「矜持」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
ごはんがおいしく炊ける、フルートの演奏ができる、自転車の空気入れが得意など、人にはそれぞれ長所があります。
たとえふだんの生活にほとんど寄与しないような能力であっても、それができる、というのはその人の自信や心の支えになることもありますね。
さて、ここでは「矜持」ということばについてご紹介します。
目次
- 「矜持」の意味とは?
- 「矜持」の類語・言い換え
- 「矜持」を使った例文
- 「矜持」の対義語
「矜持」の意味とは?
自信、といってしまえば一言ですが、自分の能力に疑いがなく信じていることを意味します。
また、そのように堂々と振る舞うことも意味しています。
「矜」には誇る、という意味がありますので、誇りを持つ、というところからも、「矜持」の意味が理解できるでしょう。
「持」という漢字は、歌あわせなどで優劣がつけられないこと、つまり引き分けも意味することばで、「持碁」として囲碁の引き分けを意味したりもするのですが、ここでは持つ、という意味で捉えていいでしょう。
- 「矜持」の読み方
「矜持」の読み方
「きょうじ」と読みます。
実際に「キン」という読みを持つため、「きんじ」と読む人がいるようですが、これは慣用読みといい、誤読ですので覚えないでください。
「矜」はほかに、「カン」「キン」「あわ-れむ」「つつし-む」「ほこ-る」などの読み方があります。
「持」はほかに、「も-つ」などの読みがあります。
「買い物かごを持つ」というときの「持つ」です。
小学生のころも、連絡帳に「持ちもの」などと書きましたね。
「矜持」の類語・言い換え
「矜持」とよく似た意味を持つことばは多々ありますが、ここではそのなかからいくつか紹介します。
「矜持」ということばがまだ使いこなせていないときには、ほかのことばで言い換えをするのもいいでしょう。
ここは「矜持」だな、と思えるタイミングが来るまで、いろんなことばを使ってみて、自分のなかに落とし込んでいきましょう。
- 「自負心」【じふしん】
- 「自尊心」【じそんしん】
- 「矜恃」【きょうじ】
「自負心」【じふしん】
自分の持っている才能や仕事に、自信と誇りに思う心を意味しています。
自分に「負う」というというところからも、その才能や仕事に責任を持つ覚悟のあることをも意味しています。
社会人として適度な「自負心」はなければいけないでしょうが、過度な「自負心」は鼻につくこともありますので気をつけたいですね。
しかし、ないよりは、あったほうがいいのが「自負心」といえるでしょう。
「人を笑わせる道化のような職業だが、自負心がなければできないだろう」
「自尊心」【じそんしん】
そもそも言語が異なるためニュアンスの違う部分もありますが、「プライド」ともいわれます。
自らを「尊ぶ」と書くところからもわかるように、自分に対して肯定的であることを意味します。
「彼は別れ際、わたしが気にしているのを知っていてわざと身体的特徴をなじった。わたしは自尊心を傷つけられたことに憤慨し、二度と彼には会うまいと誓った」
「矜恃」【きょうじ】
よく見ると「矜持」と「矜恃」、微妙に違いますね。
どちらも似通った意味で使われることばですが、ニュアンスの違いがあります。
「矜持」が誇りを持っていることだとするならば、「矜恃」は、その誇りが態度にまで表れていて、堂々としているさまをいいます。
今では「矜持」の漢字にほぼ統一され、意味あいとしては「矜恃」の意味で理解されていますが、もともとは違った二つのことばだったことを覚えておくといいでしょう。
「矜持」を使った例文
では、「矜持」がどんなふうに使われているか、例文を見ながら考えていきましょう。
意味や読み、類語などぶつ切りに見ていくことも大事ですが、実際に例文のなかで、どのような文脈で使われているか見ていくことで、より理解が深まります。
また、自分ならばどんなときに使うか、考えながら見ていくと、さらに理解が早まるでしょう。
- 「矜持」の例文1
- 「矜持」の例文2
- 「矜持」の例文3
「矜持」の例文1
「教師としての矜持を捨ててでも、彼女とともに過ごしたい、という思いは日増しに強くなっていく」
映画や小説、漫画などではよくある、教師と教え子の恋愛というシチュエーションです。
禁断の恋には、矜持をかなぐり捨ててでも、というシーンがつきものです。
現実には非難されることが多いでしょうが、それでも諦めきれないのが恋というものでしょう。
「矜持」の例文2
「日本を代表するスポーツマンとしての矜持を持って諸外国では振る舞っていただきたい、とお達しが来た」
「〇〇としての矜持を持って」というフレーズはよく使われますので、ぜひ覚えておいてください。
「我が社の社員であるという矜持を持って」などと目上の方からいわれる機会もあるかもしれませんし、自分が部下たちに対してそのようにいわなければならない立場にある方もいらっしゃるでしょう。
誇りを汚さないよう、慎んで、節度を持って、という意味に使われています。
「矜持」の例文3
「プロのデザイナーであるという矜持を保ち、いいと感じるデザインを追求してきたことが功を奏したと思っている」
「矜持を保つ」というのもひな形です。
どれだけ周りが異論を唱えていたり、時代の潮流に流されていても、自分はこれを貫く、という誇りを持ちつづけることをいいます。
「矜持」が邪魔をして他人の意見に耳を貸さず失敗するということもありますが、ほどよい「矜持」がなければ、プロとして大成することはむずかしいのかもしれません。
「矜持」の対義語
ここまで、誇りがある、プライドがある、といった意味の「矜持」を見てきましたが、誇りがない、プライドがない、という意味になると、どのようなことばが浮かぶでしょう。
対義語となることばも知っておくことで、より「矜持」の理解も深まり、語彙力もあがります。
- 「自己否定」【じこひてい】
- 「卑下」【ひげ】
「自己否定」【じこひてい】
自分を自分でもちあげたり、肯定することを「矜持」というのであれば、自分を自分で貶めたり、否定することが対義語となります。
どちらも、他者からの印象や評価ではなく、自分自身に対する、自分の評価であるという点でも似ているでしょう。
「彼女の自己否定的な考えにはいつも辟易している」
自己肯定感が強すぎるのも鼻につく恐れがありますが、自己否定が強すぎるのもまた、他者から見ていて気持ちのいいものではありません。
他者からの評価と自己評価がうまく折りあいがつくところを見つけられるといいのかもしれませんね。
「卑下」【ひげ】
自分で自分を貶めたり、必要以上に他人に対しへりくだっていることをいいます。
「卑下する」などのかたちで使われることの多いことばです。
他者に対していうときには、「見下す」ということばが使われますが、自分で自分を「見下す」ことを「卑下する」と表現することができます。
こちらも、「矜持」がない、「矜持」を持てないという場合や、「矜持」を傷つけられたくない心理の裏返しで起こりますので、対義語といえるでしょう。
「ここまで卑下する必要はないとわかっているが、癖のようなものでなかなかやめられない」
あくまで自分に対して、というところが「矜持」と似ている点になります。
人は自分と戦って生きている部分がありますが、それは「矜持」にも「卑下」にも表れているといえるのではないでしょうか。
「矜持」とは自分の能力に自信があること、またそのさまをいうのだとわかりました。
自信を持っていると、自分に言いわけができません。
それがバネになってより能力があがる、ということもありますね。
自分を「卑下」することなく、いいところをたくさん見つけ、それを生かして生きていけたならば、きっとさまざまなことができるようになり、いつの間にか過度な「矜持」も必要なくなるのかもしれませんね。