「滂沱」の意味とは?類語や使い方、例文を紹介!
「滂沱」と聞いても何の意味なのか分からない、あるいは読むことすらもできない人はたくさんいるでしょう。
この言葉には情緒あふれる様子の意味があります。
ぜひ覚えておきましょう。
目次
- 「滂沱」の意味とは?
- 「滂沱」の類語や言い換え
- 「滂沱」の使い方
- 「滂沱」の例文
- 「滂沱」を使った言葉
「滂沱」の意味とは?
まずは「滂沱」の意味を知りしょう。
「滂沱」には以下の3つの意味があります。
- 雨の降りしきるさま。
- 涙がとめどなく流れ出るさま。
- 汗・水などが激しく流れ落ちるさま。
「滂」も「沱」も部首が「氵」(サンズイ)です。
「氵」は水に関係する意味の漢字に使われるため、水絡みの意味であることが分かります。
そして、水がどのような状態であることを「滂沱」というのかといえば、水が次から次へと滝のように流れ落ちる様子を「滂沱」と表現するようです。
途切れることなく、ザーザーと降りしきる雨の様子が目に浮かびます。
また、何かに想いを馳せているのか、何かを思って、さめざめと泣いている人が思い浮かびます。
自然や人の、様子や気持ちを表した美しい日本語です。
雨や涙、汗や水などが、途切れることなく、次から次へと激しく流れ出る様子が表現されています。
物事に変化が生じない「静」を感じる言葉ではなく、非常に動きを感じる言葉となっています。
- 「滂沱」の読み方
「滂沱」の読み方
「滂沱」という言葉を読んでと言われても、読めない人は多数でしょう。
なかなか聞かない言葉であるし、漢字字体も目にすることの少ない難しい漢字を使っているからです。
さて、この「滂沱」という言葉ですが、読み方は「ぼうだ」となります。
「滂沱」の漢字を一つずつ分けて考えてみましょう。
まずは「滂」から。
一文字で「滂」(ぼう・ほう)と音読みます。
意味としては、「水が盛んに流れるさま」「豊かで広いさま」となっています。
「盛んに流れる」とか「豊かな水」などと表現しているあたり、水についてマイナスな感情を抱いていないことが分かります。
水は恵みの水でもありますが、ときには川の氾濫となって人々を襲ったり、浸水などの被害をもたらす怖いものでもあります。
しかし、この「滂」という漢字の意味においては、非常に水をよいものだと捉えているようです。
私達の生活に潤いを与える恵みの水として捉えている傾向にあります。
この「滂」という漢字には、他にも「滂湃」(ほうはい)という熟語に使用されています。
この熟語の意味は、「水がみなぎり逆巻くさま。物事が盛んな勢いでわき起こるさま」となっており、非常に躍動感あふれた情景を表す言葉となっています。
次に「沱」をみていきます。
一文字で「沱」(だ・た)と音読みます。
意味としては、「大雨の降るさま。涙がとめどなく流れる様子」となるようです。
ただし、「沱」の場合、常に「滂」とくっついて「滂沱」という熟語にしかなりえないようです。
他に「沱」を使った熟語は見当たりません。
必ず「滂」の漢字とセットになって、雨や涙、そして汗などがとめどなく流れる様子を表しています。
「滂沱」の類語や言い換え
「滂沱」の類語や言い換えについてみていきましょう。
- 「泣きじゃくる」【なきじゃくる】
- 「水勢」【すいせい】
- 「汗だく」【あせだく】
「泣きじゃくる」【なきじゃくる】
「泣きじゃくる」とは「しゃくりあげて泣くこと」です。
泣きながら、何かを訴えるように叫んだり、涙がとめどなく流れる様子が表現されている言葉です。
「滂沱」にも涙が次から次へと流れ落ちる様子の意味があるため、その点で「泣きじゃくる」の言葉は「滂沱」の類語だといえます。
また、「泣きじゃくる」には、泣いている人が非常に感情的になっている様子が表れています。
声をこらえて泣くのではなく、周囲の人が気づくほどの激しい泣きっぷりであることを意味しています。
「滂沱」もまた、激しい水の流れを表す言葉であるため、激しい動きを持つという意味でも、この二つの言葉は似ている性質を持っている言葉だといえます。
例文としては、「母は別れて暮らす娘を想い、泣きじゃくった」(母は別れて暮らす娘を想い、激しく泣き続けた)などが挙げられます。
「水勢」【すいせい】
「水勢」は「川や水が流れたり、噴き出したりする勢いがあること」を意味する言葉です。
「水」に「勢い」(いきおい)があると書くあたり、非常にこの言葉も、「滂沱」と同様、躍動感を感じる言葉です。
「水勢」には、水が激しく流れたり、噴き出したりしている様子が伺えます。
ただし、この「水勢」という言葉には、水や雨、川などといった純粋な意味での「水」の意味がありますが、これが人物の汗や涙が流れる様子などには使用しません。
そのため、「君の汗は水勢のようだ」などの表現は間違いです。
この言葉を使う対象は、あくまで雨や川などの「水」です。
涙や汗ではありません。
例文としては、「川の水勢にのって遊んでいるのは危険だ」
(川の押し流されるような水の流れにのって遊んでいるのは危険だ)などが挙げられます。
「汗だく」【あせだく】
「汗だく」とは「汗が盛んに出ている様子」を表しています。
汗で体がびっしょりと濡れている様子が伺えます。
ダラダラと汗が流れ、汗まみれになっている姿は、「汗だく」といいますが、「滂沱」という言葉でも表現することができます。
例えば、「走って汗だくになった」という表現であれば、「走って滂沱の汗を流した」などと表現できます。
どちらも激しく汗を流す様子を表しています。
ただし、「汗だく」の場合は、汗のみにしか使用できない言葉です。
そこは、水の性質を表すものなら、何でも表現してしまう「滂沱」とは違います。
例文としては、「あなたはいつも汗だくになって働いてくれるね」
(あなたはいつも汗にまみれるほど、よく働いてくれるね)
などが挙げられます。
「滂沱」の使い方
「滂沱」の使い方についてみていきましょう。
「滂沱」は以下のようなポイントを押さえて使われています。
- 水の性質を持つものの様子。
- 継続的に激しく流れている様子。あるいは感情的になっている様子。
「滂沱」はこの2つのポイントを必ず含んでいます。
「水の性質を持つものの様子」の言葉としては、純粋な川の水や雨水だけでなく、人の汗や涙についても表現する言葉だということです。
その水の性質を持つものが、流れ出ている様子を表しています。
また、「継続的に激しく流れている様子」あるいは「感情的になっている様子」を表していることもポイントです。
それゆえに、コーヒーが激しく零れ落ちることを「コーヒーが滂沱として零れ落ちた」などとは使いません。
コーヒーが激しく零れ落ちたのは一瞬であり、継続している様子はないからです。
他にも長雨が降ることを「雨が何日もしとしとと降り続ける」と言いますが、こちらの場合は、雨が継続して降る様子はあるものの、激しさを持つ表現ではありません。
「滂沱」を表現するには、激しい状態であることや感情的になっている様子がなくてはいけません。
そのため、長雨のことを「長雨が滂沱として、しとしとと降り続ける」などとは使いません。
「しとしと」とは穏やかな表現となっているため、優しく降り続ける雨を意味しています。
「滂沱」の例文
「滂沱」の例文をみていきましょう。
- 「滂沱」の例文1
- 「滂沱」の例文2
「滂沱」の例文1
「彼は後悔し、滂沱の涙を流した」
(彼は後悔し、ずっと大泣きしていた)
彼は何かに悔やみ、激しい後悔の念に押されていることが分かります。
ずっと大泣きしている様子から、かなり感情が昂っており、冷静さを失っている様子がみてとれる表現です。
「滂沱」の例文2
「彼はこの滂沱として流れる川を果たして渡ることができるのか」
(彼はこの激しく流れ続ける川を、果たして渡ることができるのか)
彼には継続的に激しく流れる危険な川を渡らなくてはいけない理由があるようです。
川を「滂沱」と表現することで、継続的に激しく流れる危険な川であることが強調されています。
「滂沱」を使った言葉
「滂沱」を使った言葉についてみていきましょう。
- 「滂沱の涙」【ぼうだのなみだ】
- 「滂沱の汗」【ぼうだのあせ】
- 「流汗滂沱」【りゅうかんぼうだ】
- 「滂沱の観」【ぼうだのかん】
- 「滂沱と」「滂沱として」【ぼうだと】【ぼうだとして】
「滂沱の涙」【ぼうだのなみだ】
「滂沱の涙」は感情的になって涙を流す様子を表しています。
後悔して出てきた涙、嬉し涙、悔し涙、様々な意味をもつ涙がありますが、その涙がマイナスな感情で出た涙なのか、プラスな感情で出た涙なのかは問いません。
とにかく感情的になって大泣きしている様子を表しています。
「滂沱の汗」【ぼうだのあせ】
「滂沱の汗」といったら、汗だくになっている様子を表現している言葉です。
汗が搾り取れるほど、びしょびしょになっている様子を表しています。
「滂沱の汗」の似たような意味として、「汗だく」の他に、「大汗をかく」という表現も挙げられます。
「流汗滂沱」【りゅうかんぼうだ】
「流汗滂沱」は、汗が盛んに流れ落ちる様子を表す熟語です。
「流汗」は流れる汗を、「滂沱」は盛んに流れ落ちる様子を表しています。
例文としては、「彼の流汗滂沱の様子から、その過酷を感じとることができた」
(彼の汗が大量に流れ落ちる様子から、その過酷さを感じとることができた)
などが挙げられます。
「滂沱の観」【ぼうだのかん】
「観」(かん)という字には様々な意味がありますが、「○○の観」という言葉には「○○のような」という物事の状態や様子を表す意味になります。
ゆえに、「滂沱の観」という表現は、「継続して流れ出るかのような」という意味になります。
「滂沱と」「滂沱として」【ぼうだと】【ぼうだとして】
物事が継続して激しく流れている様子を表したいときは「滂沱と」「滂沱として」という言葉をつけて表現します。
例えば、「滂沱として流れる川」「滂沱として流れ落ちる汗」「滂沱と落ちる涙」などです。
「滂沱」という言葉はなかなか日常的で使うことがありません。
もし「滂沱」という言葉を口にしても理解できる人は少ないでしょう。
聞き返される恐れもあります。
しかし、文学作品にはたまに登場してくる言葉であるので、「滂沱」の意味を知っていることでより小説などを楽しむことができるでしょう。