「剣呑」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
「名は体を表す」という言葉がありますが、日本語の熟語にも、漢字を見て直感的に意味を感じ取れる言葉がいくつもあります。
例えば今回ご紹介する「剣呑」という言葉。
意味を知っている方も、知らない方も、漢字から意味を考えてみると案外近いかもしれません。
それでは解説していきます。
目次
- 「剣呑」の意味とは?
- 「剣呑」の類語や言い換え
- 「剣呑」の使い方
- 「剣呑」を使った例文
- 「剣呑」を使った言葉
- 「剣呑」の対義語
「剣呑」の意味とは?
「剣呑」とは、「危ない感じがするさま」や「不安を覚えるさま」を意味する言葉です。
元々は「剣難」という言葉が語源で、音変化と当て字で生まれたのが「剣呑」だとされています。
「剣難」とは読んで字のごとく、「剣で傷つけられたり、殺されてしまうような災難」を意味する言葉です。
現代で使われている「剣呑」とは意味が異なりますね。
現代では道端を歩いていてもよっぽど治安の悪い地域でなければいきなり刃物で切りつけられるなんてことはありませんが、昔の日本というのは武士が存在していた国です。
そこかしこに刀を腰に差した侍がいました。
正しく武士として振る舞う人ももちろんいましたが、中にはいちゃもんを付けて何の罪もない人を切りつけたりしたこともよくあったそうです。
まさに、災難です。
その「剣難」が音変化して「剣呑」になったとされています。
そのまま解釈すれば「剣を呑む」ですから、それだけでも非常に危険なことを感じさせる威圧感のある言葉です。
示す意味は違いますが、なんとなく「危険を察知させる」という意味ではとても近い言葉です。
- 「剣呑」の読み
「剣呑」の読み
語源とされている「剣難」は「けんなん」と読みますが、「剣呑」は「けんのん」と読みます。
「剣」の字はそのままの読み方ですが、「呑」の字は本来「とん」や「どん」と読むため、読み間違えてしまうことがあります。
「けんのん」ですので、正しく覚えておきましょう。
「剣呑」の類語や言い換え
「剣呑」の他にも、危険な様子や不安を覚えるという意味を表す言葉があります。
2つご紹介しましょう。
- 「不穏」【ふおん】
- 「薄氷を踏む」【はくひょうをふむ】
「不穏」【ふおん】
「不穏な空気」という風に使う名詞で、「形勢や世相、状況などがおだやかでなく、不安定さや危険を含んでいること」を指す言葉です。
わかりやすく話し言葉で表すと「やばい感じがする」というイメージです。
まだ実際に危険な状態には至っておらず、そのままの状況が続いたり、少しでも悪化してしまえば完全に危険な状態や不安定な状態となってしまう、その寸前が「不穏」です。
医療や介護などで使われる用語でもあり、患者が不安定な状態に陥り、不安や危険をはらんだ状態を指します。
結果、治療に必要な機器を壊してしまったり、暴れてしまったり、危険なことに繋がる状態です。
「薄氷を踏む」【はくひょうをふむ】
非常に危険な状況に自分の身を置いたり、危険な状況に臨む心境であることや、自分のすぐそばまで危険が迫ってきている状況を示すことを意味する言葉です。
「危険な状況に臨む心境」といっても、危険なことに挑戦するという意気込みではありませんので誤用に注意しましょう。
薄い氷の上は、歩いたり、もしくはその上に立つだけでも割れて冷水の中へ落ちてしまう危険をはらんでいます。
そんな薄い氷を踏むほど危険な状況に自分がある、という恐れを抱いている表現です。
「剣呑」の使い方
「剣呑」という言葉は、日常会話で頻繁に使用する言葉ではありません。
小説や漫画などの活字で読むことの方が多い言葉です。
漢字のインパクトと、その意味が文章に深みを与えてくれることでしょう。
日常会話で使用するなら、後ほどの項目で説明する「剣呑、剣呑」という繰り返す表現が最も自然です。
「剣呑」を使った例文
それでは実際に「剣呑」を使用した例文を2つ見てみましょう。
多彩な文章表現の参考としてみて下さい。
- 「剣呑」の例文1
- 「剣呑」の例文2
「剣呑」の例文1
「それまでの穏やかな空気が一変し、剣呑な雰囲気に包まれた」
「剣呑」とは「危ない感じがするさま」を表す言葉でしたね。
この例文では、「穏やか」と「剣呑」が対照となる言葉として使われており、自分やまわりの身に今すぐにでも危険が迫っているような、ピリピリとした空気を感じさせる表現として効果的に使用しています。
ちなみに、「剣呑」はこの例文のように、その語句だけではなくて「剣呑な○○」という形にして使用することがほとんどです。
「剣呑」の例文2
「彼女の泣きはらした目に剣呑を食って、慌てて言い訳をした」
「剣呑を食う」というのは、本当に食べてしまうわけではありません。
「食う」という言葉には様々な意味があります。
例えば本当に食べ物を口に入れて食べることを表現する場合もあれば、虫が体を刺すこと、お金や時間がかかることなど、「食う」という言葉だけに10個以上の色々な意味があり、たくさんの表現に使われています。
今回の場合は「他からとある行為、特に望んでいない不本意な行為を被る」という意味での「食う」です。
「剣呑を食う」や「剣呑を食わされる」とは、「危険や不安を覚えるような様子を感じさせられる」という意味合いです。
「剣呑」を使った言葉
「剣呑」を使ってよく表現される言葉がいくつかあります。
今回は3つ解説します。
- 「剣呑、剣呑」
- 「剣呑を食わす」
- 「剣呑な○○」
「剣呑、剣呑」
「剣呑」を2回繰り返して言います。
2回繰り返して言う事で意味を強調するとともに、「ああ、怖い」という気持ちを表現したり、「回避したいなぁ」という意味合いで使います。
よく似たような表現に「くわばら、くわばら」というおまじないの言葉があります。
嫌なことや災難を避けようとして、自分の身に危険を感じたり、危機が過ぎ去ったあとに唱えたりします。
「剣呑」も同じで、2回繰り返して言う事は「ああ、恐ろしい」と思った気持ちを表したり、「危険だから避けた方が良い」という思いを表します。
「剣呑を食わす」
「剣呑を食う」や「剣呑を食わす」という使い方です。
例文の項目でも解説したように、ここで使われている「食う」「食わせる」というのは、食物を食べることの意味ではなく、「他からとある行為、特に望んでいない不本意な行為を被る」という意味合いでの表現です。
「危険を感じさせる」「危ないと思わせる」という表現です。
「剣呑な○○」
「剣呑」だけで使用することはほぼなく、先述した「剣呑、剣呑」と2回繰り返す方法で使うか、「剣呑な○○」という形にして使います。
よく見受けられるのは、「剣呑な雰囲気」「剣呑な目つき」という表現です。
「剣呑」の対義語
「剣呑」とはその言葉だけで「危険な感じがするさま」を表す言葉です。
実際危ない目にあっているわけではなくても、その寸前である状態です。
その対義語となる言葉には、危険とは逆の意味で使用する言葉が合致します。
例えば、「安全(あんぜん)」や「安心(あんしん)」でしょう。
その中でも特に意味が真逆の言葉として挙げられるのは「安泰(あんたい)」や「安穏(あんのん)」です。
「安泰」とは、「無事で安らかな事、またそのさま」を意味する言葉です。
「安穏」は読み方の音が少し「剣呑」と似ていますね。
その意味は、「雰囲気などが穏やかでほのぼのしている様子」というものです。
このように、身の危険を覚える「剣呑」の逆となるのは、身を案じなくていい安定や穏やかさを表す言葉です。
「剣呑」という言葉を字で見ても、なんだか危ない様子が伝わってきますね。
その意味もまさに「危険な感じがするさま」と、自分の身に危険や危機が迫っている様子を表します。
日本語には他にも、使用されている字だけでなんとなく意味が掴める言葉がたくさん存在します。
しかしながら実際の意味はまったく違う場合もありますので、どんな言葉でもまずは調べ、そして実際に使ってみて真の意味を理解できるようにしたいものです。