「慮る」の意味とは?類語、使い方や例文、反対語を紹介!
「慮って」と言われても、ピンとこない、というときありますよね。
漢字の読みで「ぱ」が入るものも珍しいですし、ぱっと聞いて意味がわかりません。
ここでは、「慮る」ということばについて、意味や類語、対義語などを、例文とともにご説明します。
目次
- 「慮る」の意味とは?
- 「慮る」の類語や言い換え
- 「慮る」の使い方
- 「慮る」を使った例文
- 「慮」を使ったことばを解釈
- 「慮る」の反対語や似た対義語
「慮る」の意味とは?
「慮る」は、「よく考えることや」、「考えや思いをめぐらせること」、「熟慮すること」という意味です。
あれこれと思いをめぐらせ、深く考えたり、はかりごとを立てる、というときに使われる言葉です。
「配慮」などということばにも使われていることからもおわかりになるでしょう。
- 「慮る」の読み方
「慮る」の読み方
「慮る」は「おもんぱかる」と読みますが、これはもともとの読みの音便のかたちになります。
そもそもは、「オモヒハカル(おもいはかる)」つまり「思いはかる」だったのが、音の変化とともに、「オモンバカル」などと変遷を経て、現在では「オモンパカル」という読みに落ち着いています。
「思いはかる」というもともとの読みからも、思いをめぐらせること、はかりごとを立てる、という意味が理解できますね。
このように、意味のわからないことばが出てきたときには、熟語を分解してみたり、今回のようにことばの成り立ちを考えるとよいでしょう。
「慮る」の類語や言い換え
それでは、「慮る」の類語や言い換えの表現を見ていきましょう。
使いづらさを感じていることばほど、ほかの表現を知ることでぐっと身近に迫り、より深く理解できる、ということがあります。
また、「慮る」と類語表現との異なる点についても見ていくことで、適切な言語表現に繋がるでしょう。
- 「思いやる」【おもいやる】
- 「忖度」【そんたく】
- 「腐心」【ふしん】
「思いやる」【おもいやる】
よく聞く表現ではないでしょうか。
「職場環境にも慣れてきて、ようやく周囲を思いやる余裕が出てきた」
このように、「思いやる」ということばは、だれかに対し、同情したり、気を遣ったりすることを言います。
つまり、相手ありきのことばです。
「慮る」は、周囲のことを考え、自分がどう動くと、周りはどんなふうになるか、深く想像することを言います。
ですので、相手の気持ちを配慮する、という「思いやる」とはすこしちがいがありますね。
しかし、どちらも気にかける、という点では似ている表現であると言えるでしょう。
「忖度」【そんたく】
2017年の流行語大賞にもなり、すっかりネガティブな印象が定着してしまった「忖度(そんたく)」ということばですが、本来はネガティブなことばではありません。
これは、他人の気持ち、心中、考えを推しはかることを意味することばです。
また、推察、ということもできます。
つまり、「忖度する」というのは、気持ちを推察する、というところから、相手などが心のなかに留めている本音、本心を察する、ということを示します。
「最近、五年も付き合っていた彼女と別れたと聞いて、仲間内では中川に忖度し、飲み会を開くことにした」
このようなかたちで使われます。
相手の本音を察する、というところが、「慮る」とはすこし異なりますね。
「腐心」【ふしん】
「腐る」という字を使いますが、こちらも決してネガティブなことばではありません。
「腐」は腐ることのほかに、男子の去勢刑や、古くなり役に立たないこと、そして、心を痛める、という意味があります。
心を痛める、というところから、「腐心」とは、なにかものごとを成し遂げたいと思い、心を砕いて苦心することを言います。
「父兄から理解を得るため、日夜腐心している」
このように、非常に困難を極めるが、かならずやり遂げたいことのために、心を痛めることを言います。
さまざまに思いをめぐらせ苦心する、という点では「慮る」と類似していますね。
「慮る」の使い方
ここまで意味や読み、類語表現を見てきましたが、実際に「慮る」はどのように使われるのでしょう。
「慮る」は、なにか行動を起こしたい、という場合に、周囲で起こりうる支持、非難、反発などを事前に想像し、相手の気持ちを思うことを言います。
ですので、「〇〇の気持ちを慮る」「〇〇となることを慮る」というように使うことができるでしょう。
「慮る」を使った例文
「奔放なのは悪いことではないが、伊達さんはもうすこし、他人を慮ることを覚えてほしい」
「課長が二次会を辞退したのは、我々新人にむやみに気を遣わまいと慮ってのことだろう」
このように、主となる人が、従となる人に対し、慮ること、また慮らないことを表すことができます。
恋人や夫婦の間柄で、「あなたはもうすこしわたしのことを慮ってほしい」と言われればそれは、すこし配慮が足らない、ということになってしまいます。
「慮」を使ったことばを解釈
ここでは、ほかに「慮」の字を用いたことばをいくつか紹介します。
日常に使われていることばばかりですので、この機会に意味や使い方をマスターし、語彙を増やしましょう。
日本語はとてもデリケートで、一文字の差が意味の大きな変化に繋がることもあります。
適切に覚えて、美しい日本語を楽しんでくださいね。
- 「遠慮」
- 「不慮」
- 「熟慮」
「遠慮」
「ぼくは遠慮するよ」などよく使うことばです。
「遠慮」とは、江戸時代には士分や僧に対する刑罰のことを言いました。
門をとざし、昼間の出入りをさしひかえさせる刑でした。
これは現在では使われていない意味になります。
今では「遠慮」は、他人に対し、言動をひかえめにすることを意味しています。
「篠山教授をさしおいてスピーチをするというのは遠慮したい」というように、ものごとに思いめぐらし、想像した結果、自分から遠ざける、もしくは遠ざけたいという意思を持つ、ということになります。
「不慮」
「不慮」は、思いがけないこと、不意なこと、特に思いがけず起こる不幸なできごとを意味しています。
「不慮の事故で恩師をうしなった」
というように、思いをめぐらすことのできない、想像のつかないできごとに対して、「不慮」ということばが使われています。
「熟慮」
「熟慮」は、よく考えをめぐらせることを言います。
これでは「慮る」と変わらないようですが、さらに深く想像する、というのが「熟慮」の特徴と言えます。
また、「熟考」ということばがあります。
こちらも、よく考えることを意味していますが、「熟考」を重ねたものが「熟慮」という理解をするとわかりやすいでしょう。
「熟考に熟考を重ね」て出した結果を、「熟慮の末」と表現すると、ずいぶん苦心したのだ、と相手に伝わることでしょう。
「慮る」の反対語や似た対義語
ここまで「慮る」について見てきましたが、「慮る」の対義語となると、なにが挙げられるでしょう。
これは、慮ることができない、ということを表します。
ですので、「無神経」や「無遠慮」、「デリカシーがない」、「空気が読めない」などが挙げられます。
人の感情の機微や本音を察することができず、表面的な部分だけを見ていると、このように言われてしまいます。
特に日本では、「空気が読める(場の雰囲気にあわせ、時に取り繕う)」ことが美徳とされる風習が今でも色濃くあります。
自分のことはなかなか客観視できないものですから、自分がいくら慮っていても相手に伝わらない、という悲しい齟齬が生じないようにしたいものです。
「慮る」とは、なにかものごとを起こすときに、周囲で起こりうるさまざまなことに思いをめぐらせ、想像することでした。
また、よく似た意味を持つ言い回しや対義語についても紹介しましたね。
相手が知らないことやできないことがあっても、事情を慮り、お互い様の精神でものごとを進めていくことができれば素敵です。