「仁王立ち」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
日本語には、古くから伝わる言葉が数多く存在していますが、その中でも、比喩的な表現が身近な日常生活の中の会話で使われることが少なくありません。
中国から伝わってきた思想や著名な人の言動が言葉となったことわざや熟語もあるのですが、比喩的な表現は、その言葉を聞いただけで物事を簡単に言い表すことができます。
その中でも「仁王立ち」という言葉があるのですが、皆さんはこの言葉を普段の会話の中で使ったことはあるでしょうか?
何となくニュアンスを理解できる人もいるかもしれませんが、「仁王」自体が理解できない人もいるかもしれません。
ここでは「仁王立ち」の意味を理解するとともに、どのような場面で使われているかを見ていくことにしましょう。
目次
- 「仁王立ち」の意味とは?
- 「仁王立ち」の類語や言い換え・似た言葉
- 「仁王立ち」の言葉の使い方
- 「仁王立ち」を使った例文
- 「仁王立ち」の英語
- 「仁王立ち」の語源
- 「仁王立ち」に似た言葉
「仁王立ち」の意味とは?
「仁王立ち」とは、「仁王像のようにどっしりと立っていること」という意味を指しており、「仁王像が足を広げて力強くどっしりと立っている」状態でもあります。
元々「仁王」は「寺の門や須弥壇前面の両側に置かれた仏法を護持する一対の金剛力士像」のことで、1体は口を開いており、もう一方の1対は、口を閉じており、この両者で「阿吽の相」をなしていると言われています。
- 「仁王立ち」の読み方
「仁王立ち」の読み方
「仁王立ち」の読み方は、「におうだち」となります。
「仁王立ち」の類語や言い換え・似た言葉
何となく威圧的な雰囲気を醸し出している「仁王立ち」は、次のような言葉で言い換えることができるでしょう。
- 「太刀打ちする」【たちうちする】
- 「抵抗する」【ていこうする】
- 「立ち塞がる(ふさがる)」【たちふさがる】
「太刀打ちする」【たちうちする】
「太刀打ちする」が、「仁王立ち」の類義語として同じような意味を持っています。
「太刀打ちする」の意味は、「太刀で打ち合って戦うこと」という意味があるのですが、これが転じて、「まともに張り合って競争すること」という意味に変容してきました。
「この年齢になると、君たちの若さには太刀打ちできないよ」
「まともに太刀打ちしては勝つことができない相手だ」
このような使い方ができます。
「抵抗する」【ていこうする】
「抵抗する」には、「流体中を運動する物体が流れから受ける運動方向と逆向きの力」という意味がありますが、この意味が物理的な面からの解釈となります。
その一方で、「仁王立ち」に近い解釈を考えると、「外部から加わる力に対して刃向かうことや逆らうこと」や「素直に受け入れがたい気持ち」や「反発する気持ち」という意味が最も当てはまる意味でしょう。
「相手の態度に抵抗を感じる僕だった」
「1人で入るには抵抗がある場所なのです」
「私は断固として権力に抵抗していく」
このような場面で使うことができる言葉ですが、私達の身近な生活の中でもよく使われている言葉ではないでしょうか。
「立ち塞がる(ふさがる)」【たちふさがる】
「立ち塞がる」も「仁王立ち」と似ている意味があり、「前に立って進路をさえぎる」、「立ちはだかる」ということを指しています。
「私達の前に、大きな身体をした敵が両手を広げて立ち塞がっていたのです」
このようなセリフを聞いてしまうと、思わず緊迫感が走ってしまいそうです。
「仁王立ち」の言葉の使い方
「仁王立ち」とは、仁王門で有名な「仁王様(阿形、吽形)のような立ち姿」のことで言っていますが、その姿はは「威厳と威嚇」を感じさせる立ち姿の光景です。
「仁王」は仏教の意味合いがとても強いのですが、非常に怖い雰囲気が含まれているので、大きな困難に立ち向かっていくような場合に、この言葉を使うことになるでしょう。
「仁王立ち」を使った例文
では、「仁王立ち」の使っている例文を見ていくことで、この言葉の意味や使い方の理解をさらに深めていくことができるでしょう。
- 「仁王立ち」の例文1
- 「仁王立ち」の例文2
- 「仁王立ち」の例文3
「仁王立ち」の例文1
「仁王立ちになって睨みながらおじさんが怒鳴ったので、子供達は怯えるに泣き出しながら逃げていったのです」
昔の光景で公園でキャッチボールをしていると、近所の庭に投げ込んでしまったボールを取ろうとして、その家に住んでいる「おじさん」に怒鳴られたことがある経験を持っている人もいるのではないでしょうか?
「仁王立ち」の例文2
「父が玄関口で仁王立ちになって待っているので、中々、家の中に入ることができなかった」
門限に間に合わなかった娘さんに、お父さんが起こって待っている光景でしょうか、今でも娘を溺愛するお父さんがいることは、ある意味微笑ましいことかもしれませんが、あまり子供に干渉し過ぎると、親離れできないかもしれません。
「仁王立ち」の例文3
「あの本屋は、いつも店長が仁王立ちしているので、立ち読みがしづらい」
本屋では、立ち読みを許してくれないところもあるのですが、この時の「仁王立ち」がまさにお客さんを威嚇していることになりますね。
でも、これで本当に本を買ってくれるかは疑問です。
「仁王立ち」の英語
「仁王立ちに」を英訳すると、“draw oneself up to one's full height”という表現で例えることができます。
「仁王立ち」の語源
寺の門をくぐる時、「仁王立ち」した2体の像に睨まれた経験を持ったことはないでしょうか?
優しそうな仏の像とは異なり、筋肉隆々のボディビルダーのようで目を「カッ」と見開いている姿がある種の恐怖感を思えてしまいます。
まるで、その寺を守っているようにも思えるのですが、彼ら金剛力士像は、仁王門と呼ばれる門に立っており、その仁王門に配置される像が、金剛力士像で、「仁王像」とも呼ばれます。
彼等、「仁王像」=「金剛力士像」は、サンスクリット語で「ヴァジュラダラ(金剛杵を持つ者)」という意味があります。
金剛杵とは、仏の敵を退治する武器のことで、言わば、敵から寺を守るガードマンが「仁王像」なのです。
このことから、「仁王立ち」という言葉が生まれてきたと考えられいます。
ちなみに右側が阿行像、左側が吽行像と呼ばれており、東大寺の仁王像が有名で、阿形像は口を開き、吽行像は口を結んでいます。
これは、阿形像は声を上げて怒り吽行像は怒りを心に秘めている様子を表していることで、物事の初めと終わり表しているとも言われています。
「仁王立ち」に似た言葉
「仁王立ち」の語源を知ると、ますますこの言葉に関する興味が深くなっていきますが、この言葉には他にも似た言葉があります。
- 「ふんぞり返る」【ふんぞりかえる】
- 「矢面に立つ」【やおもてにたつ】
- 「受けて立つ」【うけてたつ】
「ふんぞり返る」【ふんぞりかえる】
「ふんぞり返る」という言葉がありますが、「威張て自分の身体を後ろへ反らし気味にするような姿勢」のことを指しています。
しかし、このような姿勢をしている人は、「相手に立ち向かう」というよりは、「威張り散らかしている」といった感じが強いかもしれません。
「矢面に立つ」【やおもてにたつ】
「矢面に立つ」は、「やおもてにたつ」と読みますが、この言葉の意味は、「質問、非難や攻撃などをまともに受ける立場に立つこと」という意味になります。
「彼はすさまじい攻撃の矢面に立ってくれたことで、私達が助かったのです」
このように、激しい攻撃から身を持って壁になってくれることで助けられる人がいますが、このように「矢面に立つ」ことは、命がけで立ち向かうことでもあるので、とても勇気のいることでしょう。
「受けて立つ」【うけてたつ】
「お前の挑戦、受けて立ってやろうじゃないか」
このようなセリフをドラマやアニメ番組で聞いたことがあるかと思いますが、「受けて立つ」とは、「相手の働きかけに応じて立ち向かう」という意味があります。
この時の本人は必死になっているかもしれませんが、相手から煽られていることもあるかもしれないので、冷静な判断が必要でしょう。
「仁王立ち」とは、強大な圧力や権力に対して、立ち向かったり、盾となるような印象もあります。
しかし、このような時には、一旦、ひと呼吸置いて冷静に対処する必要があるかもしれませんね。