「あずましい」の意味とは?方言?標準語に変換すると?使い方や例文を紹介!
方言には標準語にはない新鮮さがあります。
主に北海道で使われる「あずましい」について紹介しましょう。
目次
- 「あずましい」の意味とは?
- 「あずましい」の標準語
- 「あずましい」の使い方
- 「あずましい」の漢字は?
- 「あずましい」は方言?使われている場所
「あずましい」の意味とは?
北海道ではゆったりしていて余裕があり、落ち着けることを「あずましい」と表現します。
落ち着かないときや、余裕のない場合には「あずましくない」と否定形が使われ、時間、空間どちらの言い回しにも使われます。
座席がゆったりしている場合にも「あずましい」ですし、服のサイズがたっぷりして体が楽なときにも「あずましい」、スケジュールにゆとりがあってゆっくりできるときにも「あずましい」を使います。
「あずましい」という語感から、「あつかましい」をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、全く別の意味になります。
「あずましい」の標準語
「あずましい」は北海道方面で使われる方言ですが、標準語に置き換えてみると理解しやすくなるでしょう。
どんな表現に置き換えられるのか紹介していきましょう。
- 「ゆとりがある」
- 「安楽・安寧」
「ゆとりがある」
わかりやすい言葉で表現すると、「余裕があって落ち着く」ですから「ゆとりがある」があてはまります。
ただ、「あずましい」の場合には、居心地の良さも合わせて表現しているので、わずかに物足りなさがあります。
詳しくいうと「ゆとりがあって居心地がよい」、「安らぎが感じられる余裕がある」などと言葉を合わせて表現しなければ、確実に「あずましい」のニュアンスが伝わりません。
ゆとりや余裕だけでなく、居心地の良さやメリットが感じられるといった部分もプラスしたいところです。
「安楽・安寧」
熟語や単語で表す場合にも、1つだけでぴったり来る言葉を選ぶのは難しさがあります。
気持ちが安らかでくつろげる、ゆっくりできるというところから考えると、安楽や安寧といった言葉があてはまります。
しかし、ゆとりや余裕といった意味合いを加えようとすると、伝わり切らないところがあります。
「あずましくない」は、「窮屈」と表現できます。
しかし、「あずましい」の場合には、その反義語にあたる「安楽」や「自由」のどちらか一つだと、ニュアンスが伝わり切らないのです。
「自由で安楽、余裕があって安寧な状況」などの意味になるのです。
「あずましい」の使い方
北海道弁での「あずましい」は、どんな使い方をされているのでしょうか。
言葉の意味はなんとなくイメージできたかと思いますが、実際の使い方を文例とともに紹介していきましょう。
- 「あずましい」の例文1
- 「あずましい」の例文2
- 「あずましい」の例文3
- 「あずましい」の例文4
「あずましい」の例文1
「店に入ったほうがあずましいっしょ」
(訳:店に入ったほうがゆっくりできるし落ち着いて話ができるでしょう)
街あるきの途中で、こんなふうに話しかけられたら、店に入った方がゆっくり話ができるし、落ち着けるので、どこか店に入りましょうと誘っているということです。
単純に場所が広いとか、くつろげるというだけでなく、用途にあっている、メリットがあるという意味で使われるケースがあります。
「あずましい」の例文2
「じょっぴんかってでたほうがあずましいっしょ」
(訳:鍵をかけてでかけたほうが落ち着いて用事がたせるでしょ)
北海道弁では、年配の人は鍵をかけることを「じょっぴんかる」というので、こんな表現になることがあります。
田舎では、鍵をかけない習慣の地域もありのどかな場所も多いのですが、鍵をかけておけば安心という言葉をかけるときに、年配の人はこんな言い方をするかもしれません。
方言が2個以上重なると、難易度があがります。
「あずましい」の例文3
「子供の服は大きめの方があずましいっしょ。ちょうどいいやつ買ったらすぐにキツくなってあずましくないわ」
(訳:子供の服は大きめのほうが着心地がいいし買い直す手間もなくて便利でしょ。ちょうどいいやつをかったらすぐにキツくなってしまうので、窮屈だし買い換える手間が面倒だよ)
サイズにゆとりがあるということだけでなく、買い替えを気にしなくてはいけないので落ち着かないという部分まで一緒に表現されています。
居心地やよく便利、細かいことに気を使わなくても済むというニュアンスも含まれています。
北海道民のおおらかな部分を感じることができる表現とも言えるでしょう。
「あずましい」の例文4
「ストーブつけっぱなしの方があずましいっしょ。水道しばれたらまずいしね。」
(訳:ストーブつけたままのほうが便利がいいし落ち着いてねむれるね。水道が凍結してたらまずいしね。)
北海道では、冬になると1日中暖房をつけっぱなしという家庭は少なくありません。
暖房を切ると、マイナス5度以下が続くときには建物内の水道管が凍るキケンがあります。
とろとろと断熱の効いた住宅で暖房機をつけっぱなしにするのが常識になっています。
この方が、凍結などの心配ごとから開放されますし、家全体が暖かいことで居心地がよく落ち着いて眠れるのです。
「ああ、ホントあずましいね」
「あずましい」の漢字は?
「吾妻しい」と書きます。
もともと、「あずましい」という言葉の発祥が、「妻のそばにいるような安らぎを感じてくつろげる様」です。
家族が一緒にすごすときのように、無用な気遣いがなく落ち着いた気持ちになれるということが、「あずましい」という表現につながっています。
ですから、ゆったりできる、無用な気遣いが必要ない、くつろげる、しっくりくる、気持ちが落ち着く…といった意味が含まれているのです。
そこから派生して、余裕があって落ち着く、用途にぴったりくる、気持ちにあっている、便利であるといった意味合いで使われることがあります。
「あずましい」は方言?使われている場所
「あずましい」は北海道〜東北にかけての地方で使われる方言です。
北海道は、東北から移り住んだ人が多い歴史があり、東北系の方言が多く残っています。
東北ではお年寄りしか使わ無くなってしまった言い回しが、北海道で普通に話し言葉として残っているといった例もあります。
「あずましい」もそうした言葉の一つと言えます。
それぞれの地域と「あずましい」について紹介しましょう。
- 北海道
- 青森・秋田
北海道
北海道では、比較的若い年代でも「あずましい」がつかわれています。
一般的に話し言葉の中で「あずましいね」、「あずましくないっしょ」という会話がかわされることが多いです。
北海道弁LINEスタンプでは、「あずましくない」が採用されています。
「あしたのJR、あずましくないからやっぱ指定席だよね。」などという会話もあります。
電車は札幌と函館の路面電車だけで、都市間はJR頼みですし、ディーゼル列車が走っています。
函館札幌でも256キロメートル、札幌釧路は302キロメートル離れています。
自由席券で乗り込んで席がない場合、4時間席がないなんて事態になりますから、指定席があずましい訳です。
青森・秋田
秋田では、気分が良いという意味で「あずましい」が使われています。
青森でも同様です。
実際には、北海道と同じように時間や空間を合わせて派生した意味での使われ方もされていますが、若い世代までどれくらい浸透しているかというと微妙ですが、津軽弁LINEスタンプでは、「あずましい」が採用されています。
北海道を中心に使われている方言「あずましい」について紹介してきました。
気分が落ち着くだけのゆとりがある、用途にふさわしくあれこれ心配せずに済むと言ったニュアンスを含んでいるので、一度使うとちょっと便利だと感じるかもしれません。
新しい表現に「あずましい」を加えてみてはいかがでしょうか。