「怪我の功名」の意味とは?読み方、類語や使い方、英語を紹介!
普段誰かと交わす会話の中で「怪我の功名だね」と言われたり、使っている人を見かけたりしたことはありませんか?
なんとなく意味を知っていても、その言葉が本来何を表わしていてどういった由来があるのか深く理解しておらず、誤用している人も少なくありません。
私たちの生活と根深く関わっている「怪我の功名」ということわざについて、今一度振り返ってみましょう。
目次
- 「怪我の功名」の意味とは?
- 「怪我の功名」の類語
- 「怪我の功名」の使い方
- 「怪我の功名」の英語
- 「怪我の功名」の反対語や似た対義語
「怪我の功名」の意味とは?
「怪我」という漢字からよく勘違いされやすい言葉ですが、怪我をすることとは関係がありません。
本来の意味は、「過去の失敗や災難など悪い出来事だったことが、偶然良い結果をもたらす」というものです。
また、それが転じて「何気なくやっていたことが、偶然良い結果になる」という意味でも使われることがあります。
このことわざをまず、2つの言葉に分けて考えてみましょう。
1つめは「怪我」という単語です。
不注意などで体に傷を負う事ですが、未詳ながらこの漢字は「当て字」とされ、元は動詞の「けがる」「けがれる」の語幹からきていると言われています。
「穢れる」とは、「不浄な身になる」や「汚れる」といった意味です。
本来、「けが」という単語は「災難な目に遭う」「過失」という意味を表す言葉でしたが、災難や過失という意味から転じて体に傷を負うことも表すようになりました。
2つめは「功名」という単語です。
古くは「高名」とも書き、字から想像出来る通り「名を高く」する、つまり手柄を立てて名を上げることやその手柄自体を意味します。
この2つがあわさって「怪我の功名」ということわざとして成り立っています。
このことわざ上、「怪我」とは傷を負う方ではなく先程挙げた「災難な目」や「過失」を指しています。
つまり、冒頭で述べたように「過去の失敗や過失、災難が偶然良い結果となる(手柄となる)」という意味を表しています。
- 「怪我の功名」の語源
- 「怪我の功名」の読み
「怪我の功名」の語源
このことわざには、特に語源や由来といえる昔話やエピソードはありません。
語句の成り立ちや意味から成り立っていることわざです。
元は失敗や過失であったとして偶然にも結果は良いことから「その時点では失敗や悪い出来事でも、視点を変えると良い結果や嬉しい出来事と思えるもの」という深い意味も込められています。
誰しも、失敗しようと思って失敗しているわけではありませんから、それがかえって良い結果となるのであれば「成功の為の必要な失敗であった」とポジティブに捉えることができるという意味でもあるでしょう。
「怪我の功名」の読み
「功名」という字を読み間違える方もいますが、ただしくは「けがのこうみょう」と読みます。
「こうみょう」と聞くと、字を「巧妙」や「光明」と勘違いしてしまう例もあるようです。
読み方だけでなく、誤字にも注意しましょう。
「怪我の功名」の類語
「怪我の功名」が「起きた失敗や過失が良い結果となる」という意味だということは理解できたでしょうか。
他にも似た様なことわざがありますので、いくつか見てみましょう。
- 「災い転じて福となす」【わざわいてんじてふくとなす】
- 「雨降って地固まる」【あめふってじかたまる】
- 「失敗は成功の元」【しっぱいはせいこうのもと】
「災い転じて福となす」【わざわいてんじてふくとなす】
「災い転じて福となす」とは、災難や不幸な出来事を活用し、良い出来事や幸福に変えることを意味します。
自分の身に降りかかる不幸や災難は、どうしても落ち込んだり悲しむだけで終わらせてしまいがちです。
しかし、一方から見れば不幸にしか思えない事でも、立場や考え方を変えてみると幸運であったり幸せなことであったりするのです。
一方に偏って考えず、災難や不幸もひとつの手段として活用し良い結果を生むという点が、「怪我の功名」と似ていると言えます。
「雨降って地固まる」【あめふってじかたまる】
喧嘩の後に仲直りをするたとえとしてよく使われる言葉ですが、「揉め事の後は、かえって基盤が安定し良い結果や状態を保てるようになる」という意味です。
揉め事自体は当事者間にとって不快で悪い出来事でも、それを経たことで更に結びつきが強くなったり絆を深めることがあります。
「怪我の功名」と同じで、その悪い出来事が偶然にも良い出来事と思える結果にしてくれたという意味を持つことわざです。
「失敗は成功の元」【しっぱいはせいこうのもと】
「失敗したとしてもそれをもとに反省や欠点を改めるため、その後の成功へと繋げることができる」という意味です。
よくこの言葉は良い意味だけ捉えられて「失敗しても良い」という勘違いを生み出していますが、違います。
単に「失敗しても良い」のではなく、「失敗をしてもその後の反省や原因追究によって失敗を繰り返さなくなり、結果、成功することに繋がる」ということが本来の意味であり、それが転じて「失敗は成功の元」ということわざとなりました。
「怪我の功名」と似通っていると言えます。
「怪我の功名」の使い方
ここまで解説を見て頂いてわかるように、誤用しやすいことわざのひとつです。
実際の例文を見て理解を深め、意味を履き違えないようにしましょう。
- 「怪我の功名」の例文1
- 「怪我の功名」の例文2
「怪我の功名」の例文1
「先輩の機械操作ミスによって、システムの重大なエラーが発覚したのは怪我の功名といえる」
職場や学校での出来事としてよく見受けられる光景です。
誰かが起こしてしまった失敗やミスによって、それよりももっと重大な損失や危険に気付く事ができ、回避できたということを「怪我の功名」という言葉を使って表現しています。
「その失敗がなければ恐らく気付く事がなかった」という裏側が見てとれます。
このように、はたから見れば失敗でも、最終的にはその失敗のおかげで成功や良い結果へ繋がった時に使うことのできることわざです。
「怪我の功名」の例文2
「財布を落としてしまったが、拾い届けてくれた人が音信不通の旧友だったとは怪我の功名である」
財布を落とすこと自体は全く良い事ではありません。
落とした本人にとっては一大事、財産も個人情報も失われ流出することとなります。
しかし、それがきっかけとなり自分ではどうすることもできなかった成功(ここでいう音信不通の友人との再開)が生まれます。
こういった、自分で意図して起こした良い結果でなくても「失敗(過失)があったけれど最終的には良かった」といえるような出来事を指して「怪我の功名」という言葉を使う事が出来ます。
「怪我の功名」の英語
様々な表現の英語が存在する中、日本人としても馴染みやすい表現をご紹介します。
“fortunate error”
“fortunate”とは幸運を意味する“fortune”の形容詞です。
“error”とはその読み方どおり、日本では主に間違いや失敗を意味する、外来語(カタカナ語)としてそのまま使用されます。
この“error”は、日本語の怪我という単語と同じように複数の意味を持つ単語です。
単なるミスや失敗以外にも、「道義的な過失」や「道徳上の誤り」という意味もあり、罪を示すこともあります。
先述したように、「怪我の功名」が過去の失敗や災難・過失がたまたま幸運をもたらすという意味であることを考えると、たくさんの英語表現がある中で語句の使い方や意味が似通っており、しっくりくる表現と言えます。
「怪我の功名」の反対語や似た対義語
- 「棚から牡丹餅」【たなからぼたもち】
- 「不幸中の幸い」【ふこうちゅうのさいわい】
- 「抜け駆けの功名」【ぬけがけのこうみょう】
「棚から牡丹餅」【たなからぼたもち】
「棚から牡丹餅」とはよく耳にすることわざで、偶然や幸運というところが似ているように感じますが厳密には意味が違います。
「怪我の功名」とは、自分が犯した過ちや失敗が偶然幸運と思える結果や成功に繋がることを指しますが、「棚から牡丹餅」は何もしていないところへたまたま幸運が舞い込むことを意味します。
幸運というのも、結果というよりは単なる嬉しい出来事であり、原因も無ければ因果関係もありません。
誤用しないよう注意しましょう。
「不幸中の幸い」【ふこうちゅうのさいわい】
これも、「怪我」から連想して勘違いしやすい類語です。
「不幸中の幸い」とは、「不幸な出来事の中で、せめてもの救いとなる幸運の部分」を指します。
不幸から幸運が生まれたわけでも、不幸を幸運に変化させたわけでもありません。
不幸だと思う中でせめて慰めになるとしたら、という不幸の一部分をポジティブに捉えたたとえです。
「抜け駆けの功名」【ぬけがけのこうみょう】
「怪我の功名」と勘違いして誤用する例として「抜け駆けの功名」をご紹介します。
同じような言葉に感じますが、「抜け駆けの功名」とは、戦で手柄をたてるために武士が持ち場をこっそりと離れ敵陣へ攻め込む行為が転じて、「抜け駆けをしてたてた手柄や成功」を表す言葉です。
「怪我の功名」が過失や失敗が偶然良い結果になるのに対して、「抜け駆けの功名」は手柄を狙って出し抜こうとする様子です。
混同して誤用しないように気をつけましょう。
いかがでしたか?
「怪我の功名」が、自分が知っていた通りの意味だったとしても、勘違いして理解していたとしても、深く理解頂けたかと思います。
成功するための行動自体なかなか難しいものがありますが、失敗や過ちだったと思っていた事が偶然良い事に転じた時にはぜひこの言葉を思い出して下さい。