「暖簾に腕押し」の意味とは?類語や使い方、例文を紹介!
お店の入り口などで見かけることのある「暖簾」ですが、「暖簾に腕押し」といわれても意味がわからない、なんて方もおられるのではないかと思います。
ここでは、「暖簾に腕押し」についてご説明していますので、意味が曖昧だな、と思う方はぜひこの機会に見てくださいね。
目次
- 「暖簾に腕押し」の意味とは?
- 「暖簾に腕押し」の類語や言い換え・似たことば
- 「暖簾に腕押し」の使い方
- 「暖簾に腕押し」を使った例文
- 「暖簾に腕押し」の由来
- 「暖簾に腕押し」と「糠に釘」の違い
「暖簾に腕押し」の意味とは?
「暖簾に腕押し」は、手応えがない、張りあいがない、という二つの意味で使われることばです。
和食料理の店の出入り口や温泉などでは今でも見かけることもありますが、「暖簾に腕押し」って、どういう意味?という方は、一度「暖簾に腕押し」する状況を考えてみてください。
暖簾は押しても破れるわけでもなく、すこしぶつかったような感触はあるものの、そのまま流されてひらりと翻ります。
このような手応えのなさ、張りあいのなさを感じるとき、「暖簾に腕押し」ということばが使われます。
- 「暖簾に腕押し」の読み方
「暖簾に腕押し」の読み方
「のれん(に)うでお(し)」と読みます。
「暖」はほかに、「ダン」「ノン」「あたた-かい」などの読みがあります。
「簾」はほかに、「す」「すだれ」などの読みがあります。
そもそもは「ノンレン」と呼ばれたのが、転じて「のうれん」になり、「のれん」に落ち着きました。
禅宗の用語で、寒いときにかける布、という意味で使われていたことから、「あたたかい」「すだれ」と書くのでしょう。
「暖簾に腕押し」の類語や言い換え・似たことば
昔の人はたくさんのことわざなどを知っていたものですが、最近では西洋風の家屋や暮らしが主流となり、日本古来からの文言が失われたり、意味が通じなくなったりしています。
ここで、「暖簾に腕押し」の類語表現として、今ではあまり使われることはなくなったが、どこかで聞いたことがある、というようなことわざ、慣用句をいくつか紹介します。
- 「豆腐に鎹」【とうふにかすがい】
- 「馬の耳に念仏」【うまのみみにねんぶつ】
- 「石に灸」【いしにきゅう】
- 「蛙の面に水」【かえるのつらにみず】
「豆腐に鎹」【とうふにかすがい】
「鎹」とは、ホッチキスの針のようにコの字型をした釘のようなもので、木材同士つなぎとめるのに使う金具のことをいいます。
木材であれば「鎹」でつなげますが、豆腐のようなやわらかいものに「鎹」を打ち込んでも手応えがなく、効き目もない、というところから生まれたことばです。
また、「子は鎹」などといいますが、この場合には、子どもが親の仲を取りもつ、つなぎとめる役割を担ってくれる、という意味のことばになります。
「馬の耳に念仏」【うまのみみにねんぶつ】
どんなに立派なお坊さんの読経でも、聞き手が馬ではその御利益やありがたみをわかってくれない、というところから、どんなに忠告や助言をしても聞き入れず、すこしも効果がない、という意味で使われています。
「あの女がどんなにワルかを教えてやろうとしても、あいつは馬の耳に念仏で聞きやしない」
「石に灸」【いしにきゅう】
石のように硬いものにお灸をすえても凝りがほぐれない(柔らかくならない)という意味から、手応えや効果がないことを言い表すことばになっています。
似たことばに、「土に灸(つちにきゅう)」「泥に灸(どろにやいと)」があり、どちらも地面の上にあるものという連想からできたことばといわれています。
また「石に針(いしにはり)」という語句もあり、こちらは「鍼灸」の「鍼(はり)」から来ていることばになります。
「蛙の面に水」【かえるのつらにみず】
蛙の顔に水を浴びせてもいっこう気にせずにいることから、どんな目に遭わされても平気でいることや、どんなに働きかけても無意味なさま、鈍感であることを表しています。
似たことばに、「蛙の面に小便」というものもあります。
「暖簾に腕押し」の使い方
「〇〇しているが暖簾に腕押しだ」のように、なにごとか働きかけをしているが、それにもかかわらず、意味がない、効果がない、という使い方で使われることが多くあります。
努力や熱意、誠意を伝えても、相手がそれを聞き入れてくれない、という場合に使われます。
「暖簾に腕押し」を使った例文
では具体的に例文を見ておきましょう。
どんなシーンで使えることばなのかわかると、会話などでも使えることもあるのだとわかるでしょう。
「暖簾に腕押し」は積極的に使いたい意味のことばとはいい難いですし、昨今では聞き手に伝わらないおそれもありますが、知っておくと失敗談などを冗談めかしていうときなどにも使えるでしょう。
- 「暖簾に腕押し」の例文1
- 「暖簾に腕押し」の例文2
- 「暖簾に腕押し」の例文3
「暖簾に腕押し」の例文1
「彼は一度怒りだすとなかなか許してはくれず、謝っても暖簾に腕押し状態のことが多々ある」
男女の仲になると、とたんにふだんの人格とちがう、べつの性格が芽生えてしまうような人も多く、そんな人とつきあっていると、「暖簾に腕押し」状態を味わうこともあるかもしれません。
また、片思いの相手に猛アタックをしているのにかわされてしまう、という場合も、「暖簾に腕押し」といえるでしょう。
「暖簾に腕押し」の例文2
「今年の新入部員は勝ち気な男ばかりだ。
いくら指導しても暖簾に腕押しで、我流を貫こうとする」
助言など、相手のためを思った働きかけを聞き入れてもらえない、という場合にも「暖簾に腕押し」が使われます。
若いうちは人からとやかくいわれるのが嫌で、自分なりのやり方を貫いたり、大人になってからも経験や肩書が邪魔をして人の意見を聞き入れられない、ということがあります。
そういう人々に対する助言はたいてい聞き流され、「暖簾に腕押し」となるか、跳ね返されるかのどちらかでしょう。
「暖簾に腕押し」の例文3
「寝ずに考えた企画だったが、役員たちへのプレゼンは緊張のあまりうまくいかず、暖簾に腕押しという結果になった」
魅力が感じられないものに人が心を動かされることはありません。
魅力がない、と感じたものに対して、人は「暖簾に腕押し」という態度になるのは当然といえば当然でしょう。
「暖簾に腕押し」の由来
元来「暖簾」は、屋号を示すために軒先張られる布をいいました。
「暖簾に関わる」といえば、店の品格についていわれることばでしたし、「暖簾分け」といって、独立する者に対して同じ屋号を名乗ることを許す、というようなことばもあります。
「暖簾に腕押し」は、その店に入るため「暖簾」をくぐるときに、なんの抵抗や手応えもない、というところから来たことばです。
また、「腕押し」とは腕相撲のことである、という説もあり、「暖簾」と腕相撲をしたところで勝負は瞬時についてしまう、というところから張りあいがない、という意味が生まれたともいわれています。
「暖簾に腕押し」と「糠に釘」の違い
「糠に釘」は、助言をしても効き目がない、忠告しても手応えがない、という意味です。
「暖簾に腕押し」には、張り合いがない、手応えがない、という二つの意味がありますが、「糠に釘」には、張り合いがない、という意味はないところが違いといえます。
しかしどちらも同じ意味として捉えられ、使われていることも多いですので、周りの人が誤用している、と気づかれても、そのままにしておくほうが無難でしょう。
また、「豆腐に鎹」という類語表現がありましたが、これと混同した「糠に鎹」は完全な間違いですので、気をつけましょう。
「暖簾に腕押し」は、手応えがない、張りあいがない、という意味で使われることばだとわかりました。
「あいつはなにを言っても暖簾に腕押しだ」といわれないよう、いくつになっても他人の意見を聞き入れ、自分の非を認められる大人でありたいものですね。