「火の用心」とは?語源や「火の用心」の掛け声!カチカチやる道具の名前
冬になると夜に自宅周辺で「火の用心」という声が聞こえるという人もいるでしょう。
「火の用心」の意味や由来などについて紹介します。
目次
- 「火の用心」とは?
- 「火の用心」の読み方
- 「火の用心」の掛け声の語源や由来
- 「火の用心」の掛け声・一般的なモノから変わったものまで
- 火の用心の夜回りをする理由
- 「火の用心」の英語や解釈
- 「火の用心」のカチカチやる道具の名前
「火の用心」とは?
「火の用心」の意味と、「火に用心」との違いについて紹介します。
「火の用心」とは、冬で空気が乾燥した時期になると、地元の消防団や町内会の人達が中心となり、町内を見回ることを言います。
「カチカチ」と音を立てながら大声で火の取り扱いに注意をする様に呼びかけ、火事を防ぐことが目的です。
その役割は大人だけではなく子供も受け持つことがあります。
夜の7時〜8時頃になると、何人かのグループが決まったルートを回って音と声で各家庭に呼びかけるのです。
- なぜ「火に用心」ではないのか
なぜ「火に用心」ではないのか
日本語的に火事を起こさない様にするならば「火に用心をする」のではないかと思う人もいるでしょう。
確かに文法的に不自然ではありますが、この場合「今目の前にある火に用心をする」という意味ではありません。
タバコの消し忘れや炭の残り火など、自分が消したと思っていた火にも用心をする必要があるのです。
「目の前の火だけではなく、全てにおいて火事を起こさない為の用心ですよ」という意味で「火の用心」と使われていると言われています。
「火の用心」の読み方
「火の用心」は「ひのようじん」と読みます。
特に難しい漢字ではありません。
「火の用心」の掛け声の語源や由来
「火の用心」の語源は、戦国時代にさかのぼります。
徳川家康がまだ天下を統一する前に、その家来である「本多作左衛門重次」が妻に宛てたとされる手紙には「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」と書かれていました。
「お仙」とは、仙千代という子供のことで、自分の地元を弱体化させない為にアドバイスしている内容です。
非常に短い文章ですが、これが「火の用心」の由来となっています。
「火の用心」の掛け声・一般的なモノから変わったものまで
「火の用心」の様々な掛け声について紹介します。
- 「マッチ一本火事の元」【まっちいっぽんかじのもと】
- 「戸締り用心 火の用心」【とじまりようじんひのようじん】
- 「秋刀魚は焼いても家焼くな」【さんまはやいてもいえやくな】
「マッチ一本火事の元」【まっちいっぽんかじのもと】
昭和の終わり頃まで最も良く使われた掛け声ですが、今では使われなくなりました。
理由は「マッチ」そのものが家庭に普及しなくなったからです。
昔はガスコンロの火やストーブ、タバコなどあらゆるものに火を付ける為に「マッチ」が使われていました。
しかし現代ではタバコを吸う人が減り喫煙者はライターを使っています。
ガスコンロは備え付け、ストーブも自動点火になるなど「マッチ」の出番がなくなってしまったからです。
「戸締り用心 火の用心」【とじまりようじんひのようじん】
昔は今の様にオートロックやディンプルキーなど鍵の種類がなく、簡単に空き巣に入られてしまう時代でした。
その為に寝る前には戸締りをしっかりしないと安全性に欠ける部分があったのです。
夜は街灯も少なく真っ暗な状態であったことも理由の一つです。
戸締りと同時に火の用心をすることで、安心して翌朝まで熟睡できることになるのです。
「秋刀魚は焼いても家焼くな」【さんまはやいてもいえやくな】
こちらはとてもユニークな掛け声で、一度聞いたら忘れられません。
用心や注意は毎日していると段々と気持ちが離れて行ってしまうものです。
どんなに毎晩見回りをしても「また来ているのか」と思われるだけで、火の始末をおろそかにしてしまう人もいるでしょう。
この様なユニークなフレーズを聞くとつい耳についてしまい、記憶に残るというメリットがあります。
サンマを焼くなど料理をしながらもこの言葉を思い出し、火の始末をしっかりとしてくれれば一定の効果があったと認められるのです。
火の用心の夜回りをする理由
江戸時代は長屋と言って、多くの世帯がくっついて建ち並んでいました。
その為に一度火事になるとあっという間に全ての棟が燃えてしまうことが多かったのです。
夜は家で料理をすることから最も火を使う時間帯です。
その為に夜全ての家事が終って人が眠りにつく前に火の用心をする様になったのです。
「火の用心」の英語や解釈
“Beware of fire!”
「火の用心」になります。
“beware”は「気を付ける」という意味があります。
“fire patro”=夜警という役割があるのですが、実際に声を出したりはしません。
「火の用心」のカチカチやる道具の名前
「火の用心」カチカチする道具の名前は「拍子木(ひょうしぎ)」と言います。
掛け声を言った後合いの手の様に「カチカチ」と2回叩くのが一般的です。
これは、神社で手をパンパンと2回叩くのに倣ったと言われています。
この音がすることで家の中にいる人の耳にも届き「火の始末をしたっけ」と確認を促す効果があるのです。
但し最近では拍子木の音がうるさいというクレームが来ることもあり、自粛する傾向にあります。
「火の用心」は昔から冬の乾燥した時期に火事を起こさない様に注意喚起する方法でした。
夜に町内を回り、拍子木と掛け声でパトロールをするもので、子供の頃参加したという人もいるでしょう。
冬だけではなく一年中火の用心をする様に心掛けましょう。