方がよいかもしれません。
「慮って」の類語や言い換え・似た言葉
名詞形、動詞形になっている言葉も区別せず列挙します。
- 「砕心」【さいしん】
- 「腐心」【ふしん】
- 「汲む」「酌む」【くむ】「斟酌」【しんしゃく】
- 「鑑みる」【かんがみる】
- 「思いやる」【おもいやる】
- 「忖度」【そんたく】
「砕心」【さいしん】
「心を砕く」などとも言い、物事に気づかって心配をしたり、注意をはらって集中し、作業に尽力したりするという意味です。
例文を挙げると「模型の趣味に砕心する」「母の介護に心を砕く」「非常に砕心して客をもてなした」といったところです。
「腐心」【ふしん】
「砕心」とほぼ同様の意味になり、あるものに心を痛めたり、苦心することをいいます。
ところでこの言葉には「心を腐らせる」というような悪い意味がないのはなぜでしょうか。
これは腐には腐敗するという他にも「心を痛める」意味が元々備わっているためです。
また「府」(物がいっぱいに敷き詰めてあり、固まってくっつく)と「肉」で成り立っている漢字なので、「豆腐」のように必ずしも腐った物を指す言葉ではありません。
「汲む」「酌む」【くむ】「斟酌」【しんしゃく】
汲む(汲み取る)も酌むも、元々は水や酒をすくい取るという意味ですが、そこから転じて「気持ちを理解して良い方向に対処してやる」場合にも用いる事ができます。
「彼の意を汲んでやってくれ」などと使います。
より「思いを考慮に入れる」場合に限った言葉としては「斟酌」があります。
これも色々と手心を加えてやったり、あるいはバランスを考えて処理するなど、当人の判断力に結果が委ねられる言葉といえましょう。
「鑑みる」【かんがみる】
あるものに対して、一定の条件化で判断を下すという意味に違いはありませんが、微妙な違いとしては鑑定などの「鑑」の字が用いられていることからもわかるように、「前例や基本的な土台、他の事例と比較して判断する」意味合いが強く、その気持ちは全く無関係なわけではありませんが、比較対象のあるなしで使い分けが必要です。
また「これに鑑みる」と「これに鑑みる」と二通りの言葉を見かけますが、前述の通り「照会すべき判例がある」のが鑑みるですから、厳密には「これに」が正しい用法といえます。
「思いやる」【おもいやる】
「慮」を最も平易に、わかりやすく伝える言葉ではないでしょうか。
正式には思い遣ると書き、遣るとは単に何かを行う動作というだけではなく、送りつける、さしむける、与えるといった意味を特に持っています。
「忖度」【そんたく】
非常な難読熟語にも関わらず、近年政治がらみの報道でつとに有名になり、急激に日本人なら誰でも知っているような言葉となりました。
相手の気持ちに気を配ることで、分解すると「忖」は「心を付ける」「度」は分度器などで用いられているように「計量する」という意味があります。
数千年前の中国にその記述が見られる非常に歴史のある言葉で、わが国でも「慮る」と同義で使われてきましたが、前述の政治問題でもあったように「裏で気を使う」「ことの善悪より、大きいものや位の高いものに追随する」といった、やや否定的な使われ方をすることも近年では増えてきました。
「慮って」の言葉の使い方
「慮って」は動詞「慮る」の連用形(主に後に言葉が続く時に用いる)「慮り」に接続助詞「て」を付け、「慮りて」とした形を言い易くしたものです。
当然、そこには思いやる対象がいますので、「〜を」や「〜に」という目的語がなければ意味が通りません。
また一般的には、相手への「同情の気持ち」を強く打ち出す使い方をされますが、意味の項で述べた通りに、単に策をめぐらせ、計画を立てる意味でも使うことはできます。
但し「思慮」などという通り、そこに深い考えがなければ、この言葉は適切な表現とはいえないでしょう。
「慮って」を使った例文
- 「慮って」の例文1
- 「慮って」の例文2
「慮って」の例文1
「彼女の突飛な行動は、彼を慮っての行動だった」
「慮って」の例文2
「戦闘の前線で命をかける兵士たちを慮って、その家族がメッセージを送った」
「慮って」の英語
分かり易く「配慮」の英訳とした場合、挙げられる言葉には“consider”があります。
“take ~into consideration”で「~をふまえつつ、よくよく考える」となり、例えば“I took your posision into consideration.”とすれは、「君の言い分は分かったので、良く考えたよ」といったものになります。
「慮って」を使った言葉
- 「慮ってのことに感謝する」
- 「慮って口を閉ざす」
「慮ってのことに感謝する」
「慮る」行為は日常でも頻繁に行われていますが、実際に口に出すことはあまりなく、むしろ口語としては不自然な印象を受けることもしばしばです。
例えば目上の方との会話で相手の気遣いに感謝する場合でも「慮って下さってありがとうございます」などよりも「ご厚情に感謝します」とか「ご配慮に感謝します」などと述べた方がよりスマートな言い回しです。
「慮って口を閉ざす」
思いを口に出すばかりが行動ではありません。
思いやるからこそあえて何も言わず、余計な波風が立たないようにするのも大事であり、本当に相手のためを考えているかどうか、が問われるのではないでしょうか。
心情を察するという難しく、かつ避けては通れない行為ですからその意味は深く、派生語も様々にあることがわかりました。
こうした思いは常に大切にして生きていきたいものですね。