「故郷を錦で飾る」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
現代でも出世することは人生において重要事項のひとつと考えられていますが、昔の出世はまた一味違ったものでした。
出世すればその家族や一族に繁栄や安定をもたらし、大層喜ばれるものでした。
そういった、出世や成功に関する昔のことわざが多数存在する中でも今回は「故郷へ錦を飾る」という言葉をご紹介しましょう。
目次
- 「故郷へ錦を飾る」の意味とは?
- 「錦を飾る」の類語
- 「故郷へ錦を飾る」の使い方
- 「故郷へ錦を飾る」の対義語
- 「故郷へ錦を飾る」の語源
- 「故郷へ錦を飾る」の由来
「故郷へ錦を飾る」の意味とは?
「故郷へ錦を飾る」ということわざはなかなか聞いたことがない人が多いかもしれません。
その意味は「故郷を離れていた人が、立身出世して晴れ晴れと故郷へ帰る事」です。
昔は地方では職が無いことがほとんどで、出稼ぎに出たり都会で出世や成功を夢見て故郷を離れる人が多くいました。
見送る家族もさぞ不安だったでしょう。
そうやって故郷を離れて一人見知らぬ土地で頑張り出世した人が、立派になって堂々と故郷へ華々しく帰る様子をたとえたことわざです。
- 「故郷へ錦を飾る」の「錦」とは
- 「故郷へ錦を飾る」の読み
「故郷へ錦を飾る」の「錦」とは
「故郷へ錦を飾る」の「錦」とは何でしょうか。
錦鯉などで目にする言葉ですが、ここでいう「錦」とは織物を指しています。
二色以上の色糸や金銀糸を使ってきれいな模様を織り出したもので、地が厚いとても高価な絹の織物です。
「故郷へ錦を飾る」という言葉は、故郷を離れるときには貧乏でみすぼらしい見た目をしていた人でも、成功を収めて地位や富を手に入れ錦が着れるほどに立派になってふるさとへ帰ってくるということを表現しています。
つまり、「錦」を成功や出世そのものとたとえているのです。
昔は、絹の着物というだけでも十分高価な立派なものでなかなか手に入りませんでした。
しかも色鮮やかできれいな模様の入った「錦」を着て帰るというのはまわりから見ても華やかで映えるものです。
本人だけでなく家族などの親類も誇らしく晴れやかな気持ちになったことでしょう。
そういった豪華な着物、つまり華々しい「成功」を身にまとって意気揚々と帰ってくることで、故郷も晴れやかに沸き上がる様子を、色鮮やかで高価な着物である「錦」でたとえて表現しています。
「故郷へ錦を飾る」の読み
「こきょうへにしきをかざる」と読みます。
また、この言葉は「故郷に錦を飾る」としても良いですし、「錦を飾る」だけで表現する事もあります。
また、「故郷へは錦を着て帰る」や「帰るには錦着て行く」など多数の似たような類語があります。
すべて意味は同じです。
昔は、「ふるさとを出たからには、成功しないと帰ることは許されない」という風潮があったのでしょう。
「錦を飾る」の類語
「錦を飾る」という言葉だけで、「立身出世したり、成功を収めたりして帰ってくる」という意味を指しています。
そういった成功や出世を意味する類語を3つご紹介します。
- 「功成り名遂げる」【こうなりめいとげる】
- 「立身出世」【りっしんしゅっせ】
- 「一旗揚げる」【ひとはたあげる】
「功成り名遂げる」【こうなりめいとげる】
立派な仕事や任務を成し遂げ、あわせて世間の名声を得ることを意味する言葉です。
「功」とは労力を尽くして事を成し遂げたその結果や、手柄を意味する言葉です。
結果や手柄が実現し、名前が世間に知られるということですね。
「立身出世」【りっしんしゅっせ】
読んで字のごとく、「社会的に良い地位について、世に認められること」を意味する四字熟語です。
「故郷へ錦を飾る」の意味の解説でも出てきた言葉です。
「立身」とは社会的な地位や名声を得ることを指し、「出世」は社会に出て立派な地位・身分を得ることを指しています。
「一旗揚げる」【ひとはたあげる】
成功を目指して新事業を起こしたり、意気込みを持って身を起こすことです。
「一旗」とは「1本の旗」のことで、その昔は、武士が手柄を立てるために家紋などがついた旗をかかげて戦場へ出たものでした。
このことから、意気込んで何か新しい事を始めるときに指す言葉として使われるようになりました。
「故郷へ錦を飾る」の使い方
あまり聞きなれないことわざですが、使ってみると文章に深みの出る趣のある言葉です。
例文を参考に使ってみて下さい。
- 「故郷へ錦を飾る」の例文1
- 「故郷へ錦を飾る」の例文2
「故郷へ錦を飾る」の例文1
「故郷へ錦を飾るためにも、もう少し辛抱して頑張ろう」
昔は、立派になって地位と富を得て家族を援助するために故郷を出る人が多かったものですが、現代ではほとんどそういったことはないでしょう。
それでもやはりまだ地域ごとに格差があります。
地方よりも都会の方が職に就きやすかったり、有名になるためのチャンスが転がっているものです。
何か夢を抱いたり自分の目標があって、故郷を離れる人が多く存在しますが、自分が夢見ていた事と現実のギャップに苦しみ早々に帰ってくる人も少なくありません。
そんな中、自分の欲や気持ちだけでなく、自分を送り出してくれた家族や友人のことを思い出して頑張っている人もいます。
いつか成功して華々しく帰郷する自分の姿が見せられるよう辛抱する、ということを表現した例文です。
「故郷へ錦を飾る」の例文2
「Aさんとこの息子さんは故郷へ錦を飾る活躍ぶりで本当に立派だ」
一概には言えませんが、都会よりも田舎の方が隣人同士や親戚などの結びつきが強く、噂話がすぐ広まりやすいと言われています。
「どこどこの誰々さんは都会へ行くらしい」とか、「嫁いでいった誰々さんが戻るらしい」など、その噂の種類は多岐にわたります。
そういった人たちは他人であっても一緒の地域に住んでいる人は同じ仲間だという意識があり、その人が成功すれば自分の事のように喜んだり自慢したりするものです。
同じ故郷に住む一人として、血のつながりがない他人であっても、故郷を華やかにしてくれるような活躍ぶり・成長ぶりに対しての誇らしさが表れている例文です。
「故郷へ錦を飾る」の対義語
「故郷へ錦を飾る」というのが、「立身出世して立派になり華々しく故郷へ帰る」ことであれば、対義語は「出世できない」や「成功できなかった」となります。
そういった意味のことわざに「草履履き際で仕損じる」というものがあります。
仕事や大切な用事が済み帰ろうとして草履をはくのに失敗する、という意味から生まれたことわざです。
最後の失敗によって、それまでの努力や成功を全てだめにしてしまうというたとえです。
「故郷へ錦を飾る」の語源
「故郷へ錦を飾る」ということわざには語源があるとされます。
それは四字熟語の「衣錦之栄(いきんのえい)」という言葉と、「衣錦還郷(いきんかんきょう)」です。
これも「故郷へ錦を飾る」と同じく、成功や出世した後に錦の着物を着て故郷へ帰る事を指す中国の言葉です。
「故郷へ錦を飾る」の由来
司馬遷『史記』に記されている、項羽の言葉である「富貴不歸故?、如衣?夜行、誰知之者」を世間一般的に通じるように言ったのが由来だとする説があります。
訳としては「成功しても故郷に戻ってその姿を見せない事は、錦の服を着て真っ暗な夜に歩くようなもの。
誰も、気づかないではないか」というものです。
現代では、あまり出世に関心がない人が増えていると言われています。
仕事に精を出すよりも、自分の趣味や好きなことに時間を費やす人が増えていることも関係しているでしょう。
「故郷へ錦を飾る」という言葉は、現代人にとってあまり関係のない言葉に聞こえるかもしれませんが、仕事だけでなく人生において自分の目標とすることを成し遂げ成功を収めることでもあります。
「故郷」を何とするかによりますが、家族や友人、自分を応援してくれる人でも良いでしょう。
自分を支えてくれる人や物に、華々しい成功を収めた姿が見せられるよう何事も努力したいものです。