「やり過ごす」の意味とは?類語、使い方や英語を紹介!
日本語には、四字熟語やことわざ、故事成語など様々な言葉があります。
実際にあった出来事から戒めや教訓として語り継がれる言葉には、人間の特徴や癖がよく表れており有無を言わさず感心させられる力があります。
しかし、普段何気なく使っている言葉にも、生活の知恵や意外な気づきが隠れていることもあります。
例えば今回ご紹介する「やり過ごす」という言葉。
正しい意味や使い方をマスターし、知識としてだけでなく知恵としても役立ててみましょう。
目次
- 「やり過ごす」の意味とは?
- 「やり過ごす」の類語
- 「やり過ごす」の使い方
- 「やり過ごす」の英語
- 「やり過ごす」の反対語や似た対義語
「やり過ごす」の意味とは?
私たちの普段の生活のあらゆる場面で「やり過ごす」が使われていますが、使っているほとんどの人はなんとなく意味を察して使っているのではないでしょうか。
この言葉には、実は3つも意味がある事を知っていますか?
「やり過ごす」の3つの意味とは、「後から来たものを先に行かせる」、「なすがままに放置する」、「限度を超えてやりすぎる」です。
- 「やり過ごす」の1つ目の意味
- 「やり過ごす」の2つ目の意味
- 「やり過ごす」の3つ目の意味
- 「やり過ごす」の読み方
「やり過ごす」の1つ目の意味
後から来たものを先に行かせるとはまるで譲っているかのような印象がありますが、少し違います。
2つ目の意味も少し含まれていますが、自発的に譲るというよりも、見逃すに近いニュアンスです。
動き続けるものが自分を抜き、自分より遠くへ動いていく様子をただ見つめているという意味合いです。
例えば電車を思い浮かべてみましょう。
電車は始発から終電までの間、決められた時間内に何本も運行しています。
もし自分が乗ろうと思っていた電車が混んでいる様子だったなら、時間や予定に余裕がある場合そのまま満員電車が通り過ぎて次の空いた電車が来るのを待つ人が多いはずです。
この時に満員電車が通り過ぎていくのを良しとする表現を「やり過ごす」と表現します。
自分の後から来たものが成行きのままに先に進んでいくのを傍観するということです。
「やり過ごす」の2つ目の意味
2つ目の意味として挙げられるのは「なすがままに放置する」というものです。
これが表現として使われるのが一番多く、一般的に最も浸透している意味合いと言えるでしょう。
物事に対して自分が積極的に関わることをせず放っておくということを意味しています。
例えば、日本にある四季というのは必ず移り変わっていきますね。
夏の暑さも、感じているうちは非常に不快で早く涼しくならないかと願うものですが、夏はいつか終わり秋が訪れて涼しくなります。
この四季のように、自分が特別何かしなくても変化していく物事がたくさんあります。
「いつか終わる」「いつか変わる」「いつか治まる」と変化する物事に対して、特に手立てをするわけではなく身を任せておく、ということを「やり過ごす」と表現します。
「やり過ごす」の3つ目の意味
この3つ目の意味は知らない方がほとんどではないでしょうか。
「やり過ごす」には、「限度を超えてやりすぎる」という意味もあります。
つまり、「やり過ぎる」ですね。
「過ぎる」という言葉には、物事が一方から他方へ移ることに加え、度を超して終わるという2つの意味が含まれています。
「やり」と組み合わさることで、やることが度を超しているという意味の「やり過ごす」や「やり過ぎる」と表すことができます。
「やり過ごす」の読み方
そのまま、「やりすごす」と読みます。
漢字で表す場合は「遣り過ごす」や送り仮名をつけずに「遣り過す」と書きます。
「やり過ごす」の類語
「やり過ごす」には3つも意味があるなんて、驚きですね。
そのため、類語も幅広く存在します。
その中から3つご紹介しましょう。
- 「乗り切る」【のりきる】
- 「静観する」【せいかんする】
- 「やり過ぎる」【やりすぎる】
「乗り切る」【のりきる】
「やり過ごす」と同じく、この言葉にも2つの意味が存在します。
1つは、荒波の海や急流の皮などを船で渡り終わることです。
そこから転じた2つ目の意味は、逆境や困難な状況に耐え頑張って切り抜けることです。
放っておくのとは違いますが、その場をしのぐという意味合いで使われる類語です。
「静観する」【せいかんする】
「なすがまま放置する」という2つ目の意味と同じです。
事の成り行きをただ静かに見守るという意味の言葉です。
「やり過ごす」と似通っており、何か出来事が起こったときに、その様子や今後の成り行きを観察するという意味合いで使われます。
手出しをせずただ見守ることを指します。
「やり過ぎる」【やりすぎる】
3つ目の意味と同義です。
度を超えてしすぎる、ということです。
世間一般的に、物事にはそれぞれちょうど良い具合や程度があり、その程度内に収めて行うのが良いとされています。
その程度がわからなかったり、限度を見失って取り組んでしまうことを示す言葉です。
「やり過ごす」の使い方
主に3つの意味を持つ言葉です。
ともに使う単語や文章の流れで大きく解釈が変わってしまうため気を付けましょう。
- 「やり過ごす」の例文1
- 「やり過ごす」の例文2
「やり過ごす」の例文1
「お母さんもそのうち機嫌をなおすはずだから、うまくやり過ごすんだ」
放置を意味する「やり過ごす」を活用した例文です。
何か手を加えるより放っておけば事態が好転することもあります。
例えばこの例文のように、人の怒りや悲しみなどは時間が経てば少しずつ薄れていくものなのに、慰めたりご機嫌をとったりすると逆なでしてしまうかもしれません。
騒ぎ立てず、なすがまま放っておいた方が良い場合には、例文のように相手を上手にたしなめる事ができます。
「やり過ごす」の例文2
「嫌なことがあったからって、酒をやり過ごすのはいけない」
これは3つめの意味ですね。
「やり過ぎる」ということです。
決して、お酒が通り過ぎるのを眺めているわけではありませんので、誤解には注意しましょう。
まずポイントとして、「酒」というキーワードです。
何事もほどほどが一番。
お酒のように多量摂取すると健康を害するようなもの、心身の状態を脅かすものに対して使うことで、「度を超えてしすぎる」という意味の「やり過ごす」を表現します。
「やり過ごす」の英語
「やり過す」をそのまま表現する英単語はありません。
「通過する」や「通っていく」という意味の単語である“pass”を使った表現が近いでしょう。
“get away with”と表すこともできますが、この表現はどちらかというと「悪いことをやりおおせる」という、バレないように悪事を働く意味合いですので、「やり過ごす」と厳密には異なります。
「やり過ごす」の反対語や似た対義語
「やり過ごす」とは3つの意味を含んでいることから、正反対となる言葉がありません。
なすがまま放っておくことと逆の意味となる単語なら「介入」や「干渉」となり、後から来たものを先に行かせること「妨害する」などになります。
その中から一つ、広い意味で逆となる言葉をご紹介します。
- 「手出しする」【てだしする】
「手出しする」【てだしする】
ちょっかいをかけたり干渉するという他人への行動を示したり、新しい物事や分野へ挑戦するといったように、自分から他の物事へ積極的にかかわることを意味する言葉です。
「やり過ごす」とは、根本に「その物事のなすがままに任せる」という意味合いで他へ積極的に関わることをしません。
そういった意味では、「手出しする」というのは「やり過ごす」の逆となる言葉です。
「やり過ごす」という言葉には、通過させる意味、なすがままに身を任せる意味、度を超してやりすぎる意味という3つの意味があることはおわかりいただけだでしょうか。
使う場面によって意味がころころと変わる面白い言葉です。
また、人と人とが関わって生きていく中で、「やり過ごす」という事は、余計な問題を生まないための知恵でもあります。
言葉そのものだけでなく意味を上手に活用して、悩んでいる人へのアドバイスや、壁にぶつかった時の自分への教訓として心に留めておきたい言葉の1つですね。