「棚に上げる」の意味とは?類語、英語や使い方、例文を紹介!
その件については「棚に上げ」て、なんて、都合が悪くなるとすぐに言う人がいますが、なぜ、「棚に上げる」というのでしょう?
そういえば意味を考えたことがない、そもそも「棚に上げる」という言葉を聞いたことがない、という方は、この機会にぜひ一読ください。
目次
- 「棚に上げる」の意味とは?
- 「棚に上げる」の読み方
- 「棚に上げる」の英語
- 「棚に上げる」の使い方
- 「棚に上げる」の語源や由来
- 「棚に上げる」を使った例文・短文
- 「棚に上げる」の対義語
- 「棚に上げる」の類語や類義表現
- 「棚に上げる」に当てはまる慣用句・ことわざ
「棚に上げる」の意味とは?
「棚に上げる」とは、その人にとって不利益なことや不都合なことが起こったときに、そのことから背を向ける、問題を直視しないこと、知らん顔をする、触れずにおく、といった意味の言葉です。
よく「自分のことは棚に上げて」などと言いますが、これは、その人にとっての問題には向き合わず、人の欠点や問題ばかり指摘するときに使われています。
「棚に上げる」の読み方
「棚に上げる」は、「たな(に)あ(げる)」と読みます。
「棚」という漢字は、ほかに「ホウ」という読みを持ち、物を乗せるため、平らに板などをかけてある場所や、そのようなかたちをしたものを言います。
「棚に上げ」ておく、ということは、本来目の前に置いておかねばならない(直視しなければならない)物事を、見えない場所へ一時的、あるいは自然にその物事が消滅するまで放っておくことをいいます。
「棚に上げる」の英語
英語で「棚に上げる」をいいたいときには、“blind”という単語を覚えておくといいでしょう。
“blind”は和製英語のようにも使われており、日射しを除けるため、窓に取り付けられるブラインドを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
ブラインドをするように、目隠しするイコール、不利益なことから目を背ける、という意味に使うことができます。
「棚に上げる」の使い方
「棚に上げる」には、自分自身についていう場合もありますが、多くは他人に対して、「自分のことをまず省みなさい」と叱るときなどに使われます。
自分自身に対して使う場合には、自分の過ちや弱さをわかってはいながらも、なかなか改善できない、といった複雑な感情を表現することもできます。
「棚に上げる」の語源や由来
商売をしていくうえで重要なことのなかに、先読み、という能力があるように思います。
これは、この商品は今後、希少価値が出て値が上がるかもしれない、ということや、在庫過多になり、本来ならば叩き売りのようになってしまいかねないものを先に見越しておく、ということです。
そのようなとき、商売上、都合が悪いものを、一時的に棚の上のほう(ふだん使わない場所)に寝かせておくことがありました。
これが、「棚に上げる」という言葉の語源ではないか、といわれています。
「棚に上げる」を使った例文・短文
それでは次に、「棚に上げる」を使った例文を見ていきましょう。
具体例を読むうち、文脈の中でどのように使われる言葉か理解されていきます。
- 「棚に上げる」の例文1
- 「棚に上げる」の例文2
- 「棚に上げる」の例文3
「棚に上げる」の例文1
「彼は自分のミスを棚に上げ、部員全員の意識の低さを揶揄した」
ここでは部活動における、部員同士のことを例文としましたが、会社の中など、ビジネスシーンでもよくあることではないでしょうか。
自分の非を認めず、他人に厳しく当たる人というのは結果的に成長の機会を逃してしまっていることになります。
聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥、というように、いつまでも「棚に上げ」てしまっていては、そこまでの人、と思われてしまいかねません。
「棚に上げる」の例文2
「国民の期待を裏切るように、法案は棚に上げられた」
国民にとってありがたい内容の法案にかぎって、棚上げされてしまい、なかなか通らない、ということが多々あるように感じます。
ひとつひとつ、問題を解消し、国民に喜ばれる政治が当然、という社会になれば、こんなにいいことはありません。
「棚に上げる」の例文3
「自分にとっての弱点を棚に上げたまま勉強を進めていたため、試験の結果は芳しくなかった」
これが、自分自身への戒めをこめた「棚に上げる」の使い方の一例です。
都合の悪いことに背を向けていることを自覚してはいるものの、弱点を克服する努力、というのはできないことも多いものです。
しかし、それが自分の未来に対する障壁となり、何度もつまずくことになると予想されるのであれば、早い段階で「棚」から下ろすことが必要となりそうです。
「棚に上げる」の対義語
「棚に上げる」は、一旦おいておく、という場合と、自分の非を認めない、という場合の二つの側面から考え、それぞれの意味あいでの対義語をご紹介します。
- 「即決」【そっけつ】
- 「責任を負う」【せきにんをおう】
- 「けじめをつける」【けじめをつける】
「即決」【そっけつ】
その場ですぐに判断を下すことを意味します。
「棚に上げる」では、「棚に上げ」ておくことを決めているのだ、ということもできなくはないですが、その場でははっきりと判断せず、曖昧に濁す、というニュアンスを含んでいますので、「即決」は対義語といえるでしょう。
また、「即断即決」という四字熟語もあり、こちらもその場ですぐに決断する、という意味の言葉です。
「責任を負う」【せきにんをおう】
今度は自分の非を認めない、という意味における「棚に上げる」の対義語として、「責任を負う」という言葉を挙げておきます。
「責任を負う」は、ほかの言葉で言えば、「白状する」「自首する」といった、過ちに対するものも含みますが、「棚に上げる」では、取り返しのつかない犯罪レベルのものというよりも、性格のいびつさや、能力上の弱点、偶発的なミスなどについていわれることが多いので、そこまで重い言葉になると、対義語とするのは苦しいでしょう。
「けじめをつける」【けじめをつける】
「責任を負う」とは似た言葉になりますが、白黒つけることや、自分の犯したミスについて、誰の目にも明らかなように責任をとること、という意味で使われています。
自分のミスを人のせいにせず、自分の責任をまっとうすること、という意味の言葉が、「棚に上げる」の対義語に当たることがわかりますね。
「棚に上げる」の類語や類義表現
今後は対義語ではなく、「棚に上げる」の類義語、類語表現を見ておきましょう。
「棚に上げる」という言葉では伝わりにくいときや、「棚に上げる」という言葉がよくわからない、という場合には、類語をあわせて覚えておくと便利です。
- 「保留」【ほりゅう】
- 「責任転嫁」【せきにんてんか】
- 「猶予」【ゆうよ】
「保留」【ほりゅう】
「ほりゅう」と読み、その場では物事の結果を出さないこと、決断を下さないこと、そのままにしておくこと、という意味の言葉です。
よく似た言葉に、漢字を逆にした「留保」という言葉があり、こちらも「棚に上げる」の類語といえます。
どちらも、決断をすぐに下さない、というところが「棚に上げる」と同じような意味で使われていますが、自分のミスには目を背ける、という意味は含まれません。
「責任転嫁」【せきにんてんか】
自分の犯した過ちを誰かのせいにして罪をなすりつけること、自分が負うべき責任を誰かに負わせること、といった意味の言葉です。
「責任を転嫁する」のようにも使われます。
ここでは「棚に上げる」の、自分の問題や都合の悪いことから目を背ける、という意味に対しての類語となり、決断をすぐに下さない、曖昧にしておく、といった意味はありません。
「猶予」【ゆうよ】
日時を延ばすこと、ぐずぐずと決断を引き延ばすこと、という意味があります。
法律用語にも「猶予」というのがありますが、ここでは単に、決断や実行を先延ばしにすること、という意味での「猶予」を扱っています。
「猶予」には「保留」と同じく、過ちに背を向ける、といった意味は含まれていません。
「棚に上げる」に当てはまる慣用句・ことわざ
最後に「棚に上げる」と似た意味を持つ慣用句やことわざを見ておきましょう。
昔から自分のことを「棚に上げ」ておく人というのは案外、多かったのかもしれませんね。
- 「医者の不養生」
- 「我が身の臭さ知ることなし」
「医者の不養生」
人の健康について諭す医者にかぎって、忙しくて養生を怠る、というところから、他人にはあれこれと口やかましくいう人にかぎって、その人はそれに見合う行動をとっていない、という意味の言葉です。
「言行不一致(げんこうふいっち)」ともいいます。
「我が身の臭さ知ることなし」
加齢臭や汗のにおい、口臭など、自分では気づかないままに悪臭を放っている、ということが人には往々にしてありますが、そこから、他人の欠点や弱点、失陥には敏感な人であっても、自分の欠点にはなかなか気がつかない、という意味の言葉です。
あまり使うことのない言葉ですが、とても意味のわかりやすい言葉ですので、ぜひ覚えておきましょう。
「棚に上げる」とは、不利益や不都合なことから目を背けること、という意味の言葉だとわかりました。
不都合なことこそきちんと向き合い、「棚に上げる」ことなく、そのときそのときの課題をクリアしていくことで、人間力を高めていきたいものですね。