「苦渋の決断」の意味とは?使い方や例文を紹介!
日常生活の中で、「判断」をすることはよくありますが「決断」となると、早々、あるものではありません。
今年流行する色は何色とか、これは、生で食べても大丈夫かな、といったことを「判断」します。
それと違って、今後、我が社の取るべき生産体制や業務提携に伴う合併に関する事項などは「決断」するのですから、「反断」と「決断」とでは、ことの質や重さ、大きさが違います。
まして、それが「苦渋の決断」となれば「苦くて渋い」決断ということになります。
「苦渋」の二文字で、何がどのように違う「決断」が示されるのでしょうか。
目次
- 「苦渋の決断」の意味とは?
- 「苦渋の決断」の言葉の使い方
- 「苦渋の決断」を使った例文
- 「苦渋の決断」の英語
- 「苦渋の決断」のビジネスでの使い方
- 「苦渋の決断」と「断腸の思い」との違い
- 「苦渋の決断」の反対語や対義語
- 「苦渋の決断」と同じ意味のことわざ
「苦渋の決断」の意味とは?
本来、それぞれの漢字が持つ意味から読み取れるように「苦い」味と「渋い」味とを味わう「決断」です。
苦さは、薬の苦さや野菜の苦みで経験していることからもわかるように、思わず顔がゆがみます。
また、渋柿を、それとは知らずに、大口開けて食べた時の渋さも、口元が変形するほどに強烈で、記憶に残る味です。
しかし、それと分かっていて「苦渋」を口にした顔つきで、決めたくはないけれども、どうしても決めなければならないことに、決定を下すことを表しています。
つまり「苦渋」が意味することと合わさって「物事がうまく運ばず、悩み苦しんでいることが、顔の様子からもわかるほど、考え抜き、悩み抜いて、最後の最後まで悩み抜いて決めること」を意味する言葉です。
- 「苦渋の決断」の読み方
「苦渋の決断」の読み方
「くじゅうのけつだん」と読みます。
「い」も送られていませんし「にがしぶ」とは、どう考えても読めませんので、読み違いはないかと思います。
素直に、そのまま読みます。
「苦渋の決断」の言葉の使い方
諸般の事情や経緯、周りの雰囲気など、総合的にみて、どうするのが最適かを決める「判断」と違って「決断」するとは、今後の社の運営体制やあり方を決するような重大事項に対するものです。
従って、簡単に訂正がきくような種類のものではなく、万一、間違えた場合には、当事者の進退問題に責任の追求が及ぶ可能性をも含むようなきわめて重い言葉です。
従って「例の件について、課長に報告するかしないか、苦渋の決断を迫られた」とか「苦渋の決断の末、今年の課の慰安旅行は、中止にした」などとは、使いません。
また「〜を迫られた」という言葉を伴う場合が、多くあります。
「苦渋の決断」を使った例文
- 「苦渋の決断」の例文1
- 「苦渋の決断」の例文2
- 「苦渋の決断」の例文3
「苦渋の決断」の例文1
曾祖父の代から営業してきた、創業100年を超える由緒ある和菓子屋ですが、今日の洋風菓子を中心とした時代の波には、乗ることができませんでした。
のれんの意地をかけて売り出した、新製品の自信作であるチーズ饅頭「時の流れ」も、思いのほかヒットしなかったことが、店の存続をかけた「苦渋の決断」に拍車をかける結果となりました。
「苦渋の決断」の例文2
県大会では、リトルリーグから野球に打ち込んできた3年生を、これが野球にかけた青春の最後のチャンスなので、なんとかレギュラーとして使いたいと思います。
しかし、甲子園へ行くには、絶対に勝たなければならず、そんな中で、下級生である上に、入部間もない1年生の山田をレギュラーにするというのには、まさに「苦渋の決断」を迫られています。
「苦渋の決断」の例文3
実家を売却することは、単に、生まれ育った家がなくなるだけではなく、この地とは、縁が切れることを意味しています。
この書類に判をつけば、二度とここを訪れることもなくなるのかと思うと、様々な思い出や村の人たちがうかんできて、不覚にも目頭が熱くなり「苦渋の決断」を余儀なくされる中で、実印を握る指が、思わず小刻みにふるえていました。
「苦渋の決断」の英語
「苦しい」とか「骨の折れる」といった言葉に「決心」や「決定」を意味する単語が、くっついて並ぶ形になります。
- “A tough decision. ”(骨の折れる・難しい・決定・決心)
- “An agonizing decision. ”(苦しめる・苦闘させる・決定・決心)
しかし、日本語で言う「苦渋の決断」により近い訳だと感じるのは、
“It’s a bitter decision. ”(苦い・つらい・決定・決心)という英訳です。
「苦渋の決断」のビジネスでの使い方
ビジネスの世界で「苦渋の決断」が要求され、次のような時が、考えられます。
- 「苦渋の決断」の使い方1
- 「苦渋の決断」の使い方2
「苦渋の決断」の使い方1
いよいよ我が社との業務提携を結ぶ運びとなったが、原材料の保管や製品の発送基地などの条件から、A、B、C三社の中の一社のみを選定することになったのは「苦渋の決断」を要する重大問題だ。
「苦渋の決断」の使い方2
今回の人事では、リストラ要員の選別、それに向けた配置転換が、必要になってきます。
まさに「苦渋の決断」をする場面に、我が社も向き合わねばならない時代になりました。
「苦渋の決断」と「断腸の思い」との違い
「断腸の思い」には、出典があります。
中国の武将桓温が、舟で三峡を下っていた時に、従者が猿の子どもを捕まえて舟に乗せたところ、岸辺を、母猿が悲しい無き声をあげてどこまでも走って追いかけ、ついに舟には飛び乗ったけれども、力尽き悶死してしまいます。
その腹を割いてみたところ、腸がずたずたに切れていたと言う故事に由来しています。
だから、苦渋を味わう「苦渋の決断」より、腸を切り刻む苦しみを味わう「断腸の決断」の方が、よりハードと言えます。
「苦渋の決断」の反対語や対義語
対義語は「苦渋」の反対語や対義語を探せばよいわけですが「楽な判断」「気軽な判断」などでは、言葉の質が違ってきますので、あえて、反語・対義語に近い熟語を取り上げました。
ただし、それぞれの熟語には、正しい反語・対義語がありますので、あきまでも参考程度です。
- 「当機立断」【とうきりつだん】
- 「短慮軽率」【えんりょけいそつ】
- 「遊移不定」【ゆういふてい】
「当機立断」【とうきりつだん】
「機(会)に当たった時」に、即「立(案)」して「(決)断」するという漢字の並びから「決断を要するような機会に出会うと、素早く決断すること」を意味する言葉です。
「短慮軽率」【えんりょけいそつ】
「短い」「(思)慮」で「軽率」な行動をとるということを意味する言葉から「思慮が足りず、言動が軽はずみなこと」を表す熟語になります。
顔つきが変わるほどに熟考する「苦渋の決断」とは、雲泥の差です。
「遊移不定」【ゆういふてい】
「遊」と「移」が重なって使われている通りに、考えが「ふらふらと遊んでいるように揺れ動き」「ああでもないこうでもないと、次々に、考えは移っていき」今だ「不定(定まらず)」のままだという意味です。
そこから「ためらいがあって、なかなか決心ができない様子」を表す言葉でもあります。
「苦渋の決断」と同じ意味のことわざ
- 「苦渋の選択」【くじゅうのせんたく】
- 「苦渋の判断」【くじゅうのはんだん】
- 「辛い選択」【つらいせんたく】
「苦渋の選択」【くじゅうのせんたく】
「選択」ですから、どれを選ぶかについて苦悩し、考え抜き、悩み抜いて、決定することを意味する言葉です。
「苦渋の判断」【くじゅうのはんだん】
「決断」に比べれば、「判断」することは、日常的に多く見られることなので「決断」ほど、重くはありませんが、同じ意味合いをもつ言葉です。
「辛い選択」【つらいせんたく】
「辛い」になると、個人的な感情のレベルにまでおりてきた感じで「苦渋の決断」からすれば、ずいぶん緊張度も重要度も低くなりますが、意味的には同じことわざになります。
どの方向へ行くべきか、まだ食べられるかなど、ごく些細なことでも「判断」するのに対して、なすべき行動やとるべき態度を決める「決断」には、重いものがあります。
まして「苦渋の決断」となれば、そのような決断を迫られることは、何度もあるものではありません。
しかし、ビジネスでは、コスト削減のため、長年つきあってきた納入業者を切ることなどは、よくあることです。
そんな時に、苦渋の決断をし、断腸の思いで納入を断る旨、相手業者に伝えることができるか否かが、この言葉をマスターしたことになります。