「さもありなん」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
夏の暑さもやっと和らぎ、すっかり秋めいてきたこの頃。
秋の夜長に読書をされている方も多いのではないでしょうか。
ところで、小説などを読んでいて「さもありなん」という言葉を見かけたことはあるでしょうか。
「そうであってもおかしくない」「もっともだ」という意味で使われる「さもありなん」という言葉。
小説などに出てくるやや古め、堅めの日本語といったイメージですがよくよく考えてみると不思議な響きです。
日常生活であまり使われることがなく、もしかしたら若い世代の人の中には言葉自体を知らない、という人もいるかもしれません。
そんな「さもありなん」という言葉について、使い方、類語、例文などを調べてまとめてみました。
目次
- 「さもありなん」の意味とは?
- 「さもありなん」の類語
- 「さもありなん」の使い方
- 「さもありなん」を使った例文
- 「さもありなん」を分解して解釈
- 「さもありなん」と似たような意味でよく使われる古語
「さもありなん」の意味とは?
「さもありなん」という言葉、日常的に使わずとも意味はある程度の年代以上の方々ならご存知の方も多いと思いますが、まず「さもありなん」の意味について書いていきます。
「さもありなん」とは、上述の通り「きっとそうだろう」「もっともだ」という意味を持ち、(ある物事において)そのような結果になっても当たり前、全くおかしくない、という考えを表すときに用いられます。
また、「さもありなん」の語感から、どこかの方言だとイメージする人もいるようです。
ですが「さもありなん」は古語が現代にそのまま残った言葉であり、どこかの方言というわけではありません。
- 「さもありなん」の漢字
「さもありなん」の漢字
ひらがなの表記で見かける事が多い「さもありなん」ですが、漢字表記はどのようになるのでしょうか。
調べてみたところ「然もありなん」と書くようです。
「然」の漢字には「そのとおり、そのまま」などの意味があり、「然り(しかり)」という言葉も「そのとおりである」という意味で用いられます。
「さもありなん」の類語
ここでは、「さもありなん」の類語を挙げていきます。
「さもありなん」は少し堅い印象の言葉ですが、類語はどのようなものがあるのでしょうか。
調べてみると同じような意味でもう少し平易なイメージの言葉が見つかりましたので3つ挙げていきたいと思います。
どれも「さもありなん」より日常で使ったり、見かけたりする言葉です。
- もっともだ
- うなずける
- 想像に難くない
もっともだ
こちらは「さもありなん」より日常的に使われているイメージです。
漢字では「尤も」と書きます。
「最も」と間違えないように気をつけましょう。
「尤も」の「尤」は常用外漢字であるため、ひらがなで「もっとも」と表記されることが多いです。
「道理にかなっている」「その通りだと思われること」という意味を持ちます。
「せっかく忙しい合間を縫って出向いたのにあんないいかげんな対応をされては、君が怒るのももっともだ」みたいな感じでしょうか。
うなずける
こちらも比較的よく使われる言葉です。
漢字では「首を縦に振るしぐさ」を表す「頷く」「肯く」「首肯く」と同じ表記です。
「納得がいく」「了解がいく」という意味があります。
「彼はもともと音楽の才能がある上に努力も惜しまない性格だから、海外の名教授に気に入られるのもうなずける」のように使います。
想像に難くない
こちらもそれほど珍しい言葉ではないです。
「想像するのがそう難しくない」「想像するのがたやすい」という意味で使われます。
「向こう見ずで気の強い彼女のことだから、相手の話をろくに聞かずに自分の意見をまくしたてただろうことは、想像に難くない」のように使う感じでしょうか。
「さもありなん」の使い方
ここでは「さもありなん」の使い方を挙げていきます。
「さもありなん」はどういった場面で使うのが適切なのでしょうか。
手紙やメール、ビジネスの場面でも問題なく使用できるのでしょうか。
「さもありなん」は「そうであっても不思議ではない、おかしくない」「きっとそうだろう」「もっともだ」という気持ちのときにそれを表現する言葉として使われます。
また相手の話を聞いて、「それもそうだな」と感じたときにも使える言葉です。
でも、そうとわかっていてもなかなか日常で使うのは難しそうな言葉です。
普段、くだけた口調で会話している関係の相手にいきなり使ったら驚かれてしまいそうです。
なかなか話し言葉で使う機会は少ないのですが、よくよく調べてみると実はビジネスの場面でも、目上目下関係なく会話に用いる事ができ、また雰囲気によっては割とくだけた会話にも意外に用いる事ができるようです。
むしろくだけた会話に「なるほど、それはさもありなんだな」など冗談めかして使ってみると、不思議な面白さが出るのではないでしょうか。
シチュエーションや言い方の雰囲気次第では、古風で知的なユニークさをかもし出せそうです。
「さもありなん」を使った例文
「さもありなん」を実際に使った文章はどのようなものになるのでしょうか。
ここでは、「さもありなん」を使った例文を3つあげてみます。
「さもありなん」には使い方がいくつかあり、ニュアンスが微妙に違ってくるのでそれぞれの使い方で文章を作ってみました。
- 例文1(実際に起こったことに対して、それは当然だろうという気持ちを表す)
- 例文2(実際にはまだ起こっていないことに対して、起こっても不思議ではないという気持ちを表す)
- 例文3(人の意見や考えに対して、自分は考えていなかったことでもその通りだなと納得する気持ちを表す)
例文1(実際に起こったことに対して、それは当然だろうという気持ちを表す)
「いつも身なりが派手な友人が海外旅行でスリに遭ったと嘆いていたが、普段のような派手な格好で海外の街中をうろついてはそれもさもありなんだろうと思った」
例文2(実際にはまだ起こっていないことに対して、起こっても不思議ではないという気持ちを表す)
「うちの会社が危ないとは数年前から散々囁かれていたが、今回の人員削減であの優秀な彼までリストラされてしまったのでは、いよいよ倒産もさもありなんだという気がしてくる」
例文3(人の意見や考えに対して、自分は考えていなかったことでもその通りだなと納得する気持ちを表す)
「結婚を前提に付き合うならやっぱり高収入の人がいいなあ」
「そうかなあ。どれくらい高収入かにもよるけど、収入の高い人は大概激務でデートもろくにできないだろうし、結婚しても家にいる時間は少なそう。おまけに金目当てに悪い虫が寄ってきそうで浮気も心配だよ」
「なるほどね。玉の輿ってなんとなく憧れがあったけど、それはさもありなんだね」
三つ例文を作ってみましたが、前後の文章がそれほど堅くなくても意外と違和感なく繋げられる言葉です。
「さもありなん」を分解して解釈
「さもありなん」という言葉はどのように分解できるのでしょうか。
ここでは、「さもありなん」を「さも」「あり」「なん」に分解して、それぞれの意味を解釈していきます。
確かに「さもありなん」っていったいどういう由来?「さも」って何?「あり」って何がアリなの?と謎が多い言葉です。
「さもありなん」はもともと古語であり、古語のまま現代まで残っている言葉です。
同じ言葉でも古語と現代語では意味の違う言葉もありますが、「さもありなん」はどうなのでしょうか。
- さも
- あり
- なん
さも
「さも」には「そのようなことも」「いかにも」といった意味があります。
「さも」の「さ」は副詞です。
「そう」「そのように」といった意味になります。
「も」は係助詞になり、いろいろな品詞の後ろについてきます。
「さもありなん」の場合は連語となり「さも」で一つの言葉となっています。
あり
「あり」は現代と同じ意味の「あり」です。
「あり」は補助動詞になっています。
「さもありなん」の場合の「あり」は「?の状況・状態である」という意味を表します。
なん
「なん」はさらに「な」・「ん」に分けられます。
古語では「な」・「む」で「おそらく、きっと?だろう」とか、「たしかに?であろう」といった、強い確信を持った気持ちを表すときに使います。
「さもありなん」は古語と現代語でそこまで大きな意味の違いはなさそうです。
古文においても「さもありなん」は「やはりそんなことだろうと思った」という意味で用いられていたようです。
「さもありなん」と似たような意味でよく使われる古語
ここでは、「さもありなん」と同じような意味でよく使われる古語を紹介します。
「むべなるかな」
「さもありなん」よりさらに古めかしい響きの「むべなるかな」。
イメージの通り、平安時代より前から存在する古い言葉だそうです。
漢字では「宜べなるかな」と書きます。
もともとは「うべなるかな」と言ったそうです。
平安時代以降にかな文字が定着するなかで「う」から「む」に発音が変わっていったようです。
「うべなるかな」の「うべ」はもともと古語で「本当にそうだ、もっともである」という意味を持ち、その「うべ」が「むべ」に変化して「むべなるかな」と言われるようになったそうです。
「さもあらん」
「さもありなん」と似ている「さもあらん」という言葉。
意味は「さもありなん」と同じですが、「さもあらん」よりも「さもありなん」の方がより確信の強い響きになっています。
「さもありなん」の解説、いかがでしたでしょうか。
本などを読んでいると時折目にすることはあっても、なかなか日常で使うことは少ない言葉ですよね。
でも調べていくうちに意外と汎用性が高い言葉のような気もしてきました。
私もまとめを書いていてとても勉強になりました。
せっかく古語から現代まで残っている言葉なので、皆が使わなくなることで消えてしまうのはもったいない言葉だと思います。
これを機会に、普段の会話やビジネスの場面、またメールやSNSで使ってみるのはいかがでしょうか。