「にべもない」の意味とは?「にべもしゃしゃりもない」の意味、類語や使い方、英語を紹介!
「にべもない」とは、あまり耳慣れない言葉ですが、きちんとした大人の発言や小説のなかで見かけることがある程度の、馴染みの薄い言葉ですが、これに類する言葉は、よく耳にしているはずです。
目次
- 「にべもない」の意味とは?
- 「にべもない」の類語
- 「にべもない」の使い方
- 「にべもない」の英語
- 「にべもしゃしゃりもない」の意味
「にべもない」の意味とは?
相手に対して、かなり強烈な対応をすることを意味していて、よほど相手に対して、怒っているか、気分を害しているか、相手にしていないかといった、ギリギリの状況で使われる言葉です。
また、心の内を表現するのではなく、表に表れた態度や様子を表す言葉だけに、実に重たいものがあります。
意味としては、相手に対して、「愛想がない」「素っ気ない」「冷たい」などの態度を取っている様子やその様を言います。
さらに言うと、「些少の思いやりや多少のお世辞もない」そんな、てんで相手にしていない、冷たい応対の状況を表しています。
- 「にべもない」の語源
「にべもない」の語源
この言葉の語源は、面白いことに、この言葉が表している意味や使われている状況とは、全く関係のない所に、その種があります。
それは、スズキ目に属するある海水魚が、この言葉の源になっているというのですから、驚きです。
その魚というは、ニベと言って、市場では「イシモチ」(地方によっては、イシモチダイとも言います。)
とか「グチ」と呼ばれている魚です。
この魚は、煮ても、塩焼きにしても、美味しく食べられる白身の魚です。
なぜこの魚が、語源になったかと言うと、この魚は、浮き袋が非常に発達していて、グーグーというような音を出すことができます。
名前のグチもまるでそれが愚痴を言っているように聞こえるということで、グチと付いたようです。
この浮き袋は、大きい上に、とても丈夫なので、それをぐつぐつと煮出してさましていくと、「ニカワ」といって、粘着力の強い、一種の接着剤ができます。
「ニカワ」は、同じように、動物の骨や皮、腸や爪などからも造ることができますが、現在のように、合成接着剤がなかった頃には、特に、木材の接着には、欠かせない貴重な材料でした。
この強い接着力から、「ニベない」という言葉が生まれ、「接着力がない」つまり「くっつく力がない」ということから発展して、ぶっきらぼうな態度や素っ気ない態度、果ては、無愛想な態度を表す言葉となって、「ニベない」→「にべない」→「にべもない」と変化していき「あっさりしている」といった態度を表す言葉「にべもない」の現在に至っています。
「にべもない」の類語
「にべもない」に類した言葉は、いくつかありますが、どの言葉も、態度や様子に関する言葉であることを押さえておくことが、大切です。
また、この言葉を使う場や口調によっては、ピシャツと、次の言葉をさえぎる、強さももっている言葉であることも押さえておくことも大切です。
「たまたま同じホテルに、人気タレントのS氏が滞在されていたので、明日の、同期の集まりの席で、是非、一つ、ちょっとしたお話をしていただきたい旨、お願いしたところ、『できません』と、にべもなく断られ、かつてない大サプライズの計画が、頓挫してしまった」
- 「取り付く島もない」【とりつくしまもない】
- 「つっけんどん」【つっけんどん】
- 「けんもほろろ」【けんもほろろ】
- 「木で鼻をこくる」【きではなをこくる】
「取り付く島もない」【とりつくしまもない】
しっかりとつかまる所、すがりつく所が、ないということから、島のことを、頼りにする所、頼れる所、つて、または、よりどころと仮定して、そこがないことから、つかまる島も、すがりつく島もない、ということを表しています。
「頼れるもの」「頼りにする、よりどころ」がないということから転じて、何かを頼んだり、相談しようとしたりしても、相手の態度がよそよそしく、冷たくて、切り出すきっかけがつかめない様子を言います。
「万策尽きてしまって、もう打つ手がなくなり、仕方がないので、恥を覚悟で、兄貴の所を尋ねました。
しかし、先読みされていたようで全く、(取り付く島もなく)融資の件は、話題にものぼりませんでした」
「つっけんどん」【つっけんどん】
よく耳にする言葉ですが、「慳貪」+「突っ」から成る言葉です。
「慳」は、仏教の教えの一つで、自分だけの利益を求め続ける貪欲な煩悩のことです。
自分だけですから当然、けちになります、しぶちんになります、意地も悪くなります。
「貪」もまた、煩悩の一つで、五欲と呼ばれる欲の中の、貪欲に当たり、非常に強い、どこまでも求め続ける欲のことを言います。
それらの言葉に、動詞についてその様子を強調する「突っ」が加わっています。
これらから転じて、態度や言葉がとげとげしくて、無愛想な様子を言います。
切り上げ口調で、人の話は、半分も聞いていない様子に、半ば、けんか腰のようなものの言い方もします。
「町内の盆踊り大会の件で、踊りに詳しいFさん所へ、町内会長を先頭に、みんなで、でかけたました。
ところが、ドアを開けるなり『今頃、のこのこ出てきたって、遅いわ』と、実に、つっけんどんな言い方で、力一杯、バターンと、ドアを閉められてしまいました」
「けんもほろろ」【けんもほろろ】
「キジも鳴かずば〜」に似たキジの生態系から連想され、生まれてきた言葉です。
まずは、「慳貪」の「慳」からキジがなく、「ケーン、ケーン」という声を引き出し、同じ鳴き声を「ほろろ」という言葉でも表しています。
また、「ほろろ」は、出会ったキジが、驚いて、激しく羽ばたいて舞い上がる音を表しているともされ、ケーンケーンと鳴いて、何喰わぬ顔で、ほろろと羽音を立てて舞い上がる様子から、素っ気ない態度や無愛想な態度を意味する言葉になりました。
「木で鼻をこくる」【きではなをこくる】
「木で鼻をくくる」とした方が、一般的で、耳慣れてはいますが、本来は、鼻をかむという意味での「こする」ことを「こくる」と言います。
それが、いつの間にか「くくる」になってしまって、意味は同じなのですが、「木で鼻をくくる」という表現に変わってしまっています。
でも、正式には「こくる」で「くくる」は、あくまでも誤用です。
この言葉が意味するところは、江戸時代にさかのぼりますが、当時は、紙は高級品で、そうそう使えるものでは、ありませんでした。
まして、お店の丁稚ごときが、紙で鼻を噛むなどありえません。
それで、木の棒でこすって、鼻をかんでいたようです。
だから、ここでの「こくる」とは、強くこするの意味で、鼻水が止まらない丁稚が、盛んに木の棒で、強く鼻をこすっていることを表しています。
その様子が、とても無愛想な対応に見えた上に、それでも紙を使わせない、冷淡な態度に見えたことから、無愛想なもてなしや冷淡な態度をとることを「木で鼻をくくる」という表現で表しました。
「次のプロジェクトに関するアウトラインを、部長のところにもって行ったんだけど、虫の居所が悪かったのか、まるで(木で鼻をこくった)ような反応で、一言『ボツ』『何がまずいでしょうか』と尋ねても『ボツはボツ』と、取り付く島もない始末。やる気、でないなあ」
「にべもない」の使い方
使う際に大事な事は、これは、態度や様子を表す言葉で、直接的に気持ちを表す言葉ではないということです。
だから、「Aさんには、(にべもなく)断られた」とは言えても、「Aさんに断られて、(にべもなく)なってしまった」とは、言わないということです。
- 「にべもない」の例文1
- 「にべもない」の例文2
- 「にべもない」の例文3
「にべもない」の例文1
「これは、またとない、とてもいい縁談だと思って、いさんで写真を届けに行ったのに、相手のことを、よく見もしないで、(にべもなく)断った、あげくに「もう結構ですから、今後はお持ちにならないでください」と、言われた日には、さすがに、頭にきたね。
もう、金輪際、あそこの三十路娘が、どんなに行き遅れたって、知るもんかい」
「にべもない」の例文2
「オフィスでナンバーワンと言われるK子に『来週の花金、食事にでも、ご一緒できませんか』と誘ってみたところ、開口一番『ご一緒に、食事をする理由が、ありませんから』と、一瞬で断られ、さっと振り向くや否や、(にべもない)態度で、すたすたと立ちさられたのには、さすがに自尊心を傷つけられて、ややしばらく、立ち直れなかったね」
「にべもない」の例文3
「居酒屋で飲んでいて、最近の映画に話題が移ったので、ここは一つオレの出番だと思って『ねえねえ。ミッション・インポッシブル・フォールアウト、見た。見た』と勢い込んだら、S子に『だまって』と、(にべもなく)さえぎられてしまって、一瞬、座がホワイトアウトしそうになったんだけど、E男の『本日、横文字は、なしということで』の言葉で救われました。
E男、座布団3枚」
「にべもない」の英語
直接的ですが、「そっけない」や「ぶっきらぼう」、「ぞんざいな」、「無愛想な」を意味する“curt”、“brusque”、“brusk”などが、この言葉にあてはまります。
もっとも、単語の並びからしてそう読めそうに思える例として“to give a curt answer”が、あります。
「にべもしゃしゃりもない」の意味
「にべ」つまり、ねばねばとした粘着の部分と「しゃしゃり」という部分は「しゃりしゃり」という言葉が変化した部分で、切れのいいさっぱりしたところを指しています。
従って、粘りけもさっぱりけもないという意味から、粘りもなければ、さらりもない、味もそっけもない態度や様子を表す言葉となって、「にべもない」をさらに強調する言葉となります。
「管理課のN子ときたら、いくらミス・あやめだといっても、そりゃ、もちろん可愛いよ。
可愛いけれど、でも、ああ、(にべもしゃしゃりもない)態度で、座っているんだったら、庶務課のM子ちゃんの方が、数倍キュートな気がするなあ」
「にべもない」という言葉は、内面的な気持ちを表す言葉ではなく、態度や様子を表す言葉、いわば、目に見える外観につく言葉なので、使いやすく、類縁の語句を含めて、日常的に、聞いたり、見たりする言葉ばかりです。
ただ、その中でも、ある意味、老舗的存在である「にべもない」は、「取り付く島もない」「けんもほろろ」などに比べると、出番が少ないようで、使う場を選ぶというか、少し、気取った表現なので、出る場所を厳選するのかもしれません。