「濡れ衣」の意味・読み方・英語【使い方や例文】
濡れ衣という言葉は、日常生活中に結構聞くことがあります。
いい意味の言葉ではありませんが、きちんとした使い方を覚えておくに越したことはありません。
目次
- 「濡れ衣」の意味とは?
- 「濡れ衣」の語源についての考察
- 「濡れ衣」の使い方
- 「濡れ衣」を使った例文と解釈
- 「濡れ衣」を英語にすると?
- 「濡れ衣」の類義語や置き換えられる表現
「濡れ衣」の意味とは?
濡れ衣は、「謂れのない罪を問われたり、疑いをかけられること」を表す言葉です。
その為、対象になった人が自ら使う場合が多く、この言葉によって、自分ではない(無実だ)と周りに対して表現できます。
しかし、絶対にその人ではないという場合だけでなく、虚偽で自分ではないとアピールする時にも使われるので、この言葉を使って違うと言っていても、それが本当なのかは分かりません。
- 「濡れ衣」の読み方
「濡れ衣」の読み方
「濡れ衣」は、「ぬれぎぬ」と読みます。
「きぬ」と言えば、普通は「絹」の方が真っ先に浮かぶ漢字ですが、「衣」にもこの「きぬ」という読み方があり、そちらを採用しています。
これを知らないと、「ぬれい」と読んでしまうかも知れませんが、それは明らかな間違いです。
また、「ぬれぎぬ」という発音から、漢字では「濡れ絹」だと考えてしまうのも誤りなので注意してください。
「濡れ衣」の語源についての考察
濡れ衣は、「濡れた衣を着せられる」ことが語源です。
そして、それがどうして謂れのない罪や疑いを向けられるという意味で使われるようになったのかと言えば、これには諸説あるようです。
そこで、それらの説について詳しく見ていきましょう。
- 「漁師の衣から」
- 「海女の衣から」
- 「古今和歌集の中の歌から」
「漁師の衣から」
その昔、父親の連れ子の娘を疎んだ再婚相手が、その娘の寝床に濡れたままの漁師の衣を忍ばせてそれを父親に発見させ、漁師と密通を行っているかのように見せ掛けたことがあったそうです。
漁師というものをよく思っていなかった父親がそれに激怒し、娘を殺してしまったそうで、「濡れた衣の所為であらぬ疑いをかけられ、実害まで受けてしまった」ことから、「濡れ衣」という言葉がそのような意味で使われるようになったという説です。
「海女の衣から」
海女の着ている衣は常に濡れていることと、海女が水に潜ることを「潜く」(かずく)と呼んだことから由来しているという説です。
この「かずく」は、他人に責任を背負わせるという意味の「被く」と発音が同じなので、「濡れている衣を渡す=その人に責任を押し付ける」という意味になったと言われています。
「古今和歌集の中の歌から」
古今和歌集の中にある、「かきくらし ことは降らなむ春雨に 濡衣きせて 君をとどめむ」という歌が由来だという説です。
この歌では、「衣を濡らしてまで春雨の中を帰ることはないだろう」と相手を引き止めています。
春雨を愛しい人を濡らした憎き存在だと解釈し、それによって濡れた衣も同じくその人を濡らしてしまうので、悪者という扱いにされたそうです。
(それを着ている=悪者)
これらのどの説が本当の由来なのかは分かりませんが、どれも平安時代が起源とされており、学者の間で有力だと言われているのは一番最後の説のようです。
「濡れ衣」の使い方
濡れ衣という言葉は、自分がそのような立ち場になってしまった時にその潔白を訴える為に、またはそのような人に対して、この言葉で違うのではないかという使い方をします。
あまりいい言葉ではありませんが、一言(「濡れ」と「衣」の2つの言葉からできていますが、便宜上です)でその意味を表現できるので使い勝手はいいと言えるでしょう。
「濡れ衣」を使った例文と解釈
濡れ衣を使った例文をいくつか挙げて、詳しい使い方を見ていきます。
どれも実際に使われることが多い形です。
- 例文1
- 例文2
- 例文3
例文1
「車に傷を付けたのは自分だと濡れ衣を着せられてしまった」
会社の営業車などの何人かで乗っている車に傷が付いていて、その犯人が自分だと思われているという状況を表しています。
自分がやったのでなければ、それこそ濡れ衣というものです。
自分がその対象となってしまった時に色々と応用の利く例文です。
この濡れ衣は「衣」なだけに、このように「着せられる」、「着せられた」、または(人に対して)「着せる」と使うことが多いです。
例文2
「重要な書類が流出した件で○○が疑われているようだが、濡れ衣ではないだろうか」
人が疑われる対象となっている時に使っている例です。
濡れ衣という言葉だけでその人ではないということを表現できるので、この例文のような使い方をよく聞きます。
例文3
「濡れ衣だろうと何だろうと、他に犯人は居ないだろう」
どう考えようとその人が犯人だろうと思っていることを表現している例文になります。
確実なものではない、いわゆる状況証拠のようなものだけで人を疑うのは決して褒められたものではありませんが、このようなケースにも使える言葉だという例だと考えてください。
「濡れ衣」を英語にすると?
「濡れ衣」は英語にも同様の意味の言葉があり、“scapegoat”(スケイプゴート)がそれに当たります。
スケイプゴートとそのまま日本語のように使われることもあるので、一度は聞いたことがあるかも知れません。
「他人の罪を負わされる」、「身代わりにされる」という意味のある言葉で、日本語の「濡れ衣」そのものです。
「濡れ衣」の類義語や置き換えられる表現
「濡れ衣」と置き換えることができる言葉できる他の言葉や表現です。
そのまま置き換えられるものと、同じ様な意味で使えるものがあります。
- 「冤罪」【えんざい】
- 「責任転嫁」【せきにんてんか】
「冤罪」【えんざい】
「謂れのない罪」のことで、「濡れ衣」を着せられた結果です。
本当はその人は違うのではないかということを言いたい時には、「冤罪ではないか」と使います。
これは「濡れ衣ではないか」でも同じ意味になるので、ほとんど一緒の意味の置き換え表現になります。
公的な立場や機関でも使う言葉の為、「濡れ衣」を堅くした言葉だと考えると分かりやすいでしょう。
「責任転嫁」【せきにんてんか】
人に責任を押し付けることをこのように言います。
それをされたことで、「濡れ衣」になってしまったというケースも少なくないので、似たように使うことができる言葉です。
「責任転嫁されて自分の所為になってしまった」と言うと、濡れ衣を着せられたのと同じことになります。
この濡れ衣は、使い勝手はいい言葉ながら、使わないに越したことはない言葉だとも言えるでしょう。
自分にそのようなものを着せられてしまってはたまらないのと同時に、人に着せてもいけないものです。