「猪」とは・語源や英語・猪を使ったことわざ
平成31年は猪年です。
猪といえば豚と良く似た動物というイメージがありますが、お世辞にも可愛いとは言えないのでキャラとして人気はありません。
折角ですので猪についてや、猪が出てくる諺などについて知っておきましょう。
目次
- 「猪」の意味とは?
- 「猪」の語源
- 「猪」の英語
- 「猪」を使ったことわざ(解釈)
- 「猪」と豚の違い
「猪」の意味とは?
- 「猪」の読み方
- 「猪」の概要
- 「猪」の食生活
- 「猪」の種類
「猪」の読み方
「猪」は、一般的には「いのしし」と読みます。
音読みでは「ちょ」、訓読みでは「いのしし・い」という読み方があります。
ことわざや口語では「いの」と呼ぶこともあります。
「猪」の概要
猪は、偶蹄(ぐうてい)目イノシシ科の哺乳類です。
偶蹄目とはひづめが割れている動物のことで、牛も同じ種目に分類されます。
体長は約1メートルですが、大きなもの2メートル近くにもなります。
体重も体長に比例していて、50キロ〜200キロと幅があります。
体毛は濃い茶色や黒で硬い毛に覆われています。
下あごに大きな牙があるのが特徴です。
「猪」の食生活
猪は雑食動物で、ドングリやタケノコなどの植物からネズミ・ミミズなどの小動物まで食べます。
また、最近では山から里に下りてきて街中で発見される猪も多くいます。
農作物の被害も大きく、根菜類や果実を育てている農家が狙われます。
更に、街中に出没する猪は雑食化が進み、家庭から出る生ごみも荒らすことで深刻な問題になっています。
「猪」の種類
日本には2種の猪が生息しています。
「ニホンイノシシ」は最も知られている種類で、一般的に「イノシシ」といえばこれ当たります。
主に西日本に生息していて、街中に出没することもあります。
「リュウキュウイノシシ」は、沖縄にのみ生息する種類です。
ニホンイノシシよりも小柄で、個体数が少なく絶滅危惧種に指定されています。
「猪」の語源
- 「いのしし」という名前
- 「猪」という漢字
「いのしし」という名前
「猪」の名前は鳴き声から来ています。
大昔は猪ではなく「ヰ(イ)」と呼ばれていました。
これは、猪が「ウィ」という鳴き声であることから付けられた名前です。
そして猪は昔から食用の動物であり、当時「肉」「食用の動物」を意味する「しし」という言葉が加えられたのです。
現在使われている「獅子(しし)=ライオン」とは別の意味になります。
つまり、猪は「ウィと鳴く、食べられる動物」という意味になります。
猪と同様に食用の動物として「鹿」がいますが、昔は「かのしし」と呼ばれていたそうです。
「猪」という漢字
昔は「猪」は今の「豚」のことであり、「豕(シャ・チョ)」と表記されていました。
時が流れるに連れて「豕」は人の食料として大切な備蓄様動物になります。
人間にとってなくてはならない動物であり、常に人と共にあることから「豕」に「者」を付けて「猪」という文字になったと言われています。
「猪」の英語
「猪」という言葉を直訳すると“boar”になります。
但し、会話の中で“boar”という単語が出てくると「退屈する」という意味の“boar”と間違え易くなります。
そこでより分り易くする為に“wild boar”或いは“wild pig”と言うのが一般的です。
“wild”は「野生の」という意味があり、“pig”に付いてもすぐに「猪のことだな」と分かります。
「猪」を使ったことわざ(解釈)
- 「猪突猛進」【ちょとつもうしん】
- 「猪見て矢を引く」【いのししみてやをひく】
- 「猪武者」【いのししむしゃ】
- 「山より大きな猪は出ぬ」【やまよりおおきないのししはでぬ】
- 「遼東の豕」【りょうとうのいのこ】
- 「豕を抱いて臭気を忘れる」【いのこをだいてしゅうきをわすれる】
- 「猪も七代目には豕になる」【いのししもななだいめにはいのこになる】
- 「馴染みては猪の子も可愛」【なじみてはいのししのこもかわい】
- 「しし食った報い」【ししくったむくい】
- 「御猪口」【おちょこ】
「猪突猛進」【ちょとつもうしん】
最も一般的に使われることわざです。
「周囲の状況を考えずに、自分の目的に向かって猛烈な勢いで突き進むこと」「リスクを顧みずに目標に向かってがむしゃらに行動すること」を意味します。
猪は非常に足が速いのですが、真っ直ぐにしか進めないと言われています。
その為に後先を考えずにその場の勢いに任せて一気に何かをやろうとする人のことを表現する様になりました。
この言葉を使う時には、決して褒め言葉ではないことを知っておきましょう。
気心知れた友人はともかく、ビジネスの付き合いの人でエネルギッシュな面を褒めようとして「猪突猛進タイプですね」と言うと、相手を怒らせてしまい兼ねません。
因みに、実際のところ猪は走りながら方向転換ができるすばしこい動物です。
「猪見て矢を引く」【いのししみてやをひく】
猪は非常に走るの速く、もの凄い勢いで逃げたり、人に向かって突進してきます。
これは何か事件が起きてから慌てて対策を立てることを言い、ものごとに対して詰めが甘い状態を意味します。
同じ意味のことわざに「泥棒を見て縄をなう」があります。
「猪武者」【いのししむしゃ】
こちらも猪が向う見ずに突進してくる性質であることから「周囲の状況を考えずにがむしゃらに突き進む武士」のことを意味する言葉です。
現在でも武士という言葉が残り、普通に人を表す様になりました。
「山より大きな猪は出ぬ」【やまよりおおきないのししはでぬ】
猪は山に隠れ住んでいる動物なので、当然住んでいる山より大きな筈はありません。
このことから、今入れている器より大きな中身はあり得ないことを言い、普段から大袈裟なことを言う人に対して「ほどほどにしろよ」という意味で使われます。
「遼東の豕」【りょうとうのいのこ】
小さな場所で育ったので、世間一般に知られている様なことなのにまるで自分だけが知っていると思い、得意になっている人を言います。
ここから「自分だけが優れていると思っていて傍から見れば滑稽な人」を表します。
「豕を抱いて臭気を忘れる」【いのこをだいてしゅうきをわすれる】
猪は臭い動物ですが、猪を抱えている本人はニオイに慣れてしまっていて臭さが分りません。
このことから、自分の欠点は自分では気付かないものであるという意味になります。
「猪も七代目には豕になる」【いのししもななだいめにはいのこになる】
「豕」とは古代では豚のことを言いました。
豚は元々猪が家畜化したもので、見た目もかなり違っています。
猪ですら7代目までいけば豚になるのだから、どんなものでも長い年月をかければ変わって行くという意味です。
「馴染みては猪の子も可愛」【なじみてはいのししのこもかわい】
猪は剛毛で性質も荒く、決して可愛いというイメージはありません。
しかし猪の子供は縞模様があり「うりぼう」と呼ばれていて、人に馴らせば段々と可愛く見えてくるものです。
このことから、どんなものでも自分の身近に置き、常に慣れ親しんでいれば、段々と情が移って愛しく思えてくるということを意味します。
「しし食った報い」【ししくったむくい】
「しし」とは「猪・鹿」等の肉を意味します。
昔、猪や鹿は伊勢神宮では忌み嫌われた獣でした。
それを食べたことで、悪いことをしたらそれ相応の報いがあるという意味になります。
「御猪口」【おちょこ】
おちょこは、日本酒を飲む時に使う小さな器のことです。
おちょこはちょっとしたものを表す「ちょく」という言葉が変化したものです。
猪という漢字は同じ音であることから使われた当て字で、特に意味はありません。
「猪」と豚の違い
- 「牙」
- 「成長速度」
「牙」
猪と豚の最も大きな違いと言えば「牙」でしょう。
野生の猪の牙は敵から身を守る為に大切なものです。
豚は猪が家畜化したもので、元々牙はありましたが退化しています。
但し、豚には小さくてもちゃんと牙はありますので怒ると牙で襲ってくることもあります。
「成長速度」
豚は猪を家畜化して品種改良を重ねて来ています。
その為に、猪よりも成長スピードが非常に速いのです。
猪は生まれてから大人になるまでに1年位かかりますが、豚は半年しかかりません。
食用なのでとにかく早く成長してくれた方が都合いいのです。
猪は集団で行動するので刺激すると暴走することもあります。
亥年の人は熱血漢でまっしぐらと言われていますが、猪は家族思いで面倒見の良い動物です。
猪への理解を深めながら新しい年を迎えて下さい。