「恭順」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
肩書や名誉を振りかざし、他人を駒のように使おうとする人にはなびきたくないと思う半面、この人は本当に立派だ、と思う人には従ってもいい、と感じる場面もありますね。
王様や政治を司るような人々がそうであれば、国民は不満を持たずついていくことができるのかもしれません。
さて、それはある程度は理想論かもしれませんが、ここでは「恭順」ということばについてご紹介していきます。
目次
- 「恭順」の意味とは?
- 「恭順」の類語や言い換え・似たことば
- 「恭順」の使い方
- 「恭順」を使った例文
- 「恭順」の対義語
「恭順」の意味とは?
「恭順」は、かしこまって相手に従うことや、命令につつしんで従うこと、またその態度を見せることを意味することばです。
「恭」は、礼儀正しいこと、つつしむこと、うやうやしいさま、尊敬の念をもって、へりくだること、などを意味する漢字です。
「順」には、おとなしいこと、素直に従うこと、という意味があり、ここでもその意味で使われています。
またほかに、都合がよく、差し障りがないこと、などを意味する漢字でもあります。
「恭順」が、かしこまって、相手に従う、ということを意味するのは、漢字からも理解できますね。
- 「恭順」の読み方
「恭順」の読み方
「きょうじゅん」と読みます。
「恭」はほかに、「つつし-む」「うやうや-しい」という読みを持っています。
「順」はほかに、「したが-う」「すなお」という読みがあります。
訓読みからも、「恭順」の意味が理解できますね。
「恭順」の類語や言い換え・似たことば
「恭順」のように、つつしんで従う、という場面は現代の日本ではなかなかあまり聞かないようですが、本当に尊敬している人に対してや、師弟関係のなかではありうるかもしれませんね。
ほかに、「恭順」とよく似た表現を紹介します。
類語表現を見ていくなかで、「恭順」についての理解も深まるでしょう。
- 「忠誠」【ちゅうせい】
- 「敬服」【けいふく】
- 「服従」【ふくじゅう】
「忠誠」【ちゅうせい】
忠実であること、正直であることを意味し、広義では、自分の属している団体や国、個人などに仕えること、またそれらの持つ思想に対する尊敬や真心を意味することばです。
「忠誠心」や「忠誠を誓う」などのかたちでよく使われます。
こちらも、ゲームなどのなかでは聞いたことがあるかもしれませんが、日本ではほとんど聞かれることがありません。
王政を取っている諸外国などでは現在もこのような心のあり方がよしとされる文化もあるかもしれませんね。
「社員を思いやる社長の気概を知り、心のなかで忠誠を誓う者もすくなくなかった」
「敬服」【けいふく】
感心することや、尊敬から従うこと、うやまうことを意味することばです。
「恭順」にかなり近い意味のことばですね。
なにか特別な場面での感心や尊敬というよりも、日常からのさまざまなできごとから総合的に見たその人の、性質や振るまいに対する尊敬といえるところもかなり似通った表現といえます。
「どんなにコンディションの悪い日でも、ふだんと変わらず練習をつづける彼の姿勢には敬服した」
「服従」【ふくじゅう】
「ふくじゅう」と読みます。
命令を聞き、それに素直に従うことを意味することばです。
「恭順」では、その人に対してのリスペクトがありますが、「服従」にはそのニュアンスは含まれていません。
盲目的に従うこと、従わざるをえない場合にも「服従」は使われることば、といえるでしょう。
「ゲームのなかでは、捕まった人は服従を強いられることになっている」
「恭順」の使い方
「恭順」は、「〇〇への恭順を△△する」というかたちで使われることがよくあります。
〇〇には人や団体など固有名詞の入ることが多くあります。
△△には動詞などが入ります。
また、単に「恭順する」という使い方もあります。
しかし、「恭順」とはいわれてするものでもなければ、だれかに公言する必要もないことがほとんどですので、ことばに出していう場面というのはほとんどないでしょう。
創作のなかなどでは使うことがあるかもしれませんね。
「恭順」を使った例文
記号ばかりではなにがなんだか、という方のためにも、例文を見ていきましょう。
だれが、なにに対して「恭順」するのか、に着目しておいてください。
例文を見ているうちに、自分ならばこんなふうに使えるな、と考えるようになれば、そのことばをかなり使いこなせるようになっていると考えていいでしょう。
- 「恭順」の例文1
- 「恭順」の例文2
- 「恭順」の例文3
「恭順」の例文1
「軍に従うことは、王を恭順することである」
ここではだれが、の部分が省略になっています。
一般論としての文章か、個人的な見解なのかは、前後の文脈から汲み取る必要があります。
王に対する「恭順」を表す例文になります。
「恭順する」を、「恭順しない」や「恭順される」とすると、意味あいが変わってきますので、試してみましょう。
「恭順」の例文2
「独裁的な面がないとはいえないが、社の発展こそが、社員とその家庭を守ることにつながると信じ、販路拡大につとめる社長に対し、恭順の意を示す」
「恭順の意を示す」は一つの定型文と考えていいでしょう。
「〇〇に、恭順の意を示す」で、〇〇に対する尊敬の姿勢を示すことができます。
「恭順の意を表す」という言い方もできますね。
「恭順」の例文3
「親を早くに亡くし、親戚の家を転々とした幼少期を思えば、揺るがない家族を得られる結婚生活は天国のようだと思い、彼に恭順を誓った」
「恭順を誓う」もまた、定型文といえるでしょう。
良妻賢母、内助の功などといわれ、半歩下がって楚々として歩く女性がよしとされた時代には、夫に恭順する女性というものが喜ばれたのかもしれません。
「恭順」の対義語
「恭順」について見てきましたが、対義語はどんなものが考えられるでしょう。
「恭順」は、尊敬して従うこと、という意味ですから、従わないこと、もしくは従っていたが、従わなくなること、などの意味を持つことばが、対義語に当たるでしょう。
以下で見ていきますので、ほかにどんなものがあるか、考えてみましょう。
- 「抵抗」【ていこう】「反抗」【はんこう】
- 「不忠」【ふちゅう】
- 「謀反」【むほん】
「抵抗」【ていこう】「反抗」【はんこう】
どちらも、従わず、歯向かうこと、という意味を持つことばになります。
「私が土地を明け渡せばこの村落全体がダムのなかに沈むのだとわかっているので、最後まで抵抗するつもりでいる」
「みな、彼についていけば幸せになれると信じているようだったが、どの顔も一様に暗いのが気になり、私だけは反抗してついていかなかった」
「不忠」【ふちゅう】
「ふちゅう」と読みます。
忠誠、忠義でないこと、尽くさないことを意味することばです。
「不忠な行為」「不忠の民」「不忠者」などのかたちでよく使われます。
「不忠の民と後ろ指をさされることは納得済みだ。わたしたちの決断が、これからの国づくりにとって重要な指針であることは、後世の人々が理解してくれるだろう」
「謀反」【むほん】
「むほん」と読みます。
これまで従っていた者が背くことをいいます。
為政者に背くため、策を企て、兵を集め、奇襲することなども歴史上では何度も起こりました。
これを、「謀反を起こす」や「謀反を企てる」といいます。
「謀反」を起こした人のことを「謀反人(むほんにん)」、世論や一般論に背く傾向の強い人のことを「謀反気(むほんぎ)」といいます。
「今は太平の世に感じられるかもしれないが、このままでは国は王に食いつぶされてしまう。物わかりのいい者たちだけを集め、謀反を企てるほかないだろう」
「恭順」は、尊敬する相手に対し従うことを意味することばでした。
ただ従うだけではいけないのかもしれませんが、この人にだけは、という人に対し、信念を持って従うのであれば、その関係性は美しく、実りあるものになりそうですね。
しっかりと物事を見定め、よくわからないものに「服従」するのでなく、これと決めた人のことばを素直に聞くことも、ときには必要かもしれません。