「無辜」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
「無辜」ということばに聞き覚えのある方はすくないかもしれません。
「無」はわかるけど、「辜」という漢字自体、見たことがない、という方もおられるでしょう。
ここでは、「無辜」という語句について説明していますので、この機会に「無辜」を覚えておきたい、あやふやだったので再確認したい、という方は読んでくださいね。
目次
- 「無辜」の意味とは?
- 「無辜」の類語や言い換え・似た言葉
- 「無辜」の言葉の使い方
- 「無辜」を使った例文
- 「無辜の民」
- 「無辜の祈り」
- 「無辜の怪物」
「無辜」の意味とは?
「無辜」とは、罪がないこと、また罪がない人という意味を持つことばです。
罪とは、社会規範や法律、道徳などを犯さないことですから、それらを犯さないでいること、またそのような人のことを、「無辜」ということがわかります。
むずかしいのは「辜」という漢字を知らないからで、意味に関しては難解なものではありませんね。
- 「無辜」の読み方
「無辜」の読み方
「むこ」と読みます。
打ち消し、ない、ということを表す「無」にはほかに、「な-い」や「ぶ」などの読みがあります。
ない、という状況を表すのにはほかに、「非」「不」「未」などがありますが、それぞれ使い分けされていますので、「非辜」や「不辜」にならず、「無辜」といいます。
「辜」という漢字はほかに、「つみ」「はりつけ」「そむ-く」といった読みがあり、重い罪やとが、はりつけ、またはりつけにすること、そむくこと、ひとりじめにすること、といった意味を持っています。
以上からも「無辜」が、罪がない、また罪がない人、という意味を持ったことばだとわかります。
「無辜」の類語や言い換え・似た言葉
意味と読みはわかったけど、まだ使いこなせそうにない、というときのために、類語表現を見ておきましょう。
類語を知っていることで代用がきくことや、もともと調べていたことばの理解が深まるということもあります。
役立つ表現を多く知っておくと、語彙の幅が広がりますね。
- 「無実」【むじつ】
- 「無罪」【むざい】
- 「冤罪」【えんざい】
- 「潔白」【けっぱく】
「無実」【むじつ】
「無実」とは、中身がない、という意味から来ていることばで、いくつかの意味があります。
根拠となる事実や実質がないという意味や誠実さに欠ける、といった意味があるのですが、ここではもう一つの意味で使われます。
それは、罪を犯していないのに、罪があるとされること、という意味です。
「無辜」は、罪のあるなしを問われている、という前提がありませんので、その点では「無実」と異なりますが、結果的に罪がない、というところにおいて、類語といえるでしょう。
「無罪」【むざい】
裁判の傍聴に行ったことがなくても、ゲームやアニメ、漫画などでも裁判のようすを知ることができますね。
そんななかで、「無罪」「無罪判決」などのことばを聞いたことは、一度くらいはあるのではないかと思います。
「無罪」とは、刑事訴訟において、被告事件が罪にならないこと、また、罪だという証明のできないことをいうことばです。
本来の意味あいからすると、起訴されている人が、罪がない、もしくは罪が証明できないこと、という意味ですので、罪に問われているという前提があるところが、やはり「無辜」とは異なりますが、結果として罪がない、ということですので、類語表現にあたります。
「冤罪」【えんざい】
濡れ衣、という言い方もできるのですが、罪がないにもかかわらず、罪があるのではないかと疑われてしまうことをいいます。
よく聞かれるものでは、満員電車の中で、その気がないのに痴漢をしたといわれてしまう、といった話でしょう。
その気がなくても触ってしまったときには痴漢とみなされてしまうのかはむずかしいところですが、本人の故意でない、もしくは触っていない場合には、濡れ衣、冤罪となるのではないでしょうか。
ここでもやはり罪に問われていますが、「無辜」の類語として挙げています。
「潔白」【けっぱく】
心のありようや行いが清らかで、後ろ暗いものを持たないこと、またそのさまを指します。
体などが清潔で汚れのない状態や、真っ白なさま、といった意味でも使われています。
このような心のあり方をしている人は、罪がない人といえますので、こちらも「無辜」の類語といえるでしょう。
「無辜」の言葉の使い方
「無辜なる〇〇」「無辜の〇〇」というように、「無辜」である対象がなにか、そしてその対象がどのような境遇にあるか、などが表されることが多いでしょう。
〇〇には人が入ることもあれば、「無辜の祈り」のように、人以外のものが入ることもあります。
前述された意味あいからしても、むずかしい意味のことばではありませんので、文章を読んでいて出てきても、さほど困らずに済みそうですね。
「無辜」を使った例文
それでは「無辜」を使った例文をいくつか見ておきましょう。
意味は簡単でも使い勝手がわからない、という方も多いかと思います。
これから挙げる例文を読むなかで、どのような文脈で使われているかを注意深く見ておくと、今後役に立つでしょう。
- 「無辜」の例文1
- 「無辜」の例文2
「無辜」の例文1
「親が犯罪者であるといっても、無辜の子どもたちがその罪を負う必要はない」
身内に犯罪を犯した者がいると、家族親類に渡るまで、いやがらせや批判を受けることは多々あるようです。
かといって、家族などは犯罪に加担したわけでなく、むしろ犯罪を犯した身内に対し、被害者の家族と同様、心を傷めているものです。
ましてや親が犯罪を犯した、となると、子どもの受ける心の傷は図りしれず、そんな子どもたちこそ、守られるべき、「無辜」なる存在といえるでしょう。
「無辜」の例文2
「歴史上の人物のなかには、無辜のために罰せられたり、殺められた者がすくなからずいる」
真実や正義を貫く、意志の強い人というのは、その強さが諸刃の剣となり罪に問われる、ということが幾度となく繰り返されてきました。
歴史には数々の暗部があり、それらの隠蔽のために濡れ衣を着せられ、世間から葬り去られた偉人は、「無辜」なるがゆえに姿を消した、といえるでしょう。
「無辜の民」
「むこのたみ」と読みます。
紛争や暴動、侵略、クーデターなどが起こるたび、標的となるのは非武装の「無辜の民」ではないでしょうか。
人間生きていれば、ちいさな嘘、ちいさな裏切り、ちいさな罪を犯すことはあるかもしれません。
しかし、世間を賑わすような大きな罪、だれかを悲しませるような大きな嘘をつくことはしていません。
そのような一般の人々のことを「無辜の民」もしくは、「無辜の人々」という語句で表すことができます。
「無辜の祈り」
「無辜の祈り」というタイトルの楽曲が、東日本大震災後につくられています。
善良に慎ましく生きている人々にも、地震や津波、台風や山火事などの災厄が降りかかることはあります。
そうでなくても貧窮にあえぐ人も世界にはあふれています。
そのように罪のない人々が、苦しみや悲しみ、困窮からの救済を求め、祈ることを、「無辜の祈り」ということばで表しています。
「無辜の怪物」
ゲームのなかでこの名前が使われていることもあるようです。
「怪物」というと、理由なく破壊の限りをつくす、というイメージがありますが、人でなく、なにかわからないもののことを「怪物」と呼ぶことができるでしょう。
その場合、かならずしも破壊をするわけではないので、人にとって助言をくれたり、よいものをもたらず「怪物」というのもありえます。
そのような存在を「無辜の怪物」と呼びます。
「無辜」とは、罪がないこと、という意味のことばだとわかりました。
人より楽をしたい、人より儲けたい、人よりいい思いをしたい、など、人間には欲というものがかならずあり、欲があることで奮起、奮闘できるものでもあると思います。
罪を犯さない範囲で、「無辜」なる存在として、実直に、愚直に努力を積み重ねていくことが、結果的に多くの恵みを得ることができるのではないしょうか。