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「郷に入っては郷に従え」の意味とは?類語、例文や英語、中国起源?徹底解説!

こんにちは!みなさん、「郷に入っては郷に従え」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。

今回はこの言葉について、様々な角度から紹介します。

郷に入っては郷に従え

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「郷に入っては郷に従え」の意味とは?類語、例文や英語、中国起源?徹底解説!>


目次

  • 「郷に入っては郷に従え」の意味とは?
  • 「郷に入っては郷に従え」と類語や似たことわざ
  • 「郷に入っては郷に従え」を批判する意見が多い理由
  • 「郷に入っては郷に従え」を使った例文や使い方
  • 「郷」とは?
  • 「郷に入っては郷に従え」は中国に起源がある?
  • 「郷に入っては郷に従え」の英語


「郷に入っては郷に従え」の意味とは?

「郷に入っては郷に従え」の意味とは?

みなさん、まずこの言葉、読み方がわかるでしょうか?正解を言いますと、「ごうにはいってはごうにしたがえ」と読みます。

「郷」「きょう」と読んだり、「入って」「いりって」と読んだりするのは間違いになります。

この言葉は簡単に言うと「新しい場所に来たら、その場所の決まりに従いましょう」という意味があります。

みなさんも、この言葉に合うような状況になったことがあるのではないでしょうか? 一番身近な例をあげれば、「新しい街に引っ越したら、ゴミ出しの曜日が違った」なんてことはよくありますよね。

ゴミ出しのルールは絶対に守らなければいけませんので、抵抗する人はいないでしょうが、これも「郷に入っては郷に従え」の一種です。

もう少し違う例を挙げれば、「転校したら新しい学校は私服NGだったので制服を買った」「会社に入ったら方言を禁止されたので標準語を練習した」なんていう話も、「郷に入っては郷に従え」の一つに挙げられると思います。

もし、この言葉を現代語っぽく言うならば、「新しいコミュニティに入ったら、そのコミュニティのルールに従いましょう」ということになります。

社会という場所で生きていくには避けては通れないことですね。



「郷に入っては郷に従え」と類語や似たことわざ

「郷に入っては郷に従え」と類語や似たことわざ

「郷に入っては郷に従え」という言葉には、いくつか似た言い方があります。

ここではそれを見ていきましょう。

  • 「郷に入りては郷に従え」・「郷に入れば郷に従え」
  • 「門に入らば笠を脱げ」【もんにいらばかさをぬげ】
  • 「所の法に矢は立たぬ」【ところのほうにはやはたたぬ】

「郷に入りては郷に従え」・「郷に入れば郷に従え」

ぱっと見て、「郷に入っては郷に従え」とほとんど変わらない印象を受けると思います。

実は、その印象は正解です。

この2つの言い方は「入っては」の部分を「入りては(いりては)」というか「入れば(いれば)」というかの違いでしかありません。

いわゆる、表記の問題であって、意味も「郷に入っては郷に従え」と全く同じです。

「門に入らば笠を脱げ」【もんにいらばかさをぬげ】

この言葉は、「郷に入っては郷に従え」の類語ですが「人の家の門をくぐったら、頭にかぶった笠を脱ぐのが礼儀です」という風に、どちらかというと無礼な行為を戒める一面を持つ言葉です。

したがって、「ルールを守ったほうがいい」という意味の「郷に入っては郷に従え」とは微妙にニュアンスが異なり、「ルールを守らないと失礼だ」というような雰囲気があります。

「所の法に矢は立たぬ」【ところのほうにはやはたたぬ】

この言葉は「ところのほうにはやはたたぬ」と言います。

少し難しい言葉ですが、「その場所で決められた法律に、矢を突き立てるように反抗することはない」というような訳が適切でしょう。

「たとえ正しくなくても、ルールを守らないといけない」というマイナスイメージを含んでいます。

「郷に入っては郷に従え」を批判する意見が多い理由

「郷に入っては郷に従え」を批判する意見が多い理由

「郷に入っては郷に従え」という考え方は、我々日本人の気質に深い関係があります。

それは、日本人たちが得意とする「和を大切にする」「空気を読む」という行動に関係があり、「コミュニティのルールならば、反発するのではなく、溶け込むことが一番得策である」ということを自然に知っているからこそよく使われる言葉なのでしょう。

しかしながら、多様化が進んだ現代社会においてはこの「郷に入っては郷に従え」という考え方は批判されることもあります。

自由主義が加速する社会において、「コミュニティのルールを強制する」ことは時代遅れと考える人も増えてきています。

田舎に引っ越したら、地元の人々のコミュニティがガチガチに確立されているせいで、新しく入ってきた人は「部外者」扱いされてしまう、なんてことはよく聞く話だと思います。

しかしながら、「伝統を守る」という点では「郷に入っては郷に従え」は素晴らしい考え方です。

やみくもに新しい文化ばかりを取り入れてしまっていたら、せっかくもともと存在した良い文化が淘汰されてしまうことだってあります。

本当に良い文化やルールは、時代や環境が変わっても人々にとって有益なもののはずです。

残すべき良いルールなのか、すべき悪しきルールなのか、それらを見極めて「郷に従う」ことが、現代社会の人にとっては適切なのかもしれません。



「郷に入っては郷に従え」を使った例文や使い方

「郷に入っては郷に従え」を使った例文や使い方

次に、この言葉を用いた例文を紹介します。

日常でどのように使えば良いのか確認していきましょう。

  • 「郷に入っては郷に従え」の例文1
  • 「郷に入っては郷に従え」の例文2
  • 「郷に入っては郷に従え」の例文3

「郷に入っては郷に従え」の例文1

この町に来てから戸惑うこともあったが、郷に入っては郷に従って、暮らしにも慣れた。

「新しい街に引っ越してきた、しかし様々なルールやしきたりに困ることもあった……。 でも、反発せずに従うことで自分もその暮らしに慣れてきた」といった背景があるような使い方になります。

最もオーソドックスで元々の意味にもあった例文です。

「郷に入っては郷に従え」の例文2

転職してから郷に入っては郷に従えというふうにふるまってきて、ようやく会社に馴染めた。

こちらは、「郷」という言葉をコミュニティと解釈して使用した例文になります。

現代社会ではたくさんのコミュニティがありますので、いろいろな場面で応用が利く使い方です。

つまり、「会社」でなくても「部活」だったり「サークル」だったり、はたまた「たまたま入ったお店」だったり、コミュニティの大小問わず使えます。

「郷に入っては郷に従え」の例文3

郷に入っては郷に従えというが、そんなルールはとうてい受け入れられない。

この文は「郷に入っては郷に従え」をマイナスイメージでとらえた文章になります。

「郷」という言葉を「強制された悪しきルール」のようなもとして解釈した使い方になります。

「郷」とは?

「郷」とは?

「郷」という漢字は、「ごう」という読み方のほかに「きょう」「さと」なんて言い方をします。

「いなか」「むらざと」なんて読み方もします。

要は、「郷」という字には「村」「里」、もっと大きく言うと「国」を示すような言葉です。

つまり、「郷に入っては郷に従え」「村に入っては村に従え」「国に入っては国に従え」なんて言い方でも良いワケです。

また、「郷」という漢字は古代の中国から来たものです。

昔の中国において「郷」は行政区画を指し示しており、いわゆる「郡」に相当する言葉でした。

ここまで見てもわかる通り、「郷」という漢字には「人々が集団で暮らす地区」「人と人が作り上げた社会」という意味が含まれています。

すなわち、現在の言葉でいうと「コミュニティ」に相当します。

「会社」「学校」「部活」「グループ」といった、「人と人が集団になっている組織」であれば何でも「郷」と呼んでも問題ないのです。

上記の例文などでも示しましたが、「郷」という言葉は「場所」そのものを指す、というよりも、「コミュニティに定められたルール」という解釈の方が現代では使いやすいでしょう。

「郷に入っては郷に従え」は中国に起源がある?

「郷に入っては郷に従え」は中国に起源がある?

さて、さきほど「郷」という漢字は古代の中国から来たものという話をしました。

実は「郷に入っては郷に従え」という言葉の起源も中国にあると言われています。

中世の日本で書かれた『童子教』という書物の中に、『入郷而従郷、入俗而随俗』という文があります。

この文は漢文で書かれていますが、もし日本語っぽく読むならば「郷に入っては郷に従い、俗に入っては俗に従え」という意味になります。

「俗」とはその土地のならわしや習慣を指す言葉です。

要は「そのコミュニティのルールに従いなさい」という意味で、現代のものと全く同じであることがわかります。

さらに、この文にもルーツがあり、それが中国語のことわざ『入郷随俗』と言われています。

この文章は「郷に入っては俗に従え」という訳になります。

先ほどの文よりも簡潔になっていますが、こちらも意味は「郷に入っては郷に従え」と変わりません。

また、さらに『入郷随俗』にもルーツがあると言われており、それは、『荘子外篇・山木』中の句『入其俗従其令』という文です。

この文はことわざというよりも、ただの文章といった感じで「其の俗に入ったならば、其の令に従いなさい」という意味になります。

「令」とは命令やルールといった意味ですので、これもまた「郷に入っては俗に従え」とほとんど同じ意味ということになります。

『荘子外篇・山木』は紀元前の書物なので、人類は「郷に入っては俗に従え」と同じ意味の言葉を2000年以上使っていることになります。

「郷に入っては郷に従え」の英語

「郷に入っては郷に従え」の英語

ここまで日本や中国など、アジア的な視点で「郷に入っては郷に従え」を見てきました。

では、似たような考え方はヨーロッパ圏にもあったりするのでしょうか? 実は、英語でほぼ同じ意味のセンテンスがあります。

それが“When in Rome, do as the Romans do”です。

この言葉を直訳するならば「ローマに居るならば、ローマのやり方でやりなさい」といったところでしょうか。

みなさんもご存知かとは思いますが、ローマとは現在のイタリアの首都です。

しかし、今よりはるか昔の時代には、ローマは世界の中心として栄えていました。

現在でいう、アメリカに相当するような感覚です。

したがって、「ローマのような世界の中心でまともに暮らしていきたいのなら、故郷のやり方は忘れてローマの人々に通用するようなやり方を優先しなさい」というような意味合いがあります。

ここまで見てきてわかる通り、「郷に入っては郷に従え」とほとんど変わらないニュアンスの言葉です。

英語圏でも「郷に入っては郷に従え」と同じ感覚で使うこともできます。

あまりにもありふれた言い回しなので、後半を省いて“When in Rome”という言い方をすることもあるそうです。

アメリカやイギリスなどで暮らすことがあれば、みなさんも是非覚えて使ってみるといいかもしれません。

icon まとめ

「郷に入っては郷に従え」という言葉の意味や例文、その起源や英語の言い回しまで、様々な視点から紹介してきました。

「郷に入っては郷に従え」という言葉を日常的に口にすることはなくても、概念としてはちゃんと知っておきたい言葉です。

みなさんも、これを機に「郷に入っては郷に従え」という言葉についてもう一度深く考えてみていただければ幸いです。