「あまつさえ」の意味とは?使い方や例文を紹介!
現在使われていることばの中には、時折、あまり馴染みのない言葉が混じっていることがあります。
また、時代の流れの中で、意味が変わったり、用法が変化したりした言葉もあります。
その典型的な例が、「全然」という言葉です。
本来は、「全然〜ない」と、非定型で終わるべき文に使われるはずが、現在では「全然美味しい」と言っても全然OKの雰囲気です。
しかし、まだまだ、使う際には気を付けておきたい言葉があります。
目次
- 「あまつさえ」の意味とは?
- 「あまつさえ」と似た言葉や類語
- 「あまつさえ」の言葉の使い方
- 「あまつさえ」の例文
- 「あまつさえ」の対義語や反対語
- 「あまつさえ」の英語
「あまつさえ」の意味とは?
同じような意味合いですが、微妙に違う二つの意味があります。
- 「あまつさえ」の意味1
- 「あまつさえ」の意味2
- 「あまつさえ」の漢字
「あまつさえ」の意味1
「そればかりか」「その上に」「おまけに」といったニュアンスの言葉で、あることが、たび重なることや、さらに続くことを意味しています。
ここで、注意することは、そのたび重なることとは、良い運がめぐってくるや運気が向上するといった良い方向ではなく、好ましくないこと、重なって欲しくないことが、意に反して、重なることを意味しているということです。
つまり、好ましくない状態や状況が、重なる様子を表している言葉です。
「あまつさえ」の意味2
「事もあろうに」「あろうことか」と、こんなことがあってよいものか、とんでもないことだといったニュアンスも含むと共に、他にも、やり方はいろいろあるのに、なんでまた、よりによって、選んだ最悪の事態を意味する言葉です。
この「よりによって」という言葉自体が、「他にもっとよい選び方がいくらでもありそうなものなのに、一番、粗悪なものを選ぶとはどういうことだ」という意味をもっていますので、なぜに最悪の事態を招いてしまったのかということになります。
「あまつさえ」の漢字
古語の「あまりさへ」がもともとの形で、「余り」と助詞の「さへ」からできている言葉です。
近世以前には「あまっさへ」「あまさへ」とも表記し、漢字では、「余り」と書きますが、昔の漢字表記では「餘り」と書きます。
つくりにあたる「余」の部分は、「傘」の形からできた象形文字で、家の屋根の形を表し、へんにあたる部分は、食べる事に関することを意味しています。
なお、「餘」の字も同じように、「余る」「余す」といった読み方をします。
つまり、食べ物がたくさんあって、あまること、食べ残ることを表しています。
なお、近世になって、新字体としては「余」の方が採用されました。
これに対して「あまつさえ」の漢字は「剰え」となっていて、「あまり」や「あまる」と訓読みします。
りっとうの部分に、二本の刀を表す漢字が使われていますが、これは「刀で切って余る」、すなわち、切れ残る意味を表しています。
「過剰」(適切な分量や程度を超えていること)にも使われているように、「そのままでよかったのに」「余計なことが出てきた」「余分なことがおきた」という、望まないものが、起きたというような意味につながっていきます。
「あまつさえ」と似た言葉や類語
さらに付加される意味合いの言葉というと、「さらには」「おまけに」「重ねて」「その上」など、枚挙にいとまがない程、いろいろな言い回しがあります。
とはいえ、先行きの不安やマイナス方向への展開を予想させる言葉となると、そのものズバリの言葉は、なかなか見当たりません。
それも、前後の文章を入れなくとも、そう読み取れるとなると、かなり間口が、狭くなります。
意味の取り方によっては、発言者や行動を起こした人物が、諸悪の原因になる場合も出てくるので、慎重に言葉選びをすることも大切です。
- 「選りに選って」【よりによって】
- 「それどころか」【それどころか】
- 「追い打ちをかける」【おいうちをかける】
- 「糅てて加えて」【かてててくわえて】
- 「あろうことか」【あろうことか】
「選りに選って」【よりによって】
選び方は、いろいろとあるだろうから、どうでもいいけれど、それにしても、どうして、わざわざこんな最悪の選び方をしたのだろうか、他にも、もっといろいろな選択肢があったはずなのにという、かなり、結果に落胆した時に、使う言葉です。
結果として悪い方向へ向かってしまった点では、(あまつさえ)に、通じるところがあります。
「それどころか」【それどころか】
今、直面していることよりも、大事なこと、対処すべきことが、新たにでてきたことを示す言葉です。
今の場面を打開すべく、いろいろと策を講じてきたことを、いよいよ実行する段階になって、それを実施できないだけでなく、新たな課題が噴出した状態を表す言葉です。
問題は、実施目前の今の課題ではなく、新たに噴出した課題をどう処理するかです。
「追い打ちをかける」【おいうちをかける】
弱っているものに、さらに打撃を与えることで、災害に遭った地方へ、台風が上陸するようなことを指す言葉です。
「彼女との関係が怪しくなってきている時に、追い打ちをかけるように、地方支店へ転勤の内示が渡された。もはや、結婚は、万事休すだ」のように使います。
「糅てて加えて」【かてててくわえて】
まぜ合わせるの意味の「糅てる」と「加える」とを合わせて、「まぜて加える」ことから、「その上に」「さらに」という意味を表しますが、普通、よくない物事が重なるときに用いる表現です。
「会社をリストラされ、路頭に迷っているところに、糅てて加えて、女房から熟年離婚の話が、切り出された」のように、不孝や不運が、望みもしないのに重なる場合に使います。
「あろうことか」【あろうことか】
言葉そのものは、「こんなことがあってもよいものか、いや、とんでもないことだ」という意味をもっています。
「こんなこと」というのは、およそ考えもしないような、想像すらしていなかった大変な出来事を表しています。
そんな、大変なことが起きてしまったということを意味する言葉です。
今、目の前にある課題を解決している最中に、思いもしない、考えもしないような、大問題が降りかかってきたことを表している言葉で、俗に言われる「ありえない」状態を表現しています。
度重なる不運や問題の発生に、手の施しようもなくなりそうです。
「天気が急変し、風も強く、雨も降り始めたので、帰り支度を急いでいたら、こともあろうに、突然の停電で、あたりは真っ暗になった」まさに、弱り目に祟り目の様相です。
「あまつさえ」の言葉の使い方
気を付けることは、「念願だったA社から、採用の内定通知をいただいた、あまつさえ、B社からも、新入社員の事前研修案内のメールも届いた」と、いった幸運に恵まれるなど、明るい話材に使うのには、違和感をともなうということです。
「余り」つまり、「余計なもの」が付いてくるという意味を含んだ言葉ですから、この場合だと、B社のメールが、「余計」ということになってしまいます。
採用の内定もB社からのメールも、吉報ですから、「〜内定の通知をいただいた、そればかりか、B社からも〜」と、幸せ続きの喜びを表現します。
従って、どうしても「あまつさえ」を使うとすると「念願だったA社から、不採用の通知がきた。
あまつさえ、B社からも、不採用のメールが届いた」というように、両社共、受験の結果、不採用だった場合に使う表現になります。
「あまつさえ」の例文
- 「あまつさえ」の例文1
- 「あまつさえ」の例文2
- 「快傑ズバット」の「あまつさえ」を使った決め台詞
「あまつさえ」の例文1
「山の天気は変わりやすいと言うけれど、急に、こんなに、風が強くなるとは、想像もしなかった。あまつさえ、季節外れのあられまでも、降ってきた。テントが、明朝まで、無事に耐えられるか心配だ」
「あまつさえ」の例文2
「誘拐して身代金を奪い取り、あまつさえその人質を殺そうとするなんて!」
「快傑ズバット」の「あまつさえ」を使った決め台詞
1977年に放送された「快傑ズバット」、主人公の「早川 健」が敵(犯人)に向かって言うセリフのフォーマットとして使われています。
「○○し、あまつさえ○○した『犯人の名前』っ、許さんっ!!」
犯人の犯した罪を述べて、あまつさえ こんな事をしたから犯人を許さないと言う主人公「早川 健」(快傑ズバット)の決意を表すセリフとなっています。
「あまつさえ」の対義語や反対語
- 「案の定」【あんのじょう】
- 「はたまた」
- 「さらに」
「案の定」【あんのじょう】
思った通りという意味ですから、思った通り、予定した通りに、スムーズに事が運ぶことを意味した言葉です。
問題が、重なって起きる「あまつさえ」と違って、予定通り、無事に事が運ぶ意味からすると、反対の意味合いをもつ言葉になるかと思います。
「はたまた」
「それともまた」「あるいは」という意味の言葉で、選択肢が、まだあることを意味しています。
それでだめなら、この手がありますよという手の中に、まだ切れるカードを握っているようなものです。
「こう天候が急変したのでは、仕方がない、テントを撤収して、下山するか、はたまた、8合目の山小屋をめざすかだ」といった使い方をします。
いずれにせよ不運が重なる(あまつさえ)とちがって、選択肢に余裕が出ています。
「さらに」
程度がより増す様子を指す言葉ですが、「接続詞」的な働きをする言葉として使うときには、前文の内容を受けて、その程度や段階を、さらに深めたり、進めさせたりするような文が後文として、必然的に、付け加えられるようになりますので、前に置く文章次第では、必ずしも事態は、悪い方へ悪い方へとは流れていきません。
「A社からの採用内定の通知には、事前の集合日が記載してあり、さらに、仮入社の日程まで、記載されていました」のような文でも、事態の進展が書かれていて、「あまつさえ」のもつトーンが下がるイメージでは使われない言葉ですので、どちらかと言えば、対になる言葉の一つです。
「あまつさえ」の英語
「さらに」や「ほかに」といった意味で英語に訳すと“in addition”、「そのうえ」や「さらに」の意味からは“moreover”となります、「〜のほかに」「〜を除いて」の日本語を訳すとなると“besides”となります。
原文となる日本語の意味合いに、最もぴったりするものを選んで、英訳するとよいでしょう。
「風が強くなり、あまつさえ、雨まで降ってきた」を、翻訳機で英訳した一例です。
“Wind become strong and in addition rain. ”(風が強くなって、加えて雨が降ります)
「あまつさえ」の語感は、あたり前でしょうが、表すことができません。
これでは、ただ単に、風が強くなって、雨が降ったという、ごくあたり前の自然現象です。
言葉が違えば文化が違いますので、言葉にのっている文化を訳することの難しさを、改めて感じさせられます。
文書の内容によっては、使うべきでない言葉があり、逆に、その言葉を使えば、後に続く文の内容や方向が、決まるという言葉があります。
明るい展望に繋がる言葉や、展望が見いだせず、不運が重なることを暗示する言葉など、一つ一つの言葉の重さを、改めて考え、大切に言葉を使う姿勢が大事です。