「荏苒」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
人間は楽な方に流されていく生き物ですし、なるべくなら面倒臭い事や疲れてしまう事はしたくないものです。
またしなければいけないことがあっても引き延ばしたり、結局振り返ってみると無駄な時間を過ごしていたなんて経験をした事がある方も少なくないと思います。
そんな状態の事を「荏苒」と言いますが、大変難しい言葉なので聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。
今回はこの言葉にはどのような意味や使い方があるのかを詳しくみていきたいと思います。
目次
- 「荏苒」の意味とは?
- 「荏苒」の類語や言い換え
- 「荏苒」の使い方
- 「荏苒」を使った例文
- 「荏苒」を使った言葉
- 「荏苒」の由来・語源
「荏苒」の意味とは?
- 「荏苒」の読み方や意味
「荏苒」の読み方や意味
「荏苒」は【じんぜん】と読み、何もせず過ごしてしまうことや、何の身にもならないままに時間が過ぎていく事をいいます。
または草木が生い茂げるくらい物事を先延ばしにして結局何もせずに過ごす事を言います。
つまり積極性ややる気がなく同じ状態がずっと続くことを表しています。
「荏苒」の類語や言い換え
「荏苒」と完全に同じ意味はありませんが、同じようなニュアンスのものや意味合いを持つ言葉があるのでご紹介したいと思います。
「荏苒」自体があまり普段使う言葉ではないので、ご紹介する言葉がより「荏苒」の意味を深めてくれるかもしれません。
- 「油を売る」【あぶらをうる】
- 「怠ける」【なまける】
- 「覇気がない」【はきがない】
- 「不精/無精する」【ぶしょうする】
「油を売る」【あぶらをうる】
油を売るとは元々は無駄話をして時間を費やす事や、仕事を怠ける事を言いますが、現在では寄り道をしたりちょこちょこと自分の為に肝心な事を差し置いて時間を使う事をいいます。
《さぼる》という意味で使われますが、時間を無駄に遣う、しなければいけない事をせず違うことに遣うという意味合いが「荏苒」の意味と近いのではないでしょうか。
そもそも油を売ると言う言葉は江戸時代にできたもので、昔の油は柄杓で掬いにくく、お客さんが油を買いに来てもなかなか分けてあげることができずその間会話をして間を取り持ったと言われています。
油谷からすれば接客をしていただけなのですが、その会話をする姿が他人から見れば仕事をしておらずサボっていると思われてしまっていた事から油を売ると言う言葉ができたと言われています。
- 「上司にどこで油を売っていたのかと問い詰められた」
- 「油を売っていた訳ではないのですが、どうしても急に動けない無理な事情がありました」
など。
「怠ける」【なまける】
怠けるとは身近な言葉なので難しくないとは思いますが、意味はさぼってやるべき事をしない、なすべき事に努めずズルズル手を抜く、大切な時間をしなければいけない事をせず粗末にする事を言います。
「荏苒」には草が生い茂るという意味があると述べましたが、怠けていると当然手入れをしようともしませんし、時間に任せて放っておくでしょう。
その事からも「荏苒」と近い意味合いになるのではないでしょうか。
- 「痩せたいと言う割には全く努力をせず、好きなだけ食べ運動を怠けている」
- 「怠けたばっかりに自分だけ衣裳が安っぽくなってしまった。自業自得ではあるけれど非常に情けなく恥ずかしい」
など。
「覇気がない」【はきがない】
前向きな気持ちや、進んで物事をやろうとする姿勢などがない事をいいますます。
また元気がなく暗いイメージを与えたり、やる気や活気がなく雰囲気もどんよりしている人の事を表す時に使います。
「荏苒」と同じ意味ではありませんが、「荏苒」状態になっている時は、覇気がない場合が多いのではないでしょうか。
ハツラツと前向きな時は時間を無駄にせず過ごし有意義なものにすると思います。
つまり直接的な意味は同じではないですが、「荏苒」状態も「覇気がない」状態も同じような時間の過ごし方をしていると言えるでしょう。
- 「彼はあまりにも覇気がない為、人に会わない部署に移動させられた」
- 「若いのに覇気がないのは心配になる」
など。
「不精/無精する」【ぶしょうする】
何かをする事が面倒臭く怠けたり、自ら進んで体を動かしたり物事に取り組もうという姿勢がみえない状況の事をいいます。
また身だしなみにも興味がなく無頓着で、清潔感がない場合もあります。
- 「筆不精な夫が結婚記念日に手紙をくれて嬉しかった」
- 「あまりにも病院に行く事を不精にしすぎると、病魔が進行してしまいますよ」
など。
「荏苒」の使い方
「荏苒」とはあまりいい意味では使われません。
何もせずに時間を無駄に遣い、結局何も身につかなかったという状況をいうので、逆に褒められる生活態度をしている状況には使わない言葉になります。
また何かすべき事を延ばして誤魔化している時にも使います。
大変難しい言葉なので、日常的に使うものではありませんが、本や新聞等のように活字ではよく出てくる言葉なので、どのような意味を持つかは知っておいた方が良いでしょう。
「荏苒」を使った例文
- 「荏苒」の例文1
- 「荏苒」の例文2
- 「荏苒」の例文3
- 「荏苒」の例文4
- 「荏苒」の例文5
「荏苒」の例文1
「ここにきてからずっと、荏苒と過ごしていて現実がわからなくなっている」
「荏苒」の例文2
「このままどこにもいかず、荏苒と毎日を送りたい」
「荏苒」の例文3
「はたからみていると、あの人は毎日荏苒としながら暮らしているようにおもう」
「荏苒」の例文4
「そんな荏苒と過ごしていたら、あとになって後悔する事になるよ」
「荏苒」の例文5
「予定もなくフラッと荏苒一週間ほど旅行をしにきた」
「荏苒」を使った言葉
- 荏苒時を過ごさず
- 荏苒として
- 荏苒のまま
荏苒時を過ごさず
荏苒時とは、だらだらとやるべき事をせずに時間だけが過ぎる事をいいます。
この言葉はそんな時間は許していけない、過ごしてはいけないという意味になります。
時間には限界があり、誰にでも平等で公平だからこそ大切にしなければいけないという意味になります。
荏苒として
荏苒としての後には「今日に至る」や、「その時を迎える」などといった時間の流れを表す言葉が入ります。
何もせずに過ごした時間を振り返ったり、流れ的にそうなってしまったというような意味合いがあります。
荏苒のまま
荏苒のままとは、この言葉の後に「過ごしている」や「時間が経つ」という言葉をつけて遣う言葉になり、現状があまりはかどっておらず時間がかかっていることを表しています。
物事が延び延びになりなかなか目的や目標に辿り着かず、やる気もなくのらりくらりと日々を過ごしている状況を表しています。
つまりその状況が長い間続いていたり、これからも続いていく可能性があるときにこの言葉を使うことが多いと言えるでしょう。
「荏苒」の由来・語源
「荏苒」の「荏」は音読みで【ジン・ニン】、訓読みで【エ・やわらかい】とよみ、シソ科のエゴマの事を言います。
エゴマは漢字で「荏胡麻」とかき、最近再び注目されだしましたが、実際には縄文時代に発見されており、食べると10年長生きできると言われているほど、非常に栄養価の高い油分を含む植物になります。
また大変柔らかく薄いので食べやすいのが特徴です。
また「苒」という漢字は音読みの【ゼン】以外、訓読みはありません。
この漢字には草木が生い茂るという意味や植物が伸びざらしという意味があり、他には「荏」と同じように柔らかく弱いという意味があります。
つまりこの「荏苒」という漢字はどちらにも《柔らかい》という意味があり、柔らかい=ふわふわしているという意味になり、目的もなく時間だけが過ぎていく事や、草が生い茂るように、時間を放ったらかしにしている事を表す言葉になります。
またこの「荏苒」という言葉は漢字の意味からだけではなく、音のイメージからできたとも言われています。
「荏苒」は難しい言葉ではありますが、知っておく事でいざという時には役に立つのではないでしょうか。