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「覚束無い」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!

今年も残すところわずかとなりました。

年末には飲み会等のイベントも多くなり、夜の街には覚束無い(おぼつかない)足取り人を多く見掛けるようになります。

では、「覚束無い」とは実際どういうことを言うのでしょうか。

ここでは「覚束無い」という言葉についてご紹介します。

覚束無い

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「覚束無い」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!>


目次

  • 「覚束無い」の意味とは?
  • 「覚束無い」の類語や言い換え
  • 「覚束無い」の使い方
  • 「覚束無い」を使った例文と解釈
  • 「覚束無い」の語源
  • 「覚束無い足取り」の意味
  • 「覚束無い」の英語


「覚束無い」の意味とは?

「覚束無い」の意味とは?

「覚束無い」という言葉は、微妙にニュアンスを変えて広範囲に使われることが多いです。

大きく分けると、大体4つのグループになります。

まず、不確かではっきりしない様子、ぼんやりしている、不鮮明である…といった「不確実性」のグループがあります。

また、先行きが不安定でうまくいきそうにないこと、疑わしくだめになりそうなこと…という「否定的・悲観的」な意味もあります。

ほかに、「信用や保証が足りないこと」「心許ない、頼りない」といった意味もあります。

  • 古典の中の「覚束無い」
  • 「覚束無い」の読み方

古典の中の「覚束無い」

古典では「覚束無い」の使われ方がさらに多岐に渡り、徒然草では「不審である、疑わしい」という意味を含んでいます。

(「時代や違いはべらん。おぼつかなくこそ」。意味「時代が違うのではないでしょうか。疑わしいと思います」)。

平家物語では「心配、気がかり」という意味で使われています。

(「主のおぼつかなきに、」意味「主が心配なので、」)です。

また、和泉式部日記では「ご無沙汰している、疎遠になった」という意味を持ちます。

(「心よりほかにおぼつかなくなりぬるを」意味「思ってもみずにご無沙汰してしまい」)です。

そして、古典では、恋愛におけるシーンでも「覚束無い」は好んで使用されます。

伊勢物語では「もどかしい、会いたい」という意味が込められました。

(「おぼつかなくおもひつめたるを」意味「もどかしく思い詰めて」)となります。

「覚束無い」は、心の機微、微妙なニュアンスを表現できる、便利で使いやすい言葉でした。

「覚束無い」の読み方

読み方は「おぼつかない」です。

万葉集や源氏物語など、古典に多く登場する言葉でもあります。

音ではよく耳にしていますが、漢字で表記されているものを見る機会があまりないので、一瞬「何て読むのかな」と頭をひねる人も多いのではないでしょうか。

「かくそくない」などと、読み間違える人もいるかもしれません。

この機会にしっかり覚えましょう。



「覚束無い」の類語や言い換え

「覚束無い」の類語や言い換え

「覚束無い」の意味が広範囲であるように、類語も分類によって様々あります。

「不確実性」をいう場合は、「あいまい」「あやふや」「おぼろ」「ほのか」「未定」「不明」などになり、「否定的・悲観的」の類であれば、「あやしい」「いかがわしい」「胡散臭い」「いぶかしい」などになります。

また、「信用や保証が足りないこと」では、「危ない」「疑わしい」「不確実」などで、「心許ない、頼りない」の意味の類語は、「心許ない」「頼りない」「不確か」「危うい」などです。

「覚束無い」という言葉そのもののように、類語や言い換えも微妙にリンクし合いながら「覚束無い」の輪郭をなぞっています。

「覚束無い」の使い方

「覚束無い」の使い方

「おぼつかない」と言えば、「足元が覚束無い」という言葉をよく耳にします。

「覚束無い手つきだ」というような使い方もします。

普段通りではない、正常ではないというニュアンスを含むものは日常でもよく使われています。

職場でも「覚束無い仕事ぶりだ」「あの人に任せるのは覚束無いな」など、主に否定的な要素を含んで使われたりします。

また、自身の事を「~覚束無い」などと使う場合は、不安や自信の無さを表現している場合が多いです。

会話中に相手のことを「覚束無い」というと、否定的意味合いが強くなりますので、気をつけて使いましょう。



「覚束無い」を使った例文と解釈

「覚束無い」を使った例文と解釈

では、「覚束無い」を使った例文と解釈にはどのようなものがあるのでしょうか。

以下いくつか挙げてみます。

  • 「覚束無い」の例文1(不確実性・否定的、悲観的)
  • 「覚束無い」の例文2(心許ない・不確か)
  • 「覚束無い」の例文3(否定的、悲観的)

「覚束無い」の例文1(不確実性・否定的、悲観的)

「睡眠不足で、会議の資料がきちんと出来ているか覚束無い」

仕事の場面で、そういう事を言われると困りますね。

この場合、「はっきり覚えていない」「朦朧としている」などの意味のほかに、自分自身の不摂生を言い訳にして自嘲気味に言っているような、そして、不安や自信の無さを匂わせるような、複雑なニュアンスも感じられます。

「覚束無い」の例文2(心許ない・不確か)

「歩き始めたばかりで、まだ、足元が覚束無い」

これは、ハイハイを卒業し、歩き始めたばかりの我が子について話す両親…というシチュエーションです。

謙遜しているような雰囲気も感じ取れますし、子どもの成長を喜んでいるようなイメージも沸きます。

我が子を指す場合に使う「覚束無い」は問題ありませんが、他人の子どもに対して、「足元が覚束無い」というのは、やや失礼なニュアンスを含む言い方ですので、控えた方がいいでしょう。

「覚束無い」の例文3(否定的、悲観的)

「そんな練習の仕方では、インターハイどころか、県大会出場も覚束無い」

高校の部活動などで、コーチが生徒に言うような場面です。

一見、否定的、悲観的な使われ方ですが、さらに高みを目指して、選手を鼓舞している意味合いも含みます。

深読みすれば「もっとしっかり練習して、上を目指そう」というメッセージも読み取れます。

「覚束無い」の語源

「覚束無い」の語源

「覚束無い」の語源はどこにあるのでしょう。

はっきりしたことは言えませんが、古くは万葉集にみられた言葉であり、以降、物語や随筆で随所にそれぞれ違う意味合いを持ちつつ、使用された言葉でもありました。

古典の時代から、広範囲に微妙に含みを持たせることのできる便利な言葉でした。

「おぼ」の語源は、「おぼろげ(朧げ)」からきており、はっきりしないという意味があります。

「不覚」「覚」が当てられました。

「つか」「ふつつか(不束)」「つか」、接尾語です。

そこに「無い」がプラスされます。

漢字では「無い」が当てられますが、「おぼ」自体に「不確かさ」を表す意味があるので、「ない」は、本来の「無い」という意味ではありません。

「覚束無い」はいくつかの単語を組み立てたもので、漢字自体はあて字になります。

「覚束無い足取り」の意味

「覚束無い足取り」の意味

主にお酒に酔った人や、病気の人、身体が弱っている人の歩き方を表すことが多いです。

ふらふらしていて、右に行ったり左に行ったり、千鳥足で、今にも倒れそうな様子をいいます。

また、刑事ドラマなどで逃亡犯の追跡を指す場合は、物的証拠や目撃情報などが少なく、犯人逮捕のめどが立たないことを言うこともあります。

「覚束無い」の英語

「覚束無い」の英語

「覚束無い」の多岐にわたる、微妙なニュアンスを英語に置き換えるの難しく、それぞれの日本語にいくつかの候補があります。

一例としては、“uncertain”“unsure”“doubtful”“dubious”“vague”“faint”“shadowy”“dimu”などです。

よく使われる「足元が覚束無い」の英文は、“tobeunsteadyonone'sfeet”です。

「記憶が覚束無い」の場合は、“treacherousmemory”です。

icon まとめ

いかがでしたか。

「覚束無い」という言葉は広範囲にニュアンスを変えて、日常の様々なシーンで使われていることがわかりました。

また、古典でも愛用されている言葉だと知ることができました。

その言葉の持つ曖昧さ、ふところの深さが、日本人の心の機微を上手に表現し、古来から現代の暮らしに浸透し根付いていったのです。

「覚束無い」の奥深い意味と正しい使い方を知り、年末はしっかりとした足取りで、新しい年を迎える準備をしましょう。