「レトリック」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
赤ちゃんに語りかけるときと、小学生に話すとき、同僚との会話と上司との会話、親に対しての物言いなど、人は話す相手によって、自分の伝えたいことがより伝わりやすくなるよう、工夫することがあると思います。
ここではそんな、人への伝え方のテクニックである「レトリック」ということばについて紹介します。
目次
- 「レトリック」の意味とは?
- 「レトリック」の類語や言い換え・似たことば
- 「レトリック」の使い方
- 「レトリック」の具体
- 「レトリック」の英語
- 「レトリック」が誕生した理由や由来
- 日本古来の「レトリック」
「レトリック」の意味とは?
「レトリック」は日本語では修辞学ともいい、巧みな表現のことや、そのような表現のための技法のことをいいます。
たとえば似顔絵を描くとき、描く相手の顔のなかで特徴的な部分を誇張して描く技法などがありますが、そんなふうに、相手に伝わりやすくするための、文章表現における技法のこと、といえばすこしわかりやすいでしょうか。
「レトリック」の類語や言い換え・似たことば
文章技法、表現技巧、美辞学などと言い換えることは可能でしょうが、「レトリック」の類語や言い換えのことば、似た表現を知るよりは、「レトリック」とは具体的にどのようなものがあるのか、その分類を知るほうが便利でしょう。
「レトリック」の種類という項目で後述しておりますので、そちらをあわせてご覧ください。
「レトリック」の使い方
「あの作家の巧みなレトリックに、読者はいつも痛快な気分を味わうことになる」
「ここまでレトリックに優れた作文を中学生が書けるとは驚きだ」
「レトリック」はこのような使い方ができます。
「レトリック」ということばを知っておくことも重要ですが、具体的に「レトリック」にはどのようなものがあるのか、ということが最大の関心事ではないでしょうか。
「レトリック」の具体
それでは、「レトリック」にはどのような種類のものがあり、実際にはどのように使われているのか見ていきましょう。
ふだん読んでいる本のなかにもさまざまな文章表現のうえでの技法が使われていることに気づくかもしれませんし、自分自身がだれかに話した内容のなかにも、実は「レトリック」が使われていた、なんてこともあるかと思います。
- 「誇張法」【こちょうほう】
- 「倒置法」【とうちほう】
- 「反復法」【はんぷくほう】
- 「比喩法」【ひゆほう】
- 「擬人法」【ぎじんほう】
- その他の「レトリック」
「誇張法」【こちょうほう】
「友人が買ってきてくれたおまんじゅうのあまりのおいしさに、思わずほっぺが落ちそうになった」
どんなものを食べてもほっぺは落ちませんので、事実かどうか、というところだけを見ると、これは嘘になります。
しかしながら、そのおまんじゅうのおいしさを、食べていない人にも伝わるようにいうには、現実には起こっていない、ほっぺが落ちるという事象を使って表現する、という方法になります。
現実よりものごとを大きくいったり、逆にちいさくいうことを、誇張法といいます。
「倒置法」【とうちほう】
「遊園地で忘れられない時間を過ごそう」というのと、「忘れられない時間を過ごそう、遊園地で」というのでは、ずいぶん趣きがちがいます。
後者は倒置法という「レトリック」で書かれており、文章の語順を入れ替える方法のことです。
語順が変わることで余韻のある文章になります。
キャッチコピーや俳句などでもよく使われる表現法で、印象的な表現になることが多々あります。
「反復法」【はんぷくほう】
「松島やああ松島や松島や」という松尾芭蕉の句でも有名な「レトリック」、反復法です。
同じ語句を繰り返すことにより、その語句を強調し、印象づけるとともに、余韻を残す表現となっています。
歌詞などでも、「会いたくて会いたくて」や「前へ前へ」などと繰り返すフレーズにより、気持ちの強さなどを強調する技法として使われています。
「比喩法」【ひゆほう】
比喩法には、直喩、暗喩、換喩、提喩の四つがあり、あるものごとを、同じ要素を持つ別の語句や表現に言い換えることで、わかりやすく伝える、というよさがあります。
「君は天使のようだ」というのが直喩であれば、「君は天使だ」と言い切るのが暗喩です。
どちらも、天使であるというのは事実ではありません。
「今日はバッハの気分だ」には換喩が使われ、この文章を見ただけで、ほとんどの人が、バッハの音楽を聞きたいのだ、ということがわかります。
「花見にはビールがつきものだ」には提喩が使われ、花見とは多くの場合、桜の木を見ることを意味するのだとわかります。
「擬人法」【ぎじんほう】
「風が笑っている」や「鳥が慰めてくれる」のように、人でないものが、まるで人になったかのように表現する「レトリック」を、擬人法といいます。
現在はさまざまなゆるキャラや、国や建造物の擬人化キャラクターなどがありふれていますので、わかりやすい表現であると同時に、人間以外の気持ちを汲み取り、代弁するのにも有効とされています。
生徒が机を叩いたときに、「机が泣いていますよ」などというのも擬人法の表現になります。
その他の「レトリック」
ほかにも擬態法、体言止め、反語法、逆説などが日本で一般的に使われている「レトリック」としてありますが、伝統的なものでは二百種類近くの分類があるとされています。
より高度な文章テクニックを身につけたい、という方は、「レトリック」を深く学ばれるのもいいでしょう。
「レトリック」の英語
英語では“rhetoric”と書きます。
辞書によっては、修辞学、修辞法という意味のほかに、誠実さや意味のない華美な文体や、大げさな美辞麗句のことを意味する、というものもあります。
意味がない、大げさだ、とする一方で、そのような表現を巧みに使うことが、ビジネスや政治などにおいても重要な要素であることは否めません。
「レトリック」が誕生した理由や由来
話し方、弁論などを意味する「レトリケ」というギリシア語が語源とされています。
古代ギリシア時代すでに議論や弁論を交わしていたという人々には、説得力のあるプレゼンが求められたことから、このようなことばとさまざまな技法が生まれたのですね。
日本古来の「レトリック」
「レトリック」のなかには、日本にしか見られないものもあります。
文化や風習により、日本固有の「レトリック」が生まれたわけですね。
とくに、和歌や俳句の世界にはいまでも色濃く、日本だけの「レトリック」が残っています。
具体的にどのようなものがあるか、すこし見ておきましょう。
- 「枕詞」【まくらことば】
- 「本歌取り」【ほんかどり】
「枕詞」【まくらことば】
和歌などで、あることばの前に、習慣的におく修飾語のことをいいます。
百人一首などよくご存知の方は、このことばが来たら、つぎはこれが来る、というのを感覚的に知っている方もおられるかもしれません。
「あしひきの」とくれば、そのあとには山や峯が来るとされており、実際に百人一首でも、「あしひきのやまどりのおのしだりおの」とつづきます。
「本歌取り」【ほんかどり】
有名な過去の和歌などから一節をとり、それに加えて新たな和歌をつくる技法をいいます。
高度なようですが、これがずいぶん流行ったのか、藤原定家の時代にはある程度のルールまで設けられています。
過去の素晴らしい歌を知っていて、しかもそれを新たに書き換えた和歌がつくれるというのは、教養と創作力がどちらも備わっていることを周囲に知らしめるためにはよい技法だったのかもしれませんね。
「レトリック」は、自分の伝えたいことが、よりいっそう伝わるようにするための、表現技法のことでした。
いつもいつも大げさなことをいっていると、あの人はよく話を盛る、などといわれかねませんが、相手によって表現を変えたり、創作のなかでのテクニックとして知っておかれると、より自分のいいたいこと、伝えたいことが伝わりやすくなる場面もあるのではないでしょうか。