「満腔」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
困っているうえに、周りに声をかけてくれる人もいない。
そんなとき、するりと手をさしのべてくれた人に、感謝の気持ちを伝えたい。
ドラマチックな展開に感じられますが、現実でもそんなできごとはあるものです。
全身からにじみ出るような気持ちを表すとき、あなたはどんなことばを思い浮かべますか?
ここでは「満腔」ということばについて説明していきます。
聞いたことがあるようなないような、という方も、ぜひ一読ください。
目次
- 「満腔」の意味とは?
- 「満腔」の似たことばや類語・言い換え
- 「満腔」の使い方
- 「満腔」を使った例文
- 「満腔」を使ったことば
- 「満腔」は嫌われ者?
「満腔」の意味とは?
体中、満身、体全体、全身といった意味になります。
「腔」は、体を表す「月」に、音の記号である「空」が入っています。
「空」とは中身がなく、からっぽであることを意味しており、「腔」でもその意味で使われています。
からっぽを意味するのに、「満腔」が全身、という意味なのは不思議な感じもしますし、哲学的でもありますね。
- 「満腔」の読み方
- 「腔」を使ったことば
「満腔」の読み方
「まんこう」と読みます。
「満」にはほかに、「バン」「み-ちる」「み-たす」という読みがあります。
「腔」にはほかに、「クウ」「から」「からだ」という読みがあります。
「クウ」という読みがあることから、「まんくう」と読みたくなるかもしれませんが、誤読となりますので注意してください。
鼻の穴の奥にある空洞のことを「鼻腔」と書いて、「びこう」と読みますが、こちらは医学用語では「びくう」と読み、これは誤読とはなりません。
「腔」を使ったことば
「口腔」は口からのどまでの、口の中の空間をいいます。
「こうこう」と読みますが、医学用語では「こうくう」と読みます。
「口腔外科」などで聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。
「鼻腔」は先述しましたが、「副鼻腔炎」などでご存知の方もいらっしゃることと思います。
鼻の奥にある空洞、副鼻腔に膿が溜まる病気で、蓄膿症と同時に知られることの多い病気です。
また、クラゲやサンゴ、イソギンチャクなど、特定の臓腑を持たない動物を、「腔腸動物」「腔腸類」といいます。
「満腔」の似たことばや類語・言い換え
全身を意味する、というのはわかりましたが、まだそれを「満腔」というのはしっくりこない、という場面もあるでしょう。
ほかにどのような言い換えができるか、一緒に見ておきましょう。
使い慣れてくると、この場面ではこちらのほうが語感にあう、など繊細なことば選びができるようになっていきますよ。
- 「五体」【ごたい】
- 「全身全霊」【ぜんしんぜんれい】
「五体」【ごたい】
書道の世界では、五つの書体を総じて「五体」といいますが、ここでは体に対して使われる「五体」の意味になります。
頭部と両手、両足、または頭部、くび、胸、手、足をあわせて「五体」といい、転じて全体を指し示すことばになります。
また、漢方では筋、血脈、肌肉(きにく)、骨、毛皮を指します。
体のどの部分にも欠けたところがないようすを、「五体満足」などというほか、「五体を震わせて泣く」というような場面で、全身を意味する「五体」が使われています。
「全身全霊」【ぜんしんぜんれい】
大仰な言い方に聞こえるかもしれませんが、心身、という意味です。
「身」は肉体、「霊」は精神を表し、その人の持ちうるすべての体力と精神力を総合した言い方になります。
心もその人の一部だ、とあえて断じるところが、「満腔」との違いでしょう。
「満腔」の場合には、それが精神的なものである、という感情を示すことばと組み合わせることで、心身の状態を表します。
「全身全霊を捧げ、研究に打ち込む」
このように、備わっている力のすべてを尽くして、というかたちで使われることが多いことばになります。
「満腔」の使い方
「満腔の〇〇」のように、特に感情を表す〇〇を修飾するかたちで使われることが多くあります。
〇〇を強調する場合などに、その強度を高く保つためのことばとして使われます。
ほかに、後述しますが、「満腔春意」など四字熟語のなかに含まれる場合があります。
「満腔」を使った例文
「満腔の〇〇」とは具体的にどんなものが考えうるのか、わからない方も多いと思います。
これから例文のなかで具体例を挙げていきます。
文章のなかでどのような使われ方をしているか見ることで、実際にそのことばを使うときの参考になり、応用がきくようになることも多くありますよ。
- 「満腔」の例文1
- 「満腔」の例文2
- 「満腔」の例文3
「満腔」の例文1
「財力を餌に人を釣るという彼の手法には、満腔の反感を覚える」
〇〇に入るのは「反感」になります。
全身で反感する、というのですから、断固として認めない、という気持ちを表しているといえます。
どうしても許せないことがあるときなどに使うと効果的でしょう。
感情の強度を強めているのがわかりますね。
「満腔」の例文2
「彼女は料理研究会が正式なクラブとして認められるようになるため、日夜、満腔の熱情を注いでいる」
〇〇は「熱情」です。
プラスにしろマイナスにしろ、主となる人の感情を表している、というのが特徴です。
「満腔の熱情」は、全身全霊で、というのとよく似た表現といえるでしょう。
この場合は、没頭する、奔走する、なども同じような意味あいで使うことができます。
「満腔」の例文3
「五千人が刮目するなか、一度のミスタッチもなく演奏を終えた彼女には、満腔の敬意を表する」
今度は〇〇に「敬意」が入りました。
ほかにも、「満腔の不平」「満腔の同情」「満腔の喜び」など、さまざまな感情の強度を強める場合に、「満腔」を使うことができます。
全身で、というとすこし安っぽくなってしまいそうな場面では、「満腔」ということばを知っていると役立つことがありそうです。
「満腔」を使ったことば
さまざまな使い方ができることはわかりました。
では、一般的に「満腔」が使われることばを説明していきます。
定型文として実用できるものですので、覚えておくと便利でしょう。
なにごとも型から入りたい、という方もこちらは必見です。
- 「満腔の謝意」
- 「満腔春意」
「満腔の謝意」
本の最後に、関係者の名前など挙げて、「満腔の謝意を」と書いたりします。
お世話になった人、助けられた、救われた経験をしたとき、その人に対しての感謝を表すことばです。
これ以上ないくらいの感謝、という強い意味を込めたいときに使われます。
「川で溺れかけていた次男を救ってくれたという男性を、どうか見つけだし、満腔の謝意を示したい」
謝意には、感謝の意味と、お詫びの意味とがありますので、「満腔の謝意」もどちらにも使えることばになります。
「満腔春意」
「まんこうしゅんい」と読みます。
人を祝うことばです。
春のようになごやかな気分が全身に満ちている、という意味になります。
「春意」は春めいた、のどかな春のような気分、という意味のことばです。
俳句では季語としても好まれ、使われることばでもあります。
「満腔」は嫌われ者?
そもそも、まったく悪い意味は含まれていない「満腔」ですが、女性器の隠語に読みが限りなく近い、ということから、忌避される場合もあります。
たとえばお祝いの席での祝辞などで使うと、「満腔」ということばの意味が伝わらない場合、不自然な空気になってしまったり、場違いなジョークのようにとられ、ひんしゅくを買う可能性もあります。
自信がない場合は、書面など、明らかに「満腔」であることが読みとれるシーンで使われるといいでしょう。
「満腔」とは、全身を意味することばでしたね。
だれかに対して、心の底からの感謝を伝えたい、というときに、「満腔の謝意を表します」なんてさらりといえると素敵です。
昨今ではヤバイ、というどんな場面にも柔軟に変形してくれる便利なことばがありますが、本心からの素直な心、真面目な気持ちを伝えることばも、日本人として知っておきたいところです。