「モラトリアム」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
「モラトリアム」とは、社会的・職業的に重要な選択をせずに延長していることです。
「モラトリアム」の「意味・類語・言い換え・使い方・例文・英語・反対語・特徴・言葉」などについて、詳しく説明していきます。
目次
- 「モラトリアム」の意味とは?
- 「モラトリアム」の類語や言い換え・似た言葉
- 「モラトリアム」の言葉の使い方
- 「モラトリアム」を使った例文
- 「モラトリアム」の英語
- 「モラトリアム」の反対語や対義語
- モラトリアム人間の特徴
- 「モラトリアム」を使った言葉と意味を解釈
「モラトリアム」の意味とは?
「モラトリアム」という言葉の元々の意味は、戦争・天災・恐慌などの非常事態の時に債務の支払いを一定期間猶予するという「債務支払いの猶予」にありました。
現在では「モラトリアム」は、心理学者のE. H. エリクソンが提案した精神分析学の用語として、発達心理学・精神発達理論の文脈で使用されることが多くなっています。
発達心理学・精神分析におけるモラトリアムとは、精神的・社会的な自立のために必要な「進学・就職・結婚などの心理社会的選択の猶予期間や延期・延長」を意味しています。
青年期以降に果たすべき「社会的義務・責任」を猶予されたり免除されたりしている期間のことを、「モラトリアム」と呼んでいるのです。
複雑化・スピード化・娯楽化する現代社会では、自分の就職・職業選択による「社会的・経済的・心理的な自立」をできるだけ先に延長しようとする「モラトリアム傾向(自己アイデンティティー確立+心理社会的自立の先延ばし傾向)」が強まっているとされています。
「モラトリアム」の類語や言い換え・似た言葉
「モラトリアム」の類語・言い換え・似た言葉には、以下のようなものがあります。
- 「心理社会的選択の延長」
- 「猶予期間・免除期間」
- 「ピーターパン症候群・ニート」
「心理社会的選択の延長」
「モラトリアム」の類語・言い換えとして、「心理社会的選択の延長」があります。
モラトリアムというE. H. エリクソンの心理学用語は、「心理的・社会的自立のための重要な選択を先延ばしにすること」や「仕事・職業に関わる意思決定を今すぐにしないこと」という意味があります。
そのため、「モラトリアム」の類語として、「心理社会的選択の延長」という言葉を指摘することができるのです。
「猶予期間・免除期間」
「モラトリアム」の類語・似た言葉として、「猶予期間・免除期間」があります。
モラトリアムという言葉には、「債務支払いの猶予期間」や「社会的責任・義務の免除」の意味があります。
そのため、「モラトリアム」に似た言葉として、「猶予期間」や「免除期間」という言葉を上げることができます。
モラトリアムという言葉には、本来であれば今すぐに実行しなければならない支払いや責任・義務としての選択を猶予するという意味合いがあります。
「ピーターパン症候群・ニート」
「モラトリアム」の類語・言い換えとして、「ピーターパン症候群・ニート」があります。
現在ではモラトリアムという言葉は、「大人になってもやるべき仕事をせずに自分探しばかりをしている人」や「社会的・経済的な責任を回避して働いていない人」といった意味で使われることが増えています。
「モラトリアム」は、いつまでも幼稚で子供っぽい言動・生き方をする「ピーターパン症候群」や通学せず働いていなくて職業訓練も受けていない「ニート」という言葉に言い換えることもできるでしょう。
「モラトリアム」の言葉の使い方
「モラトリアム」の言葉の使い方は、E. H. エリクソンがモラトリアムという心理学用語を考案した当初には、「心理社会的自立を達成するために必要な社会的責務の免除期間(猶予期間)」という意味で使われていました。
「社会的・経済的な義務」に拘束されずに、自分なりに色々な生き方・物事を考えたり実際の仕事・人間関係を体験したりしていく中で、段階的に社会的自立や職業選択のための準備を整える期間としてモラトリアムは考えられていたのです。
現在では、「モラトリアム」という言葉は、心理的・経済的に自立すべき一定の年齢になっているのに、「社会的な責任・義務・選択」を回避しながら適当に生きている状況・人物のことを指示して使われています。
モラトリアムは元々は「社会的・経済的自立のための準備期間」というポジティブな意味で使われていたのですが、近年では「自分のやりたいことだけをやって働いていない人・心理社会的自立を後回しにして趣味や遊びを優先している人」などのネガティブな意味で使われることが増えています。
「モラトリアム」を使った例文
「モラトリアム」を使った例文には、どのようなものがあるのでしょうか?「モラトリアム」を使った例文について紹介します。
- 「モラトリアム」の例文1
- 「モラトリアム」の例文2
- 「モラトリアム」の例文3
「モラトリアム」の例文1
精神分析家の小此木啓吾先生が指摘されていた「モラトリアム人間」が近年は更に増えているが、その主要な原因として、現代社会の豊かさと友達のような親子関係、娯楽・遊び・格差が増えすぎた時代の流れを上げることができる。
「モラトリアム」の例文2
あなたが就職もせず仕事もせずに、モラトリアムな状態で現実離れした理想論・社会批判ばかりを語っていられるのは、あなたのご両親が一生懸命に働いて日々の生活費を支援してくれているからなのです。
「モラトリアム」の例文3
大きな自然災害や資産が暴落する金融恐慌が発生した場合には、金融システムを正常に維持するため、一時的に銀行・消費者金融などに対して支払い期間を猶予するモラトリアムの法令が出されることになります。
「モラトリアム」の英語
モラトリアムの英語は、“moratorium”になります。
“moratorium”の語源はラテン語の“mora” (遅延)にあり、そこから“morari” (遅延する)という言葉が派生しました。
モラトリアム“moratorium”という言葉には、「遅延・猶予・延長・延期・停止」などの今すぐには求めないとか今すぐには決めないとかいった意味が込められているのです。
「モラトリアム」の反対語や対義語
「モラトリアム」の反対語・対義語として、「心理社会的な自立」「自己アイデンティティー(社会的アイデンティティー)の確立」「即時決済・即時返済」があります。
「モラトリアム」は青年期以降の自立すべき大人になっても、職業選択・就職などの社会的アイデンティティー確立をせずに延長するという意味があるので、その反対語・対義語として「心理社会的な自立」「自己アイデンティティー(社会的アイデンティティー)の確立」を上げることができます。
支払い期間の猶予という意味のモラトリアムの反対語・対義語としては、「即時決済・即時返済」があります。
モラトリアム人間の特徴
モラトリアム人間の特徴として、「社会的責任の回避傾向」や「心理的・経済的自立への消極性」を上げることができます。
モラトリアム人間はできるだけ長く、「学生的・自由人的な身分や立場」を維持しようとする特徴があり、就職・職業選択などによって自己アイデンティティー(社会的アイデンティティー)が一義的に決定されてしまうことを嫌うのです。
現代では性的な成熟を遂げても、「高学歴化・友達親子」などの影響によって、20歳以降の大学生でも親に経済的・精神的に依存する度合いが強く、大学時代には多くの学生が「社会的経済的な義務を免除されたモラトリアム期間の状態」にあります。
モラトリアム人間は理想が高くて自意識過剰であり、「普通の人・平凡な仕事・並の人生」を嫌って、「特別な自分・理想の仕事」を求めていつまでも心理社会的な意思決定(職業選択・経済的自立の決断)を下すことができず、長期間にわたってモラトリアム状況を延長しやすいのです。
「モラトリアム」を使った言葉と意味を解釈
「モラトリアム」を使った言葉とその意味を分かりやすく解釈していきます。
- 「モラトリアム遷延」
- 「モラトリアム社会」
「モラトリアム遷延」
「モラトリアム遷延」という言葉は、「社会経済的自立につながる選択(決断)をしない無責任なモラトリアム状態がいつまでも続くこと+ずっと自立のために重要な選択(決断)を先延ばしにすること」を意味しています。
「遷延」という言葉には、「今すぐにせずに延び延びになること+今すぐに決められずに延長されていくこと」といった意味合いがあります。
「モラトリアム社会」
「モラトリアム社会」という言葉は、精神分析家のE. H. エリクソンや小此木啓吾も使っていた用語で、「社会的責務を免除されたモラトリアムな働いていない若者の存在を容認する現代社会」のことを意味しています。
「モラトリアム社会」は、「豊かになった家庭(児童労働の禁止)・高学歴化・過保護な親子関係・複雑化高速化する社会・インターネットや娯楽的要素の急増」によって形成維持されている側面があるのです。
「モラトリアム」という言葉について徹底的に解説しましたが、モラトリアムには「進学・就職・結婚などの社会的選択の猶予期間や延期(自己アイデンティティーの未確立)」や「法令による債務支払いの猶予」などの意味があります。
モラトリアムの類語・言い換え・似た言葉としては「心理社会的選択の延長」「猶予期間・免除期間」「ピーターパン症候群・ニート」などがあります。
「モラトリアム」という言葉について詳しく調べたい時は、この記事を参考にしてみて下さい。