「烏の行水」の意味とは?類語、使い方や英語、対義語を紹介!
ゴルフ仲間で、温泉付きのゴルフパックなどにでかけると、お風呂に入る時間が、実に、まちまちなのに、当然のことながら、驚かされます。
湯船にどっぷりと浸かって、ゆったりと手足を伸ばす人、温泉サウナ、〇〇の湯、打たせ湯などを、忙しく、はしごをして回る人、そんな中で、今来たと思ったら、もう上がって浴衣を着ている人がいます。
実に、千差万別、おふろの入り方は、いろいろです。
目次
- 「烏の行水」の意味とは?
- 「烏の行水」の類語
- 「烏の行水」の使い方
- 「烏の行水」の英語
- 「烏の行水」の対義語
「烏の行水」の意味とは?
今、お風呂に入ったかと思ったら、もう上がってくるほど、入浴時間が、極端に短いお風呂の入浴スタイルのことです。
ちゃんと体は、洗ってきたのだろうかと、毎日のこととなると、少々、心配にもなってきます。
「お風呂が沸いていますよ。先に、入ったら」
「じゃあ、お言葉に甘えて、お風呂をいただくとするか」
「えっ、もう上がってきたの、まるで(烏の行水ね)」
といったように使います。
当然のように「ちゃんと洗ったの」という言葉が、返ってくるのもしばしばです。
「烏の行水」の語源
「烏」と付いていますから、当然、烏が関係してきます。
烏は、道路脇の水たまりや公園の水飲み場のたまり水など、わずかな水たまりを見付けては、よく水浴びをします。
とは、いっても、ほんの1、2分という、ごくごく短い時間です。
それに、「風呂」ではなく「行水」となっています。
行水というのは、たらいに、お湯や水を溜めて、体を洗い流すものですから、お風呂に比べると、極めて簡素で、簡単です。
もちろん、烏は、たらいなどの用意はしませんし、そこいらにできている、水たまりを利用するだけで、わざわざ、湯船を造ったりもしませんので、人間に比べると、とても簡単で、手っ取り早く入浴できます。
よく知られているように、烏は、何でも食べる雑食性の鳥です。
従って、寄生虫などが羽や体につきやすいため、羽の汚れも一緒に落とすことを兼ねて、水浴びを好むようです。
それも、短時間で済ませます。
ところが、烏の行水が、いくら短いといっても、ハトは、数十秒で、スズメに至っては、数秒の行水ですから、本来ならば「雀の行水」となるべきところです。
そうならなかったのは、烏が行水を好むだけに、他の鳥に比べ、行水しているところをよく見かけたからかもしれません。
「烏の行水」の読み方
「カラスノギョウズイ」と読みます。
「トリノギョウズイ」と読み間違えないようにしましょう。
「烏」は、「鳥」の漢字とほぼ同じですが、よく見ると、一本線が足りません。
これは、鳥という漢字が象形文字でできていて、烏の漢字にはない横棒に当たる部分が、鳥の目を表しているのです。
そこで、全身真っ黒のカラスには、どこに目があるか分からずに、目の横棒が消えたと言う訳です。
うまくできた言い伝えですが、納得はできますね。
「烏の行水」の類語
お風呂に関する言葉は多くありますが、入浴時間や入浴の仕方となると、ある程度、限定されてくるようです。
特に、ここでは、入浴時間に関するものに絞って、類縁に当たる言葉を記載します。
- 「垢も身の内」
- 「ひとっ風呂」
- 「仕舞(い)湯」
「垢も身の内」
「烏の行水」の反対で、ある意味では、対をなす言葉です。
とても長くお風呂に入っているので、一日だけなら、とにもかくにも、それが、二日も三日も続いたのでは、もう、洗うところはどこにもないだろう、垢もすっかり落ちてしまって、何にもなくなっているだろうという意味の言葉です。
きれいに体を洗ったことを褒めているようで、その実、あきれたり、冷やかしたりしている言葉なのです。
「まだ、入っているのか。ずいぶんな、長風呂だなあ」
「昔から、D男さんは、お風呂好きで通してきているもんね」
「それにしても、(垢も身の内)、大抵であがってこいよ」
「いいじゃないの。長く入って、困るものでもないし」
「ひとっ風呂」
「烏の行水」と対をなす、いずれの方が短いか、競争してもよいような、手早く短い入浴の様子を指します。
「ひとっ風呂」の言葉通り、一回、湯船に浸かったら、それで、お終いというような、極めて、早い入浴の様子をいいます。
特に、気の短い、江戸っ子に好まれる入浴方法です。
「暑かったろう。ご苦労さん。よかったら、汗、流してきたら」
「ありがてえ。んじゃ、ひとっ風呂、あびてくるかあ」
「慌てることはないよ。ゆっくり浸かってきな」
「こっちとら江戸っ子だい。もたもた入っていられるかってんだ」
「仕舞(い)湯」
みんなお風呂に入ってしまい、湯船の栓を抜いて、湯を落とすころのお風呂のこと。
または、その湯に入ることを指します。
「終い湯」「了い湯」とも書きますが、意味の違いはありません。
要は、みんな入り終えて、最後に入るお風呂のことを指します。
お風呂に入る最後の順番になりますから、どうしても、家庭の主婦であるお母さんや、二世代同居の家なら、お嫁さんが、その対象になりがちです。
それで、幾多の問題が発生する要因をはらんだお風呂でもあります。
逆に、最初の入浴が可能になったお湯は「一番風呂」と言います。
「新湯」とも言いますし、沸かしたばかりのお風呂に、最初に入ることも指しています。
「(終い湯)になって、悪いわね」
「いいえ、かえって、ゆっくり入れますから」
「そおう。じゃあ、おいしいコーヒーでも入れておくわ」
「うわぁ、ありがとうございます。じゃ、お風呂もらいます」
「烏の行水」の使い方
基本は、お風呂を使う時間が、他と比べて極単に短い場合に、そのことに驚いて言う場合や、いつものことなので、もう少し丁寧に入って欲しい場合など、周りの感情で、同じように使う例にも、微妙な違いがあるようです。
- 「烏の行水」の例文1
- 「烏の行水」の例文2
- 「烏の行水」の例文3
「烏の行水」の例文1
「お風呂沸いたわよ」
「先に、入らせてもらいます」
「えっ、もう、あがったの。それじゃ(烏の行水)じゃない」
「烏の行水」の例文2
(烏の行水)タイプの人は「もうあがってきたの。体はちゃんと洗った」という声が思わず出るほど、短い入浴時間で済ませてしまいます。
当然のごとく「ほんとぅ。いつも(烏の行水)なので、きちんと洗えているのかなあと思って」
「大丈夫、大丈夫。洗いすぎても健康に悪いんだってよ」と、本人は、いたって平然としているものです。
「烏の行水」の例文3
(烏の行水)も健康上は、長湯をするよりは、よいとされます。
しかし、(烏の行水)も極端に短いのでは、血行をよくするお風呂の効果が、出始める前に、お風呂場を出てしまうので、効果がだいなしです。
本当は、ぬるめのお湯での半身浴が、健康には一番ですが、(烏の行水)タイプの人もせめて、20か30を数えるくらいは、お湯に浸かりましょう。
「烏の行水」の英語
「烏の行水」を英語に訳した際には、烏は登場しません。
その代わりと言うかお風呂のいわゆるバスタブが多く登場します。
また、「つかる」という同左である“dip”をつかった英訳もあります。
いずれにせよ、烏は出てきません。
つまり、慣用句の通りには、訳さないということです。
訳文は、あえて、直訳を試みました。
ポイントは、急いでバスタブにつかる、という英文が使われていることで、しかも、冠詞の「a」が付いているので、一回ということが、さらに強調されているように感じられます。
- “have a quick dip in the tub.”「急いでバスタブにつかる」
- “have a hurrid bath.”「大急ぎの風呂をもつ」
ところが、お風呂を表す“Bath”や“tub”といった単語を使わずに、比喩的な方法で「烏の行水」を言い当てていると思わせる訳文もありました。
- “Cat’s lick ”「猫の舌」
そういえば、猫はぺろぺろと体をなめて、お風呂は終わりだし、顔も、舐めた手の先で2、3度、なで回すだけでおしまいです。
あっという間に終わる早風呂の人をイメージできる英訳です。
「烏の行水」の対義語
烏の行水と対をなす、対義語、つまりは反対の言葉に当たるのは、入浴時間が長いのですから「長湯」「長風呂」という言葉になります。
でも、対義語とするなら、同じように、ことわざで「腰抜け風呂」という言葉があります。
この言葉は、寛政9年(1797)から、20年かけて編纂された、ことわざを集めた大辞典「俚諺集覧」(俚諺…ことわざのこと)の中にある「亰にて長湯の人を腰抜けぶろという」に、端を発しています。
「腰抜け」腰が抜けたくらいですから、もう立ち上がれないくらいに長いお風呂だとはやし立てたり、からかったりした時に、使った言葉だと思われます。
- 「腰抜け風呂」の例文1
- 「腰抜け風呂」の例文2
「腰抜け風呂」の例文1
温泉宿などに、みんなで出かけたりすると、入浴時間のずれが気になります。
「Cくんは、長風呂とは聞いていたけど、こんなに長く入っていて、大丈夫なのかよ。誰か、のぞいてこいよ。」
「大丈夫です。歌など歌って、いたってご機嫌でした」
「(腰抜け風呂)って聞いたことがあるけど、ほんとに腰が抜けたようにして、なかなか立ち上がらない長風呂もあるんだね。先に、始めちゃうか」
「腰抜け風呂」の例文2
(烏の行水)とは反対に、長湯を好む人も多く、なかなか湯船から立ち上がらないので(腰抜け風呂)とも言います。
しかし、いくら(腰抜け風呂)タイプの人といっても、熱湯好みの人との入浴は、カラスにならざるを得ないでしょう。
お風呂の好みは、百人百様。
飛び上がるほど熱い湯が好きな人もいれば、なま温かいぬるめの湯が好きな人、とかく、日本人はお風呂好きです。
だから、海外旅行の際に、宿泊ホテルの条件に、バスタブ付きか否かがあることが、理解しかねます。
憧れの豪華客船も同じです。
そんな日本人だから、入浴時間まで気になるのでしょう。
しかし、その割りには、この他の類する言葉は、「沐浴」くらいで、好きに入ればということでしょうか。
逆に、時間に厳しいのは、「湯もみ」「かけ湯」「入湯」を3分間で、1日上限4回までという草津温泉の古くから伝わる伝統の「時間湯」です。
これには、「烏の行水」も「腰抜け湯」も、とても太刀打ちできそうにありません。