「恨めしい」の意味とは?読み方、類語や使い方、英語を紹介!
幽霊がおどろおどろしく登場するシーンで「うらめしやー」と言っているのを見たことはありませんか?幽霊専用のセリフのようにも思えますが、実はそうではありません。
きちんとした日本語が元となっているのです。
「うらめしやー」とも深くかかわっている「恨めしい」という言葉をご紹介します。
目次
- 「恨めしい」の意味とは?
- 「恨めしい」の類語
- 「恨めしい」の使い方
- 「恨めしい」の英語
- 「恨めしい」の反対語や似た対義語
「恨めしい」の意味とは?
「恨めしい」とは、字にも表れていますが「恨みたくなるほど憎らしい」という気持ちを表している、「恨む」という動詞を形容詞化した言葉です。
また、「情けなく、残念に思う」という意味も持ち合わせています。
誰かに対して憎みたくなるほど腹が立つ気持ちを表現するにはぴったりです。
それだけでなく、自分自身へのいら立ちや歯がゆさ、それに伴って非常に残念に感じる気持ちがこみ上げてきた時の感情をたとえるのにふさわしい形容詞でもあります。
冒頭に出てきた「うらめしやー」も、「恨めしい」が語源となっています。
この世に未練や悔いが残ったまま幽霊となり、「恨めしいなぁ」という気持ちを吐き出しながら登場します。
ネット等には面白おかしく「裏の飯屋のこと」などと誤った情報を流しているサイトもありますが、決してご飯に関連するセリフではありませんので注意しましょう。
- 「恨めしい」の語源
- 「恨めしい」の読み
「恨めしい」の語源
「恨む」という言葉には、語源のひとつとして「うら」とは心のことで「心(うら)見る」というのが原義だという説があります。
例えば日々の生活の中で、自分に対する相手の言動や自分が置かれている状況に不満を持っていても、表に出せずこらえて内に抱える事があると思います。
当初はその心の状態を表す言葉でしたが、それを表に表現する仕草や動作にも使われるようになったと言われています。
意味が2つ合わさっていることもあり、文章の構成やともに使われる語句によって受け手が解釈を変える、日本語独特の奥深い言葉です。
「恨めしい」の読み
「うらめしい」と読みます。
漢字を「怨めしい」と書いても間違いではありませんが、字自体が持つ意味合いとしては「恨」は悔みや心残りを示し、「怨」は憎しみや「うらむ心そのもの」を示すという微妙な違いがあります。
「恨めしい」という表現の根本にある気持ちや、そう思う対象の違いで字を変えると相手へ伝わりやすくなるでしょう。
例えば「悔恨(残念に思い悔やむ事)」のように、同じ「うらみ」という漢字でも「恨」は悔しさや未練を表す熟語に使われています。
一方、「怨」は「怨言(うらみの言葉)」など、「うらみ」に関する何かを示す熟語に入っています。
「恨めしい」の類語
「恨めしい」という表現だけでなく、憎らしさやいら立ち、残念な思いを伝える言葉がいくつもあります。
3つ例を挙げてみました。
- 「痛恨」【つうこん】
- 「忌々しい」【いまいましい】
- 「根に持つ」【ねにもつ】
「痛恨」【つうこん】
「恨」という漢字から推測できますが「非常に残念に思う、悔やまれる」という感情を表す言葉です。
念や思いという言葉と併せて使われます。
例えば「痛恨の念」や「痛恨の思い」という具合です。
「忌々しい」【いまいましい】
本来は不吉で忌み嫌う様を表していましたが、そこから転じて「心残りである」「残念に思う」を意味するようになりました。
現在では主に「腹立たしい」「不愉快」「しゃくにさわる」というマイナス感情を表す言葉として使われています。
「根に持つ」【ねにもつ】
時間がいくら経とうが関係なく、いつまでもその恨みを忘れない状態を指す言葉です。
自分に起こった不愉快な出来事がどうしても記憶から消せない程に腹立たしい、もしくは残念で仕方なく、忘れられない状態です。
長期に渡って恨み続けている、ということのたとえです。
「恨めしい」の使い方
意味や読み方は理解いただけたでしょうか。
次に、実際の使用例を例文を使ってご紹介します。
- 「恨めしい」の例文1
- 「恨めしい」の例文2
「恨めしい」の例文1
「自分のミスを私になすりつけた先輩が恨めしい」
社会生活の中で他人と関わって生きていくうえで、理不尽な目に遭うこともあります。
自分がおかしたミスや失態は自分で責任を持ち対処するものですが、プライドの高い人や責任から逃れたい人が、他人に自分の失態を押し付けたり濡れ衣を着せたりすることがあるのです。
身に覚えのない事で疑いをかけられたり、責任を取らされることへの腹立たしさといったらまさに「恨めしい」そのものと言えます。
この例文で言えば、先輩に対して「自分が抱く腹立たしさと憎しみ」、「責任から逃げた事について呆れたり残念に思う気持ち」を「恨めしい」が一言で表現してくれています。
「恨めしい」の例文2
「怪我で思うように動かない自分の手足が恨めしい」
「恨めしい」という言葉は憎しみやいら立ちだけを表す言葉ではありませんでしたね。
情けなく思ったり悔やむ気持ちを表す言葉でもあります。
人間誰しも、自分の思い通りにならないのが自分自身のせいだった時に、「なんて自分は情けないのだ」と悔しく感じたり情けなさを痛感することがあります。
この例文では、本来は自由に動くはずの手足が怪我という障害によって思い通りにならず、自分のふがいなさや情けなさを感じたことを「恨めしい」に込めて表現しています。
「恨めしい」の英語
英単語のみで「恨めしい」という複雑な感情をたとえるのは非常に難しいものがあります。
たとえば、“have(もしくはbear) a grudge”で恨むという日本語訳になりますが、単純に「恨んでいる状態」という動詞の表現となってしまいます。
日本語と同じように「恨めしい」という気持ちを表す形容詞となると“reproachfully”や“ruefully”を使った表現がふさわしいでしょう。
“reproachfully”には「非難する、咎める」、“ruefully”には「悲しげに、後悔して(やってしまったことに対して)」という意味があります。
日本語の「恨めしい」には、相手を恨みたくなる気持ちと自分自身に対して悔しげな気持ちの2パターンあるため、状況や場面によって英単語を選ぶ必要があるでしょう。
また、面白い表現として“feel bitter”という表現があります。
“bitter”とは日本人にとってビターチョコなどの表現で馴染みがありますね。
日本では主に苦いという意味で使われていますが、味覚の苦いだけでなく「苦痛、つらい」という意味合いもあるのはご存知でしたでしょうか。
つまり“feel bitter”とは苦みを感じているのではなく、苦々しく思ったり悔んだりすることであり、「恨めしい」という日本語訳をされる表現なのです。
「恨めしい」の反対語や似た対義語
「恨めしい」という言葉の反対の意味となる言葉は、「恨めしい」に込められるネガティブな意味と対照的なポジティブな意味を持つ言葉となります。
代表的なひとつの言葉をご紹介します。
- 「有難い」【ありがたい】
「有難い」【ありがたい】
送り仮名には「有難い」と「有り難い」の2種類があります。
人の好意や協力に対して感謝する気持ちを表す言葉です。
他にも、字のごとく「めったに起こらない珍しい事」を指す事もあります。
誰かに感謝の気持ちを伝えるときに「ありがとう」と伝えることがありますが、「有難し」という形容詞がウ音便化したものです。
「恨めしい」が人に対して抱く憎しみや後悔などの暗い念に対し、「有難い」とは人への感謝や嬉しい気持ちなどの明るい念です。
反対表現のひとつとして覚えておきましょう。
人の気持ちというのはとても複雑です。
喜怒哀楽とは言いますが、憎しみと愛が表裏一体だと言われるように、一言ではとても言い表せない込み入った感情もたくさん存在しています。
「恨めしい」という気持ちも、他人に対して使えば憎しみの表現ですが、自分に対して使うなら情けなさを諌める表現でもあります。
同じ言葉であっても多彩な意味を持ちあわせる数々の日本語。
その語源や使われ方を深く学習することでその奥深さを感じることができます。
「恨めしい」という言葉も単なる憎しみのように思えて実は様々な感情が入り混じった、深みのある言葉なのです。