「業腹」の意味とは?言い換え、使い方や例文を紹介!
言葉には、色々な力があります。
人の気持ちを良くさせてくれる効果もあります。
中には、感情を逆撫でしてしまう言葉もあるので、使う時には、ちょっとした配慮が必要になる場合もあります。
時として、怒りや喜びを表す言葉もあります。
そんな言葉の中で、「業腹」という言葉があります。
普段の会話の中では、あまり使うことがないかもしれません。
では、この言葉には、どのような意味が含まれているのでしょうか?
目次
- 「業腹」の意味とは?
- 「業腹」の言い換え
- 「業腹」の使い方
- 「業腹」の対義語
「業腹」の意味とは?
「業腹」という言葉は、日常会話の中では、あまり使ったり、聞いたことがないのですが、意味としては、とても心の感情を表しています。
一言で言うと、「怒り」を表している言葉となります。
「非常に腹が立つこと」、「しゃくにさわること」、あるいは、「怒りの状態を意味する状態」を表しています。
「あんなやつに負けるなんて、すごく業腹だよ。」
「どうして、あいつから、こんな業腹な仕打ちを受けなければならないんだ!」
こんなケースで表現することができます。
- 「業腹」の読み方
「業腹」の読み方
「業腹」とは、どのような読み方になるでしょうか?
この言葉は、「ごうはら」と読みます。
「業」を「ぎょう」として、「ぎょうはら」と読みたくなるでしょうが、「ごう」と読むことから、「ごうはら」となります。
「業」は、「人の業(ごう)」として、使われることもあります。
身・口(く)・意という仏教的な行いの中で、善悪の行為を指している時に使われます。
特に悪い業(ごう・わざ)として、用いられます。
また、前世の悪行の報いとして表現する時にも使われる文字で、「業腹」で使われる時には、かなり重たい意味をなしていることが理解できます。
「腹が煮えくりたぎる」ようなつよい怒りの念や思いが、この言葉からひしひしと伝わってくるようです。
「業腹」の言い換え
「やり場のない怒り」とまで心の底から湧き出てくる烈火のごとき怒り。
その意味を表す「業腹」を他の言葉に置き換えると、次のような言葉でも表現することができるでしょう。
- 「むしゃくしゃ」
- 「虫の居所が悪い」【むしのいどころがわるい】
「むしゃくしゃ」
とても腹立たしくなる「業腹」。
これを他の言葉には例えると、「むしゃくしゃ」という言葉でも表すことができます。
「むしゃくしゃ」と言うと、頭の髪やひげなどが、無様に乱れている様子を表しすこともあります。
ひげが「もじゃもじゃしている。」と言ったりすることがありますが、気分的なことを指していることもあります。
きぶんてきに「イライラして気分がスッキリと晴れない」状態を指してます。
「もう、あいつの言葉を聞いただけで、むしゃくしゃしてしまう。このやり場のない怒りをどこに向ければいい?」と使うこともあれば、「試験の結果を聞いて、気分がむしゃくしゃしている。」
一生懸命に試験勉強したのに、思わぬ結果となってしまい、納得できずに「もうどうにでもなれ。」というように投げやりな気持ちになったり、自分自身に対する怒りが込み上げてきて、「むしゃくしゃになる」という言葉を思わず使ってしまうことがないでしょうか?
言葉の意味としては、「物事を忌み嫌うさま」や、「気分を害する」、「反吐(へど)が出る」、「機嫌が悪い」、「気分が悪くなる」、「顔をしかめる」、「不愉快な気持ちになる」、「不快な感じになる」、・「不快に感じる」、「不愉快極まりない」、「癪(しゃく)に障る」、「気分を害する」というような意味にもなります。
誰でも自分の思わない方向に物事が進んでいくことで、余計なことや。
面倒なことになってしまうことがあります。
こんな時は、気分が「むしゃくしゃ」になってしまい、イライラと怒りの気持ちが吹き出て来るものでしょう。
「虫の居所が悪い」【むしのいどころがわるい】
「虫の居所が悪い」も「豪腹」に近い意味があります。
意味としては、「機嫌が悪くて、ちょっとしたこともイライラとなるように気に障る状態」のことです。
「不機嫌な状態」でもあります。
「今日は、朝から上司の虫の居所が悪いから、あまり話しかけることは、止めておいた方がいいぞ。」
朝、オフィスに出社してみると、普段はあまりしかめ面をしない上司が眉間にシワを寄せて怒った顔をしていることがありませんか?
こんな時は、下手に声をかけようもなら、言われもないことで、怒鳴られたりするかもしれません。
「業腹」よりも、少し静かな内面的な「怒り」に感じることもあるでしょう。
ここで言う「虫」は、腹の虫のことを指しています。
中国の思想で、人間の感情には、お腹の中に虫がいて、それが原因で色々な感情を表しているという考え方があります。
気分がイライラとして。
怒りの感情が静まらない時に、「腹の虫が収まらない」と言うことがあります。
中国の思想では、三尸(さんし)という虫がいるとされています。
上尸(じょうし)、中尸(ちゅうし)、下尸(げし)という3匹の虫で、上尸は首から上の病気を引き起こすとされています。
中尸は、お腹を中心に、下尸は足におり、下半身の病に大きな影響を及ぼしてしまうまで言われています。
「腹の虫が収まらない」の「腹」こそ、「業腹」と通じるものがあるのかもしれません。
「業腹」の使い方
「業腹」は怒りの気持ちがを表す言葉。
どんな場面で使われるでしょうか?
- 「業腹」を使った例文1
- 「業腹」を使った例文2
- 「業腹」を使った例文3
「業腹」を使った例文1
「それでなくっても先刻さっきからの行いきがかり上じょう、彼は天然自然の返事をお秀に与えるのが業腹であった。」
この文章は、夏目漱石の小説の一説なのですが、ここで使われている「業腹」は、「腹立たしい」という意味になるでしょう。
「車掌にそう言うのも業腹だから、下りて、万世橋行まんせいばしゆきへ乗って、七時すぎにやっと満足に南町へ行った。」
この文章は、芥川竜之介の小説の中には出てくるくだりです。
この時の「業腹」は、癪(しゃく)にさわるという意味になるでしょう。
このことからも今ではあまり聞くことが少なくなった「業腹」は、昔の文章の中では、よく使われていたことが分かりますね。
「業腹」を使った例文2
次の文は、吉川英治の「平将門」の文の一説。
「その報復をなすべきものを失ったための業腹あったにちがいない。」
(その報復をすることの目的を失っ平将門ための怒りにあったに違いない。)
というような意味になるのでしょう。
「業腹」を使った例文3
「相手に従うことは業腹だが、上官なのだから仕方ない。ひたすら我慢するしかない。」
戦時中、指揮能力が全くない上官に仕えたために、多くの犠牲者が出てしまった戦場。
人格も品格もないので人間を上官にしてしまった怒りの念が込められています。
しかし、上官である以上は命令に従うのが軍人。
嫌々ながらでも我慢して従うしかないのかもしれません。
戦時中には、こんな時に「業腹」が使われていたかもしれませんね。
「業腹」の対義語
「怒り」の念がひしひしと伝わってきそうな「業腹」。
この言葉と逆に意味をなす言葉には、次のようなものがあるでしょう。
- 「温厚」【おんこう】
- 「沈着冷静」【ちんちゃくれいせい】
「温厚」【おんこう】
この言葉は、「業腹」とは完全に逆に意味を記している言葉ではないでしょうか?
言葉の意味としては、「とても穏やかで優しくまじめな」状態を意味しています。
世の中には、実に色々なタイプの人がいますね。
誰でも性格が穏やかで優しい「温厚」で温かみのある人になりたいと思うはずです。
「温厚」な性格の人は、どんなことがあっても、何事もなく落ち着いており、態度や振る舞いに、人を不安にさせてしまうような行動がなくて、とても落ち着きのある態度をしています。
温厚な人でも、やはり人間なので、普通にストレスを感じることがありますし、腹を立てることだってあります。
それでも温厚な性格の人は、そのようなマイナスの気持ちも全く表情に出さずに、上手に気持ちを切り替えてコントロールすることができるのでしょう。
いつもニコニコと笑顔で人を迎え入れてくれる優しい心持っている存在なので、それに接する人々も穏かな気持ちになって、精神的にリラックスすることができます。
人が困った時は、親身に相談に乗ってくれたり、自信が持てるような的確なアドバイスをしてくれたりと、温厚な人は周りの人に好意的な印象を与えるやすいのです。
このように温厚な人が、穏やかなのは。
普段の生活がとても安定してることが大きな要因でしょう。
心にゆとりが持てる生活が、穏かな人柄を形成しているはずです。
毎日の生活リズムを一定にすることで、精神的にも穏かな性格になっていきます。
「沈着冷静」【ちんちゃくれいせい】
「沈着冷静」とは、「とても落ち着いていて冷静な状態」のことを指しています。
「沈着」という言葉には、「どのようなハプニングやトラブルに遭遇しても、大きく驚くことや、取り乱したりせずに、物事に動じない態度のこと」を指してます。
また、「冷静」は、「感情的を昂らせることなく、何事となかったように理性的で落ち着いた態度」のことを意味しています。
この「沈着」と「冷静」の2つの言葉には、合わさったことにより、とても平静さが保たれている状態を感じ取ることができます。
どんなに大きな事故やトラブルなど、予想外の出来事を目の前にすると、普通はあわてふためいてしまうものです。
しかし、常に平常心を養っていることで、怒り・焦り・悲しみなどのマイナス的な気持ちを持つことなく、正しく行動することができるのです。
「業腹」からすると、対義語としては、少しニュアンスが違って来るかもしれませんが、怒ることで感情を取り乱すことがないので、やはり「怒り」とは対称的な言葉と言えるでしょう。
「業腹」という言葉は、今ではあまり使われることがないと思います。
それでも、「業腹」の文字を見ていると、腹の中から怒りが込み上げてくることが、容易に連想できるのではないでしょうか?
それだけに、昔の小説で使われていたこの言葉の意味を理解すると、人の心や感情を大きく左右させてしまう言葉は、昔からあったらのだと感じることができるでしょう。
それだけ言葉は、人に大きな影響を与えてしまう力があるのです。