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「柔能く剛を制す」の意味・類語【使い方や例文】

日本語には、昔から伝わってきた古い言葉、すなわちことわざが数多く残っています。

現代の日本語では、会話をする時にあまりこれらのことわざを使う機会が少なくなっていますが、物事をありさまを忠実に例えたい時には、とても便利な表現法でもあります。

今回、ここで紹介したいことわざは、「柔能く剛を制す」です。

なんとなく昔の古くさい表現の印象を覚えてしまいますので、普段から使われる言葉でないですし、この言葉の存在さえ知らないう人も多いのではないかと思います。

ここでは「柔よく剛を制す」にどのような意味があり、使われる場面なども、見ていき、理解を深めてもらえばと考えています。

柔能く剛を制す

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「柔能く剛を制す」の意味・類語【使い方や例文】>


目次

  • 「柔能く剛を制す」の意味とは?
  • 「柔能く剛を制す」の類語
  • 「柔能く剛を制す」の言葉の使い方
  • 「柔能く剛を制す」を使った例文
  • 「柔能く剛を制す」の英語
  • 「柔能く剛を制す」の対義語
  • 「柔」と「剛」を使ったことわざや熟語・意味を解釈
  • 「柔よく剛を制す」の由来


「柔能く剛を制す」の意味とは?

「柔能く剛を制す」の意味とは?

「柔能く剛を制す」とは、「しなやかなものは弱そうに見えても、実は硬いものの矛先をうまくそらして、結局は勝つことになる」という意味を持つことわざなのです。

確かにしなやかなものを見ていると、何となく弱そうに見えてしまいます。

しかし、実際には硬いものの方が、硬いものが壊れやすく、柔らかでしなやかなものは、中々、折れたり、壊れたりすることはありません。

ここから、弱いそうに見えている人が強い人に勝った時に、「柔能く剛を制す」を使うことがあります。

ただ注意しておかなければならないことは、「硬いものでなく、柔軟なものの方が優れている」という意味ではないということです。

あくまで、方法の選択によって、柔和な人でも剛直な人を制御したり、打ち負かすことができるという解釈になることが正しい理解になります。

言い換えると、「弱い人でも強い人を制御することができる」という意味になります。

  • 「柔能く剛を制す」の読み方

「柔能く剛を制す」の読み方

「柔能く剛を制す」は、「じゅうよくごうをせいす」という読み方になります。

尚、気を付けたいことは、漢字の使い方ですが、「柔良く剛を制す」という表し方は間違っています。

「よく」の部分を漢字で書くなら、「柔能く剛を制す」となりますが、「良く」「良い」の意味なので、このことわざにはあてはまりません。

「能く」とは「可能」という意味があるために、ここで使われていることになります。



「柔能く剛を制す」の類語

「柔能く剛を制す」の類語

「柔和なものが剛いものを制御することができる」という意味を持つ「柔能く剛を制す」は、他にも似たようなことわざがあります。

どのようなことわざが類義語としてあるのかを説明します。

  • 「柳に雪折れなし」
  • 「堅い木は折れる」

「柳に雪折れなし」

「柳に雪折れなし」「柔能く剛を制す」と同じ意味を持つことわざです。

意味は、「柔らかくしなやかなものは、堅いものよりも、よく耐えること」ということになります。

柳を観察してみると、枝は実にしなやかでおり、雪が積もって折れることがないので「柔能く剛を制す」の同義語という解釈なっていきますね。

「堅い木は折れる」

「堅い木は折れる」も同義語の1つで「堅い物は折れやすく、柔らかいもののほうがよく耐える」ということを例えています。

このことわざを素直に見ていくと、堅い木が折れてしまうことは、ごく当たり前のことですが、それは「柔能く剛を制す」的に解釈することは、ことわざの奥深さをあらためて認識させてくれます。

「柔能く剛を制す」の言葉の使い方

「柔能く剛を制す」の言葉の使い方

「柔能く剛を制す」を使うことは、今の日常会話の中であまり耳にすることはありませんが、このことわざが当てはまる場面は、一見弱そうに見えていた人やものが、周りの人達が思っていた以上に、強かった場合などで用いられるのではないかと思います。



「柔能く剛を制す」を使った例文

「柔能く剛を制す」を使った例文

では、「柔能く剛を制す」が実際に使わそうな場面を想定して例文の形で見ていくことにします。

  • 「柔能く剛を制す」の例文1
  • 「柔能く剛を制す」の例文2
  • 「柔能く剛を制す」の例文3

「柔能く剛を制す」の例文1

「小さい身体をしている友人を弱いと思い込んだ奴がなめてかかっていったのですが、柔能く剛を制すで負けてしまった」

このようなことを幼い頃に経験したり、見たことがあるのではないでしょうか?

小・中学生の時に弱そうな生徒を見つけて、いじめようてしたら、逆にこてんぱんに打ちのめされたという札付きのワルもいましたね。

「柔能く剛を制す」の例文2

「あれだけ頑固だった部下を怒鳴らずに、優しい言葉で説得したらなら、素直に理解してくれたのです。

これこそ柔能く剛を制すということだ」


ビジネスの世界では、上司が部下を激しく叱るという場面が日常茶飯事でした。

しかし、最近はパワハラ問題で指摘される環境もあってか、部下を優しく指導する光景が増えてきました。

でも、このように優しい指導法が、部下の心を開くことになるでしょう。

「柔能く剛を制す」の例文3

「柔能く剛を制すというように、あまり強硬な手段を取ってしまうと、相手はますますかたくなにこちらの言い分に対して、ガードを固めることになってしまうだろう」

このようなセリフは、ビジネスシーンで取引先との商談・交渉の場面で出てきそうな感じです。

「柔能く剛を制す」の英語

「柔能く剛を制す」の英語

「柔よく剛を制す」を英語で表現すると、“Better bend than break”“soft and fair goes far”“willows are weak”“yet they bind other wood”などの言い方があります。

「柔能く剛を制す」の対義語

「柔能く剛を制す」の対義語

「柔能く剛を制す」の反対の意味を持つ対義語としては、「剛能く柔と断つ」ということわざがあります。

意味は、「剛強なものが柔軟なものを負かす」という意味になります。

しかし、このことわざは独立した言葉ではなく、「柔よく剛を制す」に続く言葉なのです。

実は、このことわざは元来「柔よく剛を制し、剛よく柔を断つ」という1つのものでした。

「剛能く柔を断つ」とは、字の通り「柔よく剛を制す」の逆になっており、「硬いものが、柔らかいものを下す」という意味です。

元々は「硬いものよりも柔らかいものがいい」「柔らかいものより硬いものの方が強い」というような独立した意味ではありませんでした。

「柔らかいものと硬いもの、どちらにも利点があり、方法の選び方によって、相手に勝つことができる」という意味で解釈できる言葉なのです。

「柔」と「剛」を使ったことわざや熟語・意味を解釈

「柔」と「剛」を使ったことわざや熟語・意味を解釈

では、「柔」「剛」を使った言葉には、何があるか、見ていくことにしましょう。

  • 「剛柔」
  • 「緩急剛柔」

「剛柔」

「剛柔」には、「硬いことと柔らかいこと」「強いことと優しいこと」という意味がありますが、「剛柔流(ごうじゅうりゅう)空手」で有名な単語かもしれませんね。

剛柔流空手は、日本空手の流派の1つで、沖縄三大流派(剛柔流、上地流、小林流)の1つに数えられます。

また、松涛館流、糸東流、和道流と並び空手の4大流派の1つでもありパワフルな型が特徴的です。

「緩急剛柔」

「かんきゅうごうじゅう」という読み方になりますが、「状況に合わせて適切に対処すること」という意味があります、 「緩急」とは、「緩やかなことと厳しいこと」「剛柔」は前述の通り「強いことと優しいこと」です。

「緩急剛柔」は、普段の日常会話の中ではあまり使われることがないのですが、気骨あふれる戦いぶりでプロ野球界を牽引した「闘将」星野仙一さんが他界された時のコラムで見ることがありました。

低迷していた阪神を熱い指導で強いチームな復活させましたし、楽天では東日本大震災後に初の日本一に導いたことから、強者にチャレンジ精神で戦いを挑み、その一方で優しい気持ちで接する人柄から、「緩急剛柔」という性格の人と多くの人々から親しまれてきたのです。

「柔よく剛を制す」の由来

「柔よく剛を制す」の由来

「柔よく剛を制す」の由来は、「三略」という中国の兵書に出てくる言葉から来ています。

兵書とは、兵学について書いてある書物のことで、「三略」「軍神に曰く、柔は能く剛を制し、弱は能く強を制す(兵法の書にいう、柔らかいものはかえってかたいものを押さえつけ、弱いものはかえって強いものを押さえつける)」という分節を由来としています。

icon まとめ

「柔能く剛を制す」という言葉を知ることで、私達の生活の中で、このような姿勢で困難なことに立ち向かっていくができる勇気を持てるのではないかと思うのです。