「弓を引く」の意味・読み方・英語【使い方や例文】
「弓を引く」という慣用句は、使い所が難しいと表現の1つです。
ここぞというタイミングで使うもので、その機会もそうあるものではありません。
目次
- 「弓を引く」の意味とは?
- 「弓を引く」の語源
- 「弓を引く」の使い方
- 「弓を引く」を使った例文と解釈
- 「弓を引く」を英語にすると?
- 「弓を引く」の類義語や言い換えられる表現
「弓を引く」の意味とは?
「弓を引く」とは、誰か(もしくは団体)に対して反逆することを表します。
最初から敵対関係にある場合や、無関係の間柄からいきなりそのような形になってしまった場合には使わず、友好関係、もしくはそれに近い間柄から敵に回ることになった際に使います。
自らが望んでそうなった場合と、意図せずにそのようになってしまった場合のどちらにも使うことができ、前後の文脈からその区別が付きます。
- 「弓を引く」の読み方
「弓を引く」の読み方
「弓を引く」は「ゆみをゆく」と読みます。
そのままなので、読み間違えることはないでしょう。
しかし、慣用句だということを意識すると、「弓」を無理に「きゅう」と読んでしまうようなことがないとは言えないので、ごく普通の日本語の文章の一部だと考えればいいでしょう。
「弓を引く」の語源
「弓を引く」の語源は、弓という武器を味方側だった人や団体に対して引く(攻撃の準備をする)様子からです。
弓は、矢をつかえて引いて後に、離すことで初めて攻撃になります。
その為、この「弓を引く」という表現を使った時点では、その対象の不利益にまでは至っていない(実害までは出ていない)状態とも解釈できますが、実際には既にかなりの不利益を与えている状態でも使う言葉です。
「弓を引く」の使い方
「弓を引く」という慣用句を使う状態は、いわゆる「裏切り」があったケースが多いと言えるでしょう。
元々そのようなことに対して使う為の慣用句で、そこまではいかなくても、それと似たケースでないと使わない表現です。
つまり、「弓を引く」という表現が出てきた時点で、穏やかな話ではないことがほとんどだと言えるでしょう。
「弓を引く」を使った例文と解釈
「弓を引く」を使った例文をいくつか挙げて、どのようなシチュエーションで使っているのかを見ていきましょう。
どれも、使い方としてよく見る例となっています。
- 「部下が会社を辞めて独立し、こちらに弓を引く存在になってしまった」
- 「弓を引くつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったのは否めない」
- 「あれだけ世話になっていたくせに、この場になって突然弓を引くとはどういうことだ?」
「部下が会社を辞めて独立し、こちらに弓を引く存在になってしまった」
退職後に独立して、個人で同業を始めた、もしくは競合していた会社に入社したというケースです。
業界によってはこのようなことは日常茶飯事だと言えますが、仁義的な部分も多少は考えないと、自分自身が困ることになるかも知れません。
同業での独立や同業他社への転職は、言ってしまえば裏切り行為です。
特にそのような転職を繰り返していると、キャリアアップどころか、いつ裏切るか分からない人だと思われてしまう可能性があります。
「弓を引くつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったのは否めない」
お世話になった人に対して、結果的にその人の商売敵や、悪影響を与える存在などになってしまったといったケースを表現しています。
意図せずに「弓を引く」ことになったという場合の使い方として、いい例だと言えるでしょう。
「あれだけ世話になっていたくせに、この場になって突然弓を引くとはどういうことだ?」
突然の裏切りに対しての怒りの例文です。
「弓を引く」の意味として、一番使い方として適当だと言える例になります。
かの戦国時代にはそのようなことは当たり前だったと言われていますが、現在ではあまり褒められた行為ではありません。
どんな事情があるにせよ、裏切り者だと思われてしまうのは避けられないでしょう。
「弓を引く」を英語にすると?
「弓を引く」を英語で表現すると、“draw a bow”となります。
ですが、これでは本当に「(弓道などで)弓を引く姿」になってしまいます。
意図する意味の「裏切り」は、英語では“betray”ですが、こちらだと今度は「裏切り」そのものを表す単語なので、慣用句としてのニュアンスが全くありません。
そこで、“sell out”というスラングを使います。
これは、直訳では「売り払う」となりますが、そこから転じて、日本語の慣用句の「弓を引く」に相当する使い方ができるのです。
よって、この表現が一番「弓を引く」の英訳として適当です。
「弓を引く」の類義語や言い換えられる表現
「弓を引く」を他の表現で言い換える場合に使える慣用句や言葉をいくつか紹介していきます。
「弓を引く」は多少堅い表現になるので、これらの方が使いやすいこともあり、実際にも使っている場面をよく目や耳にします。
- 「敵に回る」【てきにまわる】
- 「反旗を翻す」【はんきをひるがえす】
- 「弓を絞る」【ゆみをしぼる】
- 「後足で砂をかける」【うしろあしですなをかける】
「敵に回る」【てきにまわる】
「弓を引く」の意味そのままですが、一番分かりやすく、ごく普通に使える言葉です。
しかし、表現的にもそのままで、オブラートに包むようなところが一切ない為、はっきりとそういう状態になる(なった)時にこそ使った方がいいと言えますが、「弓を引く」より目にすることが多い言葉です。
「反旗を翻す」【はんきをひるがえす】
こちらもよく聞く言葉で、より一層裏切ったというイメージが強い表現になります。
「弓を引く」より具体的にそれが分かっているケースで使うことが多く、この表現が出てきた時には、相手は完全に敵という存在になったと考えることができます。
「弓を絞る」【ゆみをしぼる】
弓に対して「絞る」とは、「引く」を同じことを表現します。
よって、これも「弓を引く」と同様の意味の慣用句として使える表現ですが、実際に目にすることはあまりありません。
この表現では、慣用句として使っているのかが分からないことも多いので(本当の「弓を引く様子」だと思われてしまうことがあります)、あまり用いることはないでしょう。
「後足で砂をかける」【うしろあしですなをかける】
本来は、去り際に何らかの裏切り行為があった場合に使う表現ですが、後から裏切りに相当する行為があった時にも「弓を引く」と同様に使われます。
「今になって後足で砂をかけてきた」などと使われる場合がそれで、厳密には誤用ですが、普通に意味が通ってしまうので、現在ではこのような使い方をしても構いません。
「弓を引く」ようなことはしないに限りますが、どうしてもそうなる(なってしまう)場合には、相応(それによって、自身や相手にどれくらいの影響を与えてしまうのか)の覚悟をもって行うべきだと言えるでしょう。