「しくった」の意味とは?類語や使い方、例文を紹介!
言葉の中にはその時代に合わせた形で変化し、広まっていくものがあります。
それは勿論、公式の場で使われることが少ないものですが、「人々の会話の中で用いられる」という意味においては立派な「言葉」です。
今回はそんな口語的表現の中から、若者を中心に使われることの多い、「しくった」という言葉について解説していきたいと思います。
時折耳にすることもある言葉かもしれませんが、実際にはどのような意味で、どのように言葉として定着してきたのでしょうか。
ひとつひとつ、解説をしていきたいと思います。
目次
- 「しくった」の意味とは?
- 「しくった」は方言?
- 「しくった」の類語
- 「しくった」の使い方
- 現代における様々な若者言葉
「しくった」の意味とは?
「しくった」という言葉は、「何かを失敗してしまった時の表現」として使います。
言葉の品詞としては動詞に分類され、言い切りの形としては「しくる」となります。
この「しくる」という言葉の完了形・過去形として、「しくった」という言い回しが最も用いられているのだと考えられます。
この「しくった」という言い方には幾つか説があるものの、「しくじった」という言葉が語源となり、簡略化された結果、「しくった」という形となったものが定着した、という説が有力です。
もうひとつの説として、「する」を意味する「し」に、失敗するという意味の「狂う」を合わせた「し狂う」から派生した言葉であるという説もあります。
どちらにせよ、「することができなかった」「失敗してしまった」という、行動の結果に対しての否定的な表現として用いられる、口語であることは確かです。
現在では若年層を中心とした世代で広く使われるスラングのひとつとなっており、若者同士の会話や、インターネット上でのやりとりでも目にする機会が増えています。
「しくった」は方言?
「しくった」という言葉の発祥は、そもそもどこからなのでしょうか。
実はこの言葉がどこから生まれ、どのように広がったかは正確には解明されていません。
ですが、岩手県、秋田県、山形県、長野県、愛知県、山口県、大阪府などには、方言の中に、失敗を表す動詞として「しくる」という言葉が存在しているようです。
とはいえ、方言はそれぞれの都道府県の中でも、広範囲にわたって使われているものもあれば、非常に狭い一部地域でしか使われていないものもあり、また、きちんと調査が為されていないだけで、上記の6県1府以外にも
「しくる」「しくった」という方言を用いている都道府県が存在する可能性はあります。
また、地方で方言として使われていた言葉・言い回しが、その地方から他の地方へ移り住んだ人たちを通して、様々な地域に広がっていく、ということも日本では非常に多く見られます。
また、そういった方言が日本各地で普及した結果、言葉を使う人々が「方言である」という自覚なしにその言葉を使うようになるケースも多数存在します。
例えば、自分の喋った言葉の後に「〜じゃん」とつけるのは、神奈川県、特に横浜市の方言が発祥であると考えられてきましたが、実際には愛知の三河弁が、静岡方面から東海道を、山梨から甲州街道を経由し、横浜へ伝わったものだというのが、現在は有力な説となっています。
とはいえ、横浜市を中心とした神奈川の人々の間では、「〜じゃん」という言い回しは既に広く定着しているものです。
また、発祥となった地域がどこであったとしても、今や「〜じゃん」と語尾につける言い回しは、関東圏を中心として、若者だけでなく、より年齢層が上の世代の間でも頻繁に使われています。
このような形で、元々は方言として生まれた言葉であっても、その普及率や使用される頻度が高くなった結果として、ほぼ標準語に近い扱いとなる、ということはそれほど珍しくはないことです。
そもそも、標準語が使われているという印象が強い東京都であっても、その地域ごとに訛りや方言といったものは存在しています。
かつての江戸の街で暮らした「江戸っ子」たちの喋り言葉は、「江戸言葉」というれっきとした方言なのです。
もしかしたら、皆さんが何気なく使っていて、標準語だと思っている言葉も、どこかの地方から伝わってきた方言だったりするかもしれませんね。
「しくった」の類語
前述したとおり、「しくった」という言葉は「しくじった」が変化したもので、失敗してしまったという意味合いとして使われる言い回しです。
似たような言葉でより一般的な日本語表現に近いものとして、「仕損じた」「間違った」などがありますが、ここではあえて、「しくった」と似た口語的表現を幾つか紹介してみたいと思います。
- 「下手こいた」【へたこいた】
- 「ドジる」【どじる】
- 「ちょんぼ」【ちょんぼ】
「下手こいた」【へたこいた】
「しくった」と同じように、「失敗する」という表現として用いられます。
「失敗」という意味合いを含む「下手」という言葉に、何かをしてしまった時の俗な言い方としての「こく」が合わさることで、「ああ、失敗してしまった」という表現になったものです。
また、「こく」は漢字表記としては「放く」と記載しますが、これは北海道を中心とした方言だとされています。
「ドジる」【どじる】
元々は「どじを踏む」という言葉から派生したと考えられます。
「どじ」は間の抜けた失敗をすることを指しており、これを「しくる」と同じように、動詞的な口語表現として、あるいは前述の「どじを踏む」の省略形として用いられた結果、定着したのがこの「どじる」という言葉だと考えられます。
他の言い回しと比べて「気をつければ防げたはずのミス」という色合いが強い言葉であると言えるでしょう。
「ちょんぼ」【ちょんぼ】
これは麻雀用語として使われる言葉で、漢字表記では「錯和」と書きます。
「ちょんぼする」という言い方で使われることもあります。
現在では麻雀での反則行為全てを指す言葉となっていますが、元々は勘違いによる「和了」(あがりの意味)を指す反則行為の呼び方でした。
その後の対局が続行できなくなるなど、他の参加者に対する妨害行為にもなり得るため、点数を他の対局者に支払うなどの罰則が課されます。
そこから転じて、うっかりして間違うこと、注意不足で犯す失敗、そして、余計なミスをしてしまったこと、という意味合いになり、麻雀愛好家の中から定着していった言葉だと考えられます。
「しくった」の使い方
「しくった」は、「失敗してしまった」ということを表現するための非常に卑近な口語的表現です。
公の場で用いるには、もちろん相応しいとは言えませんが、友人同士のちょっとした会話など、親しい間柄で用いるには使いやすい言葉でしょう。
以下に「しくった」を使った例文を提示していきたいと思います。
- 「しくった」の例文1
- 「しくった」の例文2
- 「しくった」の例文3
「しくった」の例文1
「国語のテスト、漢字書き間違えて点数減ってるとか、マジでしくってるし」
これは「しくじっている」という言い回しの簡略化として捉えれば良いでしょう。
「しくじる」という言葉は本来、動詞として扱いますから、そこに「いる」という言葉を補って活用する事は当然可能です。
「しくった」の例文2
「しくったわー」
今日の試合、あそこでヒット打ってれば勝てたのに……。
これも「しくじったわ」という言い回しの簡略化となっていますが、より悔しさなどの感情を伝えやすい表現になっていると言えるでしょう。
「しくった」の例文3
「このゲームに全てかかってるんだ。頼むからしくるなよ?」
これは、「しくった」の言い切りの形である「しくる」を用いた表現です。
「しくる」という言葉に打ち消しの意味をもつ「な」を足すことで、「しくじるな」という意味としてここでは使用しています。
現代における様々な若者言葉
「しくった」は失敗を表す若者言葉として定着していますが、この他にも、SNSなどを中心とした媒体の中で、様々なネットスラングが若者独自の言葉として使われています。
中にはどういった言葉なのか一見するだけでは解らない、独特の言い回しなども存在し、読み解くのはなかなか難しいものです。
それもそのはず、こういったスラングの殆どは略語となっており、一体何の言葉を略したものなのかが解らなければ、当然のように意味を把握するのは難しくなります。
ここではそういった若者の中で定着している言葉を、いくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
- 「ワンチャン」
- 「フロリダ」
「ワンチャン」
これは、「ワンチャンス」の略語として用いられています。
うまくいく可能性は低いかもしれないけれど、1度くらいならチャンスがあるかもしれないよ、転じて、可能性はあるのだからやってみよう、というポジティブな意味合いとして使われることが多くなっています。
バリエーションとしての派生語もいくつかあり、例えば「ノーチャン」は、「ノーチャンス」の略で、可能性が0%、絶対に成功しないだろうという意味になります。
また「フルチャン」という言葉も存在しますが、こちらは「フル=100%」チャンスがあると言える状態、つまり、ほぼ必ず成功するだろうという表現として用いられます。
「フロリダ」
「フロリダ」という言葉だけを聞くと、当たり前の話ですが、アメリカ合衆国内にある「フロリダ州」を連想してしまうことでしょう。
実はこれも略語となっており、元々の形は、「風呂に入るから離脱する」という文章です。
SNSなどは、インターネットを介して投稿を読んでいる相手が存在します。
その読者に対する「入浴するので一時的に投稿をしなくなりますよ」という意思表示として、このような表現が用いられています。
元々は「風呂で離脱」といった風に徐々に省略していったのでしょうが、結果としてそれが最大限まで省略され、「フロリダ」という単語に行き着いたのは、言葉として非常に面白味を感じる部分ではないでしょうか。
今回は「しくった」という、若者言葉として定着しながらも、方言などにもルーツを持つ、特殊な日本語について解説してきました。
また、それに付随する形で、現代の若者がSNSなどで使用する、ユニークな口語表現などもご紹介致しました。
確かに、辞書に掲載されるような言葉などと比べれば、砕けた言い回しや、親しい間柄での用途に特化しているなど、非常に限定的で、公の場には相応しくないとされる表現ではあるでしょう。
ですが、言葉というのは常に変化し続ける生き物のようなものです。
その言葉を使用する人々の間に一定の共通認識が存在し、使われた言葉がどのような意味を持つのかが分かり合えていれば、それは既に、立派な言語として機能しています。
こういった口語に反感を示す方も見受けられますが、元々のルーツが方言にある、生活に密着したものであるなど、言葉として生まれ、普及していったことにも正しく歴史や経緯が存在します。
こういった言葉をただ否定して眉をひそめるのではなく、その言葉の背景に何があるのか、その言葉を使うのはどういった人々なのか、そういったことに思いをめぐらせてみると、どんな言葉でも面白味というものを感じられるのではないでしょうか。
もしかしたら皆さんが使っている言葉にも、思いも寄らないルーツが存在しているのかもしれませんよ。