「漁夫の利」の意味とは?類語や使い方、例文や反対語を紹介!
日本語には、様々な言葉やことわざがあります。
日常生活の中でよく使う言葉もあれば、文章の中で使われる言葉など色々な使い方があります。
こんなことわざも語源なり、由来が中国から伝わってきたものもたくさんあります。
また、最近では人との会話の中で用いることが少なくなったのですが、メールや手紙の中で時々目にすることがあることわざが、「漁夫の利」でしょう。
目次
- 「漁夫の利」の意味とは?
- 「漁夫の利」の類語や似たことわざや四文字熟語
- 「漁夫の利」の使い方
- 「漁夫の利」の反対語や似た対義語
- 「漁夫の利」の具体例
「漁夫の利」の意味とは?
「漁夫の利」は、中国の戦国時代に燕策(えんさく)が使ったとされる例え話から生まれたという言い伝えがあります。
このことわざの場所とされるのは易水という北京の南側に流れる川です。
その昔、趙という国が燕という国を滅ぼそうとしていたのですが、蘇代という人物が燕のために、趙の王の恵文の元に行き、次のような説得をしたのです。
「ここに訪れる来る途中に易水を渡りました。そこには、ハマグリが出てきてシギが中身をついばんでいました。するとはハマグリはシギのくちばしを挟みこんで、そのままぴたりと口を閉じました。」
「今日も明日も雨が降らなければ、お前のいのちはない。」というシギの言葉にハマグリも蚌も負けずに「そっちこそこのままなら死ぬぞ。」と言い返します。
両者は、自分の立場を守ろうと譲ろうとしません。
そこに漁師がやってきてシギとハマグリの両方を捕まえてたのです。
このようなことをたとえて、趙が燕を討とうとしていることで、民衆が疲弊してしまい強大な国家であった秦が、この2つの国の間に乗り出してきて、漁夫の利をさらうことになることを教えたのです。
このことを聞いた趙の恵文は、理解して燕を攻めることを止めたのです。
このことから、「漁夫の利」ということわざが生まれたとされています。
故事成語ができました。
全く予想していなかった第三者的な立場の人間や団体が、利益を取ってしまうことを指しています。
ダークホース的な存在の者が、外からいきなり押し掛けて、利益を持ち去ってしまうことを言っているのです。
「漁夫の利」の類語や似たことわざや四文字熟語
「漁夫の利」とは、とてもずる賢い行いかもしれませんが、効率の良い利益の稼ぎか方かもしれませんね。
このことわざには、次のような類義語があります。
- 「小股を掬う」【こまたをすくう】
- 「ネコババ」
- 「うわ前をはねる」【うわまえをはねる】
「小股を掬う」【こまたをすくう】
「小股を掬う」も「漁夫の利」に近い意味を持っています。
相撲の小股すくいの手を使うことからしているのでしょうか、他人のスキマを利用して自分の利益を獲得することを意味しています。
「数年かけて開発・商品化した製品だったけど、ライバル会社のB社が自分の利益を奪い取るように、真似した製品にウチを圧倒してきた。まさに小股を掬われた感じだ。」
このような使い方があるでしょう。
どんなに一生懸命に働いていたり、真面目に稼ごうと努力いたのが、横から利益を横取りされたのような感じになります。
「ネコババ」
「ネコババ」も似たような意味合いがあります。
このことわざは、猫が糞をした後に砂をかけて隠すことからきた比喩的な表現とされています。
「糞」を「ばば」と呼びますが汚いのを指している言葉です。
江戸時代後期頃から用いられた言葉ともされていますが、猫が好きだった老婆が借金を全く返さなかったことから、「猫婆」(ネコババ)とする流れもあります。
今では、拾った物をこっそりと自分の物にすることを意味していることもあり、少しずる賢い表現です。
「あいつ目、まんまと俺の稼ぎをネコババしやがった!」
まるで、ルパン三世に出てくるセリフみたいですが、鮮やかなまでに、なんの苦労もせずに、利益をかっさらっていく光景が目に浮かびます。
「うわ前をはねる」【うわまえをはねる】
「うわ前をはねる」も似たようなニュアンスがありますね。
この言葉は、他人に取り次ぐ賃金や代金の一部を巧みな方法や強い立場を利用して、自分のものとすることです。
かすめ取ってたり、ピンはねをする意味と同じでしょう。
よくあるのが、「口利き」です。
会社や人が新しい仕事をしようとした時に、仕事をくれる相手と接触するチャンスがありません。
そんな時の相手をよく知っている人物が「口利き」をすることで、仕事をもらうわけですが、「口利き」をした人物は、口利き料としてお金をもらうのです。
紹介手数料や斡旋料とでも言えるでしょうが、まさに「うわ前をはねる」ことにもなります。
あせみず垂らして稼ぐことではなく、簡単に言葉だけで稼ぐのです。
これもまた、第三者的な人物が労せず美味しい所を持ち去っていくことですね。
「漁夫の利」の使い方
では、「漁夫の利」は、どのような場面で使われることがあるでしょうか?
- 「漁夫の利」の例文1
- 「漁夫の利」の例文2
「漁夫の利」の例文1
「あの会社にすれば、2つのライバル会社が競ってトップを取ろうと戦っているうちに、間隙を縫って、ほとんどのマーケットを席巻していったな。まさに漁夫の利だよ。」
こんな時に使うことがあります。
企業間の戦いでは、同業他社数社で市場を競い合うことが珍しくはありません。
そのような中でも、上位2社が戦っているうちにコソコソっと、スキマを縫って、トップに躍り出てくることがあります。
ビジネスの戦略としては、よくある攻め方でしょう。
100%の力を出しきれなくても、効率良くシェア拡大できるのですから。
競合相手が1対1であれば、どうしても1人ないしは1社単独をターゲットにすればいいのですが、普通は、そんなことは多くはありません。
1つのマーケットには、何社も参入していることがほとんどです。
その中で、何処をターゲットにするかで、戦略も戦術も変わってきます。
戦って勝つことは、企業間の戦いでは、強くて安い製品やサービスを提供したり、優秀な人材を登用したり、教育することが必要です。
しかし、巧みに上手に立ち回ることで、少ない努力で限られた資源で最大に利益を獲得することも可能です。
ビジネスにおいては、「漁夫の利」は当たり前な戦術ですね。
「漁夫の利」の例文2
大学のキャンパスガールに選ばれたA子さん。
この子を狙って、2人の男性が自分の彼女にしたいと競い合っています。
A子さんもまんざらではなさそうなのですが、なかなか、どちらを彼氏にしようかと決めてくれません。
男性2人は、色々な画策をして彼女の気を引こうとするのですが、全くなびいてくれないのです。
そんなある日、街の中で、A子さんは全く違う男性とデートをしている所を目撃されたのです。
そう、他の男性がすでに彼女をゲットしていたわけです。
しかし、相手はキャンパスの中でも、全く目立たない大人しい性格の男性だったのです。
彼女にアプローチしていた2人の男性は、彼の存在に全く気が付くことも、なかったのです。
これもまた、「漁夫の利」かとしれません。
しかし、彼氏となった男性は、特別に背伸びをして彼女に近づいていったわけでもなく、自然体で接しただけでした。
その素朴なふるまいに彼女は引かれていったのかもしれません。
これもまた、全く想定外の所から、ダークホース的な人物が現れて彼女をゲットしていったわけです。
それでも、彼の素直な性格が彼女の心を動かしたとなると、決して悪い話では無さそうです。
「漁夫の利」の反対語や似た対義語
「漁夫の利」の対義語としては、次のようなことわざがあります。
- 「犬骨折って鷹の餌食」【いぬほねおってたかのえじき】
- 「二兎を追う者は一兎をも得ず」【にとをおうものはいっとをもえず】
「犬骨折って鷹の餌食」【いぬほねおってたかのえじき】
昔、武士が行っていた鷹狩り。
犬がせっかく骨を折るくらいに、苦労して追い出した獲物を、空から舞い降りてきた鷹に取られてしまうことです。
苦労して得たものを、いきなり他人に横取りされることを意味していますが、こらもまた、「漁夫の利」と同じ言葉です。
これまで苦労してきたのに、まんまとやられてしまったのです。
苦労して何らかの報酬や利益を得ることは、とても素晴らしいことです。
でも、効率良く稼ぐことも、1つの方法です。
あくせくと働くことも必要ですが、少し大きな流れを見ながら、大局を把握して動くことで、非効率な活動を行わなくても済むかもしれませんね。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」【にとをおうものはいっとをもえず】
このことわざもよく使われます。
2羽の兎を追っていて同時に捕まえようと必死になっているのですが、結局は1羽も捕まえることができなかったということ伝わってきた海外のことわざです。
2つの物事を得よう、なし得ようと欲ばった結果、どちらも獲得することができずに失敗してしまうのです。
結果的には、中途半端に終わることです。
1つの物事を完成したり、得ようとするなら、そのことだけに集中して、他のウゴキニ惑わされないようにすることが大切です。
あちらこちらに気を取られるようなことから、目的を果たせなくなることを注意したことわざです。
大局を把握することも大切ですが、意識を分散させてしまうことは、ナンセンスなことです。
そのようなことに対する戒めでもあるでしょう。
「漁夫の利」の具体例
「あいつは本当にいい結果を出したな。他のヤツが色々と苦労して研究していたのに、彼だけは色々な情報や見解を集めて、体系化しただけだ。漁夫の利を得たな」
こんな使い方もできるかもしれません。
研究者の間で難しいテーマを研究していたのに、中々結果を導き出すことができたかったのですが、上手に立ち回り、素晴らしい結果を研究の結論として、体系化した彼の行動は、ずる賢いとも言えますが、効率良く活動したとも言えます。
「漁夫の利」とは、悪い意味にも良い意味にも使えそうです。
今の世の中、効率の時代と呼ばれるようになりました。
できるだけ無駄な時間や作業を省いて、小さな努力と限られたリソースで最大の結果や利益を引き出すことが、求められている時代です。
このようなことから、周りの動きを見ながら、どのような環境、状態になっているのかを把握してできるだけ無駄を省き、スピーディーな活動で大きく成果を出すことも、ある意味「漁夫の利」と言えるかもしれませんね。
それでも、決してずる賢い動きだけはしたくありませんが。