「一瞥をくれる」の意味とは?漢字、類語や使い方、例文を紹介!
街なかでショウウィンドウにすこしだけ気になるものがあった。
ベビーカーの赤ちゃんと目があった気がしてそちらをふと見た。
そのあとまでずっと気になりつづけることはすくないものでも、ちらりと見てしまうこと、みなさんあるのではないでしょうか。
ここでは「一瞥をくれる」ということばについて紹介します。
目次
- 「一瞥をくれる」の意味とは?
- 「一瞥をくれる」を分解して解釈
- 「一瞥をくれる」の似たことばや類語・言い換え
- 「一瞥をくれる」の使い方
- 「一瞥をくれる」を使った例文
- 「一瞥」を使ったその他のことば
「一瞥をくれる」の意味とは?
「一瞥をくれる」とは、気になったのでちらっと見ることを意味します。
また、ちらりと見たあとに対象物や人に対して、心奪われたり、感情のゆらぎがあまりない場合によく使われます。
多少気にはなるが、尾を引くほどではない、というときにでも、人はなんとなくなにかを見てしまうことがありますね。
- 「一瞥をくれる」の読み方
「一瞥をくれる」の読み方
「いちべつ(をくれる)」と読みます。
「瞥」という漢字そのものに、見るという意味があります。
ここでは「一」は、ちょっとだけ、という意味になります。
なので「一瞥」は、ちょっと、というニュアンスを含み、「ちらりと見る」という意味になります。
「瞥」だけで、「み-る」という訓読みもあります。
「一瞥をくれる」を分解して解釈
わかるようでわからないことばは一度、分解して考えてみましょう。
「一瞥」とは?「くれる」とは?と、それぞれの要素が理解できれば、組み合わせてできたことばの意味も、ぐっと理解が深まります。
それでは、「一瞥」と「くれる」に分けて、見ていきましょう。
- 「一瞥」
- 「くれる」
「一瞥」
「一瞥」は、上記のとおり、ちょっとだけ見ること、ちらっとだけ見ることを意味しています。
ひと目見る、とも言えますね。
このちらっと見るは、どんな場面で、どんなふうに見たのかによって、ずいぶん印象の変わることばです。
かわいい猫が走っていくのを視界の端にとらえ、ちょっと見るのか、はたまた、やましいことがあって帰ってきた夜、奥さんの顔をちょっと見るのか。
「一瞥」はどちらの意味にも使われますので、この言葉自体には、ポジティブもネガティブも含まれていないことがわかります。
「くれる」
漢字では、「呉れる」と書きます。
当て字ですので、漢字が意味を持っているわけではありません。
基本的に、与えることを意味します。
自分が相手になにかを渡す、与える。
「くれてやる」というすこし荒っぽい言い方もしますが、これも「くれる」です。
そして、相手が自分になにかを与えることも、「くれる」と表現します。
授受どちらからも「くれる」と表現するので、すこしわかりにくいですね。
「あげる」「もらう」では簡潔に伝わる、どちらからどちらに、という流れは前後の文脈から判断することになります。
ここでは、「一瞥をくれる」ですので、視線を与える、つまりなにかを見る、ということを表す語になります。
「一瞥をくれる」の似たことばや類語・言い換え
「一瞥をくれる」の類語表現ですので、すこしだけ見る、ちらりと見る、というような意味あいを含むことばになります。
そのなかでも、どんなふうに見るのか、という部分に差異が出てきますので、気をつけて見ていきましょう。
- 「垣間見」【かいまみ】
- 「瞥見」【べっけん】
「垣間見」【かいまみ】
「かいまみ」と読みます。
源氏物語などですでに聞いたことがある、という方も多いかと思います。
これは、ものの隙間からちらっと見える、という意味のことばです。
「一瞥をくれる」が、時間的に短く、瞬間的に見る、というニュアンスで使われますが、「垣間見」の場合には時間の長さにはとらわれません。
物理的に見えているかどうか、という点で、視野の狭さの意味での、ちらりと見る、見える、という場合に使われます。
「瞥見」【べっけん】
「べっけん」と読みます。
「一瞥」の「瞥」が使われていますね。
「瞥」という字そのものに、見る、ちらりと見る、という意味がありました。
ですのでここでは、似た意味を持つことばを重ねることによる強調、そして、「見」を、どのように見るのか、を修飾するための「瞥」が使われていることがわかります。
「瞥見」は特に、短い時間でさっと見る、という意味になりますので、書類に目を通すときなどに、「瞥見する」ということばを使うことができるでしょう。
「一瞥をくれる」の使い方
「一瞥をくれる」は、「〇〇に一瞥をくれる」という使い方がもっともわかりやすいかたちになるでしょう。
対象物があり、それを見る、というときに使われます。
〇〇にはどんなものが入るのか、また、「一瞥をくれる」人の心の状態にも注視して見ていきましょう。
「一瞥をくれる」を使った例文
では、「一瞥をくれる」を使った例文を見ていきましょう。
「一瞥をくれる」が、どのような場面で使われているか、実際の文章のなかで見ていくことで、より実践的に日本語を学ぶことができます。
単語だけ覚えているよりも、それがどのようなシーンで使われているかなど、文脈からとらえていくことにより、応用がきき、日常のなか、文章表現のなかに取り入れていきやすくなります。
- 「一瞥をくれる」の例文1
- 「一瞥をくれる」の例文2
- 「一瞥をくれる」の例文3
「一瞥をくれる」の例文1
「あの女は俺に一瞥をくれただけで、そのあとは見向きもしなかった」
合コンなど、男女の集まりのなかで使われる場合、それはいわゆる「脈ナシ」を示すことが多いです。
なかには見ていない、というポーズを取ることで逆に関心を引くという高度な技もあるのかもしれませんが、そこはお互いの駆け引きとなりそうですね。
見てはいても関心を引くほどではない、あまり興味がない、というときに使われます。
「一瞥をくれる」の例文2
「先日まで笑いあっていた友人たちはあの日から変わってしまった。一瞥をくれるだけで、わたしに話しかけてくれない」
ここでは「一瞥をくれる」が、ネガティブな文脈のなかで使われています。
蔑視しているというニュアンスを含んだ「一瞥をくれる」の使い方になります。
子ども同士の仲でもありえますし、大人同士でもこのような目に遭う可能性は、ないとはいえません。
この場合の「一瞥」は、無関心よりも苦しい意味あいを含む場合があります。
「一瞥をくれる」の例文3
「彼女は舞台上からでもわたしを見つけ、一瞥をくれたように思う」
ファンの間では、著名人が自分を見つけてくれた、というのが思い込みであることもすくなくありませんが、たとえば小劇団に属する友人の芝居を見に行った、というような場面では起こりうる話でしょう。
この「一瞥」はさきほどと打ってかわって、どちらかというとポジティブな「一瞥」といえるでしょう。
このように「一瞥をくれる」は、初めて見るものに対しても、すでに知っていてネガティブなイメージのもの、ポジティブなイメージのもの、どれに対してでも使うことのできることばといえます。
「一瞥」を使ったその他のことば
「一瞥をくれる」ということばは、「一瞥」と「くれる」に分解することができました。
では、「一瞥」はほかに、どんなふうに使われるのでしょう。
ここでは「一瞥」に着目し、ボキャブラリーを増やしていきます。
ぜひ、こちらも覚えてくださいね。
- 「一瞥を投げる」
- 「一瞥もくれない」
「一瞥を投げる」
「くれる」が「投げる」と変わりました。
「くれる」では、「一瞥」するのが自分の場合も、相手の場合もありえました。
「投げる」は、自分から相手への行為を指しますので、相手から自分へ、という場合には、「一瞥を投げられる」と受け身のかたちで使われます。
意味は同様に、ちらりと見る、という意味になります。
また、「投げる」には、勢いよく手から離す、という意味がありますので、瞬発力のある「一瞥」の場合、こちらを使ったほうがより正確といえるでしょう。
「ボールがゴールに入った瞬間を彼女が見逃していやしないかと、慌てて一瞥を投げた」
「一瞥もくれない」
「くれる」は自分からでも相手からでも、どちらからにしろ、「与える」という意味でした。
「くれない」ということは、与えないということです。
「寝坊した父は、足元をペットのワン太がまとわりついているのに一瞥もくれないで、急いで出社した」
「一瞥をくれる」は、ちょっと見る、という意味でした。
忙しいと人はなにかをじっくり見る、ということを忘れてしまいがちですが、大事なものごとは「一瞥」だけでなく、時間をかけて見ることができると充実した日々になりそうですね。