「膂力」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
何事においても、力ずくで話を進める人というのはあまり感心されません。
かといって、まったくないとないで困るのが力というものではないでしょうか。
「膂力」といわれてもピンとこない、という方もいらっしゃることと思いますが、力というものはつねに、ないよりはあるに越したことはありません。
力は武器になることもありますが、大切な人やものを守るためにも使うことができるのです。
ここではあまり聞き慣れない「膂力」ということばについてご説明します。
目次
- 「膂力」の意味とは?
- 「膂力」の似たことばや類語・言い換え
- 「膂力」の使い方
- 「膂力」を使った例文
- 「膂力」の「膂」とは?
- 「膂力」を使ったことば
「膂力」の意味とは?
筋肉の力や腕力のことを意味しています。
腕の、特に上腕の力を指すことから、転じて人力で行う作業などを表すこともあります。
「膂力搬送」といえば、自動車など機械を使うのでなく、人力で、人が腕を使って、担いで理抱えたりしてものを運ぶことを意味しています。
- 「膂力」の読み方
「膂力」の読み方
「りょりょく」と読みます。
常用漢字ではありませんが、「膂」にはほかに、「ロ」「せぼね」「ちから」などの読みがあります。
常用漢字の範囲内にある、「力」には「リキ」「ちから」「つと-める」などの読みがあります。
「力」は多くの方が知っており、小学校でも低学年のうちに学ぶ漢字ですね。
「膂力」の似たことばや類語・言い換え
「膂力」は、筋肉の力、特に腕の筋肉を意味することばです。
類語や似たことばということは、筋肉の力の強さなどを言い表すことばですね。
どのようなものが浮かびますか?
例に挙げて紹介します。
類語がわかるとよりことばの理解が深まりますので、ぜひいっしょに覚えてください。
- 「腕っぷし」【うでっぷし】
- 「鉄腕」【てつわん】
「腕っぷし」【うでっぷし】
腕力を意味することばです。
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「膂力」は筋肉のなかでも特に、腕の筋肉を意味しますので、類語といえるでしょう。
「腕っぷしが強い」というのと、「膂力がある」というのはよく似た表現である、といえます。
「腕っぷし」はそもそも、「腕節」という、腕の関節を意味することばから来ています。
漢字で書くならば、「腕っ節」「腕節」となります。
「お前に膂力があるのはよくわかるが、腕っぷしに自信があるならなおさら、けんかで勝ち負けを決めるような男になっちゃいけないよ」
例文を挙げておくと、このように使うことができます。
「鉄腕」【てつわん】
「鉄腕アトム」や「鉄腕ダッシュ」など、耳にすることはままあることばです。
鉄のように強い腕力、という意味で、このことばも力のなかで特に腕力に重きを置いている、という点で似通っています。
「膂力」には、強さを決めることばが付随して使われます。
「膂力」があるのか、ないのかで、ずいぶんと意味が違ってきます。
「鉄腕」は、はじめから腕力が強い、という意味ですので、そこは「膂力」と異なる点といえます。
「彼ほどの鉄腕投手なら、プロ野球界を先導する逸材になるだろう」
このように、「鉄腕〇〇」というかたちでよく使われます。
「膂力」の使い方
「膂力がある」「膂力を〇〇する」など、使い方は多岐に渡ります。
わかりにく場合は、「膂力」の「膂」の字を一旦、置いておいて、「力」ということばがどんなふうに使われているか考えるとわかりやすいでしょう。
「力がある」「力を使う」となれば考えやすいですね。
「膂力」では、特に腕の力を意味しますので、そこを加味しながら使い方を考えるといいですよ。
以下に例文がありますので見ていきましょう。
「膂力」を使った例文
「膂力がある」「膂力を〇〇」する、というかたちがあると紹介しましたので、その型にはまる例文を紹介します。
複雑に見えてもこのどちらかに分類できる場合もあるので、そのあたりも気をつけて見ていくと、ほかのことばで壁に当たった際にも応用がきくようになります。
- 「膂力」の例文1
- 「膂力」の例文2
- 「膂力」の例文3
「膂力」の例文1
「初めて会うそのボクサーは、寡黙な男だとは聞いていたが、黙っていてもなお膂力を感じさせる男である」
「膂力を〇〇する」のかたちで使われています。
「膂力を感じさせる」ということで、実際にその「膂力」が振るわれたわけではないが、相手がそれだけの実力を備え持っているであろう、という推察が伝わります。
見ただけでわかるということは、ずいぶん屈強な男である、ということがうかがえますね。
「膂力」の例文2
「今でこそ、それだけが全てでないことはわかるが、膂力と武力が崇拝された時代があった」
「膂力が〇〇される」という使い方ですね。
受け身のかたちで使われていますので、「膂力を崇拝する」と言い換えることもできます。
こうなると、「膂力を〇〇する」のかたちともいえますね。
「膂力と武力」ですから、人そのものの腕っぷしの強さに加え、武具や武器を使用した、戦闘力の総称になります。
強いことがよしとされた戦乱の時代は、「膂力と武力」が重要だったのでしょう。
「膂力」の例文3
「専門的な知識もじゅうぶんにあるが、それだけではなく膂力も兼ね備えているところが彼のほかとは秀でたところといえるだろう」
ほかのものに加え、「膂力も」持っているということですので、「膂力も〇〇する」のかたちになります。
こちらは単純に「膂力がある」ともいえますし、「膂力を兼ね備えている」、つまり「膂力を〇〇する」のかたちでもあるといえます。
「膂力」の「膂」とは?
「膂」とは、背骨そのものや背骨の肉、あるいは背骨の力、を意味する漢字です。
「旅」が体を表す「月」の上に乗っかっている文字ですが、「旅」は音の記号としてあるため、漢字の意味には関わっていません。
「膂」そのものは背骨を意味しますが、「膂力」となると、腕を使って持ちあげたり抱えたりする力を意味するようになります。
昔ですと荷物を運ぶときなど、棒に荷物を提げ、その棒を一人または二人で担いで運ぶということをしていました。
特に腕の力が必要となる場面が多かったことから、単に「力」というだけでなく、「膂力」ということばが生まれたのでしょう。
「膂力」を使ったことば
「膂力」ということば単体での意味や例文を見てきましたが、「膂力」が使われたことばもありますので、そちらも見ておきましょう。
あまり聞くことのないことばですが、知っていると使えるシーンもあると思いますので、ぜひ覚えておいてください。
- 「膂力衆にまさる」
- 「膂力衆にすぐれ」
「膂力衆にまさる」
「膂力」と「衆にまさる」のあいだに読点を入れると読みやすくなります。
「膂力、衆にまさる」ということですね。
多くの人間が束になって相手取ってもなかなか勝てないほどの腕っぷしを持つ人のことを言います。
「膂力衆にまさるあの男は、酔うと暴れるため、人々に敬遠されていた」
「膂力と武力」がよしとされた時代には、力のあるのをいいことに暴虐の限りを尽くす、そんな男がいたのかもしれません。
「膂力衆にすぐれ」
こちらも、「膂力、衆にすぐれ」と読点を入れることでわかりやすくなります。
基本的にはさきほどの「膂力衆にまさる」と似た意味を持ちます。
「膂力衆にすぐれ、剣術の試験では始まる前から、相手がたがたと膝を震わせたという逸話も残っている」
「膂力衆にまさる」もですが、どちらのことばにもマイナスイメージはありませんので、ポジティブにもネガティブにも使えることばになります。
「膂力」とは筋肉の力、特に腕力を表すことばだとわかりました。
「膂力」がすべてという時代ではありませんが、やり遂げたいこと、守りたいものがあるときに、踏ん張りがきくかどうかを試されるものではあるでしょう。
間違っても大切なものを感情的に壊したり傷つけることはしたくないものです。
生きていくのに必要な、そして大切にしたいものを守りきれるだけの「膂力」がある人は、とても素敵なのではないでしょうか。