「元も子もない」の意味とは?類語、英語や使い方、例文を紹介!
「元も子もない」という言葉をご存知の方は多いと思いますが、どんなときに使ったらいいのかわからない、という方も案外多いのではないでしょうか。
ここでは、「元も子もない」という言葉の意味や使い方、類義語や対義語についてご紹介していますので、ぜひこの機会に一読ください。
目次
- 「元も子もない」の意味とは?
- 「元も子もない」の読み方
- 「元も子もない」の語源
- 「元も子もない」と「身も蓋もない」の違い
- 「元も子もない」の英語
- 「元も子もない」の言葉の使い方
- 「元も子もない」を使った例文・短文
- 「元も子もない」の類語や類義の表現
- 「元も子もない」の反対語や対義の表現
「元も子もない」の意味とは?
「元も子もない」は、すべてを失い、なにもなくなること、とくにビジネスシーンなどにおいて、本来の目的を失うのみならず、失う必要のないものまでを失ってしまうこと、などを意味します。
社会人をはじめ、知っておくと使える場面がありそうな言葉といえます。
「元も子もない」の読み方
「元も子もない」は、「もと(も)こ(もない)」と読みます。
「元」という漢字はほかに、「ゲン」「ガン」「はじ-め」といった読みを持ち、ここではもと、根元、の意味で使われています。
また、はじまりやあたま、首長などの意味もあります。
「子」という漢字は「シ」「ス」「み」「おとこ」「ね」など多くの読みを持ち、こども、たまご、小さいもの、十二支の一番目、ねずみの意味などを持っています。
「元も子もない」の語源
「元」とは元本、「子」とは利子のことを表し、投資をするうえでの用語をさします。
「元も子もない」とは、多くの利子、利益を得ようと欲を出しすぎたあまり、利子のみならず、元本すらも失うことになった、というところに由来しています。
そこから転じて、投資や金銭だけでなく、なにごとに対しても、欲を出すとすべてを失う、といった現在の意味に通じるようになりました。
「元も子もない」と「身も蓋もない」の違い
「身も蓋もない」とは、言葉など表現が露骨すぎたり、あけすけであるがゆえに、風情や情緒が感じられないことを意味します。
社交辞令が使えず、ストレートに物をいってしまう、というときなどに「身も蓋もない言い方だ」のように使われます。
「元も子もない」というのは、利益を追求しすぎてすべてを失う、という意味でしたが、「身も蓋もない」では、そもそもの身や蓋がありません。
どちらも似た言葉のようですが、使い分けが必要、ということがわかります。
「元も子もない」の英語
「元も子もない」はよく、無意味だ、といった意味あいで英語に訳されています。
具体的には、“it's pointless”や、“coming to nothing”、“it defeats the purpose”などが、無意味だ、「元も子もない」、という意味で使われています。
また、ばかげている、という意味の“stupid”という単語を使って、「もし○○するなら、それはばかげたことだ」という英語をつくると、意味としてはかなり近くなるのではないでしょうか。
「元も子もない」の言葉の使い方
「○○をして△△になったら元も子もない」「○○したのに△△ができないなら元も子もない」のように、元と子とがそれぞれ書かれている形がもっともわかりやすい使い方です。
書かない場合、省略する場合には、元にはなにが当たるか、子にはなにが当たるかを推測できるように使うとよりよいでしょう。
「元も子もない」を使った例文・短文
それでは「元も子もない」を使用した例文を見ていきます。
具体例のなかでどう使われているか見ておくことで応用がきくようになります。
- 「元も子もない」の例文1
- 「元も子もない」の例文2
- 「元も子もない」の例文3
「元も子もない」の例文1
「練習は大事だけど、コンクール当日に悪化しているようでは元も子もないのだから、風邪が治るまで休んでいなさい」
コンクールに出る、という「元」があり、出るのであればよりよい成績をおさめたい、というのが「子」に当たります。
そのためには練習が必要なのはいうまでもありませんが、風邪を引いているなかでの練習で悪化してしまっては、よい成績をおさめるどころか、コンクールに出場することすらできなくなるおそれがある、つまり「元も子もない」状況になることを防ごうとしている場面になります。
「元も子もない」の例文2
「歌手にとって喉は命と同等に大事だが、手術を受けずに命を落としてしまっては元も子もない」
喉にできた腫瘍を摘出するなどして声帯を失う、というのは歌手にとって命を奪われたも同然といえるかもしれません。
しかし、手術を受けずに腫瘍を放置することは、その人がほかに持っている能力を発揮する機会を永遠に失うことを意味するかもしれません。
生きているというのは役割がある、ということですから、どんなに大事なものでも、それをあえて手放すことで見える世界もあるのではないでしょうか。
「元も子もない」の例文3
「彼に任せて失敗すれば元も子もないということを自覚したほうがいい」
新人の育成は企業の成長にとって非常に重要ではありますが、明らかに本人の技量をこえた仕事を無理に任せることは、企業にとって不利益な場合もあります。
無理をさせることができちんと成長する、つまり利子を増やせる人か、まだその段階でないかの見極めができないのであれば、不用意に難題を押しつけてはいけません。
「元も子もない」の類語や類義の表現
次に、「元も子もない」の類語表現を見ておきましょう。
類語を知ることでより「元も子もない」の理解が深まります。
- 「無駄骨を折る」【むだぼねをおる】
- 「水泡に帰す」【すいほうにきす】
- 「過ぎたるは及ばざるが如し」【すぎたるはおよばざるがごとし】
- 「二兎を追うものは一兎をも得ず」【にとをおうものはいっとをもえず】
「無駄骨を折る」【むだぼねをおる】
「むだぼね(を)お(る)」と読み、やったことのすべてが役に立たないことを意味しています。
また、「無駄骨」とは必要のない努力や報われない苦労、余計な心労などをいいます。
似た言葉に「骨折り損のくたびれ儲け」というものもあります。
「彼女のためにと思ってやったが、無駄骨を折っただけだった」
「水泡に帰す」【すいほうにきす】
「すいほう(に)き(す)」と読み、努力などが水の泡のように散らばり消えてしまう、というところから、努力の甲斐がなく無駄になることや、進行していた企画などが白紙に戻ることを意味しています。
そのために惜しんだ時間や労力すべてが失われるというのは、気持ち的な面で堪えるのみならず、その間にできたはずのほかの仕事などが山積しているので、かなり苦しい状況といえます。
「半年かけて進めていた企画なのに、鶴の一声で水泡に帰することになるとは思ってもみなかった」
「過ぎたるは及ばざるが如し」【すぎたるはおよばざるがごとし】
「す(ぎたるは)およ(ばざるが)ごと(し)」と読み、やりすぎるのは、やらなさすぎるのと同じくらい意味がないことだ、というところから転じ、何事もほどほどにしておくのがよい、という意味の言葉です。
「元も子もない」には、ほどほどにしておきなさい、という教訓は含まれていませんが、そもそもの考え方、元手から利益を得ようとするイコールやりすぎる、という発想は似通った言葉といえます。
「過ぎたるは及ばざるが如し、たまには残業をやめてみんなで飲みに行こう」
「二兎を追うものは一兎をも得ず」【にとをおうものはいっとをもえず】
「にと(を)お(うものは)いっと(をも)え(ず)」と読み、欲張って二羽のうさぎを得ようとするものは、結局一羽も捕まえられない、というところから、欲張ってたくさんのものを得ようとしても、どちらも中途半端になったりしてうまくいかない、という意味の言葉です。
ひとつの物事に集中せよ、という教訓も含んだ言葉ですが、その意味では「元も子もない」とはすこしちがっています。
「妻はなんでも「ながら」でやりたがるが、二兎を追うものは一兎をも得ずというように、どれも半端にしている」
「元も子もない」の反対語や対義の表現
最後に「元も子もない」の対義語を見ておきましょう。
類語だけでなく対義語も見ておくことで、語彙の幅が広がります。
- 「丸儲け」【まるもうけ】
- 「濡れ手で粟」【ぬれてであわ】
- 「漁夫の利」【ぎょふのり】
「丸儲け」【まるもうけ】
「まるもう(け)」と読み、元手がかからず、収入のすべてをもうけにできることや、楽して大金を手にすることを意味します。
「元」なくして「子」が手にはいるのですから、こんなにおいしい話はありません。
「坊主丸儲けなどというが、あの寺はかなりの額を地域に還元してくれている」
「濡れ手で粟」【ぬれてであわ】
「ぬ(れ)て(で)あわ」と読み、「濡れ手で泡」とするのは誤用となりますので留意しましょう。
濡れた手で粟を掴もうとすると、自然とたくさんの粟粒がついてくることから、苦労せずに多くを得る、という意味を持つ言葉です。
とくに、利益など金銭面で使われています。
「今日は濡れ手で粟だったよ、と父はえびす顔でパチンコから帰ってきた」
「漁夫の利」【ぎょふのり】
「ぎょふ(の)り」と読み、二者が争っている間に、第三者がなんの苦労もなく利益を手にすることを意味します。
「元も子もない」では、争っている二者や、第三者的な目線はありませんが、苦労せず利益を得る、元手なく利益を得る、という意味あいから、「元も子もない」の対義語として挙げています。
「彼らはキーパーを譲らずじゃんけんをしていたが、そのあいだに私は軽々と審判になることができ、まさに漁夫の利というところだった」
「元も子もない」とは、すべてを失い、なにもなくなること、という意味の言葉でした。
「子」を欲張るために「元」すら失うくらいなら、「元」を大事にとっておいたほうが賢明なのでしょうか。
何事もほどほどにしておくと、「元」を失ったときのリスクを回避できるのかもしれません。