「相好を崩す」の意味とは?読み方、類語や使い方、英語を紹介!
日常の会話の中で突然難しい表現の言葉が耳に入ってくると、「あれ?今のどういう意味だったっけ…」と考えてしまう事が誰しも有ると思います。
日本語には、同じ意味でも様々な異なる表現方法や言葉があり、会話の流れや雰囲気によって使い分けなければいけない場面に何度も出くわします。
語彙力を高めていれば、そういった場面でも臨機応変に会話へ反応できます。
今回ご紹介する「相好を崩す」も、何だか聞いたことはあっても意味がすぐ浮かびにくい言葉です。
使いこなせるように深く理解していきましょう。
目次
- 「相好を崩す」の意味とは?
- 「相好を崩す」の類語
- 「相好を崩す」の使い方
- 「相好を崩す」の英語
- 分解して解釈すると簡単
「相好を崩す」の意味とは?
「相好」と「崩す」の2つの言葉から成る慣用句で、「にこやかな表情になる」や「顔をほころばせる」という笑顔の状態を表します。
「相好」というのは、「顔つきや表情」という意味を表す語句です。
それを「崩す」となると、まるで悲しさや怒りを表現しているようにも思えますが、実際は笑顔であることが正しい意味となります。
誤用しないように注意しましょう。
また、使われる意味合いとしては「厳しい表情(もしくは無表情)が笑顔に変わる」というニュアンスが強い為、笑顔を絶やさないような状態に使用することはありません。
ただ単に「笑顔」を連想させるだけの言葉ではないことがポイントです。
- 「相好を崩す」の語源
- 「相好を崩す」の読み方
「相好を崩す」の語源
元々、「相好」という言葉は仏教用語です。
仏教用語で「相好」とは、三十二相八重種好(さんじゅうにそうはちじっしゅこう)を略した言葉で、仏様の体に備わっているとされる優れた特徴のことです。
例えば絵画を描いたり仏像を作成するときに、この「相好」をもとにして仏様を表現します。
それが転じて現在では相好という言葉を「顔つきや表情」という意味で使っています。
顔つきや表情が崩れる、つまり、笑って顔の形がくしゃくしゃになっている様子を示して「相好を崩す」という慣用句へと成り立ちました。
「相好を崩す」の読み方
見たままだと「相好」は「そうこう」と読みそうですが、正しくは「そうごう」です。
三十三相八十種好の場合は、「好」の字を読む際「こう」と「ごう」どちらでも良いとなっていますが、「相好を崩す」の場合は「そうごうをくずす」が正しい読み方です。
「相好を崩す」の類語
「相好を崩す」とは「笑う、笑顔になる」という事だとが理解できましたが、日本語には様々な笑顔の表現があります。
言葉によって使う場面やニュアンスが若干違いますので、TPOに合わせて使い分けてみましょう。
- 「頬がゆるむ」【ほおがゆるむ】
- 「破顔する」【はがんする】
- 「笑みがこぼれる」【えみがこぼれる】
「頬がゆるむ」【ほおがゆるむ】
「ゆるむ」という言葉は、張っていたり締めつけられていた物がたるんだり、厳しい状態や程度がゆるやかになることを指します。
「頬がゆるむ」という表現はそれまで固くしていた表情を和らげ、笑顔に変化した状態です。
自発的に笑うというよりも、「思わぬ出来事があって顔の筋肉がゆるむようにほぐれ、笑顔になってしまう」という表現です。
【例】初孫との対面に、いつもは厳しい祖父も思わず頬がゆるんでいる。
「初孫との対面に笑顔になった」という直接的な表現にするよりも「頬がゆるむ」という言葉を用いることで、普段あまり笑みを表に出さない人が自分でも気づかないうちに微笑んでしまっている、という様子をよく表しています。
「破顔する」【はがんする】
「顔が破れる」とありますが、「いつもの顔の造作が崩れるように笑顔になる」ということを示し、「頬がゆるむ」と比べると一瞬で笑顔に変わるというニュアンスが強い表現です。
「破る」という動作について考えてみましょう。
紙などを破るときは、「ビリッ」という擬音語で表現できるように一瞬のうちに元あった形から破損した状態へ変わってしまいます。
このことから、無表情もしくは厳しい表情から一変してにっこりと笑顔になった様子を表す場面でよく使われています。
【例】暗い表情をしていた彼が、恋人の姿を見つけた瞬間破顔した。
直前ののっぺりとした暗い表情とはうって変わって、突然顔をくしゃくしゃにしたようににっこりした様子を表します。
「笑顔になった」というよりも、「破顔した」の方が、顔の造作が崩れるくらいに一気に笑顔へ変わったという深い表現になります。
「笑みがこぼれる」【えみがこぼれる】
この言葉は普段使っている人も多いのではないでしょうか。
「こぼれる」という動詞は「容器から余って漏れ出る、溢れる」という意味です。
このことから、本人の意図や気持ちを抑制できず、笑顔として表情に出してしまう様子を表しています。
声をあげて笑うのではなく、表情だけ変化しているときに使います。
思わぬ嬉しい出来事に出会った時、想定外の面白いことが起きた時など本人の対処が追い付かない状態で表れる笑顔です。
【例】授業中だったが、友達が発した冗談の言葉に笑みがこぼれた。
本来は笑うべきではない場所や時間に、もしくは相手に笑顔を見せるつもりは甚だなかった場合に、思わず笑ってしまったという表現ができます。
「相好を崩す」の使い方
それでは実際に例文を見て、使いどころをマスターしましょう。
- 「相好を崩す」の例文1
- 「相好を崩す」の例文2
「相好を崩す」の例文1
「いつもは厳しい先輩も、飲み会の席では相好を崩す」
「厳しい」という単語と相対する表現の「相好を崩す」を組み合わせて使用することで、普段あまり感情を表に出さず、きゅっと唇を結んだような厳しい表情の人が、顔の緊張をほぐすように笑顔になる様子を描いています。
対比がよく表れています。
「相好を崩す」の例文2
「彼のひょうきんな態度につられて、相好を崩した」
自分では笑うつもりがなくても、つい笑ってしまったというニュアンスの表現です。
顔つきを維持するはずが崩れてしまった、という比喩表現をうまく活かした例文です。
「相好を崩す」の英語
「相好」というのが仏教用語ということもあり、直接的な英単語はありません。
そのため、表現するとしたら、類語でも挙げた「破顔」という意味の“broad smile”という表現が「相好を崩す」とも非常に似通っています。
“broad”とは「幅広い、包容力のある、とらわれた、一般の」というそれこそ幅広い意味をもった英単語です。
“give a broad smile”でにっこりとほほ笑むという表現もできます。
分解して解釈すると簡単
組み合わせるととても難しい用語に聞こえますが、それぞれ分解して意味を照らし合わせると理解が深まります。
- 「相好」
- 「崩す」
「相好」
「三十二相八重種好(さんじゅうにそうはちじっしゅこう)」という言葉が正式な名称です。
仏様が備えている優れた特徴を表す言葉です。
見てすぐにわかる体の特徴が32相、さらに細かい美点が80種好という意味です。
三十二相八十種好の一例を挙げると、「常人の歯は32歯だが仏には40本の歯があり、それらは雪のように白く清潔」というものがあります。
この事細かな特徴をもとに、仏様が描かれたり仏像が作られたりしているのです。
その言葉の中に含まれている「相」と「好」の文字をとって「相好」と略した形で、今では転じて「顔つきや表情」を表す言葉とされています。
「崩す」
「崩す」や「崩れる」とは、ひとつに成り立っていた形が壊れたり、欠けたり、砕けるなどしてもとの形が維持できていない状態になることです。
「相好を崩す」とは、直接的に表現すると顔つきや表情を崩すことです。
人が笑う際、顔つきが元の顔と比べると皺ができたり目じりが下がるなど、元の形から維持できておらずまるで崩れた状態のように見えることから、比喩表現として「崩す」を使います。
いかがでしたか。
ただ一口に「笑う」といってもこれだけの表現があります。
少しずつ意味合いが違うので、場面に合わせて使い分けることがとても重要です。
普段の生活の中で当てはまるような機会があれば、ぜひ「相好を崩す」という表現を使ってみてください。