「紆余曲折」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
人生を振り返った際に、ほとんどの方が「すんなりといく事ばかりでなかったな」と思う事でしょう。
むしろ、最初の想定通りに事が進む方が珍しかったりします。
特に社会人ともなれば、そうした不慮の事態もふまえて行動しなければなりません。
本項ではそうした事例をあらわす「紆余曲折」について解説します。
目次
- 「紆余曲折」の意味とは?
- 「紆余曲折」の類語や言い換え・似た言葉
- 「紆余曲折」の言葉の使い方
- 「紆余曲折」を使った例文
- 「紆余曲折」を分解して解釈
- 「紆余曲折」を使った言葉
「紆余曲折」の意味とは?
おおもとの意味としては、「蛇行や分岐など、一本道でない複雑な道のり、または道そのもの」を指す言葉でした。
これが転じて「物事が推移していく上で、完了にいたるまでに、一筋縄ではいかない難題や様々な局面を経ていった事」を表すようになりました。
現在では後者の方がより一般的で、会話の中にも登場しうる使い方といえます。
普通この言葉は、何かが終わった後にそれを振り返るものであり、作業中に起こっていることがらに対して「この紆余曲折が」などとは言いません。
- 「紆余曲折」の読み方
「紆余曲折」の読み方
「うよきょくせつ」と読みます。
「紆」のみ見慣れない漢字ですので詳しく解説しますと、訓読みでは「まがる」「めぐる」「まとう」「まつわる」などの読みがあり、このいずれからも、ある点からある点への経過をあらわす(しかも、真っ直ぐでない)事が連想できます。
「紆余曲折」の類語や言い換え・似た言葉
- 「試行錯誤」【しこうさくご】
- 「悪戦苦闘」【あくせんくとう】
- 「すったもんだ」【すったもんだ】
- 「多事多難」【たじたなん】
- 「波乱万丈」【はらんばんじょう】
- 「茨の道」【いばらのみち】
「試行錯誤」【しこうさくご】
取り組むものが初めから終りまで上手くいくというのは、なかなかないものです。
特にそれが初めての試みであった場合、数々の失敗を経て調整し、進めていくことを初めから想定に入れておかなければなりません。
試行は字の通り試す事、錯誤は間違う事を意味し、英語でもそのまま「トライアル・アンド・エラー」という言葉があります。
「悪戦苦闘」【あくせんくとう】
悪戦の字が示す通り、非常に困難な作業を、あれこれと苦心しながら必死に進めていくさまを表す言葉です。
場合によっては本人の能率や要領の悪さで、簡単なものをわざわざ難しく「悪戦」にしている事もありますが、いずれの場合もこの言葉を用いる事ができます。
例文としては「育児に悪戦苦闘する」などが挙げられます。
「すったもんだ」【すったもんだ】
非常に砕けた、そしておどけた言い回しで、「すったもんだがありまして」などと、口上の前置きに使われる事があります。
漢字では「擦った揉んだ」となり、一口では説明できない摩擦や揉め事の色々を、ひとまとめにして表した言葉です。
上記のように名詞としての他、「すったもんだした」と副詞的に使う事もできます。
「多事多難」【たじたなん】
色々と事件・難題が多い事をこう表現します。
多事だけでは出来事のあれこれに過ぎませんが、そこに多難が加わっている事で、特に否定的な困難や災難をまとめて言う場合に用います。
従って例えば結婚式のスピーチなどで「二人は多事多難の末…」などと言ってしまっては「何か揉め事があったのか」と誤解されてしまいますので、注意が必要です。
「波乱万丈」【はらんばんじょう】
波瀾万丈とも書き、読みは「はらんばんじょう」です。
物事が今にいたるまでに複雑に変化し、様々な積み重ねを経てきた事を指し、紆余曲折と非常に似通った意味を持ちます。
波乱は波が乱れるさま(波瀾だと大きな波そのものを表す)であり、万丈は丈(たけ)が万(よろず)に伸びる、つまり非常に長く深遠なさまを表します。
このことから、特にその経緯が劇的で激しかった場合に用いるのがふさわしい言葉といえるでしょう。
「茨の道」【いばらのみち】
茨(いばら)の道とは、棘のある茨が敷き詰めてある道を歩いて行くのが困難なように、いくつもの苦難が待ち受けている状況を表した比喩の言葉です。
しかし多くの場合、その道は当人が敢えて挑んでいるものであり、思いがけず出くわした問題という意味は薄いという点が、「紆余曲折」との違いといえます。
「紆余曲折」の言葉の使い方
進捗に合わせて予算を何度も変更した、または予算に間に合うように何度も仕様を変更した。
またシステムデータの一部が消失してその部分をやり直す羽目になったりと、とにかく色々な苦労があった。
などと、一口では説明しきれないあれこれを、一口にまとめてしまって振り返る際に使います。
ここで重要なのは、その「あれこれ」は、物事の完了を妨げるような否定的なことがらであり、楽しかった事や嬉しかった事などは、基本的にその範囲外として区別されます。
また、この言葉が使われるのはあくまで成功した事例、完了した事例についてであるのが普通です。
「紆余曲折」を使った例文
- 「紆余曲折」の例文1
- 「紆余曲折」の例文2
- 「紆余曲折」の例文3
「紆余曲折」の例文1
「彼の人生は、紆余曲折しながらも実りの多いものとなった。実際ああした困難がなければ、人は成長できないものだ」
「紆余曲折」の例文2
「山中の樹海に足を踏み入れたが、そこは人が通れる隙などほとんどなく、あったとしても自然の紆余曲折が行く手を不確かなものにしていた」
「紆余曲折」の例文3
「紆余曲折の末、ようやく予算が通った」
「紆余曲折」を分解して解釈
- 「紆余」
- 「曲折」
「紆余」
紆余には「うねうねと曲がっている事」「広くのびのびとしたゆとりが見られる事」の二つの意味がありますが、当然この場合は前者として用いられます。
「紆」の漢字の成り立ちについては、「迂回」などに見られる通り、「于」の字自体に「長いものが曲がりくねる」という意味があります。
ここにさらに糸へんが絡む事で、複雑な道筋を表現しているという事です。
「曲折」
こちらも曲がりくねった様を表し、「山道の行く手が急に曲折している」などと使います。
また紆余同様に、この一語だけでも様々な問題が絡んだ、複雑な事情という意味でも用いる事ができます。
「紆余曲折」を使った言葉
- 紆余曲折を経た、紆余曲折があった
- 紆余曲折する道
- 紆余曲折を思い返す
紆余曲折を経た、紆余曲折があった
この言葉そのものに「曲がりくねった道」という意味がありますから、様々な局面を乗り越えてきた、という意味で「経る」、もっと直接的にこうした難題があった、という意味で「ある」と、いずれも用いることができます。
紆余曲折する道
こうした本来の意味での使われかたの方があまり一般的ではなくなってしまった上に、現代では道路や交通も整備され、「紆余曲折」した道は少なくなりました。
現存する「紆余曲折」を一つ例示するならば「いろは坂」でしょうか。
日光の中禅寺湖付近にあるこの山道は、大小48箇所もの急な曲がり角が存在し、バスでここを訪れた修学旅行中の学生たちにとっても、忘れられない思い出の一つとなっているようです。
紆余曲折を思い返す
大きな仕事に携わっている最中とそれを成し遂げた後とでは、物事の大変さへの自身の印象もだいぶ変わっていた、という経験が誰しもおありでしょう。
後から考えるとよくあんな事ができたな、こんな事に対応できたなと、自分でも不思議に思う事があるはずです。
「喉元すぎれば何とやら」とよく言われるように、懸命に頑張っている時は目の前の困難を一つ一つ潰していく他なく、気付いてみれば終わっていた、という事もままあります。
その原動力は集中力なのか、あるいは脳内物質の働きなのかは定かではありませんが、あまり最初から全体を見て怖気づくよりも、とにかく着手してみる事が成功につながるという事でしょう。
「苦労は買ってでもしろ」とはよく言うものの、何かをやり遂げるのに苦労はしたくないというのは、誰しも思う事でしょう。
しかし後から省みてみれば、困難だらけだったプロジェクトも良い思い出であり、それは必ず自分の血肉になっているはずです。
失敗を恐れすぎずに、物事にぶつかっていく逞しさを身に付けましょう。