「外聞」の意味とは?類語、使い方や例文、反対語を紹介!
日本人は「人にどう見られるか」を過剰に気にする国民性があると言われます。
それは主に良くない方に作用することが多く、右へ倣えの風潮が加わった挙句秀でているものや個性を潰す原因にもなりえるものです。
本項ではそうしたことがらを表す言葉の一つを取り上げ、解説していきます。
目次
- 「外聞」の意味とは?
- 「外聞」の類語や言い換え
- 「外聞」の使い方
- 「外聞」を使った例文
- 「外聞」を使った言葉
- 「外聞」の対義語
「外聞」の意味とは?
いくつかの意味がありますが、全て「自分たちの間だけの、何らかの物事」を指しています。
まず、その事情が世間様にどう思われているか、または知られた場合どう思われるかを気にする事であり、これが最も一般的な使われ方です。
この場合の「世間様」は、よほどの著名人でもない限りは、大抵知人や親戚一同など割と狭い範囲を指します。
そして、その事情が内部から外部に漏れる事、またはその者の名誉そのものを指す場合もあります。
よく似る言葉に見聞・異聞・風聞といったものがありますが、見聞は見聞きした知識を、異聞は標準から外れた聞き慣れない話、風聞は自分たちのことかどうかは関係なく、単なる噂話をいいます。
- 「外聞」の漢字
「外聞」の漢字
「がいぶん」と読み、「外に聞こえる(自分たちの情報)」から来ていると思われます。
聞は上に挙げた他にも聴聞、醜聞、旧聞、伝聞など、耳で聴くあらゆる情報のことですが、視覚(新聞)や、珍しいところでは嗅覚(聞香)の情報であっても、半ば比喩的に使われることもあります。
「外聞」の類語や言い換え
- 「世間体、面子(メンツ)、沽券」【せけんてい、めんつ、こけん】
- 「見栄」【みえ】
- 「人聞き、他聞」【ひとぎき、たぶん】
- 「体裁」【たいせい】
- 「名利」「名聞」【みょうり】【みょうもん】
- 「毀誉褒貶」【きよほうへん】
「世間体、面子(メンツ)、沽券」【せけんてい、めんつ、こけん】
周りから見られた時の、自分(もしくは、自分たち)の評判の良し悪しのことであり、一般的な外聞の意味と同様に使われます。
世間体は「体」の字を使っているといっても、この場合は体面、すなわち世間に対する面目を指し、物質的な見てくれの良し悪しというよりは、精神的な名誉や恥という意味合いの方が強い言葉です。
面子の「子」はそれ自体に意味はなく、中国語においての名詞(面=自分の面目のこと)に付く強調のための接尾辞が、日本語でもそのまま流用された格好になっています。
俗語では単に「頭数、メンバー」の意味として「〜が揃う」などと用いられます。
面子にはもう一つ「メンコ」という読みがあり、言うまでもなく子供の遊具のことですが、文脈で容易に判断できるので誤読されることはほぼありません。
沽券は「こけん」と読み、売ることを意味する「沽」と券の組み合わせで、土地などの売却証明書のことを指していたところから転じて、自分の価値や品位、それに付随する信用性を表す言葉になりました。
沽券が使われだした歴史は古く、平安時代にまでさかのぼるといい、現代では「-に関わる」などとよく使われます。
「見栄」【みえ】
外見の良し悪し、またはその為に繕う様子のことで、普通はよりよく見せようとする行為を指します。
漢字の由来はない当て字であり、「見える」を連用形によって名詞化した形です。
「化粧の乗り方」を「化粧のノリ」と言うように、「見え方」と言い換えると理解がしやすいのではないでしょうか。
また誤用しやすい例として、同じく「みえ」と発音する「見得」があります。
こちらは歌舞伎役者が印象を強めるために行う独特の表現法なのですが、日常会話では自信たっぷりな様子や見栄っ張りな様子を「大見得を切る」という事から、見栄と見得は大元の意味は同じだということがわかります。
「人聞き、他聞」【ひとぎき、たぶん】
人聞きには「人づてに伝聞する」の意味もありますが、この場合は「世間の評判」であり、外聞も訓読みにすれば「そとぎき」とも読めることからも解る通り、ほぼ同義の言葉です。
他聞は他の人に聞かれることを指し、やはり使い方は外聞と同じです。
「体裁」【たいせい】
上記に挙げた様々な言葉と同じく「知られた時の気持ち」を意味しますが、他には単に物質的、視覚的な様子、例えば「本の体裁」などという場合にも用いられます。
「名利」「名聞」【みょうり】【みょうもん】
それぞれ、世間の人からの評価の中でも特に名誉や名声のことを言う言葉です。
「毀誉褒貶」【きよほうへん】
「きよほうへん」と読みます。
相反する言葉や似た言葉を重ねた四字熟語であり、ほめる、けなすといった様々な評価を全てまとめて「世間の評判」を意味します。
毀は名誉毀損などというように、こぼたれる、こわされること。
貶はおとしめるとも読み、見下す、おとす、低く評価するなどの意味があります。
「外聞」の使い方
外聞という位ですから、まず自分もしくは自分を含んだ、何らかの内輪の物事が前提として存在します。
それを外に向かって知らしめる時、または知られてしまった際にこの言葉を用います。
いずれにしても「外聞が良い」は誤りではないもののあまり会話に出ることはなく、多くの場合「知られると都合が悪い、面目が保てない、恥ずかしい」内部事情について、否定的な言葉を伴って使われることがほとんどです。
「外聞」を使った例文
「事業の失敗によって全てを失い、どん底に陥った。いい気になって札束をちらつかせていた連中に対しても、外聞も何もあったものではない」
「外聞をはばかる話なので、と耳打ちされた情報は、何とも眉唾物の儲け話だった。第一この人物自体、外見からして怪しい」
「外聞」を使った言葉
- 「恥も外聞もない」
- 「外聞が悪い」「外聞を失う」
- 「外聞をはばかる」
「恥も外聞もない」
周りにどう思われようが意に介さない、気にしないさま。
もしくはそんな事に構ってはいられず、見ぬふりをして手段を選ばないさま。
周囲からの嫌味として「よく恥も外聞もなくそんな事ができますね」などと用いられるのが一般的です。
「ない」の部分は「忘れる」「構わない」「失う」「かなぐり捨てる」などと変化させる事ができますが、意味は全て同じです。
「外聞が悪い」「外聞を失う」
他人に知られてはみっともない、何を言われるかわからない、恥さらしになるという事情のこと、もしくはそれによって自身が価値を下がるのをおそれる場合、こう言います。
よくある例としては、身分の釣り合いが取れない恋人同士が結婚の許しを得ようとして、互いの両親から「世間体に響く」として反対される場面が挙げられます。
似た表現としては「恥がましい」「みとむない」「いい笑い者だ」などがあります。
「外聞をはばかる」
はばかるには「つつしむ、遠慮する」と「幅を利かせる、はびこる」という全く相反する意味がありますが、この場合は当然前者です。
人目や辺りをはばかるのと同様、誰かに聞かれてはまずいので、ここだけの話だが、もしくはここでは話せないといった場合にこう表現します。
「外聞」の対義語
- 「内情」【ないじょう】
- 「自己評価」【じこひょうか】
「内情」【ないじょう】
内状とも書き、文字通り内部にしか知られていない、時に外に知られないように隠されている情報のことをいいます。
「自己評価」【じこひょうか】
周りにどう見られているかに関わらず、自分で自分をどう思うか、どう捉えるかをこういいます。
その評価は客観的に分析したものもあれば、単に井の中の蛙になって自己陶酔しているだけの場合もあるので、本人が他の意見に耳を傾けるかどうか、周囲がどこまで理解し、指摘してやるかが重要になります。
知られたくない裏事情は誰にでもあります。
しかし、プライドだけを気にしていては、自己を見失うことにつながりかねません。
その由来や用法は既に多くの人の知るところですが、ありふれているからこそ、こうして仔細に調べてみることで改めてこの言葉について向き合うきっかけになるのではないでしょうか。