「推し量る」の意味とは?類語や使い方、英語を紹介!
日常的に使っている日本語の中には、日本人特有の文化や考え方が色濃く出ている言葉が数多く存在します。
外国人にとって理解が難しいのは当然ですが、同じ日本人でも言葉で説明するのが難しい絶妙なニュアンスを含んでいます。
今回取りあげる「推し量る」という表現も、その絶妙なニュアンスが感じられる言葉のひとつです。
目次
- 「推し量る」の意味とは?
- 「推し量る」の類語
- 「推し量る」の使い方
- 「推し量る」の英語
- 「推し量る」の反対語や似た対義語
「推し量る」の意味とは?
「推し量る」とは、「ある事をもとにして、他の事の見当をつける」という意味ですが、得られた情報を基に「予想する」や「こうではないかと想像する」といった方が分かりやすいかもしれません。
この言葉は自分以外の人や物事に使う言葉です。
特に、相手の気持ちや考えを汲み取ることに対して使用する頻度の高い言い回しです。
自分の心の中や考えは自分にしかわかりませんので、相手の思考や気持ちを「こう思っているんじゃないか」と想像するということです。
ここで重要となるのは、「推し量る」という言葉は単に想像や予想をするだけに留まらず、言葉では説明しづらい奥深いニュアンスを持つ言葉だということです。
それぞれの語句を分解して見てみましょう。
「推す」とは主に2つの意味があります。
「力を加えて前や表立つところへ進ませる」という意味と、「ある事柄を基に他の事柄へと考えを進める」という意味です。
「推進」や「推察」「推薦」などに使われている漢字です。
「量る」も「推す」と同じく、「重さや容積を調べる」と「推測する」という2つの意味合いがあります。
「計量」「重量」などに漢字が使われています。
この2つが合わさることで「ある事柄を基に他の事柄へと考えを進ませ、推測する」という意味が成り立ちます。
日本人の特徴として、自分の気持ちや考えをあまり表に出さない面があります。
言葉にして表現するのではなく、雰囲気や動作などから相手に自分の気持ちを察してもらおうとする傾向にあります。
そういった、相手の気持ちや考えを察して行動する日本人の側面から生まれ使われるようになった言葉といっても過言ではなく、一言に「推し量る」と言ってもとても深い意味合いのある言葉なのです。
- 「推し量る」の読み
「推し量る」の読み
「おしはかる」と読みます。
それぞれ同じ読み方をする別の漢字がたくさんありますので、誤字にならないよう漢字が持つ意味も含めて理解しておきましょう。
「測る」という漢字を当てる場合もあるようですが、字自体が持つ意味としては「量る」の方が正しい表現と言えます。
「量る」とは単に重さや容積を調べるだけでなく、「物の度合いを調べる・見当をつける」という意味も持つ言葉です。
漢字に迷ったときは、このように字自体が持つ意味を思い出してみると同じ読み方でも当て方の違いが分かりやすくなります。
「推し量る」の類語
「推し量る」と似たような表現をする日本語は他にも複数存在します。
代表的な3つの類語とその意味を追っていきましょう。
- 「忖度する」【そんたくする】
- 「想像する」【そうぞうする】
- 「汲み取る」【くみとる】
「忖度する」【そんたくする】
流行語大賞となり、ここ最近注目されるようになった言葉です。
「そんたく」と読みます。
読み間違えないように気を付けましょう。
この言葉が使われていた当時の歴史は平安時代まで遡ります。
本来の意味は「推し量る」と全く同じで、「他人の気持ちや心情を推測する」という意味でした。
「他人の気持ちや心情を推測して行動する」という意味合いで使われるようになったのは近年になってからの事です。
また、政治関連のニュースでよく使用されるようになってからはさらに「自分より上位の者の意向を予測して行動する」という意味合いが強まり、忖度という言葉が政治に関わる言葉というイメージが付いてまわるようになりました。
「この人の性格ならこう考えるだろうから、自分はこうすべきだ」や、「この人の普段の言動から考えて、自分はこうしなければ」というように、上位の者の思考や意思を想像して根回しをしておいたり、配慮した行動をとるという表現で使われています。
「推し量る」と比較すると意味が変化してきている言葉ですが、誰かに言われたり教えられたりせずに相手の心を自分で推測するという本来の意味は、「推し量る」の類語といえるでしょう。
「想像する」【そうぞうする】
「推し量る」とは相手に質問をしたり、相手から情報を聞き出すのではなく、感じ取った様子や雰囲気などのわずかな情報から自分の中で相手の気持ちを推測することです。
そのことから、「想像する」という言葉が非情に近いニュアンスとなります。
「想像」という言葉自体は人の考えや気持ち以外にも使いますが、使い方に共通しているのは「自分の頭や心の中だけで考えを巡らせる」ということです。
「汲み取る」【くみとる】
この言葉は2つの意味を持ちますが、うち1つは液体を器などで別の容器へ移したり捨てたりすることですから「推し量る」とは関係がありません。
2つめの意味である「他人の気持ちや考えをよく理解したり、推測する」ということが「推し量る」の類語といえる共通点です。
「忖度」や「想像する」と同じで、他人の考えを「こうではないか」と予想して理解したり寄り添うことを意味します。
その人が内に抱える事情や理由を、表に出る表情や動作などからわずかに感じ取り推測します。
「推し量る」の使い方
例文をもとに、「推し量る」の正しい使い方や応用を見ていきましょう。
- 「推し量る」の例文1
- 「推し量る」の例文2
「推し量る」の例文1
「相手の気持ちを推し量ることで、円滑な人間関係を築く」
「推し量る」とは単に予想したり推測することにも使いますが、上記の例文のように人の気持ちや考えを感じ取るという表現で多く使われます。
人間に存在する「心」とは非常に複雑で、言葉だけでは説明がつかない気持ちというのもたくさんあるものです。
相手からわずかに感じ取れる表情の変化や行動から、「こうではないか」「こう思っているのだろうか」と自分の考えを巡らせることを、「推し量る」という4文字の言葉に込めて表現することができます。
「推し量る」の例文2
「ニーズを推し量り、新商品の企画をする」
得られたデータや傾向から、求められていることや需要を推測する…これも「推し量る」と表現できます。
人の気持ちや考えだけでなく、データや数字などの情報を基に推測し考えを進めていくという表現です。
「推し量る」の英語
この言葉をそのまま表現できる英語は存在せず、また、外国人には理解されにくく表現が難しいとされています。
似たような意味であれば、推測するという意味の“guess”や“suppose”が挙げられます。
しかし、「根拠や確信はないが、そう推測する」という客観的表現で、微妙にニュアンスが違います。
“imagine”の方が、「想像する」「心に描く」「思い浮かべる」という幅広い意味を持ち、「推し量る」に近い表現だと言えるでしょう。
「推し量る」の反対語や似た対義語
「推し量る」と似ている表現は他にも多数ありますが、その中には本質が違う反対語や対義語が存在します。
代表して3つ紹介しましょう。
- 「勘ぐる」【かんぐる】
- 「思いやる」【おもいやる】
- 「決めてかかる」【きめてかかる】
「勘ぐる」【かんぐる】
あれやこれやと悪い考えを巡らせ相手を疑ってかかる、という意味合いの言葉です。
悪いイメージを表現する言葉です。
「推し量る」とは基となるものがあって考えを巡らせるものですが、「勘ぐる」は違います。
勝手な思い込みや決めつけに近く、基となる確かな情報はありません。
「推し量る」とは正反対の意味です。
「思いやる」【おもいやる】
「推し量る」が想像や推測であるなら、「思いやる」は同情や気を遣うことを表しています。
自身の親切心や一般的に良いとされている行動をとることでもあり、想像や推測だけの「推し量る」とは異なります。
近いニュアンスがあるため「推し量る」と混同してしまいがちですが、似て非なる表現ですので注意しましょう。
「決めてかかる」【きめてかかる】
「推し量る」とは感じ取った様子や得られたデータを基にしますが、「決めてかかる」とは何も基にしている判断材料がありません。
自分の勝手な思い込みで誤認することを表現する言葉です。
「推し量る」とは反対の意味となる言葉です。
「推し量る」のように、日本人の特徴が表れた言葉というのは他にも数多く存在します。
説明したり断定することが難しい表現の1つですが、うまく言い表すことのできない人間の絶妙な言動を表現できる深みのある言葉でもあります。
些細なニュアンスを感じ取って、うまく日常生活や文章に取り入れたい言葉です。