「捨象」の意味とは?類語、使い方や例文、対義語を紹介!
「捨象」とは、事物や現象について抽象的に考える時に、その一部の要素や側面を切り捨てることです。
捨象とは物事を概念化する時に、特定の要素だけに注目して他の要素を捨てることですが、「捨象の類語・言い換え・対義語・例文」にはどのようなものがあるのでしょうか?
「捨象」について詳しく解説していきます。
目次
- 「捨象」の意味とは?
- 「捨象」の類語や言い換え
- 「捨象」の使い方
- 「捨象」を使った例文
- 「捨象」を使った言葉
- 「捨象」の対義語
「捨象」の意味とは?
「捨象」とは、物事やイメージの概念を抽象する場合に、抽出された一部の要素以外の要素を考察の対象から切り捨てることです。
例えば、「社会正義」という概念を抽象的に考える場合、普通は「社会全体の進歩発展・個人の人権の保護・社会的弱者の救済・男女平等の実現」などの様々な要素から社会正義は成り立っていますが、社会正義という抽象的な概念の本質として「社会全体の進歩発展の要素」を抽出すると、それ以外の個人の人権や男女平等などの正義の要素が切り捨てられてしまいます。
このように、抽象化された概念の中の一部の要素・側面・性質などが切り捨てられることを捨象と言います。
- 人間は捨象によって単純化(焦点化)した物事の本質を考えることができる
- 「捨象」の読み方
人間は捨象によって単純化(焦点化)した物事の本質を考えることができる
「捨象」は具体的状況や個別的な対象に束縛されない人間の言語機能・概念化機能(抽象機能)の持つ特性であり、「概念・表象」の中で自分にとって重要と思える要素を選択して、重要ではないと思える要素を切り捨てることを意味しているのです。
人間は物事や現象の一部を捨象することによって、物事・現象を「自分や社会にとって理解しやすい概念」として考えることができるようになります。
複雑で多様な要素から成り立つ物事を、人間はありのままに把握して言語化したり理解したりすることはできないため、基本的に物事や現象を概念化(抽象化)して理解する時には、一定の要素を捨象していることになります。
「捨象」の読み方
「捨象」の読み方は、「しゃしょう」になります。
「捨象」の類語や言い換え
「捨象」の類語や言い換えには、どのようなものがあるのでしょうか?「捨象」の類語・言い換えについて分かりやすく紹介していきます。
- 「無視」【むし】
- 「切り捨て」【きりすて】
「無視」【むし】
「捨象」の類語・言い換えとして、「無視・軽視」があります。
例えば、現代の資本主義社会における成長戦略は、貧困層の生活・所得の安定を捨象することによって成り立っていることが多いと言及する時、「貧困層の生活・所得の安定を無視(軽視)すること」とほぼ同じ意味合いで捨象が用いられています。
ある物事・現象を捨象して考える時には、その捨象する物事・現象を無視したり軽視したりしていることになるからです。
消費社会におけるエンターテイメントの娯楽文化は、重度の障害者や寝たきりの老人を捨象しているという文章では、分かりやすく消費する娯楽文化において「重度の障害者・寝たきりの老人が無視(軽視)されていること」が示されています。
「切り捨て」【きりすて】
「捨象」の類語・言い換えとして、「切り捨て・選別」があります。
物事の特徴や性質の一部を捨象するということは、「ある特徴・性質に注目して選び取る代わりに、それ以外の特徴・性質を切り捨てること」を意味しています。
そのため、捨象という言葉は、「切り捨て」や「選別(取捨選択)」として言い換えをすることが可能なのです。
「リア充の恋愛やインスタ文化から、陰キャの人は完全に捨象されている」という文章では、正にコミュニケーション能力が低かったり見た目の印象が冴えなかったりする陰キャの人が「リア充の恋愛・インスタ文化」から選別されて切り捨てられているというニュアンスを読み取ることができるでしょう。
「捨象」の使い方
「捨象」の使い方は、物事や現象に共通する要素・特徴だけを取り出して、それ以外の要素や特徴を切り捨てて考える時に使います。
「捨象」という言葉は、物事やイメージの重要だと思える要素だけを選び取って、それ以外の要素を「些末なこと・本質的ではないこと」として切り捨てる時に用いる言葉なのです。
捨象は「物事・現象・イメージ」にある一部の要素や特徴に注目して選び出し、それ以外の要素や特徴を切り捨てて単純化・概念化する時に使用する言葉です。
物事のエッセンスや出来事の重要な本質だけを抜き取って思考したり言及したりしていると思っている時に、捨象という概念を用いてその「本質と末節に関する取捨選択」を表現することができるのです。
「捨象」を使った例文
「捨象」を使った例文には、以下のようなものがあります。
- 「捨象」の例文1
- 「捨象」の例文2
- 「捨象」の例文3
「捨象」の例文1
現代社会は確かに便利できらびやかな都市の消費文明を花開かせているが、この華やかな都市の娯楽・消費から、貧困層や障害者といった社会的弱者が「捨象」されていることが多い。
「捨象」の例文2
医療の進歩や栄養状態の改善によって、平均寿命が延長された現代では、死や病気の運命が「捨象」されているからこそ、人々は余計に死・病気に対する絶望感を抱きやすくなってしまった。
「捨象」の例文3
政府は一億総活躍社会をスローガンに掲げて、老若男女を含めた国民全員を企業労働に駆り立てようとしているが、そこでは心身の障害・病気で苦しんでいる人、ブラック企業の過重労働・パワハラで悩んでいる人たちが「捨象」されてしまっている。
「捨象」を使った言葉
「捨象」を使った典型的な言葉・表現について紹介します。
ここでは、「具体的特徴の捨象」と「ノイズの捨象」という言葉の意味を分かりやすく説明していきます。
- 「具体的特徴の捨象」
- 「ノイズの捨象」
「具体的特徴の捨象」
「具体的特徴の捨象」とは、事物やイメージ(表象)の本質的要素の部分だけに注目して選択する捨象の特徴について表現した言葉になります。
捨象する時には、「複数の事物に共通する分かりやすい特徴」だけに注目して取り出されることが多く、それ以外の「複数の具体的特徴」は切り捨てられやすいからです。
「具体的特徴の捨象」とは、例えば、セキセイインコという概念を抽出する場合に「個別のセキセイインコの羽根の色・性格の人懐っこさ・よくしゃべる好きな言葉」などの具体的特徴を切り捨てるようなことを意味しています。
「ノイズの捨象」
「ノイズの捨象」とは、捨象の持つ本質的な取捨選択の機能を表現した言葉になります。
社会学・情報理論などにおける「ノイズ理論」では、「シグナルと呼ばれる重要な情報」だけを選別して取り出し、「ノイズと呼ばれる重要ではない情報」を切り捨てるとされていますが、概念やイメージにおける捨象にも同様の機能があります。
捨象とは、物事や現象において重要ではない要素・特徴である「ノイズ」を切り捨てる作用のことなのです。
「捨象」の対義語
「捨象」の対義語は、「抽象(ちゅうしょう)」になります。
「抽象」とは、複数の物事・現象に共通している要素・特徴を抜き出して概念化することです。
「捨象」とは、抽象とは反対に複数の物事・現象に共通しているが重要ではない要素・特徴を切り捨てて概念化することなのです。
「抽象」と「捨象」はどちらも、人間の思考能力・言語能力の特徴を示唆する言葉・概念ですが、「抽象=物事の共通要素を取り出して概念化する」と「捨象=物事に共通するが重要ではない要素を切り捨てて無視してしまう」という正反対の意味を持っています。
しかし、物事・出来事に共通している要素を取り出して抽象化する時には、必然的に「共通要素の外部・周辺にある要素や特徴」が捨象されることになります。
そのため、「抽象」と「捨象」は対義語でありながらも、実際の概念化のプロセスでは同時進行することが多いのです。
「捨象(しゃしょう)」という抽象的な概念・言葉について徹底的に解説しましたが、捨象とは「物事・現象の本質的な要素を取り出して、それ以外の要素を切り捨てること」です。
捨象の類語・言い換えには、「無視・軽視」「切り捨て・選別」があります。
捨象の対義語は「抽象」になります。
「捨象」という言葉について、詳しく調べたい時にはこの記事を参考にして下さい。