「まごうことなき」の意味とは?類語、使い方や例文を紹介!
「まごうことなき」という言葉について、一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし聞いたことがあるからといって、意味を正しく知っている訳ではありません。
詳しく説明していきましょう。
目次
- 「まごうことなき」の意味とは?
- 「まごうことなき」の類語や言い換え
- 「まごうことなき」の使い方
- 「まごうことなき」の例文
- 「まごうことなき」の「まごう」は漢字では?意味は?
- 「まごうことなき」の英語
「まごうことなき」の意味とは?
「まごうことなき」という言葉を聞いても、意味がピンとこない人は多いのではないでしょうか。
現代語ですが、古めかしい日本語のような響きがさらに難しさを醸し出す言葉です。
さて、この「まごうことなき」の意味とは何でしょうか。
「まごうことなき」の意味は、「取り違えることがない」「疑いようがない」といった意味になります。
誰が見てもその事実がはっきりと分かる様子、明白な様子を表しています。
ちなみに、「まごうことなき」は言葉を分解すると、「まごう」と「こと」と「なき」に分けることができます。
「まごう」の意味については後で詳しく説明しますが、「こと」とは「〜する方向」という意味、「なき」とは「無い」(ない)という意味になります。
気をつけなくてはいけないのは、「こと」が漢字で書くと、「事」ではなく「方」と書くところです。
よく「まごう事なき」などと漢字で表記されているものを見かけることがありますが、それは間違いです。
正しくは「まごう方なき」となります。
「まごうことなき」の類語や言い換え
「まごうことなき」の類語や言い換えを紹介していきます。
- 「紛れもない」【まぎれもない】
- 「文句なしに」【もんくなしに】
- 「一目瞭然」【いちもくりょうぜん】
「紛れもない」【まぎれもない】
「まごうことなき」という言葉を簡潔に表現すると、「紛れもない」という言葉になります。
ゆえに、「紛れもない」は「まごうことなき」の類語や言い換えの言葉に適切でしょう。
「紛れもない」とは、「まごうことなき」と同様、「その事実が明白である様子」「疑いようのないほど、はっきりと分かる様子」などを表しています。
「まごうことなき」という言葉の意味を知らなくても、「紛れもない」という言葉の意味なら知っている人は多いのではないでしょうか。
「まごうことなき」も「紛れもない」も同じ意味になるので、「まごうことなき」の意味を考えるときは、一度、「紛れもない」という意味に置き換えて考えると分かりやすいでしょう。
日常生活では「まごうことなき」という言葉はあまり使いません。
どちらかといえば、小説などで使われる文学的な言葉です。
日常で使うときは圧倒的に「紛れもない」という言葉で表現していることが多いと言えます。
例文としては、「彼が資格保持者であることは、紛れもない事実です」(彼が資格保持者であることは、疑いようのない事実です。)などが挙げられます。
彼が資格を持っていることが、疑いようもない事実であることを意味しています。
「文句なしに」【もんくなしに】
「文句なしに」とは「文句が出ないほど」という意味になります。
「文句」とは人が悪口を言うという意味の、あの文句です。
つまり、「文句なしに」とは「人の悪口が出ないほど」「誰も意義を唱えることがないほど」という意味になり、完璧である様子を表しています。
ここで、「人の悪口が出ないほど」の後に続く言葉が何になるのか気になるでしょう。
「人の悪口が出ないほど」に続く言葉が何になるのかというと、「誰がみても悪口の出ない完璧な様子」である言葉が続くようになります。
つまり、「文句なし」に続く言葉は「完璧な様子」、「完全な様子」であり、その完璧な様子が誰が見ても明白な様子であることを表しています。
例文としては、「この女性は文句なしにベッピンさんだ。」
(この女性は誰も意義を唱えることがないほどの美人だ。)
(誰が見ても美人だ。)
「この人は文句なしに頭がよい。」
(この人は誰も意義を唱えることがないほど頭がよい人だ。)などが挙げられます。
また、「文句なしに」の使い方についてですが、「文句なし」に続く言葉は、良い事実を表すときに使う傾向があります。
例えば、「頭がいい」「美人だ」「上手だ」「器用だ」などといった、良い意味の言葉です。
「頭が悪い」「ブスだ」「下手だ」「不器用だ」などという、マイナスな言葉にはつけない傾向があります。
「一目瞭然」【いちもくりょうぜん】
「一目瞭然」という言葉は日常においてよく耳にする言葉なので知っている人も多いでしょう。
この言葉も「まごうことなき」の類語に該当します。
「一目瞭然」の意味は、「ただ一目見ただけではっきりと分かる様子」を表しています。
つまり、「まごうことなき」と同様、誰も疑う余地のないほど、はっきりとその事実が明白であることを意味する言葉です。
この言葉は「一目」と「瞭然」の2つの言葉に分けることができます。
「一目」は「一目見ただけで」という意味、「瞭然」は「はっきりとして疑う予知のない様子」を意味しています。
例文としては、「彼が未来のオリンピック選手になることは一目瞭然だ。」
(彼が未来のオリンピック選手になることは疑いようのない事実だ。)
「自分の日記をみれば、あのとき何が起こったのか、一目瞭然に把握することができる。」
(自分の日記をみれば、あのとき何が起こったのか、疑いようなくしっかりと把握することができる。)などが挙げられます。
「まごうことなき」の使い方
「まごうことなき」はどのようなときに使われる言葉なのでしょうか。
「まごうことなき」は以下のような状況のときに使われます。
- 誰が見てもそうだと判断できる様子、明白な様子
- 確たる証拠があるとき
です。
大きく分けてこの2つの状況に分けられるのではないでしょうか。
誰が見てもそうだと判断できる様子、明白な様子であるときの使い方としては、「3歳のこの子がどうして大人だと言えるのか。まごうことなき幼子そのものだ。」
(3歳のこの子がどうして大人だと言えるのか。誰の目から見ても間違いなく幼子そのものだ。)などです。
2〜3歳の子供を見て、誰も大人だと判断する人はいません。
その誰の目から見ても間違いのない様子を表しています。
確たる証拠があるときの使い方としては、「すでに犯人は分かっている。まごうことなき確証をつかんでいる。」
(すでに犯人は分かっている。誰の目から見ても間違いのない確証をつかんでいる。)などです。
確たる証拠をつかみ、その事実が紛れもない事実であるときに使います。
「まごうことなき」の例文
「まごうことなき」の例文についてみていきましょう。
- 「まごうことなき」の例文1
- 「まごうことなき」の例文2
「まごうことなき」の例文1
「この作品は、まごうことなきピカソの絵画だ。なぜ、それが分かるかって?それはこの資料をみれば分かる。」
(この作品は、誰の目から見ても間違いなくピカソの絵画だ。なぜ、それが分かるかって?それはこの資料をみれば分かる。)
確たる証拠があるゆえに、それが「まごうことなき」ものであると断言している表現です。
資料によってピカソの絵画だということが、明白である様子を表しています。
確たる証拠があるゆえに、それが「まごうことなき」事実であることを表す文は、「まごうことなき」の後に、その間違いのないものの対象となる言葉が続いています。
この例文においては「ピカソの絵」です。
「ピカソの絵」が「まごうことなき」が表している対象そのものになるので、「なごうことなき」の後に「ピカソの絵」という言葉が続いています。
「まごうことなき」の例文2
「この女性が外国人でないことは明らかだ。流暢な日本語や着ている服、仕草を見ていれば、まごうことなき日本人であると分かるはずだ。」
(この女性が外国人でないことは明らかだ。流暢な日本語や着ている服、仕草を見ていれば、誰の目から見ても間違いなく日本人であると分かるはずだ。)
誰の目からみても、常識的に考えて、事実がそうである様子を表現しています。
確たる証拠がなくても、日本人であると常識的に考えて判断しているという状況です。
上記の例文と同様、「まごうことなき」の後には、その間違いようのない事実の言葉が後に続きます。
この文でいえば、「日本人である」ことです。
「まごうことなき」の「まごう」は漢字では?意味は?
「まごうことなき」は漢字で表記すると、「紛う方無き」となります。
つまり、「まごう」とは漢字で表すと「紛う」となります。
「まごう」とは「まぎらわしい」という意味です。
つまり、「まごうことなき」とは、「まぎらわしくない」という意味の言葉であり、はっきりとして明白である様子を表しています。
「まごう」という言葉を聞いてピンとこない人も、「まぎらわしい」という意味だと理解すれば、しっくりとくる人も多いでしょう。
ちなみに、「まごう」を「紛う」と漢字で書きますが、逆に「紛う」をひらがな表記に直すとすると、一般的に「まがう」となります。
「ご」ではなく「が」です。
「紛う」を「まごう」と読むのは音便形となっているからです。
音便形とは、読みやすいように音の一部が変化したものを意味します。
つまり、本来は「まがうことなき」なのですが、発音しやすいという点から「まごうことなき」と言われるようになったようです。
「まごうことなき」の英語
「まごうことなき」を英単語で表すと、“undoubted”となります。
「疑う余地のない」「本物の」「確実な」という意味になります。
例文としては、“She has an undoubted talent.”(彼女にはまごうことなき才能がある。)(彼女には疑いなき才能がある。)
“This is an undoubted fact.”(これはまごうことなき事実だ。)(これは紛れもない事実だ。)
などが挙げられます。
“undoubted”という単語一つで、「まごうことなき」を表現することが可能です。
「まごうことなき」と意味が少しは理解できたのではないでしょうか。
実際に使うことは少ないかもしれませんが、耳にしたときはどのような話なのかが、すんなりと理解できるはずです。
日本語には様々な言葉があって、中には不慣れな言葉もあることでしょう。
しかし、せっかく日本人として生まれたからには、この美しい日本語の意味をしっかりとおさえておきたいものです。