「十把一絡げ」の意味とは?類語、対義語やその由来を紹介!
現代では物事が多様化の一途を辿っていますので、むやみやたらに「〜系」などと線引きがされているのが目に付きます。
一方で目を向けるべき事をなおざりにしている事も多く、それらは「十把一絡げ」などと呼ばれます。
これは一体どういう言葉で、どのような成り立ちがあるのでしょうか。
目次
- 「十把一絡げ」の意味とは?
- 「十把一絡げ」の類語や言い換え
- 「十把一絡げ」の使い方
- 「十把一絡げ」を使った例文
- 「十把一絡げ」を分解して解説すると
- 「十把一絡げ」の対義語
「十把一絡げ」の意味とは?
各々が抱える事情や持つ個性を考慮せず、多くのものをひとまとめにして同じように扱うことを「十把一絡げにする」といいます。
これは単に一括するだけでなく、「本来は個々に取り扱うべき問題にも関わらず、同一視してしまっている」という意味を多分に含んでいます。
- 「十把一絡げ」の読み方
- 「十把一絡げ」の語源
「十把一絡げ」の読み方
「じっぱひとからげ」と読みます。
すでに言葉は知っていても、「じゅっぱ」ひとからげと思っていた方は少なくないと思われます。
確かにそちらの方が「じゅうわ」や「じっぱ」より語呂もよく、特に若年層の方がそう覚えている傾向が強いのですが、ではこれは全くの誤りなのでしょうか。
「10分」なども正しくは「じっぷん」で、例えば117番の時報を聞いてもそうなってはいますが、日常でもテレビ、ラジオでも「じゅっぷん」の読み方が普通にまかり通っている事からもわかるように、現代ではあくまで本来の慣例として「じっぷん」があり、よってどちらでも誤りとしなくてもよさそうです。
とはいえ「十把一絡げ」は一つの成句となっていますので、正しく「じっぱ」で覚えておいた方が無難といえます。
「十把一絡げ」の語源
「十把」と「一絡げ」からなるこの言葉ですが、それぞれの解説は後述するとして、この表現が初めて使われたのはどうやら江戸時代の文学のようです。
かの平賀源内による「風来六部集」という狂詩(滑稽本)の中にこの記述があり、やはり「似たような思い」という意味で面白おかしく使われています。
「十把一絡げ」の類語や言い換え
- 「一括、一緒くた」【いっかつ、いっしょくた】
- 「ひっくるめる」【ひっくるめる】
- 「ごたまぜ、ごった煮」【ごたまぜ、ごったに】
- 「一山いくら、二束三文」【ひとやまいくら、にそくさんもん】
- 「型にはめる、一元的、画一的」【かたにはめる、いちげんてき、かくいつてき】
- 「押し並べて」【おしならべて】
- “alike,lump”
「一括、一緒くた」【いっかつ、いっしょくた】
「括」はくくるとも読み、手でまとめる「十把」と似通う意味がありますが、否定的、批判的にはあまり使われず、システムや支払いなど、ごく普通の「まとめて管理する」という側面が強いといえます。
一緒くたの「くた」の語源は「がらくた」同様にあくた(芥)から変化したもので、「あまり役に立たないもの=ごみ同然のもの」だといわれています。
一緒くたは一括よりも若干「十把〜」に近く、語感と共に無造作な印象を与える言葉です。
「ひっくるめる」【ひっくるめる】
くるめるは「包める」と書き、「引き包める」が音便変化し「引っ包める」となったものです。
こちらもやや雑然としたまとめ方をする場合に使われます。
「ごたまぜ、ごった煮」【ごたまぜ、ごったに】
元は擬音語ともいわれる「ごたごた」に、「混ぜる」や「煮る」を組み合わせて無秩序な混ざり具合を表現する言葉です。
個々の特性はどうでもいいという点で、「十把〜」に似通うものがあります。
「一山いくら、二束三文」【ひとやまいくら、にそくさんもん】
いずれも、一つでは大した価値のない野菜などが籠皿や紐などで一まとめにされ、売り物にできる程度の値で店先に出されている状態の事です。
人に向けて「代わりはいくらでもいる」と言う意味で使う事もできますが、半ば人権侵害ともいえるので決して日常では用いないようにしましょう。
「型にはめる、一元的、画一的」【かたにはめる、いちげんてき、かくいつてき】
一元的は物事を多角的に見ず、根本は一つだとする様を表します。
画一的は、さらに全てが似たような感じで、特筆すべき点がない様を意味します。
「十把〜」にも、こうした言葉の持つ柔軟性を欠いた考えという意味合いが強くあります。
「押し並べて」【おしならべて】
古語の並ぶ(なぶ)を「押し」で強調させ「おしなべて」といいます。
やはり、全体が同じにみなされ、一つところに押しやられているような印象を与える言葉です。
“alike,lump”
英語では“treat〜alike”で「同じように扱う」、“lump”は名詞でも動詞でも「ひとまとめ(にする)」という意味があります。
また「メドレー」の語源である“medley”にも「ごた混ぜ」の意味があり、「十把〜」と似た使い方ができるといえます。
「十把一絡げ」の使い方
本来は一束にまとまっている様を表しますが、そこから連想される比喩表現であるこの言葉は、あまり良い意味では使われません。
人、物、規則などを無闇にひとくくりにしてしまえば、当然そこからはみ出す部分は割を食う事となります。
その都度個々に対処してやらない限り、不満や不具合は解消しないでしょう。
そうした状態を指して非難する時に「十把一絡げになっている」などといいます。
「十把一絡げ」を使った例文
- 大雑把なまとめ方に驚いた時
- 杓子定規なルールに苦言を呈する時
- 自分の思考について反芻する時
大雑把なまとめ方に驚いた時
「地方に行くと、東京では中々手に入らないような瑞々しい野菜が、文字通り十把一絡げで無造作に投売りされているので、羨ましいやら申し訳ないやら、複雑な気持ちになってしまう」
杓子定規なルールに苦言を呈する時
「さして狭くもない道路でも路肩駐車の取締りが厳しくなり、路面の飲食店に入りづらくなったという話や、配達業者が困っているという話も聞くようになった。確かに迷惑駐車は誰のためにもならないが、十把一絡げで無機質にルールを強いるのもどうかと思う。ある程度状況に即した対応はできないものだろうか」
自分の思考について反芻する時
「最近の若者は」とか「最近の男は」とかは的を得ている場合もあるが、十把一絡げなレッテルの貼り方も建設的ではないと思う」
「十把一絡げ」を分解して解説すると
- 「十把」
- 「一絡げ」
「十把」
「把握」などからもわかる通り、把にはつかむ、という意味があります。
ここでは稲などの細長いものをつかみとって一つとする、すなわち単位として使われています。
現代でもほうれん草などは「いちわ、にわ、さんわ」と数えることがあります。
- 「十把」
- 「一絡げ」
「一絡げ」
一絡げにも束ねてまとめるという意味があり、従って「一皿10円」や「5個で100円」などと同じ要領で理解ができるかと思われます。
また「十把」を伴わずとも「一絡げな考え」などと単体で使う事もでき、意味は全く同じです。
「十把一絡げ」の対義語
- 「各自」「其々(夫々)」「銘々」【かくじ】【それぞれ】【めいめい】
- 「個々別々」【ここべつべつ】
- 「特撰」【とくせん】
- 「オンリーワン」【おんりーわん】
- 「ケースバイケース」【けーすばいけーす】
「各自」「其々(夫々)」「銘々」【かくじ】【それぞれ】【めいめい】
どれも一つ一つの物に目を向け、それぞれの意思や特徴を重んじる言葉です。
其々または夫々は「それぞれ」と読みを付ければわかりやすく、其も夫も「それ」を意味する代名詞です。
「個々別々」【ここべつべつ】
「奇々怪々」などと同様に、「個別」を四字熟語とした形です。
単に個別とするよりも、一つ一つがより強調された格好になります。
「特撰」【とくせん】
常用漢字を用いて特選としても意味は同じですが、こちらの方がより格式高く、よりにより抜いて選ばれたという印象を強く与えます。
贈答品などの名前には大抵「特撰」が使われ、高級感の一助となっています。
「オンリーワン」【おんりーわん】
「十把〜」が持つ、一つ一つでは価値がないとする意味に対する言葉です。
日本語では唯一無二ともいいますが、教育の現場でもこれを推し進めるあまりに誤解が生じ、「オンリーワン=無責任、無秩序」となってしまう場合も散見されます。
右へ倣えになってしまう「十把〜」同様、どちらかに極端に振り切れても良い結果にはならないという事でしょう。
「ケースバイケース」【けーすばいけーす】
オンリーワンが個性なのに対し、こちらは物事やルールの事情に着目した言葉です。
但し、日本ではその状況に合わせて処置を変えるべき、という「臨機応変」のように使われる外来語ですが、本来は単に「個別に処理する」という意味にすぎません。
臨機応変の意味合いを強めたければ“depend”や“as the case may be”などで表現するのもよいでしょう。
こうして見ると、「十把一絡げ」はあまり好ましくない状態なのだという事がわかりました。
管理が面倒になってくる、あるいは対象が肥大してくると、私たちはこうした行動をとってしまいがちです。
ことに巨大な会社やチェーン展開などでは、上層と末端の距離が空く分注意が必要になりますので、教育マニュアルの段階から柔軟性を持たせるべきだといえるでしょう。