「鎌首をもたげる」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
皆さんは、「鎌首をもたげる」という言葉をご存知ですか? 普段の生活ではあまり見聞きすることはありませんが、蛇やカマキリが臨戦態勢に入る時の、緊張感がイメージとして浮かんできますね。
今回は「鎌首をもたげる」という言葉についてみていきましょう。
目次
- 「鎌首をもたげる」の意味とは?
- 「鎌首をもたげる」の類語や言い換え
- 「鎌首をもたげる」の使い方
- 「鎌首をもたげる」を使った例文と解釈
- 「鎌首をもたげる」の語源
- 「鎌首をもたげる」を分解して解釈
- 「鎌首」を使った熟語と意味
- 「鎌首をもたげる」の英語表現
「鎌首をもたげる」の意味とは?
蛇が獲物を狙う様子を思い浮かべてみて下さい。
今にも襲い掛かれるように、首のあたりを鎌のように曲げて、すくっと立っています。
このように、多くは、蛇やカマキリなどが首を持ち上げた様子のことをいいます。
また、それが転じて、悪いことが起こる予兆がある時や、水面下(暗闇や物陰)に潜んでいた悪事が、活発になることを指す場合もあります。
自分自身の心理面、不安や嫉妬、怒りなどマイナスイメージの感情を表現するのに、使用したりもします。
- 「鎌首をもたげる」の読み方
「鎌首をもたげる」の読み方
「かまくびをもたげる」と読みます。
鎌首は鎌のように曲がった首という意味ですが、「もた・げる」は、「もて・あぐ」で、持ち上げるという意味になります。
「鎌首をもたげる」の類語や言い換え
蛇の動作そのものを言う場合と、怪しい兆しや行動など、主にマイナスイメージを指す比喩表現の場合に分かれますが、動作の場合は、「首を上の方へ上げる」、「首を持ち上げる」、「こちらを向く」で、比喩表現の方は、「不穏な事態」、「悪い予感がする」、「臨戦態勢に入る」、「ゴングが鳴る」などになります。
「鎌首をもたげる」の使い方
「鎌首をもたげる」という言葉は、どのような場面で使われるのでしょうか。
日住生活ではあまり目にすることはありませんが、小説を読んでいる時、時々この言葉に出会います。
少し、文学的な香りのする言葉でもあります。
太宰治や泉鏡花、梶井基次郎などの有名作家から、近年はライトノベルや官能小説の類にも使用されているようです。
「鎌首をもたげる」を使った例文と解釈
日常生活の中で使用される場合はどんな風に使うのでしょう。
また、文学作品ではどのような使われ方をしているのでしょうか。
みていきたいと思います。
- 「鎌首をもたげる」の例文1(動作そのものを指す場合)
- 「鎌首をもたげる」の例文2(比喩的表現)
- 「鎌首をもたげる」の例文3(文学の中に出てくる表現)
「鎌首をもたげる」の例文1(動作そのものを指す場合)
「山にハイキングに出掛けた時、石に腰をかけて休んでいたら、草むらから蛇が鎌首をもたげてこちらを睨んでいた」
山歩きをしていると、時々蛇に遭遇します。
大抵の場合は向こうから逃げていきますが、蛇は、自分の身が危険だと感じた瞬間、襲って来たりしますので、注意が必要です。
「鎌首をもたげる」の例文2(比喩的表現)
「同期の佐藤さんが、企画部のエリート、山崎さんと結婚するという。羨ましいというより、妬みのような黒い感情が、私の中で鎌首をもたげる」
普段は仲良くしている同期でも、嫉妬が、ふつふつと湧き上がることもあります。
そんな時に使うと、ビジュアル的にもしっくり来る言葉です。
「鎌首をもたげる」の例文3(文学の中に出てくる表現)
「幾百条とも知れない、おなじような蛇が、(中略)揃って一尺ほどずつ、砂の中から鎌首を擡げて、一斉に空を仰いだのであった」(泉鏡花『絵本の春』より)
「鎌首をもたげる」という言葉は、視覚的にインパクトがあります。
それを効果的に文学の中で表現しています。
「緊張をほぐしたい私の悪癖が、そっと鎌首もたげて、」(太宰治『喝采』より)
比喩表現ですが、「そっと」と「鎌首もたげる」を使用する事で、不安定で、不吉な感じもうまく言い表せているのではと思います。
「鎌首をもたげる」という表現のほかにも「鎌首」を使用した、ビジュアル的にインパクトの強いものもあります。
「丁度彼の肩の上へ、鎌首をさしのべてゐるのであった」(芥川龍之介『老いたる素戔嗚尊』より)
「鎌首をもたげる」の語源
蛇やカマキリが、獲物を狙う時の様子をそのまま表現しています。
そこから比喩表現が生まれました。
「鎌首をもたげる」を分解して解釈
「鎌首」と「もたげる」に分けてみていきましょう。
- 「鎌首」
- 「もたげる」
「鎌首」
「鎌首」は、農具の鎌のように曲がった首のことを言います。
多くの場合、蛇やカマキリの臨戦態勢の状態を指しています。
「もたげる」
「もたげる」は、漢字では「擡げる」と書きます。
「もてあぐ」の音変化で、「持ち」プラス「上げる」という意味です。
「不安が頭をもたげる」という使い方もします。
「鎌首」を使った熟語と意味
「鎌首」を使った熟語は、どのようなものがあるのでしょう。
以下みていきたいと思います。
- 「独鈷鎌首(とっこかまくび)」(四文字熟語)
- 「鎌首をもたげる」に似た四文字熟語
- 「鎌首をもたげる」と対になるような故事成語
「独鈷鎌首(とっこかまくび)」(四文字熟語)
議論好きの歌人のことを指します。
左大将家で行われた六百番歌合の時に、顕昭(けんしょう)は独鈷(とっこ)を持って、寂蓮(じゃくれん)は鎌のように首を突き出して、激論を交わしたそうです。
その様子を女房たちがうわさをして出来た言葉です。
そこから、歌人のみならず、双方が激しく議論する事全般を指すようになりました。
顕昭(けんしょう)は平安末期〜鎌倉初期の歌人・歌学者です。
歌学書『袖中抄(しゅうちゅうしょう)』のほか、多くの著作があります。
寂蓮(じゃくれん)は平安末期〜鎌倉初期の歌人・僧侶です。
家集に『寂蓮法師集』があります。
和歌のほかにも狂歌や連歌も素晴らしかったようで、後鳥羽院はその多彩な才能を絶賛しています。
二人とも、その時代の中心的歌人でした。
和歌を愛するあまり、議論が白熱したのでしょう。
独鈷(とっこ)は、密教で用いられる法具で、金剛杵(こんごうしょ)の一種です。
鉄か銅製で、両端が尖った棒状のもののことを指します。
「鎌首をもたげる」に似た四文字熟語
「鎌首」の後に付けられる言葉としては「鎌首を立てる」、「鎌首を上げる」などがありますが、「鎌首」という言葉を使わずに、同様のニュアンスが感じられる四文字熟語は、以下の通りです。
「一触即発(いっしょくそくはつ)」少し触れただけで爆発しそうな様子を指します。
とても危険な状態、些細なきっかけで重大な事態が起こり得ることをいいます。
「危機一髪(ききいっぱつ)」髪の毛一本ほどの差で危機が迫っているというたとえです。
「臨戦態勢(りんせんたいせい)」戦闘を目前にして、いつでも戦えるように準備が整っている様子をいいます。
「鎌首をもたげる」と対になるような故事成語
「鎌首をもたげる」を「中心」からの緊張感ととらえる場合、対になる言葉として、「四面楚歌(しめんそか)」があります。
四方八方が敵に囲まれ、味方がいない様子を指します。
「四面」は4つの方向、「楚歌」は「楚の歌」です。
紀元前200年頃、中国では「楚」という国と「漢」という国が争っていました。
楚が戦いで追い詰められて包囲されている時に、敵側から自分たちの故郷の歌が聞こえて来て、味方は寝返り外はもう敵ばかりと思い、降参した…という史実から出来た言葉です。
「鎌首をもたげる」は、「中心」から、「外方向」へ緊張感を与える言葉ですが、「四面楚歌」は、「外方向」から「中心」へ緊張感を与える言葉になります。
「鎌首をもたげる」の英語表現
主な表現としては“to raise one's head”です。
不穏な様子を指す場合は、“tin a disquieting manner”となります。
臨戦態勢であれば、“tpreparation for action”です。
いかがでしたか。
「鎌首をもたげる」という言葉は、実際の様子の他に、比喩表現として使われることがわかりました。
また、しばしば小説などに登場する、文学的な言葉だと知る事が出来ました。
ビジュアル的にイメージしやすい言葉でもあります。
実際、使用する場面はあまりありませんが、心に留めておきたい言葉の一つです。