「奇をてらう」の意味とは?漢字、類語や使い方、例文を紹介!
「奇をてらう」というと、すこし道化的なおどけをイメージしてしまいますが、本来の意味や使い方はどういったものなのでしょう?ここでは「奇をてらわず」、真面目に「奇をてらう」について、見ていきたいと思います。
目次
- 「奇をてらう」の意味とは?
- 「奇をてらう」の類語や言い換え
- 「奇をてらう」の使い方
- 「奇をてらう」を使った例文
- 「奇をてらう」を使ったことばや名言を解釈
- 「奇を衒う」のを分解して解釈
- 「衒う」の語源
「奇をてらう」の意味とは?
わざと奇妙で風変わりなことをして、人の注意を引こうとすることを意味しています。
「奇」には三つの意味があります。
一つ目が、普通と異なっていることや、珍しいこと、不思議なことの意味。
次が、思いがけないこと。
最後には、奇数などに使われる、二で割り切れない、という意味。
「てらう」とは、輝くようにする、見せびらかす、誇示する、ひけらかすといった意味があります。
- 「奇をてらう」の漢字
「奇をてらう」の漢字
奇をてらうは、ひらがなであれば多くの人が読めるのですが、漢字を書いてください、というとなかなかむずかしいのではないかと思います。
「てらう」は「衒う」と書きます。
てら(う)のほかに、「げん」という読みがあります。
「衒」の字は、「行」と「玄」の組みあわせでできたことばです。
「玄」は「眩」に通じ、これは「眩む(くらむ)」と読みます。
ものの価値をごまかす、というところから来ています。
また、「げん」の読みを使ったことばでは、「女衒(ぜげん)」というものが有名かと思います。
この場合の「衒」には「売る」という意味があり、その昔、女性を遊女屋に売ることを生業にしている人のことを女衒と言いました。
「奇をてらう」の類語や言い換え
「奇をてらう」のほかに、どんな言い方ができるのか見ていきましょう。
類語や言い換えを知ることで、「奇をてらう」ということばの理解も深まり、語彙力にも自信がつきそうですね。
- 「奇矯」【ききょう】
- 「突飛」【とっぴ】
- 「エキセントリック」【えきせんとりっく】
- 「ファンシー」【ふぁんしー】
「奇矯」【ききょう】
奇矯は、行動や言動、思考が普通と違っていて激しいさまを言います。
奇抜ということばもありますね。
これらには、わざと、という点が欠けている場合もありますし、狙って奇矯、奇抜なことをしているという場合も考えられます。
「原宿に行くと、奇抜なファッションをした若い女の子がいるだけでなく、見るからに奇矯な振る舞いをする者までいると聞く」
こんなふうに使うことができます。
奇をてらったファッション、奇をてらった振る舞い、というと、「わたしを見て!」というアピールの強さをさらに感じます。
「突飛」【とっぴ】
突飛は、常識からは並外れていて、人々があっと驚くほど風変わりなさまを言います。
「突然、渓流に架かった橋の欄干に立って、結婚してください、と突飛なプロポーズをした彼は、今では息子と愛犬にべた惚れのいいおじさんになっている」
奇をてらったプロポーズ、と言われるとやはり「わざとらしい」という感じがします。
突飛な、ということばには衝動的な感情が込めやすいのかもしれないですね。
「子どもの突飛な発想にはいつも驚かされる」というようにも使えます。
「エキセントリック」【えきせんとりっく】
エキセントリックとは、普通とひどく違っている、風変わりなさまを言います。
「青山さんにはエキセントリックな部分があるよね」というと、かなり変わった人、奇人という印象があるでしょう。
もしくはさらに性格や言動に破綻や謎があり、不思議ちゃんと思われている可能性もあります。
どこまで本気なのかわからない部分が、「奇をてらう」に近い要素がありますね。
「ファンシー」【ふぁんしー】
ファンシーショップなんていうと、ティーンズ向けの文房具やアクセサリーなどを売っている店という印象があります。
日本ではそのように使われることのあることばですが、しかしファンシーとは本来、空想や幻想、気まぐれや思いつき、奇抜なさまを意味しています。
「奇をてらう」の使い方
奇をてらうは、「奇をてらって〜する」というかたち、もしくは「奇をてらった+名詞」で使われることが多いです。
奇をてらった行動、などという場合が、「奇をてらった+名詞」のかたちになります。
また、〜するの、「する」は省略されている場合もあります。
「奇をてらう」を使った例文
ここでは「奇をてらう」を使った例文を紹介します。
「藤崎は合コンが初めてだと事前に聞いていたが、激辛ドリンクを飲んだり、トイレに行ったときにシャツを着替えてきたり、どうして女の子がよく思わないような、奇をてらった行動ばかりしているのか」
「女優を目指していると聞いたときから思っていたが、佐々木さんが奇をてらった発言ばかりするのは、目立ちたいという欲求があるせいなのだろう」
「林田が評価されているのは、社会風刺だと見るからにわかる、奇をてらった表現が功を奏しているからだそうだ」
「奇をてらったつもりはなかったが、みんなが話半分なのにはがっかりした」
「奇をてらう」を使ったことばや名言を解釈
夜に出回っていることばのなかで、「奇をてらう」を使ったものはないか、調べてみました。
- 「不慣れなやつほど奇をてらう」
- 「独創性と奇をてらうは、紙一重のようでまったく異なる」
「不慣れなやつほど奇をてらう」
アニメ「氷菓」にて使われたことばだそうですが、言い得て妙です。
きちんと基礎があり、緩まない地盤の上に立っている者は、自分の力で真正面から戦うことができますが、不慣れであればあるほど、上っ面の部分でなんとか魅力的に見せようと躍起になる羽目になります。
だれだってはじめは初心者。
変なクセをつける前に、しっかりと基礎を積んだほうがのちのちのためになりそうですね。
「独創性と奇をてらうは、紙一重のようでまったく異なる」
作曲家であるすぎやまこういちさんが、インタビューのなかでこのようなことを仰ったことがあるようです。
これも先述のものと同じような意味ですね。
奇抜なものをつくることと、独創的なものをつくるということは、似たようでいて、まったくちがいます。
あまり奇をてらうことばかり考えていると、底の浅さが見え透いてしまうのではないでしょうか。
「奇を衒う」のを分解して解釈
「奇」と「衒」の漢字についてはすでに述べていますが、今一度、「奇」と「衒う」の意味について見ていきましょう。
わかりにくいことばは、分解することで理解が深まる、ということが往々にしてあるものです。
- 「奇」
- 「衒う」
「奇」
「奇」は「き」のほかに、「あやしい」「くし」「くすし」「あやに」などの読み方があります。
「奇しくも」などというときは、「く」という読みになりますね。
「事実は小説より奇なり」ということばからも、「奇」ということばが、「ふしぎだ、思いがけない」といった意味をはらんでいることがわかります。
怪奇、猟奇、奇才、などと、どこか謎めいた、手に負えないものの印象を強める字です。
「衒う」
さきほどは「衒」という漢字のみの意味を見ていきましたが、ここでは「衒う」ということばに着目します。
「衒う」は、自分に優れた才能や知識があるかのように、わざと見せかけること、という意味があります。
また、実際に自分の持っている才能や知識を誇らしげに見せびらかす、という意味も含まれています。
自分の持っているものをちらつかせ、自信過剰に見せびらかすことはもちろん、持っていない知識や才能まで、まるであるかのように振る舞う、ということですね。
「衒う」の語源
なぜ「てらう」と言うのでしょう。
これは、「照る」に反復・継続の助動詞「ふ」を組みあわせたことばになります。
上述した、「輝くようにする」という意味からもわかりますが、「照る+ふ」からも、照りつづける→目を眩ませる→ものの価値を本物以上に見せる、というのは頷けるでしょう。
「奇をてらう」の意味や類語、使い方について、おわかりになりましたでしょうか?
「奇をてら」わず、実直に経験を積んでいくことが、魅力的な人間になる道のりなのでしょう。
見せかけのよさに気を取られず、本当によいものを選んでいくためにも、さまざまな知識を集積させていきたいものですね!