「蔑称」の意味とは?類語、使い方や例文、反対語を紹介!
人は知らないものや異質なものに距離を置いてしまいがちです。
酷い場合はそれを見下し、排除することさえあります。
言葉そのものには罪はありませんが、この世に横行させてはならない概念。
本文では「蔑称」について精査していきます。
目次
- 「蔑称」の意味とは?
- 「蔑称」の類語や言い換え
- 「蔑称」の使い方
- 「蔑称」を使った例文
- 「蔑称」の言葉の例
- 「蔑称」の対義語
「蔑称」の意味とは?
何か(人間かどうか、物質か概念かなどを問わず、あらゆる対象)に対してのあなどりや差別、憎悪、軽視、迫害と言った悪感情を示す際に投げつけられる名称を総じてこう呼びます。
そのほとんどは語自体が、聞くだけで、また見るだけでそれとわかるような意味を含んだものですが、まれに遠まわしな表現も存在し、むしろそうした「意味がわかると罵倒に聞こえる」方が相手をより大きく傷つけ自分が有利に立てるとして、好んで考案し、また用いられることもあります。
- 「蔑称」の読み方
「蔑称」の読み方
「べっしょう」と読み、「べつ」が促音便により「べっ」となった形です。
その他、蔑は「さげす-む」「ないがし-ろ」、称は「とな-える」「たた-える」などの読み方があります。
「蔑称」の類語や言い換え
- 「侮蔑語」【ぶべつご】
- 「差別語」【さべつご】
- 「〜公」、「〜野郎」【〜おおやけ】【〜やろう】
- 「あだな、風刺する行為」【あだな、ふうしするこうい】
「侮蔑語」【ぶべつご】
名前にとどまらず、中傷、軽蔑する意図のある表現全般をこう呼びます。
相手を見下し馬鹿にする要素や、相手の弱みを突く要素をふんだんに取り入れた言葉であり、語彙の乏しい侮蔑の言葉などは、かえって幼稚さを露呈し自身の恥となる場合もあります。
しかし、どんなに緻密でよく出来た言葉であっても何かを傷つける目的である以上、「恥」の次元が違うのは明らかであり、表現に頭をひねる位なら、問題点を提示しつつも建設的な議論をすべきだと言えます。
「差別語」【さべつご】
人種差や性別差、社会的地位や能力の高低で何かを排除・迫害しようとする際に用いられる蔑称です。
世界には外見から母国言語、宗教や出自に至るまで様々な人間が存在し、その間での直接的な闘争を介さなくても、無条件で行われる差別も少なくありません。
「〜公」、「〜野郎」【〜おおやけ】【〜やろう】
日本語ではこうした言葉を、略した言葉の語尾に添えて蔑称とする事があります。
「アメ公」(国籍)「モジャ公」(容姿)「チキン野郎」(性格)「トラック野郎」(趣味・嗜好・主義)などと比較的手軽に考案できてしまうので、軽い口げんかや陰口でもよく用いられます。
「あだな、風刺する行為」【あだな、ふうしするこうい】
相手の特徴に応じて別名を付けることを「あだなを付ける」と呼びますが、これは軽蔑のためと親愛のための二通りの意図に分けられ、話し手と受け手での捉え方の相違に注意する必要があります。
風刺は特に社会や政治、政治家などを直接的な表現なしに非難する事です。
絵として表現する「風刺画」は大抵コミカルに描かれており、(地位は自分の方が下ながらも)相手を見下す意図を強く押し出す手法です。
「蔑称」の使い方
人の鬱屈した感情の表れであるせいか、非常に嘆かわしい事ではありますが、こうした排他的な嘲りの言葉は万国共通で無数に存在し、言葉遊びのように軽々しく生み出され、用いられているのが現状です。
日本国内(日本語)のみで通じる例だけとってみても、前述した「〜公」は勿論の事、「ダ埼玉」「イモ千葉」「トンキン」など、個人的、政治的、民族的憎悪などなくとも、地域差だけの理由でこうした言葉で相手を傷つける行為は、特に顔の見えないインターネットの書き込みでは日常茶飯事です。
その他例えば、相手にレッテルを貼った挙句に語尾に「(笑)」を付けるだけでも立派な蔑称であり、むしろ口汚く罵るよりも見下した感が強くなり、その手軽さが悪用されている顕著な例といえます。
スポーツの試合では、各組織が総力を挙げて「SAY NO RACISM(差別を無くそう)」を推し進めていますが、未だにそうした侮辱行為の根絶には至っていません。
特に内戦が記憶に新しい旧ユーゴスラビア諸国間の遺恨や、黒人選手に対する白人選手の差別発言が問題になっています。
「蔑称」を使った例文
「本日のアフリカ代表との試合で、仕掛け罠の絵と『ようこそカラスさん』というメッセージが書かれた横断幕が数多く見られた。これは直接的な表現を避けているがれっきとした蔑称であり、その卑劣さには断固抗議しなければならない」
「蔑称」の言葉の例
- 「ジャップ」「チョッパリ」
- 「レッドネック」
- 「ビッチ」「ポルカ・プッターナ」
- 黒人やナチスドイツ関連の蔑称
- その他、蔑称かどうか議論の分かれる言葉の例
「ジャップ」「チョッパリ」
ジャップは我々日本人を指す英語においての蔑称。
世界大戦がその走りと思われがちですが、実際にはその数十年前から既に用いられていた言葉です。
対してチョッパリは朝鮮語においてのそれで、特に北朝鮮では頻繁に使われているといいます。
「レッドネック」
赤い首と直訳される、アメリカ国内での白人同士の地域差から生まれた言葉です。
この場合の赤いとは日焼けした状態を指し、北部の人間が日射しの強い南部の労働者をこう呼んだのが始まりです。
侮辱の意味は強くはなく、レッドネックを自ら称する南部の人間もいます。
「ビッチ」「ポルカ・プッターナ」
ビッチは英語で雌犬の事であり、転じて尻軽、あばずれを示す侮辱語として、今や日本でも完全に外来語として定着してしまいました。
イタリア語でも似たような表現にポルカ・プッターナ(娼豚)があり、日本語で最も近いのは「お前の母さんデベソ」と言ったところでしょうか。
黒人やナチスドイツ関連の蔑称
直接の事例を挙げるのは避けますが、永く奴隷として迫害されてきた黒人種や、20世紀最大級の虐殺を行った旧ドイツなどに関わる差別用語は、だいぶ風化したとはいえ依然苦い記憶として残り、新しい時代に生きる人々の傷痕となっています。
その他、蔑称かどうか議論の分かれる言葉の例
広く一般に浸透していても、その扱いや由来が差別的ではないかと指摘を受け変化・消滅していく名称もあります。
そうした過程を知らぬ者にとっては、ある日急に変わる呼び名には戸惑いしか覚えないもので、どちらかというと呼ばれる当人たちではなく、人権団体など周囲が騒いでいるだけではないのかという指摘もあります。
いくつか例を挙げると、「スチュワーデス」(現在は客室乗務員・キャビンアテンダント)、「看護婦」(看護師)、俳優(女優)といった呼称が、自称・他称を問わず人それぞれの選択の余地がありそうなものとして知られています。
「蔑称」の対義語
- 「敬称、尊号」【けいしょう、そんごう】
- 「称号、肩書き、タイトル、雅称」【しょうごう、かたがき、たいとる、がしょう】
「敬称、尊号」【けいしょう、そんごう】
「〜様」や「〜殿」のように単純に敬意を払う場合もあれば、「陛下」「卿」「先生」など立場や地位を称する場合もあります。
崩御後の皇族などに贈られるものは特に尊号といい、その歴史は1300年以上にも及びます。
「称号、肩書き、タイトル、雅称」【しょうごう、かたがき、たいとる、がしょう】
「ミスター」「サー」「名人」「マエストロ」など、個人が勝ち取った称号も敬いを込めて呼びかけに用いられる場合があり、実名を省いて称号だけで呼ぶとより価値が高まるとして好む人もいます。
雅称はあだなと対になり、美点を讃えての別名のことです。
あだなと同様、嫌味を込める事で蔑称となる敬称(〜先生、〜さんなど)もあり、従って当事者の思いが強く反映される表現といえます。
蔑称とは、その言葉の持つ意味や成り立ちよりも、「侮蔑の感情」を込めるかどうかが大変に重要です。
それは自分がどう思うかは勿論の事、相手がどう受け止めるかも併せて考慮にいれなければならない問題であり、日常においても気持ちの行き違いや行き過ぎが横行してしまっています。
あまりに声高に叫べば雁字搦めの窮屈な社会になってしまいますが、常に思いやりの心を持って生活したいところです。